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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界あるある短編

よくある聖女の過激な否定

作者: 川崎悠

注意※胸糞バッドエンドです!

「聖女様が婚約破棄されたってよ」

「……へー」

「由々しき事態なのに興味なしか?」

「婚約破棄された後は? どうなったんだ?」

「なんでも偽聖女扱いで国外追放だとか……」

「はぁ……」


 何をやっているんだろうか、王家は。


 聖女の力を持っている者は確実に分かる。

 そして聖女の祈りは天災を未然に防ぎ、大地に恵をもたらすという。


 そんな聖女を偽物扱いして国外追放などすれば王国にどんな災いが起こるかは想像に難くない。


 俺達は、たしかに聖女の力を認めている。


 認めているからこそ。


「おぞましいな、聖女とは」

「まったくだ」


 神に愛されてるか、精霊に愛されているか。

 そんな事は知らない。


 だが、たった一人の人間の取り扱いだけで、多くの民の人生が左右されるなど、あってはならない。


 多くの人にとって会った事もない人間がどうにかなったからといって、真面目に畑を耕していた農民が苦しむ事があって良いか?


 川の近くに住んでいただけで、川の氾濫に巻き込まれて良いか?


 そんな全てが聖女一人に振り回されるなんて、あまりにもおぞましい。


 聖女が文字通り超然とした、神のような人間ならば納得もいく。

 歯車の一つとなって、ただただ国の繁栄を祈る者であっても。


 だが聖女とは名ばかりで、彼女は普通の人間のように考え、思い、恋をし、愛しもするのだ。


 聖女様の優しさとやらで俺達は今まで生かされてきた。


「国外追放など生温いだろうに。保険のつもりなのか」

「かもしれないな。王家の諍いは知った事じゃあないが……ここからが人間の矜持の見せ所だ」



 俺達は努力してきた。

 聖女という存在の上に立たされている不安定な王国を守る為に。


 河川の氾濫が起こらぬよう、そして聖女の制御が効かなくなった時の天災を想定し、堤防を設置した。


 不自然な程に快適な天候が続いていた地域では、豪雨や嵐を想定した災害対策を心掛けてきた。


 天の怒りのような落雷現象を想定して、避雷針を設置し、人々の生活を守るよう都市開発を行った。


「王家の思惑は知らないが、我々は聖女などに左右されない。人間の技術で天災に抗い続ける。……たとえ、そこで多くの犠牲が出たとしても……。我々は『他人の祈り』なんかで生き死にを左右され、生活環境の安寧を左右されるなどあってはならない」


 かくして聖女を追放した事による厄災は始まった。


 大雨が降り続けた地域。

 嵐に見舞われた地域。

 不自然な凶作が続いた地域。

 疫病の発生。


 様々な不幸が王国に降り注いだ。

 救えなかった命もある。だが。


 長年の災害対策や、育ててきた医療機関の技術、そして不作の対策により、救えた命も多くある。


 ……これで良いのだ。


 もちろん犠牲になった者や、その遺族は納得しないだろう。

 だが国を挙げての災害対策は、たしかな成果を残している。


 俺達は、聖女を追放したという王太子とも連絡を取り、国王との話し合いの末、追放した聖女を『魔女』とした。


 王子を恨み、災いをもたらす魔女。

 彼女の精神性など関係ない。


 ただ一人の優しさや祈り、その処遇程度で、常に国のすべてが覆される事そのものが許せなかった。


「神様にとっては、或いは信心深い者にとっては、自分達一人一人よりも聖女様のお幸せとやらが大事らしいな」

「王様の受け売りか?」


 国王は俺達の考えを理解してくれた。


『聖女が居て。神が居て。この天災が神の意思ならば。……我ら一人一人の命は、なんと聖女より軽いと思われているものか』


 王様は民を前にして、堂々と胸を張った。


『聖女を追放した王子の決断が、王の決断が気に食わぬと言うのなら、我ら王家の者共だけを雷で打てば良いだろう。その機会はあった。だが起きたのは何だ? 国中に蔓延る災害だ。無辜の民の犠牲だ。……神の怒りだと言う者もいよう。だが。これが神の所業ならば、この王国に神など要らぬ! 人の技をもってのみ、この国は厄災から守られ、繁栄する道を行く! 故に……聖女と呼ばれていた者は、災厄をもたらす魔女とし、改めて王国より永久追放を宣言する!』


 国王が宣言したその時だ。


 まさに天の怒りが、稲妻が王へと降り注いだ。


 先程まで晴れていた空があっという間に曇り、雷が落ちて王を狙ったのだ。



「ぐぬぅ……!」


 だが王は死ななかった。

 避雷針を設置し、身体を焼かれぬよう電気を受け流す服を拵え、魔導士達の魔術も総動員して、王を守ったのだ。


「……何度でも打つがいい! 我がここで死のうとも、王国の民は屈するものか! 自らが気に入らぬ事があったからと雷を落として黙らせようとし! 国中に厄災をもたらす者などに神を名乗らせはしない! 貴様は悪魔だ! 厄災を操る悪魔に過ぎない! 我が民の命を奪い、脅かしたのは人間ではない! いつまでも人間を見下し、意のままに操れると思っている傲慢な貴様だ!!」


