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黒雲の剱 =転生の楔=  作者: サッソウ
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第24章 Case3:転生したら……神様に拾われし魔術剣士の異世界

「惨敗が理由か?」

 闘志の神は、花に柄杓で水を与える友愛の神に問いただす。この異世界の神様は、神だけの空間で暮らしているそうだ。

「他の異国が全員手を挙げなくなった。獣人の世界が滅亡する前は、挙って呼び込んでいたのに」

「彼らの魂を招けば、もれなく余計なおまけがついてくるため、他の魂を選択する。自分の世界を守るならば、ハイリスクローリターンだから、そう判断するでしょうね」

「魔術剣士世界に、彼らを招く。そして、それ相当のギフトを与える。獣人世界の神は、彼らを招いて力を与えなかった。それが敗因だと思うが」

「結果論。ではなくて?」

「彼らを招けば、魔術王者に一矢報いることはできないか?」

「あれも、あなたが招いた魂では?」

「獣魔王を斃すために招いたが、その後について少々勘が当たらなかったようだ。彼奴にこの世界を好き勝手されては腹が立つ」

「神の怒りを買う転生者。あなたが責任を取るなら、私は構わないですよ。あとは、技能の神が反対するかどうか」

「後から説明すれば良い。招くぞ、彼ら3人の魂をこの世界に、転生者として」

 闘志の神は、力を用いて暗い世界の狭間を漂う3人の魂を呼び込む。すると、余計な別の魂が近寄ってくる。

「転移者として、やはりおまけも来たか……」

 3人の魂とは、カノムとヤイバ、ハガネの3人だ。おまけは、ディフォルミスである。異世界の神々により、3人の能力を高く評価して、自分達の世界に蔓延る邪悪を根絶してほしいと、大人気だった。しかし、転生するごとにその評価は辛辣になり、ついには惨敗して呼び込んだ神様とともに1つの異世界が消滅した。

 つまり、ディフォルミスという悪魔が付き纏うことで、繰り返し転生することも難しくなったのだ。唯一、闘志の神はそんな状況下で、手を挙げた。他の異世界の神々からは「やめておけ」と言われても、自分の判断を信じて貫く。

 彼らにとって、最後の転生となってしまうかどうかが、ここで決まるのだ。もしまた敗北すれば、このまま……


    *


 洋風の建造物。煉瓦(れんが)造りの校舎は、魔術剣士世界において、地位の高い者や能力の高い者が通う名門校”トーダイ”である。名前からして、転生者が某大学にインスパイアされて付けた名前ではないだろうか。元日本人なら、察しが付く。

「ルーキーランクは、校庭に集合!」

 グカーチャ教諭は、教室にいる生徒に次の授業場所を伝えて、廊下に出る。ランク表記だが、学年に相当する。つまり1年生だ。昨日、入学式があり19名が入学した。年齢は11歳。小学5~6年生といったところか。

 クルシャは、まだ座っている2人のクラスメイトのもとに近づき

「ほら、行くぞ」

「そんなに急がなくても」

 シュームはゆっくりと準備をして、席を立つ。ユージョマは溜め息をついて

「悠長だな。次は無いんだぞ」

 と、緊張感のない2人に呆れているようだ。

「だからこそ、このカリキュラムを受けるべきだと思う。強くなるために、吸収できるものは全て」

 廊下に出ていたクラスメイトの女子が3人に気づき

「早く行かないの?」

 と、声をかけてきた。「今向かうよ。ありがとう」と、シュームは返事をした。クルシャは平和な光景に

「まるで中学のときみたいだな。年齢的には、小学校か」

 3人は転生者。シュームは黑柄(くろつか) (けん)(カノム)であり、クルシャは一条(いちじょう) (やいば)(ジョーム)、ユージョマは(はがね) 修司(しゅうじ)(ディフェン)の魂である。それぞれ、この世界の少年に転生して目を覚ました。ハガネの持つ能力、魂電話により早々に情報共有して、翌日の入学式を迎えた。

 入学式では校長の挨拶、祝辞など、日本にいたころの学校と同じような流れ。どこも同じようになるのか、それとも転生者により強く影響を受けているのか……。そんななか、見慣れぬ”宣告”の時間があった。式典進行のガゼ教諭は

