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六話 祭りだ!デートだ!戦いだぁっ!

@悟視点@


「祭りだ!デートだ!戦いだぁっ!」


「いや、祭りで何と戦うんだ?あと、デートじゃないから」


祭りだと大騒ぎしているのは、姫笹。俺の妹の内の一人である。


ちなみに今の季節は見事に冬である。この季節に祭りをする人は、特星内の全学校を仕切っている校長以外に居ない。気紛れでやっているのだろうが、毎年、結構な人が集まるぞ。


他の三人の妹の内、二人は寒いからコタツに引きこもっている。そのまま大人になって働かないとか言い出したらニート決定である。

三人のうちの一人は言うまでもなく、絶賛行方不明中だ。雪山で遭難とかしている可能性が冗談抜きであり得る。

姫笹だけは元気に祭り参加の意思を見せている。元々、俺は一人で行くつもりだったので、ついでに連れていくことにした。


そうそう、姫笹の特殊能力は氷を操る能力で、同じ能力を持つ雨双の所に特訓に行くときがあるようだ。だが、その度に変態に気をつけろと言わなくてはならない。

ちなみに別の大陸なのに雨双の所へ行ける理由は、校長の波動によって一瞬で行き帰りができるからだ。


「よし、準備完了!早く行こう、お兄ちゃん!」


「あぁ」


お兄ちゃんと呼ばれる事にはまだ慣れてない。だが、気分的には結構嬉しい。普通に純粋な意味での嬉しさだ。






〜特星大祭り会場〜


校長に頼んで別の島に送ってもらった俺達は、祭り会場に到着した。その際に校長に一兆八千億の借金の事を言われたが、流石にまだ返済は無理なので断った。


「島でやってるとは知らなかったな」


「島としては小さいけど、祭りをやるには大きいね」


姫笹の言うとおり、島自体は他より小さい。だが、島全体が祭り会場らしい。


「あ、おーい!」


屋台の店から声が聞こえる。


「お前は非常食じゃないか」


「千華魚よ!って、そっちの子は?もしかして、拉致してきたの?」


「何でそうなる!?俺の妹だ!」


「そうなの?兄に似ないで可愛いね」


兄が可愛かったら相当気持ち悪いぞ。


「ところで、金魚すくいでもやらない?」


「同じ魚に売られるとは、此処の金魚は救いようがないな」


「おっ、上手い事言うね、お兄ちゃん」


「現在は立派な人間よ!寿命は人間以上だけどね」


そういえば、どうやって人間になれたんだ?


「お兄ちゃん、金魚すくいをやって良い?」


そんな心配そうな目で見られたら、駄目と言えなくなる。


「別に良いぞ。一回何セルだ?」


「本当は百セルだけど、特別サービスで半額で良いよ」


お、結構気が利くな。


「でも、看板に五十セルって書いてあるから、元々の値段が五十セルじゃないの?」


「って、しまった!」


なるほど、普通よりも安いと思わせる作戦か。


「そうか。なら、半額の二十五セルで良いな?」


「ちょっと待って!その看板は前の金魚すくいの店のなの!」


明らかに嘘だ。だが、普通は百セル以上が金魚すくいの相場だし、五十セルで別に良いか。


「なら、千セルだ」


「毎度あり。金魚すくいの網を五十本ね」


水槽の中の金魚はかなり多い。


妹が金魚すくいをやってる間は千華魚と話をする。


「ところで、どうやって魚から人間になったんだ?」


「人間に捕獲されかけたところを魅異って人に助けてもらって、そのついでに人間にしてもらったの。魅異は擬人化のほうが目的だったみたいだけどね」


魅異が原因か。しかし、何の目的で擬人化をしてるんだ?


「恐らく、他の生き物を擬人化させたのも魅異よ」


「だろうな。ってか、この会話も聞かれてるだろうし」


本気でもう少し人間らしくなればなぁ。


〔そうすれば魅異は俺の嫁になるのに〕


いきなり出てくるな、ボケ役。


〔魅異は俺の嫁だ!〕


分かった分かった。お前以外に魅異を狙う馬鹿は居ないから、お前の嫁で決定で良い。


〔当然だな。じゃ、また今度〕


何で現れたんだ?出番が少なくて現れたか、魅異は嫁宣言をやりたくて現れたかだな。まぁ、恐らく後者だろう。


「そういえば、金魚はどうやって集めたんだ?」


「他の屋台の金魚にばれないように交渉して、網ですくうフリをして金魚入れに入ってもらったの」


「酷いな、オイ」


じゃあ、金魚の仕入れは最初の金魚代だけか。って、よく金魚も冬まで無事だったな。俺が育てた時は一週間で全滅だったぞ。


「って、魚としての能力は残ってるのか?」


「うん。エラ呼吸はできないけど、水中や宇宙で息ができるよ」


魚って宇宙で息できたか?