 王は民に人間の矜持を見せた。


 王国から離れた者も居る。

 災害に見舞われた者も。


 だが王国は粘り強く戦った。


 天候や災害、不作や豊作すら左右するおぞましい聖女に頼らない、人々が自らの手で為す国作りだ。



「……聖女、いや魔女が王国に帰ってこようとしている?」


 そんな折、他国へ逃れた聖女が国に戻ってこようとしていると聞いた。


「王国が見舞われている災厄を退けようというのだろう」

「また優しさのつもりか。何故分からないんだ。その優しさや祈りこそがおぞましいのだと」


 今まで通りであれば、たしかに犠牲は出なかっただろう。

 俺達や王の、王子の決断を愚かだと言われもするだろう。


 だが、これで良いのだ。

 聖女が祈って王国が救われました、などと歴史に残っては我々の戦いが無駄になる。


 犠牲者が無駄になってしまう。

 ただ一人の人間の、祈りや優しさ、幸福かそうでないか、愛されたか否か。


 そんな事に国中の人間の運命が左右される事など終わりにしなければならない。


 王も王子も決断した。


 聖女に二度と王国の地を踏ませてはならない。


 どうやら他国の王子に見初められたらしい聖女は、その王子が率いる軍と共に王国に入り、祈りを捧げようと画策しているらしい。


 王子自らが聖女討伐の任務の指揮を執る事になった。


 技術部として俺達も王子について行く。

 聖女が嫁いだ国との戦争になった。


 魔法と技術の合作で作った『爆弾』が有効に活躍する。

 人の鍛錬の成果だけでなく、技術も、全てを懸けた戦いだ。



「──魔女を討て! 王国に厄災をもたらした魔女を絶対に王国に入らせるなッ!!」

「「おおおおッ!!」」


 聖女の姿を見つけた王子が、馬上で槍を抜き、士気が高まっている兵達に号令を掛ける。


「アレク殿下! おやめ下さい! 何故こんな真似を!? このままでは王国は災いに見舞われ続けます! 私が祈りを捧げれば……!」


 聖女は尚もそんな事をのたまった。


「魔女セイラよ! お前の祈りによって、民の生殺与奪を握られている事そのものが赦し難いのだ!


 神そのものへの侮辱に神が怒るならば、我らとてただ受け入れた! だが! ただ一人の人間に過ぎないお前に人々の安寧が振り回されるなど、あってはならない!


 お前が人の愛すら知らぬ、求めぬ人形や石像であれば何も問題はなかった!

 或いはお前が祈る限り、万人が死なず、病まず、誰もが不幸に見舞われぬ世界であれば!


 思想の違いだ! 我ら王国は、一人で厄災を左右する聖女に媚びぬ! 人の法を無視した裁きを与える邪神を認めない!


 『聖女の為だけにあるような世界』など、神ごと滅ぼしてくれるッ!」



 王子は、聖女を討つ為に馬を駆った。


 聖女の隣にはおそらく他国の王子がナイトのように守りについていた。


 ……他国へ渡り、愛を知った聖女。

 それがただの女であれば祝福しただろう。


 王国に戻ろうとせず、他国で幸せに暮らしていたならば。


 だが。

 それが聖女というだけで、なんとおぞましくなるものか。


 善意なのだ。優しさや正義なのだ。

 彼女の振る舞いは。


 だが認められない。


 これほど明らかに聖女の追放を起点として厄災が起きているのだ。

 神は居る。天の意思はある。


 では我ら人間は未来永劫、聖女に媚びて生きていくのか?


 聖女ではないだけの人間が、病に罹り、不慮の事故で死ぬ中で。


 否だ。


 神による不平等を我々は望まない。

 人による公平こそを築き上げるべきだ。


 神の愛し子だから幸福を約束され、その邪魔をすれば国が災厄に見舞われる。


 そんな存在はいなくていい。



「魔女セイラよ! 愛する者が出来たなら、なおのこと引き返せ! お前が進もうとするから我らはお前を殺すしかなくなる! 神の加護など王国に持ち込むな!」


「引けません! 私は故郷の民を救うんです! 私達の邪魔をするのなら……」


 ……言葉では引きそうにない。

 分かり合う余地はなかった。


 戦いを終わらせるのは、王子や聖女といった選ばれた者である必要はない。


 技術とは誰でも努力すれば使える物。


「死ねっ!」


 だから誰でもない、ただの技術者の『俺』は聖女に爆弾を投げた。


「えっ」


 王子の鎧に施された魔法効果が爆発の威力を相殺する。


 人間を1人2人吹き飛ばす程度の威力の爆弾が、見事に標的に命中した。


「あ、が……」


 聖女を守っていた王子らしき男は即死し、聖女にも致命傷を負わせた。


「……どう、して……。アレク殿下……」


「……引き返せと言ったのに。別の国で幸せに生きていれば良かったのだ。この国を出る者も止めなかった。なぜ舞い戻ってきたのだ」


 王子は死に行く聖女を無表情で見つめるのみだった。


「勝敗は決した! この戦いは我々の勝利だ! ……死者には礼を尽くそう。皆、只人として弔うがいい!」




 かくして聖女は死んだ。

 王国はこれからも苦難の道が続くだろう。


 だが人ならざる者の意思に屈する事はない。

 必ずや天災を克服し、人の技術によって繁栄していく。


 多くの犠牲を払いながらも。


 これからの王国がどうなるかは……我々、人間の努力次第である。


聖女1人の影響で、天変地異起きるタイプの世界

普通にイヤじゃない?

というアレ

むしゃくしゃして書いた。


※追記

書きなぐった作品。色々とツッコミが溢れた。

じゃあ、改稿するか?

となると「うーん。それは微妙……」と思い、このまま放置している。


やるならば同じネタで違う作品か。

同じテーマで細部を煮詰めてリメイクか。


今の実力なら出来ない事もない気はするけれど、それはそれとして、このままで作品は放置する。

この作品の作者目線での良いところは

胸糞や、穴だらけの作品の方が、読者は感想が書き易いんだな、という点。


別の形で救済したいな、と最近は思っているので構想中。

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