四話 子供っぽい奴が強い世の中
@悟視点@
「あー、酷い目に合った」
「ご愁傷様だな」
意味を分かってその言葉を使ってるのか?タイミングは間違えでは無いと思うが。
「ところで妹達は?」
「あぁ、魑魅ちゃんと上に居たぞ」
どうでも良いけど、納がちゃん付けすると気持ち悪い。
「呼びましたか?」
魑魅が妹達と上の階から降りてくる。
「妹達に自己紹介をしてないから、簡単にしておこうと思ってな。俺は雷之 悟と言って、君らの兄らしいんだ。まぁ、よろしくな」
軽く自己紹介をする。妹達には理解できないだろうから、主人公という事は黙っておく。
「私は雷之 沙美沙です。よろしく、お願いします」
「私は雷之 姫笹っていうの。よろしくっ」
「私は雷之 純化だよ。よろしくね!」
なるほど、全員の性格は違うようだな。だが、仲が悪いわけではなさそうだ。
「名前は納が決めたのか?」
「いや、三人が入ってた箱に書いてあった。丁寧に読み仮名付きで」
細かい所には気を使う親だな。
「ちなみに本来は四つ子らしいが、生まれた日は全員が違うらしい」
「本来が四つ後の時点で既に驚きなのに、全員の誕生日が違うとはどういう事だね?」
「さぁ……詳細書に書いてあったから真実だと思うが」
詳細書?あぁ、宅配されてきたんだっけ。
「詳細書は悟の家に置いてあるぞ。妹達の入ってたダンボールの中に置きっぱなしだ」
「じゃあ取りに行くか。その前にメンバー構成をしないとな」
「何でだ?」
「俺の家には未成年に相応しくないゲームが、いくつも隠してあるからだ。ところで妹達は戦闘とか出来るのか?」
聞いてはみたが、三人は特星に行った事が無いから、ほとんど無いに等しいだろうな。戦えるなら戦えるで少しショックだけどな。
「かなり強いぞ」
「強いのかよ!」
衝撃の事実にショックで倒れそう!
「巻津川市は生徒の特星への移動を進めてるからな。包丁を持った強盗程度なら、怪我無く捕獲できるぞ」
「巻津川の学生は全員その位強いのか?」
「あぁ、高校生や大学生なら、その辺の特殊能力者より強いぞ。あー、お前達よりは弱いと思うから安心しろ」
ってか、妹達の学校も後で見たいな。
そんなことよりチーム分けだ。
俺は絶対に出かける側のメンバーだ。妹達三人は留守番をさせておくべきだろう。問題は魑魅を連れていくか、納を連れていくかだ。
魑魅を連れて行った場合は、いつも通りに事が進むから問題なし。納を連れて行った場合は、魑魅に戦闘力が劣るから、今までよりも苦戦する事になる。
「よし、納と俺で出発するぞ」
「今の思考で、何故その結果がでたんですか!?」
魑魅に思考部分の所にまでツッコミを入れられる。
「納の家が襲われた時に、納だと能力不足だからな。基本がアホだから」
「アホで悪かったな」
悪いと思うなら問答無用で謝れ。
「問答無用かよ!」
「思考読むなよ!」
「それはアレだ。アニメとかで空想にツッコミを入れるアレ」
「そんな高等技術を使えるのか」
俺もツッコミ役として負けてられないな。でも、どうやったら使えるんだよ。
「まぁ、そういう事で行ってくる」
〜悟の家〜
いやぁ、懐かしい。地球に住んでた頃に住んでた家だが、主に漫画とゲームが有るくらいだ。ちなみに俺は戦闘系より、平和な日常を描いた漫画の方が好きだ。ギャグ有りなら特に良し。
大体、人生は楽しさや笑いが有ってのものだろう?戦闘だけを描く漫画は、どうも好きになれない性分だ。まっ、好みなんて人それぞれな訳だが。
「鍵は持ってるだろうな?」
「あ、忘れた」
アホがぁっ!
「冗談だ!ちゃんと此処に有るって!」
「お前が言うと冗談に聞こえん」
鍵を開けて中に入ると壁があった。
「って、これは何だ!?」
「よく見ろ、ダンボールの箱だ」
ん?確かに触り心地はダンボールだな。じゃなくて、大きすぎるだろ!天井まで数十センチしかないんじゃないか?