「うぅー」


「あれ、姫笹、どうした?」


姫笹がしゃがんで落ち込んでいる。横には破れた網が積んである。


「一匹も取れなかった」


「そ、そうなのか?」


まさか網が食物繊維で出来てたとか?


「俺もやってみるか。千華魚、網をくれ」


「五十セル」


「抜け目ないな」






で、とりあえず挑戦したら七匹取れた。おぉ、俺の中では過去で最高記録だ。


「網自体は普通みたいだな」


「当然よ。網もさっき話した金魚屋からおまけで貰ったんだから」


それなら姫笹の実力不足か。


「凄いね、お兄ちゃん!」


「まぁ、俺はこういう事は得意だからな!」


ちなみに過去の最高記録は二匹だ。


「とりあえず、この七匹は家で飼おう。もしかしたら擬人化するかもしれないし」






「あ、雨双ちゃんだ!おーい!」


カキ氷店に雨双が居るのを姫笹が発見して走っていく。って、変態に気をつけろ!


「ん?あー、姫笹と悟か」


「姫笹さん発見ですよぉっ!」


ほら、雑魚ベーが飛び出してきた。


「わわっ!氷技、流氷の滝!」


姫笹が雑魚ベーの上に滝のように見える量の氷を降らす。雑魚ベーは氷の重さと衝撃で、地面の中に氷と共に埋まっている。


「雑魚ベーの事は非常に残念だけど、ご冥福を祈るんだってば」


「あ、アミュリーちゃんも居たんだ」


奥からアミュリーが現れ、埋まった雑魚ベーに祈りを奉げる。でも、天国や地獄に少女が居たら、間違いなく雑魚ベーは追い出されるだろう。


「ありがとうございますねぇ、アミュリーさん!」


「しつこい。特技、アイススイート」


氷の中からアミュリーに向かって雑魚ベーが飛び出すが、雨双の巨大冷凍光線により、雑魚ベーは何処かへ吹き飛ばされる。


「姫笹、さっきの反射神経は良かったが、もう少し強力な技で仕留めないとタフな奴は気絶しないぞ」


「なるほど!でも、私は雨双ちゃんのアイススイートみたいな技は使えないよ」


「それなら特訓して覚えれば良い。人が使ってる技より、自分に合った自己流の技の方が使いやすいからな。そうだな、少し練習してくるか。アミュリーに悟、悪いが店番を頼む」


店番を頼んで二人は何処かへ行く。


「カキ氷でも食べるんだっけ?」


「お、食べたい!味は何味がある?」


「特にないんだってば」


よく見ると、味なしカキ氷と小さな文字で書いてある。


「いや、売れないだろ」


「他にカキ氷店がないから、そうでもないんだってば」


「って、何で祭りには必需品のカキ氷店が一件なんだ?」


味なしカキ氷も結構美味かった。


「この会場に他の氷を使える特殊能力者が居ないからだってば」


雨双と姫笹以外に居ないのか?


「だが、後で来る可能性があるんじゃないか?」


「それはないんだってば。重要関係者で他に氷を操る能力の人は居ないんだってば」


重要関係者?


「もしかして、祭りに来れる人は決まってたのか?」


「そうだってば」


あー、その事は気付かなかったな。祭りの割には人と店がそこまで多くない事は気になってたけどな。


「例えるならば交流会だってば」


「何でわざわざ祭りだとカモフラージュしてるんだか。ってか、何でアミュリーが知ってる?」


「職業上の何とかだってば」


職業上の都合で情報が入るのか。


「はぁはぁ、おーい、都合の良いタイミングで練習は終わったぞ」


「あぁ、楽しかったー」


いろいろと自覚した言い方の雨双と元気な様子の姫笹が戻ってくる。って、雨双がだいぶ疲れてるみたいなんだが。


「おかえりだってば」


「何をやってたんだ?」


「まず、基礎体力作りの為に寺を三周程走って、海岸で海に対しての技の練習をしてたんだ。ってか、教える側の私の方が疲れた。主に帰りの全力ダッシュが!」


海岸で技の練習をするなら、走るのも海岸ですれば良かったんじゃないか?