「新入学生に対して、これより宣告を行います。宣告は人生で1度のみ受けられ、今後の人生が大きく左右されます。本校では、他校と異なり卒業生である勇者アルトネートの魔術により高い魔素で極限まで引き上げます」

 どうやら入学式に学園ごとに”宣告”というものを行うらしい。ということは、どこの学園に進むかで開花する能力に差が出ると言うことか。

 壇上には、勇者のアルトネートが現れて魔術を唱える。新入学生の足元には大きな魔法陣がいくつも重なって現れる。すると、どこか別の空間に出た。

「ここは……」

 シュームが周囲を見渡すと、長閑な牧場に一軒の家。

「宣告って、スキルを与えるって認識でいいのか?」

 ユージョマは自分の腰に手を当てると、黒雲の剱がそこにある。転生したら最初に与えられるスキル。すべての世界にあるシステムではないし、呼び方が異世界によって異なる。

「あれだけ新入学生がいて、3人だけか」

 クルシャは、他に生徒がいないことに気付いた。周囲を見渡していると、一軒の家の扉が開き、年配の男性が出てきた。神様と言われれば、そう見える。

「魔術剣士世界へようこそ。我は闘志の神であり、君たちを招いた者である」

 「闘志の神?」「招いた……?」と、シュームとクルシャが同時に、別々のことを反復した。

「さて、君たちに”宣告”を行う前に、文字通りの()()を行う。君たちに次は無いぞ」

「神様。それはどういう意味でしょうか?」

 問いかけはシュームに一任することにした。

「君らは、様々な世界の神に人気だった。時の人と言うべきか。人気者には、自分の管轄である世界の改善や救って欲しいと考え、何度も転生することがある。しかし、獣人世界での惨敗を見た神々は、君たちから手を引いた。唯一、我が手を挙げた」

 惨敗のことを触れられ、3人は何も言えない。

「おそらくどんな結果になろうと、もう転生は無いと思った方が良い。なにせ、凶悪なおまけが転移してくるからな」

「ディフォルミスはもしや、この世界に」

「来る。しかし、来ると分かっていれば対策は可能。それでも時間稼ぎに過ぎないが。おそらく想定より早く、卒業式前後に来る。それまでに、3人には魔術王者に、魔剣術の1つで勝てるぐらいになれば良い。分かりやすかろう」

「神様が直に」

 シュームが質問を言い切る前に、闘志の神は首を横に振って

「神は世界を管轄しているが、直接手を下してはならない掟がある。もし、その掟を破れば世界と神の両方が消滅すると言われている。過去に、それをわざと謀って、心中しようとした神もおったと聞くが……」

 闘志の神はそこまで語ると咳払いをして、「少し余計なことも喋りすぎた」と言い、本題に戻る。

「学園内には祭室がある。その祭壇に魔法をかけることで、君たちのみこの世界に来ることが出来る。何かあれば、頼ると良い。さて、”宣告”を行う。称号”闘志の神の使徒”とともに、最大値や限界値を凌駕する、極限値のステータスを与える。スタートラインの時点で、一般の者が生涯到達できぬほどのステータスである。取り扱いには気をつけるように」

 極限値のステータスを得た3人は、卒業までにディフォルミスを斃すため、レベルアップとスキル習得の学園生活が始まるのだろう。


To be continued…


【登場キャラ】


・クルシャ。一条(いちじょう) (やいば)が転生。ジョーム・ファルトの記憶が混ざっている。

・シューム。黑柄(くろつか) (けん)が転生。ディフェン・ドラグリンの記憶が混ざっている。

・ユージョマ。(はがね) 修司(しゅうじ)が転生。ディフェン・ドラグリンの記憶が混ざっている。

・闘志の神。魔術剣士世界を管轄する神様の1柱。

・友愛の神。魔術剣士世界を管轄する神様の1柱。

・グカーチャ。ルーキークラスの担任教諭。

・アルトネート。勇者。


「第24章」に関して


 第三部開始。ここから楽しい学園生活が始まるかどうかは、話数と相談ですかね。悠長に過ごすわけにもいかないので、卒業までの3年間を駆け足でいく予定です。

 というか獣人世界で惨敗して、異世界が一つ消滅したあとに、楽しい学園生活が送れるのだろうか……

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