「で、どうやってダンボールを超えるんだ?」
「引き出せば良いんじゃないか?」
ってか、数年前にはどうやって家を出た?
「というか、重っ!中に何か入ってるだろ!」
「おかしいな。中身は空のはずだが」
天井からダンボールの中に大量の鼠が落ちて、出られなくなって餓死したか?
「ダンボールに穴を開けて入るか?」
「そうだな。納、道具は?」
「言われてないのに、有るわけないだろ!」
そうだよねー。
「という冗談は置いといて。ほら道具」
持ってるのかよ!
「しかも爪切り!」
「それしかないんだ、我慢しろ」
とりあえず、爪切りで切り目をつけてそこから破って、ダンボールの中に入る。
「あ、こんにちは」
「あ、校長。こんにちはー。……って、校長!?」
「校長!?」
俺が驚いた後に納も驚く。
「どうかしましたか?」
「何で俺の家に?ってか、鍵は?」
「煙突から侵入しました」
この家の何処に煙突があるのか説明を要求する。
「悟の家には大した物は無いのに、どうしてこんな所に?」
大した物がなくて悪かったな。
「漫画を借りに来ただけですよ。あと、このダンボールも欲しいですけど」
「ダンボールは別に良いけど、その中に詳細書的な物とか有ったか?」
「えぇ、ありましたよ」
校長に詳細書的な紙を渡される。
「本当だ、名前が書いてある。…雷之 希求?」
「あー、希求は迷子になってる妹だ」
そういえば忘れてたな。
「やはり、あの四人は悟君の妹でしたか」
「校長、俺の家族構成の事で、何か知ってるのか!?」
「そのダンボールを配達したのは私ですから」
まさかの新事実!?
「校長は保育園児が入ってると、知ってたんですか?」
納が敬語で尋ねる。まぁ、相手が校長だから普通は当然か。
「えぇ」
「なら、どうして配達を続行したんです?」
「百倍の給料を出すと言われたので、ついつい。結局、給料を払う前に逃げられましたけどね」
おーい、誰かこのアホ校長を連れてってくれ。
「でも、依頼主の名前は分かりますよ。知り合いでしたから」
知り合いに給料泥棒されたのかよ。
「それなら、依頼者の名前と詳細を教えてくれないか?俺の親みたいだから」
「良いですよ。但し、条件があります」
やっぱり、こういう展開になるのか。シリアス展開でなければ良いんだが。
「百倍分の給料を払ってください」
シリアス展開の方がマシだぁっ!
「いくらだ?」
「一兆八千億円です。特別に一兆八千億セルでも構いませんが」
「待った、その計算では、通常の配達料金が百八十億円になるぞ」
「延滞料込みだから、この値段なんです」
それでも高すぎる気がするが。
「今は払えないから、特星に戻った後で良いか?」
「えぇ、構いませんよ」
納は話に入りこめないようで、勝手に漫画を読んでいる。
「まず、あの人達と初めて会ったのは、私が小学生の時でした。当時からダンボール生活のプロだった私は、新しいダンボールを探していました」
でた、校長のダンボール生活の伝説!
「当時は保育園の頃からバイトをしてましたが、食事代を稼ぐのが限度でしたね」
昔からこういう生活だったのか。
「ってか、親は?」
「世界規模の金持ちだったんですが、私を船渡県の山奥に隠して、札束滑り台で遊んでる最中に突っ込んで父親は死亡したそうです」
意味不明な死に方だな。ってか、何故に札束滑り台?
ちなみに船渡県とは、日本の県の一部だ。場所は詳しく覚えてないが。今、俺が居る場所も船渡県の巻津川市なんだ。
「ちなみに母親は財産を独り占めしようとして、数兆円を担いで逃げる最中に坂で転んで、火葬場に転がり落ちて焼死したらしいです」
って事は、財産は燃え尽きたのか。
「話を戻しますと、ダンボールを数万枚提供してくれたのが、悟君の父親だったんです」
数万枚も提供したのか。
「名前は雷之 皇神と言って、幸せながらも異常な生活を望む人でした」
要するに狂った異常者か。ってか、名前を考えた奴は出て来い。
「皇神君には同級生に彼女が居まして、当時は東員 天利と言う名前でした。この人は貴方の母親なんですが、やけに常識外れた人でしたね」
やっぱりな。四つ子なんて普通はないだろうし。
「私はダンボールの城を完成させました。そして、しばらくは普通に暮らしていたのですが、私が大学生の時に悟君が産まれたと、皇神君から連絡が入りました。その時、皇神君は高卒で会社を作ってました」
校長もだが、俺の父親も凄い人生だな。
「その数日後に二人が結婚して、その時に豪華な食事を食べました」
食事の事が一番印象に残ったのか?
