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06 出会い

――そうだ。俺はあの時、突然殴られて……意識を失ったんだ。

でも、何故あの子の父親が……?

頭を抱えていると、後ろから小さく声がした。



「やぁ」

振り向くと、そこには眼鏡をかけ、白衣を着た小柄な……あれ、少年?少女?どっちだ、あれ――ともかく、人がいた。

彼(彼女?)はけらけらと笑いながら、砕けた口調で俺に言う。


「君も嗅ぎまわって捕まったクチ?物好きだねぇ、ま、僕もだけどさ」

「……あなたは?」

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕はキュリオ。キュリオ博士、って呼んでくれてもいいよ♪」

「博士?」


まぁ白衣を着てるから、そういうものなんだろうけど――この人、どう見ても小学生……よくて中学生ぐらいにしか見えないぞ。

と、俺が疑いの目を向けていると――


「あー、今僕が嘘ついてるって思ったでしょ!これでも18だよ、僕は!」

「18ぃ!?」

ふんす、と鼻を鳴らしてふんぞり返るキュリオ……さん。どうやら、だいぶ癖の強い人らしい。

まぁ、今はそんなことはさておき。この状況を何とか打開しないといけない。

俺が一人、頭を抱えていると――


「なんですかもう!突っつかないでくださいよ!?」

俺の脇腹を、キュリオさんが執拗に突いてくるのだ。

あまりに鬱陶しくなってキレ気味に振り向くと、なんと――


「コレ、なーんだ?」

「あ゛ぁ!俺のスマホっ!」

その手には、俺のスマートフォンが握られていた。


「へー、スマホって言うんだ、コレ」

「返してください!ってか何で持ってるんですか!?」


俺の疑問はもっともだ。捕まった時、没収されていて当然のはずだが――


「へへ、ちょっと、ね♪」

そう言って、手をワキワキとさせるキュリオさん。

どうやら性格に癖があるだけでなく――手癖も悪いようだ。

けれどスマホを取り戻せたなら話は早い。マリスに頼んで牢の鍵を作ってもらえば万事OKだ。


「お願いします!返してください!この通り!」

俺は手を合わせ、正座の姿勢で深々と頭を下げる。

それを見たキュリオさんは何とまぁ面白そうに鼻歌を交えながら、「どうしよっかなぁ~」なんて言っている。

「そこを何とか!」

さらに深く頭を下げる俺。もはや土下座だ。


「ほい」

根負けしたのか、それとも飽きたのか――おそらく後者だろうけど――あっさり、スマホを返してくれた。

俺はそれを受け取り、ひとまず安堵する。


「その代わり、一つお願いがあるんだけど」

「……なんですか」

瞳をキラキラと輝かせながら、迫るキュリオさん。近い。近いよ。

そして口を開き、言った。


「それのデータ取らせて♪」


こうして、小声での取引は(ほぼ一方的に)成立した――



それから――幾度目かの見張り番の交代を見届け、はや数時間が経っただろうか。目の前の男は、時折うつらうつらと首を下げている。

今は深夜か早朝か――ともかく、今がチャンスだ。

俺は小さくスマホへ語り掛ける。


「ヘイ、マリス。《生成》を発動」

『かしこまりました』

俺に合わせてくれたのか、音声を出さずに文字だけで返事してくれた。気の利く人工知能だ――と感心しているうち、鍵ができた。俺はそれを手に取り、再び男のほうを向く。


「へー、なるほど。魔力に反応して分子構造を変化、分裂させるって話は聞いてたけど、ああいう感じか……待てよ、ならあれを応用すれば考えてた新兵装のプランが……」


……キュリオさんが何かブツブツ言ってるが、この際気にしないことにする。



「zzz……」

いびきをかいて、男は完全に落ちていた。俺たちはよし、と互いに頷きあい――


鍵を開け、脱出した。ついでに男は《生成》で作ったロープと鎖でぐるぐる巻きにしておいた。しばらく追って来れないだろう。

俺たちは牢屋を出て、先の様子をうかがいつつ、まずは階段を上ることにした――



「それで?」

「は、はい。確かに取り上げたはずだったのですが……」


とある狭い一室。そこでは男がカーテンの前で気をつけの姿勢で立ち、大量の汗を流していた。

それはケイトを路地裏へと誘いだしたあの男であった。

何故、彼がこんなにも怯えた様子でいるのか?それは――


「あのガキが持っている魔法具に、メタモナイトが取り込まれているのはわかっているんだ!私はそれを奪って来いと言ったはず!」

「ははっ!申し訳ございません!」


カーテン越しに聞こえる怒号に、ただ謝ることしかできない男。それを見たカーテン越しの何者かは――


「使えん奴だ……死ね」

紅い光を放つと同時に、そう言い放った。すると――


「はい……ボスの御心のままに……」

男の眼もまた血のような赤色に染まり、ナイフを引き抜くと――自刃した。


「フン……片付けておけよ、そのゴミクズを」

「ははっ」


カーテン越しの存在はそうとだけ言うと、一人嗤う。


「『こちら側』の人間とはいえ、ただのガキには過ぎたおもちゃだ……メタモナイトは、俺のような人間が持ってこそ意味がある……フフフ、ハハハハ……」


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