ってか、カキ氷を食べてる間にそんなに出来たのか。


「雨双ちゃんは運動苦手なんだね。私は小学校の運動会では毎回一位だったよ」


「私は特星中を歩き回った事はあるが、走った事はあまりないんだ」


「なら、私が技を習いに行ったときは一緒に走ろうね!あと、アミュリーちゃんも!」


「えぇー、勘弁してくれ」


「同じくだってば」


三人だけで話が進んでいる為、話に入り込めない。


「失礼」


「ん?あぁ、どうぞ」


通行人が居たので俺は横に退く。あれ、何処かで見た事があるような気がするな。


えーと、確かスーパーで大量の品物を持ってたな。


「あー、あの時の泥棒か!」


「あら、私の事を知ってるの?なら、長居は無用ね」


って、俺の財布が無くなってるし!泥棒からスリに転職したのか?


「ってか、逃げるな!そして財布を返せぇっ!」


「両方却下よ!」


以外に足の速い泥棒。それに対して、俺は疲れて速さが落ちてる。


「って、もう姿が見えないし」


「誰のですか?」


聞き覚えのある声が聞こえたので横に振り向く。


「羽双!」


「何ですか?あと、唾が飛ぶのでゆっくり喋ってください」


三色団子を食べてる羽双だった。


「実は財布を取られたんだ!だから、取り返すのを手伝ってくれ!」


「面倒なので嫌です」


やっぱり無理か。


「そんな事言わずに手伝ってくれよ〜」


「暑苦しいし、和服がずれるから纏わりつかないで下さい。殴りますよ?」


「スミマセン」


前に羽双に殴られた事があるが、痛すぎて気絶した程だ。全力だったら、特星でも骨が砕けるぞ。ってか、星を割る事が出来るんだったな。


魅異の一番弟子だからって、極端に強いのはおかしいと思う。


「なら、見かけたら時間を止めてやってくれ!姿は覚えてないが、二十歳くらいの女性だ」


「あの人ですか?」


「え?」


よく見たら、こっちに向かってさっきの泥棒が走ってきた。


「って、追いつかれた!?」


「あー、祭り会場を走り回ってたから、迷って戻ってきたのか」


「あぁ、貴方ですか」


あれ、知り合いか、羽双?


「って、貴方は私の時間を止めた奴!ついに現れたのね」


「会った事あるのか?」


「えぇ、勇者社に行った時に通行の邪魔だったので」


「あの日から三日三晩も動けなかったわ。そして、飲食店の割引券が期限切れで使えなかったのよ」


話は俺に関係ないから気にしないでおく。


胸は普通くらいで、将来的にもこれ以上になる事はないな。だが、几骨さんよりは大きめだな。使い道は少ないがこの主人公の能力は便利だ。


「あら、そっちの人からネタ的な危険性が出てるわ」


「って、俺?」


俺の能力に気付いたのか?いや、この能力に気付ける者は少ないはず!


「とにかく、割引券の恨みは此処で晴らす!」


「その前に財布を返せ!」


「ふっ、世界中の物は全て私の物よ!」


うわー、なんて奴だ。


「さて、覚悟しなさい」


[グサァッ!]


「痛っ!」


なんの前触れもなく、羽双が爪楊枝を相手に投げつける。


「とりあえず、名乗る時間だけは与えてあげますよ、まったく」


凄く嫌そうに羽双が相手に名乗る時間を与える。


「私はセーナ」


[ドガアアアアアッ!!]


