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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第19話 花火大会 その3

連れられるがまま、木々(きぎ)に囲まれた道を進んでいく。

街灯もなく、視界が悪い。

横幕はスマホのライトをつけて、斜め先の足元を照らしながら歩いている。

穴場というだけあって、人の姿はほとんどなかった。

だが、奥村は中城のことが気がかりで仕方がなかった。

本当に後から彼女は来るのだろうか。

それ以上に前野と2人にすることも気がかりだった。

どうも今日2人の距離が縮まっているようにみえた。


その時、社医の言葉が脳裏に蘇る。


---------------------------

「彼女、頑張り屋さんみたいだからしっかりみてあげてね」

---------------------------


奥村は足を止める。


「ごめん、やっぱり中城さんの様子見てくる」


横幕も足を止め、彼の手を離す。

奥村はもと来た道を一人戻ろうと駆け出す。


「なんで…?」


横幕の心の声が小さく漏れる。

ここまで頑張っているのに、全く振り向いてもらえない理由がわからなかった。

中城を呼んだのは、彼女との差を奥村に見せつけるため。

前野は中城の世話役として呼んだだけ。

全ては今日彼を手に入れるために仕組んでいたことだったのに。

彼はいつも中城のことを意識していることが理解できなかった。


「待ってよ!」


奥村は彼女の大きな声に足を止める。

身体を向けようとした時、奥村を追いかけてきた横幕が勢いよく抱きつく。

その時、花火の音が鳴り始めた。


「どうして…どうして亜美のこと見てくれないの?」

「え?」


彼女は顔をあげ、奥村を見上げる。

打ち上げられた花火の光に彼女の顔がほのかに照らされていた。


「私、奥村くんのことが好きなの」



「願ったり叶ったりだな」

「え?」

「中城さんと2人になれた」


(ええええええ!?!?ちょっと今日の前野さんやばくない!?)


今日の彼はいつになく積極的だ。

横幕が乗り移ってるのではないかと感じるほどだ。


「足大丈夫?」

「たぶん…捻挫(ねんざ)しただけだから」


私は買ってもらったお茶を足首にあてて、患部を冷やす。

ひんやりとしていて気持ちよかった。

右足に重心を乗せなければ、どうにか歩けるかも知れないが、これ以上無理しない方が懸命だろう。


「前野さん、奥村さん達と花火観てきていいですよ。私はここで休んでるので」


前野は私の横に腰掛ける。


「このまま残るよ」

「でも、2人にしたら横幕さんが奥村さんに何をするかわからないですよ…」

「大丈夫だよ。草太には好きなやついるし。ここで流されるようなら、それまでってことだ」

「でも、すごいアタックでしたよ、今日も…」

「あいつは結構一途(いちず)だから、いざという時はちゃんと断るよ」


長年の付き合いからでしかわからないことなのだろう。

奥村のことをよく理解している。


「前野さん、奥村さんに好きな人がいること知ってるんですか?」


前野は、目を伏せる。

その表情はどこか悲しげにみえた。


「…知ってるよ」


前野は、話題を切り替えるように立ち上がる。

振り返った時にはいつもと同じような笑顔だった。


「そういえば中城さん、また敬語に戻ってきてるよ」

「え、あ、すみません」

「まだ慣れない?」

「それは、そうですね…」

「まあ、少しずつ慣れていってくれればいいけどね」


花火の音が聞こえてくる。

どうやら花火大会が始まったようだ。

横幕と奥村はちゃんと花火を観れているだろうか。

音のする方角を見上げるが、ここからは何も見えなかった。


その時、前野から視線が向けられていることに気づいた。


「俺さ、中城さんのこと…好きになったみたいなんだよね。俺と付き合ってくれない?」


「立候補していいか」と言われてからまだ日が浅い。

いつかは告白されるかもとは、意識していた。

ただ、まさかこんなにすぐだとは思っていなかった。

告白は覚悟がいるはずだ。

今まで聞いてきた恋愛相談でも、少女漫画の中でも、告白というのは一大イベントのはずだ。

それまでの関係性がどちらの答えにしても変わってしまうからだ。

そこまで急いで結論を出す必要があるのだろうか。


彼なら私以外にも魅力的な人がたくさんいるはずだ。

私じゃなくてもいいのではと思ってしまう。


「どうして私を…」


頭の中の疑問符がつい口に出てしまった。


「どうして?どうしてか…中城さんが好きになったから付き合いたいなと思ったんだけど」


思いがけない返答に驚いたのか、前野は目を伏せて後頭部をかく仕草を見せる。


「あの…何でそんなに焦ってるんですか?」


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