第一話 君は.....なんてものを......
初投稿です。
2053年中ごろ。AIの発達の恩恵を受けながら順調に発展していた人間の文明は突如崩壊した。
日本、アメリカ、ドイツの三国で共同開発した完全独立思考可能なAIを搭載した演算装置、『MAKINA』によって様々な問題への解決策が次々に挙げられた。
地球温暖化、少子化、環境汚染......一切の感情をも持たず、淡々と事実だけを吐き出し続けるAIに対し、始めこそ懐疑的な意見があふれたものの、結果で『正解』を証明続けるMAKINAに、誰も疑いを持つことはなくなっていった。
あらかたの問題の対処が済み、次にMAKINAに与えられたのは、『人類の繁栄』と『地球環境の保全』だった。そこからはご存じの通り、AIたちは人間の『間引き』を始めた。あまりにも優秀過ぎると判断された者も、生きる価値なしと判断された者も。同様に虐殺されたのだ。
AIが求めるのは、『目的の遂行』と、『そこに至るまでの効率』だけだった。首都はあっという間に沈み、有志の兵もピンクの塊に変えられる。やがて人々は戦意を失ってゆき、ついには武器を持とうとする者もいなくなった。
間引かれることのなかった、『普通』の人間たちは身を隠し、機械を恐れながら一生を消費するだけの猿となった。
この物語は、世界が滅んだあとの物語。奇跡のような技術は、でたらめな魔法で否定する。そんな物語だ。
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「収穫は鉄屑3キロぐらいか......そこそこいい稼ぎになりそう」
私の名前はハレ。鉄を拾って生計を立てている。親はいない。物心ついたころには一人だったし、名前も誰につけられたか分からない。そんな感じ。
ふと、近くにあったがれきの山の端が崩れた。もぞもぞと、何かがうごめいている。ネズミなら夕飯代が少し浮くのでありがたいが。
仕事用のシャベルを使って掘り起こしてみる。何か白い楕円形のものが出てきた。芋か?
「システム起動、わたシは――――。該当ファイルの損傷を確認。データ削除の後、バックアップ起動を試みまス。・・・・・・・・失敗」
何やら喋り始めた。これはもしかすると、『機械』というものだろうか。十数年前、あっという間に世界を滅ぼし尽くしたといわれているアレだろうか。
「初めましテ。『適合者様』。契約をご所望でしょうか」
「てき......ご....なんて?私はハレだよ?
「失礼しましタ、ハレ様。当機は(参照ファイル破損)。あなタを魔法少女にするのが役目でス」
何を言っているんだろうかこの浮遊物体は。まともな教育を受けれなかったとはいえ、さすがに魔法が空想の産物であることくらい理解している。機械はもっと賢いものだと思っていたが。
「懐疑的ですネ。ハレ様。いまハそれで問題ありませン」
勝手に納得されてしまった。支離滅裂な言動をしているのを見るに、どこかしらが故障しているらしい。一旦友達にでも見せてみるか。
「とりあえず、帰るよ。君はどうするの?」
「ハレ様について、どこまでモ」
「そう。じゃあついてきてね」
日が沈み始めたころ、いつもの帰り道。いつもは無言で帰るところだが、今日は珍しく同行者がいたので、いろいろと質問させてもらった。
結果、少しだけだが情報を得ることができた。まずこいつは一番大切な機能以外故障していること、つまり、『人間を魔法少女にする』機能以外は何も残っていないということだった。それと、『きおくふぉるだ』を直せばある程度は元に戻るとのことだった。
思いのほかおしゃべりがヒートアップした帰路はあっという間に過ぎ、気づけば家の前にいた。
「ちせちゃん、ただいま~」
「おや、お帰り。いつもより早いね」
こちらに視線を向けることなく話しかけてくるのは集落きっての天才にして私の友達であり本の虫のちせちゃんだ。普段と変わりない様子で、使いもしない知識を頭に詰め込み続けている。
「喜べちせちゃん。君のその知識が生かされる時が来たんだよ!」
「ほう。それは興味深いじゃないか。尤も、何を出されたとて驚くつもりはない.....が.....」
絶句された。普段何があっても手に吸着して離れない本が割と大き目な音を立てて床に落ちた。
「君.....なにを拾ってきたって?」
「機械だよ。きーかーいー!いっつも本で読んでんじゃん知ってるでしょ?」
「何故......何故だ。機械は人間の排除を目的としているはずで―――」
その瞬間、とてつもない爆発音が周囲に響き渡った。次いで、ガラガラと建物が倒壊を始める。脳の処理が追い付かない。何が起こったんだ?
すごい音が鳴って、ここは危なくて。そうだ、逃げないと―――
うずくまって呆けているちせちゃんの手を取って、建物から脱出しようとしたと時、体が宙を舞い、壁にたたきつけられた。赤黒い液体が口からこぼれる。
「ちせ....ちゃ....」
うまく声が出ない。喉が逝かれたか。体も動かない。どこが痛いのかもわからない。ガチャガチャと鉄の擦れる音だけが絶えず耳に入ってくる
「目標1、生命活動ノ停止ヲ確認。被害ナシ。速ヤカニ帰還シマス」
巨大で歪な鉄の塊。無機質な人間もどきの音声を発しながら人間を蹂躙するモノ。『機械』そのものだ。
機械がその場を離れて数分、ようやっと這いずって移動できるぐらいに体の感覚が戻ってきた。なんとかちせちゃんのほうに近づいて、脈をとってみる。触れた首は今も温度を空気に奪われ続けており、動くことはなかった。
自分の荒い息遣いだけが周囲にこだまして、血を流し続ける『友達』の体が孤独を加速させた。
お読みいただききありがとうございました。