表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界が終わるという結果論  作者: 二神 秀
CHAPTER.3 業の深い緋色(ゴウノフカイヒイロ)【天体衝突6ヶ月前(秋)】
18/49

§ 3ー1  モノローグ③  玉川匡毅



--玉川匡毅・夢の中--



 ヒラリヒラリ……


 舞い落ちる黄色。先が見えない一本道。街路樹が作る天然の絨毯じゅうたん。吹きすさぶ木枯こがらしが役目を終え旅立った1つ1つに寂しさをもたらし、身を寄せ合わせ、人が隠れられるほどの山をいたるところに形成する。


 濃緑のうりょくのジャケットが風にたなびく。肌寒さを含んだ気流が心をいつも以上に揺さぶる。枯れゆく世界の匂いに一瞬気を取られたところに、視界の端に彼女のぞうが結ばれる。焦点を向けるとその像はすでに拡散かくさんされていた。


 彼女の名を呼ぶ。しかし、振動は伝わらない。何度も何度も叫ぶが、伝わらない。何故か声が出ない。見渡しても街路樹と落ち葉の山と黄色い絨毯じゅうたんしか見えない。走り回ってみても景色に彼女は映らない。


 ガサガサガサガサ……


 落ち葉の中を何かが動く音。振り向くが落ち葉の山しかない。だが、他に手がかりもなく山になった落ち葉を両手でかき分ける。指に落ち葉ではない感触。そこには黒猫がデザインされたバレッタがあった。彼女が髪を束ねていたものと同じ。やっぱり彼女はいる。


 手当たり次第、落ち葉をかき分ける。くつかばん、ワンピースなど彼女と一緒にあったものばかり。そして、目についた一際ひときわ大きな落ち葉のかたまりを無我夢中にかき分ける。

 いた! 横たわる裸の彼女をついに見つけた。しかし、眠っているのか動かない。名前を呼びかけたくても声が出ない。肩を揺らしても反応がない。


 ガサガサ……


 そのとき、遠くで物音が聞こえた。視線を向ける。その視界には、見たことある男の人影が、落ち葉の中から彼女を見つけ出していた。彼女に上着をかけ、彼女をおぶって歩いていく。

 かたわらの横たわっていた彼女は無数のイチョウの葉となり形を失っていく。


『なんで!?』と思う一方、『やっぱりか……』と肩を落とす。



 もう何もないれた世界で途方に暮れる。



読んでいただきありがとうございます。

【評価】【いいね】【ブックマーク】して頂ければとても嬉しいです。

また、どんなことでも構いませんので、感想・レビューを書き込んでいただければ必ず拝読させてもらいます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