「ってか、校長って今は三十歳だよな?」
「えぇ。あ、年齢の矛盾については後で説明します」
「あぁ、そう」
校長が三十歳で親が同年齢だと、俺の今の年齢は小学生だと言う事になってしまう。校長が大学の時に俺が産まれたらしいからな。
「次の日、貴方の両親は貴方に家を与えて、変態性を強化する為に修行に出かけました」
「その思考を持ってるだけで、十分な変態性だと思うが」
「その後は、私に息子が異常者以外にならないようにと頼んできました」
息子まで変態にする気かぁっ!
「あ、大丈夫ですよ。私的には悟君は十分な異常者ですから」
フォローのつもりだろうが、逆効果だ!ってか、校長の鮮やかな笑顔は気持ち悪い!
「数年後に予想外の展開が起きました。それが魅異君の降臨事件です」
「降臨と言うより、空中から落ちてきたんだけどな」
確か、保育園か小学校の時だったな。魅異との出会いは、俺が外を歩いていた時だった。魅異が空から降ってきたんだ。まぁ、それだけ。
「ちなみに昨日、何で魅異君が落ちてきたか分かりました」
「マジで!?」
空から降ってきた理由は、今までずっと気になってたんだ!
「羽双君との戦闘で吹き飛ばされたようです」
「羽双か」
羽双なら、確かに魅異を吹き飛ばせる。というか、羽双以外ではワザと吹き飛んでいると言っても過言ではない。
でも、よく地球は無事だったな。二人が本気を出せば、地球が崩壊させるなど簡単に行えるであろう。って、本気じゃなくても出来るか。
………それ以前に魅異が本気を出す筈がないが。
「で、その数日後に超巨大隕石が落下します」
ちなみにその隕石は、当時の魅異によって割られたぞ。
「そして、その数日後に特殊能力の元となる、秘伝の薬を見つけました」
開発したじゃなくて、見つけただけか。
「その数年後、秘伝の薬を友人数人に譲りました。そのお礼として、特星製作を手伝ってもらいましたけどね。貴方の親もその時に一度、この町に戻ってきました」
この時は既に俺は高校生だな。
「そして特星が完成した後、貴方の親は私に配達の依頼を頼みました」
「しかし、納が俺の家に居たのか」
「そうです。私は一度特星に悟君を送った後に配達を頼まれたんですが、金額に目が眩み、その事を忘れてしまったんです。そして、配達したら納君が居たので、騙されたという事で納君に配達をしたんです」
確かに納は俺のフリをしてたそうだが、校長は正体に気付いてたのか!
「私の話はこれだけです。じゃ、一兆円か一兆セルは現金でお願いしますね」
校長はそれだけ言って、マンガ本を数冊持って消えた。恐らく、波動の技で消えたのだろう。
ちなみに正しくは一兆八千億だな。
「あー、話は終わった?…ぐげっ!」
漫画を読んで、楽をしてた納を踏みつけて家を出る。本題から外れてたが、そろそろ事件の解決を再開するか。
「納、この辺に最近立てられた建物はあるか?怪しい犯人が隠れそうな所とか」
だが、この事件が随分前から計画されていたならば、その為の隠れ家及び基地は前からある建物という事になる。
………俺、推理とかも結構良いんじゃないか?
「それなら駄菓子屋だ!最近建てられたんだぜ」
「普通じゃないか」
「それが、前に行った時に有り得ない光景を見たんだ!あの光景を見た時は驚いた!