相手が名前を言った瞬間に羽双の蹴りが直撃する。本気ではないだろうが、それでもセーナは近くの人の居ない屋台を突き抜けて、森の近くに突っ込んだ。


「容赦ないなぁ」


「かなり手加減しましたよ」


それだけ言って、羽双は何処かへ行ってしまった。


「さて、財布を取り返さないとな」


気絶しているセーナから財布を取り返す。


「お、お兄ちゃん?」


その時に後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「あ、姫笹」


あー、そういえば途中から忘れてたな。


見たところ、さっき此処に到着した様である。


これは確実に勘違いを招くパターンだと、俺の主人公の勘が教えてくれる。


「お兄ちゃんが女の人を眠らせて、胸を覗いた挙句に財布を奪ってるよぉっ!」


「だああああっ、誤解だ姫笹!ってか、胸は覗いてないから!」






姫笹が大声で祭り会場を走り回って三十分。俺は祭りの参加者の一部の者によってテープで縛られていた。


「ってか、何故にテープ?縄とかで縛れば良いだろ」


「悟さんは縄で縛られる方が嬉しいですか?」


現在は祭りに遅れてきた、魑魅によって事情聴取中である。


ってか、その質問はいろいろと誤解を招きそうだ。むしろ誤解を招かせるための質問だろ。


「テープは粘着質があるから縄の方がマシだと思うが、どっちにしても縛られて嬉しい事はないな」


「まぁ、人の胸を覗く時が一番嬉しい悟さんですからね」


「だから誤解だって!」


いつもは見方の魑魅だが、敵に回すと手強い。


ってか、なんで今回は俺の意見を信じないんだ?


「ですが、今回の問題は目撃者が居るんですよ。姫笹さん、目撃当時の事を話してください」


「うん。私が雨双ちゃんとアミュリーちゃんと話してる間に、お兄ちゃんが居なくなってたんだよ。しばらく話してからその事に気付いて、私はお兄ちゃんを探してたの。そして、凄い音がしたから音の方に向かったら、お兄ちゃんが女の人からお金を奪ってたんだよ」


「という訳で、悟さんの犯行は目撃されてたんです」


というか、目撃された事は知ってるし。


「って、胸の事は言ってなかったぞ!」


「私にはお兄ちゃんが胸を覗いてる様にも見えた」


姫笹、それは見間違えだ。


「さて、今からは皆さんに判決を出してもらいます。ちなみに財布は悟さんのでしたが、胸を覗いた事を重点的に意見を出してください」


結局、それが中心かよ!


「私は許すべきだと思うぞ。悟は雑魚ベーと同類だから仕方がない」


「よく分からないけど、許すべきだってばー」


雨双とアミュリーが許すべきだと主張する。


雑魚ベーと同類というのが気に触るが、許す側の主張なので文句は言わない。


「看板の秘密を見抜いたから罰を与えるべきよ!」


「私は借金を返してもらえませんでしたので、罰を与えるべきだと思います」


千華魚と校長が罰を与えるべきだと主張する。


どっちも私情で決めてるじゃないか!


次は雑魚ベーの番だが、相手が少女ではないから許すべきだと主張するだろう。それによって俺は許されるはず!


「少女以外の胸に興味を持つのは論外ですねぇ。罰を与えた方が良いと思いますよぉっ!」


って、論外はお前だぁっ!


「多数決により罰を与えるで決定です。…と、言いたいところですが、私は悟さんを信じています。だから罰を与えない方が良いと思う派です!」


それなら、最初からテープで縛るな。


「意見は半分ずつなので、私と寺に肝試しに行くという事で決定です!」


「何故そうなる!?」


「嫌なら縄で縛って罰を与えます」


選択権を与える気はないのか?


「どうでも良いが、冬に肝試しは合わないだろ?」


「どうでも良いなら問題ありません!」






〜幽霊住居の記紀弥寺〜


月が見事な夜、俺と魑魅は一つの寺の前に居た。


「おー、噂通りの大きな寺ですね!」


「名前はあるのか?」


「正式な名前は無いらしいですが、住んでる人の名前から記紀弥寺と呼ばれてるらしいですよ。他にも、勇者社の西にあるから西の寺とも言われてるそうです」


この島にも勇者社はあったのか。


「幽霊住居があだ名ですし、本物の幽霊が出ると思いますよ」


本物の幽霊なら前回の事件の時に見た気がする。


「………お客さん?」


「って、ひえぇっ!本当に幽霊が出ましたよ、悟さん!」


「落ち着け。どう見ても普通の人だろ」


寺の中から出て来たのは、ほんわかオーラが出ている少女。少女が特星で平和ボケしているのは危険だぞ。


「……誰ですか?ちなみに今は閉店時間ですけど」


「寺に閉店時間という言い方は合いませんけどね」


「………女の人の方は能力的な強さを秘めているんですね。男の人の方はいざという時にどうにかする、もしくはその後になんとかなる事が自動で起こるようです」


急に何を言い出すんだ?


「……女の人の強さは分かりませんが、男の人の方は極めてアニメや漫画の主人公に近い体質があります。この事を知っているだけで私の有利度は高くなるんですよ」


「主人公に近いのは当然。何故なら、俺は本物の主人公だからだあぁっ!」


目の前の少女に指を向けて大声で宣言する。


「おー、悟さんの嬉しいメーターが増えてますね」


魑魅が言うとおり、俺の嬉しさメーターは上限を突き通す勢いで上昇中だ!


「…………なら、主人公には必要な決め言葉や口癖や名言はありますか?」


「そんな事は答えるまでもないな」


「確かありませんよね」


少女の質問を曖昧な回答で流そうとするが、魑魅が真実を告げる。


あぁ、そうだよ。


俺には決め言葉や口癖や名言なんか無いんだよ!


「……大丈夫ですよ。大した特徴はありませんが、貴方の質には合わない大きな事件に巻き込まれる素質はあるみたいですから」


フォローにも聞こえるが、良く聞いてみると馬鹿にしているように聞こえる。


「私は少なくとも、誰かを命がけで守る状況は起きないと思います。悟さんより強い女子は多いですから」


落ち込んでる所に魑魅の現実的な発言。


俺を鬱の底に叩き落したいのか?


「………とにかく、中には入らせません。強制突破をする場合は戦闘で止めます」


相手はできれば戦いたくないようだ。


「ってか、良く考えたら、俺って恋愛フラグとかはあっても、イベントが無いないんだよなぁ」


「とりあえず、寺の中に侵入しましょう!善技、正しき事への導きです!」


落ち込む俺を無視して、魑魅は相手に攻撃をする。


「……有利、運良き状況」


相手が技名を言うと、急に風が吹き始めて魑魅の攻撃が外れる。そして寺の壁に当たった攻撃は跳ね返り、魑魅の方に向かってくる。


「ひえっ!」


しかし、魑魅は跳ね返った攻撃を直前で回避する。流石に回避能力が高いだけの事はある。


そして攻撃は魑魅の少し後ろに居る俺に向かってくる。


「主人公の力を見せてやるぜ!主人公の特権、どれだけやられても生き残る身体!」


俺は避けずにその場に立っている。


「げほふぁっ!」


そして技が直撃した。


「うっ、な、何とか生き残ったぞ。こ、これで俺が主人公であることが証明されたな」


「あのー、特星では主人公以外の人も死なないんですけど」


「……自殺する程の悩みがあるなら、人生相談所に行ってみてはどうですか?」


何故だか自殺志願者と思われてるし。


「………私は戻りますが、出直すことを考えてくださいね。幽霊でも寝不足になる事がありますから」


少女は寺の中に入っていく。


って、さっき幽霊だと認めたよな!


「幽霊は気になるが、今は主人公を辞めたい」


「なら、雑魚ベーさんや校長に代理を頼みますか?」


「あぁ。………って、ふざけるなあああああぁっ!あの二人に頼んだらとんでもない事になるだろうが!」


例えば、物語の本筋が少女探しやお金探しになったりとか。


「嫌なら早く進みましょう。もしかしたら、私達の恋愛イベントがあるかもしれませんし!」


「それはない」






寺に侵入してからは慎重に行動をする俺達。理由は寺の中には本物の幽霊が寝ていたからだ。


「幽霊って早寝なんですね」


「そうらしいな」


現在の時刻は七時を過ぎたばかりだが、幽霊達は寝ているのだ。


幽霊らしく真夜中のみの活動なのか?


〔早寝ではなく、祭りで遊び疲れて寝ているだけだ〕


いきなり幽霊が現れたが、慣れたので驚かない。


幽霊は小学生ぐらいの女の子で、寺の入り口に居た少女と同い年くらいだろう。


「あ、幽霊だな」


「幽霊ですね。ほら、よしよし」


〔あっ!あー、以外に良い気分だ〕


魑魅が幽霊少女の頭を撫でる。


〔って、頭を撫でるな、頭を!〕


「なら、胸を撫でて良いですか?」


それは無理だろう。


〔断る。私の役目は侵入者の退治だ。さて、まずは目的を言ってもらおう〕


「特に無いぞ」


「デートです!」


俺の言った言葉を完全封殺して、魑魅は大嘘を言う。


〔で、デート?〕


「そうです!私達は他人の敷地に問答無用で上がりこみ、そこでデートをして帰るんです!」


なんて迷惑で嫌味な行為なんだ!