ほぉ、納の言い方的に冗談ではなさそうだな。
「数日前にあの駄菓子屋で、なんと一万円で一種類のお菓子を、買い占めてる人が居たんだ!」
「いや、確かに凄いが今の時代なら有り得るだろ」
「しかも大学生!」
「それは凄い!」
勉強で忙しそうな大学生が、一万円もたった一種類のお菓子に使うなんて、今のところは実例を聞いた事がないぞ!……納、大学生に失礼な言い方は駄目だろ。
「あれ、責任転移をされたような」
「気のせいだろ」
勘の良い奴だな。
「それで他には?」
「怪しいのは特に無いな。俺の知ってる範囲で、建物などを言うと、スーパーマーケットが数店・中学校・小学校・変態の乗った通りすがりの浮遊要塞・それにビルが数件建ったくらいだ。あと、お前が子供の時に通ってた、テレビ局の子会社だな」
「それだっ!どう考えても、テレビ局の子会社が一番怪しい!」
一番怪しいというよりも、これ以外は怪しくない。
俺が通ってたテレビ局というのは、保育園児の時から射撃の腕前が良かった俺は、テレビ局の番組に出演していた時があるのだ。
エクサスターガンも射撃番組の商品で貰った物だ。
だが、よく考えてみろ。
宇宙消滅の爆発を圧縮した威力の技を撃てる銃を、地球で五個も商品で出せるなんて、普通では銃の存在自体が有り得ない事だ。だが、あのテレビ局は商品として出した。
『まぁ、特星ならば、その程度の芸当は可能じゃないか?』と、思う者も居ると思う。
確かに特星では、何とか作れる者が居るかもしれないが、かなりの実力者じゃないと不可能だ。
それ以前に俺が保育園の時だから、特星はまだ作られてないし!エクサスターガンを貰ったのも保育園だったからなぁ。
「俺には浮遊要塞の方が怪しいと思えるんだが」
「それは素人の考えだ。あれに乗ってる奴は、事件を起こせるほど頭は良くない。というか、事件を起こす前に冷凍されるだろ」
人脈が広いと、いろんな予想ができるから便利だ。
「ふふふっ、早くも事件解決が可能かもしれない!さぁ、行くぞ!」
「えっ、俺も?」
「もちろん。ちゃんと道案内しろよ」
〜封印されしテレビ局の子会社の入り口〜
「納、地球では有り得ない雰囲気が漂ってないか?」
「あぁ、例えるならば、面接直前の学生のような気分だ」
テレビ局の周りだけは他の場所とは違い、上空の天候が曇りである。
これだけ不自然だと逆にハズレか?
「装備も完璧だし、いつでも突撃できるぞ」
「そうか。…って、水鉄砲とハエ叩きじゃないか!」
俺の装備を見て納が驚く。あまりの完璧さに驚いたんだな。
このハエ叩きは、特星の大会で手に入れた物で、大抵の事では壊れないんだ。
「家事で鍛えぬいた実力で、犯人など倒してやるぜ!」
「悟、俺は非常に不安だ」
不安な要素など何もないだろうが。
「先に聞いておくが、納の特殊能力はなんだ?あ、ちなみに俺は魔法弾を作り出す能力だ」
「お前にピッタリじゃないか。俺は電気を操る特殊能力で質系だ。言っとくが、強力な技とかは扱えないからな」
そりゃあ、地球では使わないだろうな。
「さて、お邪魔しまーす!」
納が普通に入っていく。敵陣に突入する時の言葉じゃないがな。
「あれ、おかしいぞ」
「どうした、納?…って、人が居ないな」
今まで通り、黒幕が一人居るだけなのか?
〔帰れ〕
「ひえぇっ!さ、さっ、さささ、悟!今、な…何か聞こえなかったか!?」
「ちゃんと聞いてなかったのか?帰れって聞こえたぞ」
「やっぱりぃっ!幽霊が居るんだ!」
高校生なのに幽霊に驚いてるのか?
〔この会社は我々が呪い、乗っ取った〕
「お、敵を倒す手間が省けたか?」
「呪われるー!呪われちまうぅっ!!」
落ち着け、納。
〔貴様達も呪いを避けるならば、宝石か何かを置いて帰れぇー〕
「はいぃっ!悟、宝石を出すんだ!」
「持ってない」
宝石を欲しがる幽霊はどうかと思う。
〔ぷっ、くくく……ははははははははっ!ちょ、ちょっと待って!私みたいな幽霊でそこまで驚くなんて珍しいわね!〕
「へ?」
幽霊は急に笑い出し、納は自分にピッタリな間抜けな声を出す。
〔どうも、こんにちは〕
壁をすり抜けて女性が出てくる。
「うぎゃ、出たぁっ!」
「驚きすぎだ」
いや、俺が冷静すぎるのかもしれないが。
〔私はキール。幽霊だけど驚くほどじゃないわよ?実体化とかも出来るわ〕
恐らく、特星から来たのだろう。今までに日本で幽霊を見た事はないからな。
「で、さっき言ってた事は?呪いとか乗っ取りとか」
〔嘘よ〕
「目的は?」
〔仕事をサボってる間の暇つぶしよ〕
暇つぶしするくらいなら、仕事をしろよ。
〔此処の会社には何故だか人が居ないわ。屋上に人じゃない奴が居たけど、只者じゃない雰囲気だったね〕
「屋上か?分かった!」
「あ、待ってくれよ、悟!」
〔悟って、あの有名な?…帰ろう〕
〜頂点の最上階〜
「悟、何でテレビ局に屋上が有るんだ?」
「俺が知るか」
それにしても、手掛かりが無かったから、今までよりも無駄な行動が多かったな。ってか、変な地名が多かったぞ。
「ようやく来たか、待っていたぞ」
いつの間にか目の前に、小学生高学年くらいの女子が居た。ってか、小学生キャラが多い気がするのは俺だけか?