〔迷惑すぎる〕


「まったくだ」


幽霊少女の意見に同意する。


〔そうそう、私は千宮せんぐう 神酒みきだ」


「俺は完璧なツッコミ役の主人公、雷之 悟だ」


「さっきも言いましたが、悟さんとデートをしている神離 魑魅です。という訳で、邪魔するなら服を脱がせます!」


「どういう脅しだよ!」


魑魅の事だから本当にやるつもりだろう。


〔無理だ。普通の人間は幽霊に触れない〕


いやいや、頭撫でられてただろ!


「なら、遠慮しませんよ。正義、裸こそが正義」


超高速の光の球を撃つ魑魅。


ってか、嫌な正義だな、オイ!


〔変動、逆移動〕


[スパァッ!]


「って、きゃああぁっ!」


悲鳴を上げたのは魑魅の方だった。


光の球を神酒が跳ね返し、魑魅に当たったのだ。


〔私の能力は動きを変化させる能力だ〕


光の球の動きを逆にしたのか。


ちなみに後姿しか見えないが、魑魅の技は下着すらも破る事が出来たらしく、魑魅は素っ裸の状態である。


「ひ、人の服を破るなんて最低です、神酒さん!」


お前が言うな。


〔私は魑魅が撃った技を跳ね返しただけだ〕


神酒はもっともな意見を言う。


魑魅は胸を隠してしゃがみ込んで恥ずかしがってる。


〔大声で叫んだから、他の幽霊が来るかもしれないぞ。だから、今日のところは帰る事をオススメするぞ〕


そういって歩いていく神酒。


流石の魑魅も今日は諦めるしかないだろう。


「魑魅、今日のところは諦めるしかないだろ」


「正義、裸こそが正義です!」


[スパァッ!]


〔きゃあぁっ!何のマネだ!〕


「って、後ろ向くな!」


〔うぁっ!〕


神酒が後ろを振り向きそうだったので、忠告してやる。


危なく、いろいろと見えてしまうところだった。


ちなみに俺は冷静に説明しているが、内心とても嬉しかったりする。これぞサービスシーンの極みだ!


「いやぁ、私だけ裸なのもアレですから、つい仲間を増やそうと思って」


〔私は着替えを取ってくる!〕


そういって神酒は走って何処かへ向かう。


「あ、私の分も貸して下さい!」


魑魅もそれを追いかける。


〔……賑やかですね〕


「って、入り口に居た少女の幽霊!」


〔………私はいが 記紀弥ききやと言います〕


「俺は主人公の雷之 悟だ」


名前を名乗ってきたので名乗り返す。


〔……一つお願いがあるのですが〕


「何だ?」


〔………貴方の家の場所を教えてもらえますか?〕


いきなりだな、オイ。


〔そして、今度に神酒達と遊びに行って良いですか?〕


「別に構わないぞ。その時、家に居るかは分からないけどな」


〔……………ありがとうございます。私達は見ての通り幽霊なので、遊びに行ける場所が少ないんです。人間になってる間は問題ないんですけどね〕


人間になったり幽霊になったりできるのか。


〔……でも、一度会っただけなのに家に行って良いんですか?〕


「別に問題ないぞ。俺は大体の知り合いに一回会っただけで、家の場所を教えてるからな」


または、教えてもいないのに来る場合もあるな。


「ところで、此処の幽霊は夜に活動するのか?」


〔……基本的には人間と同じ時間帯の生活です。今回は祭りがあったから早寝なだけです。でも、一人だけ仕事のあるときに寝る幽霊もいます〕


それは見事な仕事放棄だな。


〔…………ところで、夕食は食べましたか?〕


「いや、まだ食べてない」


〔それなら、今日は此処で夕食を食べますか?〕


「良いのか?それなら是非食べたい!」






その後、記紀弥と神酒とバスタオルを巻いた魑魅と俺の四人で夕食を食べて、ついでに寺に泊まったのだった。


ちなみに魑魅がバスタオルを巻いてた理由は、寺には記紀弥と神酒の服しかなかったかららしい。他の幽霊はそれぞれ家から持ってきてるらしい。

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