「俺達を待っててくれたのか?悟、この子は俺達のファンらしいぞ!」
何故、そういう結論が出る?
「私は衣宵。宇宙の放浪者だが、宇宙を見張る事が趣味だ」
また、凄い設定の奴が現れたなぁ。たまには普通の人が問題を起こせば、俺も多少は楽なんだけどな。
見かけは小学生だが、口調とかが小学生を通り越してる。
「肌が綺麗だなー」
納、こんな時に言ってる場合か!だが、確かに肌が凄く綺麗だ。
「それで目的は?」
「少し前に特星に住み始めたんだが、問題を起こしても良いと聞いてな。ところで、何故、お前達は星の変化に気付けた?能力で気付けなくした筈だが」
「何故なら、俺は主人公だから!!」
「俺はその友人だからだ!」
ハッキリ言ってやる。ってか、俺の友人にも効かないものなのか?
「おー、お前達の実力は悪くはなさそうだな。面白い、私と勝負をしていくか?」
「全然良いぜ!その代わり、俺達が勝ったら年を教えてもらう!」
相手は宇宙の放浪者だから、もっと大きな事を頼めよ!
「悪いが、年は覚えてない。だが、数億年以上は生きていた筈だ」
おぉー、凄く長生きだな。
「年は分からなかったが、他の頼み事は勝った後に言えば良い。喰らえ!」
「うおぁっ!」
「おっと」
急にレーザーのような物を連射してくるが、ギリギリ回避する。
「私は特星に来る前から、未知を操る能力を持っていたからか、特星に来た時に新しい能力は覚えなかったな。まぁ、使い慣れた能力が一番だがな」
「電技、静かなる電撃!」
[パチッ]
「甘い。というか、電力が弱すぎるな」
静電気で相手が倒せるか!
「水圧圧縮砲!」
[ドゴオォォォン!]
「電気よりはマシな威力だが、まだまだ弱いな」
一般人が地球で受けたら、骨折する威力なんだけどな。
「未知、不思議な炎!」
衣宵の周辺に裂け目のようなものが現れ、そこから炎の玉が辺りに飛び散る。
「電気、渦巻く電撃!」
納が電気を回転させて、相手に放つ。
「空気圧圧縮砲!」
俺は空気の魔法弾を相手に撃つ。相手の炎も空気圧圧縮砲によって、相手の方へ飛んでいく。
「未知、見えない壁」
しかし、攻撃は相手に当たる前にかき消される。
「未知、分からずの不調子」
うっ…なんだ?急に気分が悪くなってきた。
「納、大丈夫か?…って!」
「おえぇぇぇーっ!」
「吐くなぁっ!」
[ベシベシィッ!]
あまりにも汚かったので、ハエ叩きで納を二回叩く。
「汚い奴だ」
お前の技が原因だ。
「悟ぅ〜、俺は気分が悪いので、早退させてもらう。…じゃ!」
走って非常口に向かう納。…って、待てぇい!
「させるか。未知、繰り返す領域」
「技なんか喰らう前に逃げ切る!…って、のわああぁぁっ!」
あれ、納の入った非常口のある方向とは、反対の方向から納の声が聞こえたぞ。
反対側を見てみると、納がフェンスに掴まっていた。手を放したら下に落ちるな。
「この技は二つの領域を決める事で、一つの領域から外に出ようとすると、もう一つの領域に出る事が出来るんだ」
「要するに、ワープゾーンを作れるのか?」
「分かりやすく言うと、そういう事だな」
「ってか、俺が落ちそうなんですけどぉっ!」
逃げようとしたから、天罰が下ったんじゃないか?
「あぁ、上下の領域も決めたから、落ちても大丈夫だぞ」
「そうなのか?じゃあ落ちるぞ」
そして、納が手を離す。一瞬で下に落ちていって、上から降ってきてまた落ちていった。そして降ってきて落ちていくの繰り返しだ。
「おぉっ、凄いぞ!無限ループとかが出来るんじゃないか!?」
楽しそうだが、衣宵が技を止めたら下に落ちるぞ。
「どんどんと速さが増してきたぞ!悟も来いよ!」
「断る。そしてチャンス!合体魔法弾、流れ星砲!」
説明しよう!合体魔法弾とは、俺の使える魔法弾二つを合体させて使う技だ!それによって、普段の二倍くらいの威力の技を使えるのだ!
「なっ!未知、別世界への幕開け!」
岩くらいの大きさの流れ星砲は、相手の作り出した別世界への幕に吸い込まれた。幕というより盾だな。
「お前もついでだ!」
「って、俺もかよ!?」
相手は俺にも幕を被せる。
〜未知の破れ目〜
何処だ此処?手や体は見えるのだが、背景や道が非常に暗い。………いや、暗いのではなく黒いのだろう。
「此処の場所が知りたいか?」
あ、衣宵。
「名前とかは別に興味がないが、地球か特星との距離は知りたいな」
「距離は私の楽しさだ。楽しければ短いし、楽しくなければ出られない」
「俺を玩具的な何かと勘違いしてないか?」
「それはない。単に全力で勝負して欲しいだけだ」
素直にそういえば良いだろうが。
〔分かった、照れ屋なんだな!〕
それは無い。ってか、出てくるなボケ役。
〔お前も照れ屋か!〕
「何故そうなる!?」
「何がだ?」
「あ…なんでもない」
お前の姿は見えないんだったな。
〔あぁ。この能力を応用して、入浴シーンを覗く事も可能だぜ!〕
絶対やめろ!
〔可能ってだけだ。実際には魅異にしか試してないからな〕
あー、やっぱり。
〔気付かれて身も心もボロボロにされたけどな〕
あー、やっぱり。
〔同じ返答を二回もするな〕
ってか、早く待機場所に戻れ。
〔はいはい。ちなみに思考内での会話って、時間が経つのが遅いよな〕
そうだな。
「さて、脱出方法を考えるか」
「待て、勝負をすれば早いだろう」
「俺は無駄な争いを好まないんだ。その方が主人公らしいだろ」
本当に無駄な争いは嫌いだけどな。面倒な上に疲れるし。
「だが、私がその気にならなければ、此処から出る事は不可能だぞ?それに、外からは此処まで入る事も不可能!だから、助けも呼べないし、私と勝負する以外に出る方法はない!」
「こんにちは〜」
「何っ!?」
衣宵の発言を完全否定するように入ってきたのは魅異だった。ってか、明らかに狙って、このタイミングで来ただろ。
「魅異、こんな所に何の用だ?ついでに俺を出してくれ」
「ふっふっふ、単なる暇つぶしで侵入したんだよ〜。あと、出たかったら自分で戦えば〜?」
相変わらずだな。
「そうそう、現在特星の様々な所で、そこの子供みたいな強い子が、面白い事を計画してるみたいだね〜」
「その度に俺に解決させるのか?」
「あまりにも危険な場合は、私が何とかするけどね〜」
出来れば全部任せる。
「じゃ、私は帰るから〜」
言いたい事だけ言って帰りやがった。消えて帰ったから、追いかけようにも方法がないな。
「さ、さて、さっきの奴は例外だが、此処に入ったり出来る奴は他には居ない。……多分な」
「あー、そこの人達、ちょっと良いかな?」
おー、見事に他にも居たな。だが、今度は俺の知らない少女だ。
衣宵より小さく、小学生の三年生くらいじゃないか?
「という訳で、次回に続くよ〜」
まだ居たのか、魅異!ってか、続くの?この小説がこの少女の正体を明かさないまま続くのか!?そんな展開はギャグ系では有り得ないだろ!というか、そういう展開があまり好きでない奴も居るんだぞ!
…なんて言っても無駄だから、最後に一言。
「はぁ、やれやれ」