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十九話 ついに動き出す魔王達

@悟視点@


現在は春と夏の境目らしき六月。


いきなりだが、男性諸君は自分が少女になっていたらどうする?そう、俺は何故だか少女になっちゃってたのだ。


「この程度のことはよくあることだからいいんだが」


現在は鏡を見て考え中。かなりの確立で小学生の高学年だろう。


…あと五年くらい後ってところか。


「く、顔は俺の好みなんだけどなぁ。年下過ぎるせいで対象外だ」


今後の成長に期待するか。


「って、特星だから成長しないし!」


〔しかも自分に恋って珍しいからなー〕


あれ、ボケ役が声変わりした?


〔俺も少女になったみたいなんだよ。魅異は男にもなれるから、俺には何の問題もないんだけどさ〕


それはそれで凄まじい恋心だな。


〔恋じゃなくて愛だぜ!〕


それにしても可愛いなぁ。成長後の見込みは十分にあるのに成長しないのが惜しい。


「悟さん!私達の知り合いが大変な状況になってます!」


「え、魑魅?」


少女化した魑魅が勝手に入ってくる。


「あ、悟さんですよね?」


「んー、あぁ」


「洗面所で鏡を見ているとは珍しいですね」


おいおい、これでも事件がないときの朝は顔とか洗ってるんだぞ。


「ってか、魑魅もなかなかだな」


「え?なにがですか?」


実際の成長後を知っていることもあるが、成長後の外見は結構俺の好みに近いだろう。


〔おー、それは現在の魑魅に対して、多少は好意があるということか?〕


え!…まぁ、正直外見は好みだったりするんだけどさ。


〔おぉ!それなら付き合え!〕


いや、性格がそこまで好みじゃないんだ。嫌うような性格でもないけどな。


〔そうかー?その辺の金や物が目当ての女に比べたら、かなりいい方だと思うぞ?そもそも身の回りの世話をしてくれそうで、逆にいい性格と言えるだろ。しかも、向こうも好意があるという保険付きだ〕


そうなんだけど、最初から仲が良すぎても面白みに欠けるような。


〔はぁ、贅沢もその辺にしておけ。この世には出会いすらないやつや、人と付き合える生活が出来てないやつが居るんだ。それ以上欲張ると機会を逃すし、未だに魅異と付き合えてない俺が恨むぞ〕


特星にもそんな人とか居たか?


〔お前の周りのやつは男女問わずにそうだろ〕


あぁ、そういえばそうだった!


〔やれやれ、恋愛をかき消す特殊能力でも持ってるのか?〕


そんなのは聞いたことがない。


「悟さーん、さっきは何を褒めたんですか?」


「ん?あぁ、外見をちょっとな」


外見といっても元の状態のことだけどな。


「あー!やっぱり悟さんもロリコンなんですね!」


「えぇ!何でそうなる!?」


「だって悟さん、ずいぶん前にもそれらしきことを言ってたじゃないですか!…言ってましたよね?」


残念ながら俺の記憶にはない。


「記憶にない」


「あれー、聞いたような気がしたんですが。悟さんが覚えてないのなら気のせいですね!」


…俺って魑魅に信頼されてるんだなー。


「よし、今度寺にでも一緒に行くか?」


寺を選んだ理由は他に遊べそうなところがなかったからだ。別にサービスシーンとかに期待しているわけではない。


「え、どうしてですか?」


「んー、普通の意味でのデートだ」


「え、えぇっ!?…あ、普通の意味ですか。友好関係の向上は確かに大事ですからね」


お、デートの受け入れは今後のイベントフラグじゃないか?


〔はい!ここで状況説明をするよ~〕


〔おぉ、魅異!デートしようぜ!〕


〔今回も断るよ~〕


ちなみに実際は俺には聞こえていないけどな。


〔今回は悟が恋愛的な意味でのデートで魑魅を誘ったんだけど、普通のデートとか言うから魑魅は友情的なデートだと思っちゃってるね〕


〔別にツッコミ役は恋愛に鈍感でもないのにな〕


今のところは友情デートでも問題はないと思うけどなぁ。


〔でも、魑魅は恋愛的なデートじゃないと思って少し残念そうだね~〕


〔今回はツッコミ役の失態だな〕


うっ、確かにそうだな。


〔まぁ、これが今回の勘違いでした~〕


〔ちなみにさっきもツッコミ役が言ってたが、これは実際にツッコミ役には聞こえてないぜ!〕


「それに寺の廊下を一人で滑ったら怪しいだろ!」


「いや、二人でも怪しいと思いますけど」


靴下で滑るなら、画鋲とかに注意しないとな。


「それで何が大変なんだ?」


「あ、忘れました!」


確か俺の知り合いが大変とか言ってたが、少女化は俺の知り合いだけが被害者なのか?


「ここに来るまでに寄った場所は?」


「えっと、勇者社です!…あ、思い出しました!悟さんの知り合いの方が全員女子になってたんです!しかも、元々が女子小学生の人が何人か居ないらしくて」


うーん、普通に考えたら犯人は雑魚ベーだろうが、そんなフラグ的なこととかあったか?


「とにかく勇者社へ向かうぞ」


「わかりました!少女化した人たちも何人か居るはずですから、有力な情報があるといいですね」






~勇者社~


俺達は真っ先に社長室に向かったが、少女化した几骨さんしかいなかった。社長室に来るまでに何人かの見慣れない少女も居たが。


ちなみに魑魅には情報集めを頼んであるのでここには居ない。


「あれ、魅異は?」


「社長は用事があるので出かけました。事件解決に向かったわけではありませんが」


まぁ、魅異はどっちかというと問題を起こすほうだからな。


「事件の発生源は予想済みだと思いますが、雑魚ベーさんだと思われます」


「あぁ、やっぱり」


俺に関係のある人だけが被害にあってるということは、解決しに来いということか?


「そういうわけなので解決に向かってください」


「えぇ。…ところで几骨さん、さっきから読唇術を使ってないみたいですが、調子でも悪いんですか?」


「あれ、特殊能力が使えないことを知りませんでしたか?」


え、特殊能力が使えないのか!?


「空気圧圧縮砲!」


銃で壁に向かって技を使うが、魔法弾が出てこない。


「うわ、本当に使えない!」


「少女化したのが原因だと思われます。なので、誰かを連れて行く場合は元々が小学生の方か、能力がなくても強い人をお勧めします」


まぁ、元々が小学生のやつは行方不明だけどな。


「あと、攻め込むのでしたら、そのメンバーに私を加えてもらえませんか?」


「え、珍しい。どうしてですか?」


「いえ、気になることがありまして」


几骨さんが加わってまで気にすることってなんだ?


「一応、候補には入れておきます」


「ありがとうございます」


とりあえず社長室を出て、情報収集を開始する。


「お、悟じゃないか!」


「え、誰だ?」


「納だ!いやー、お前も少女化してたんだな」


社長室前で会ったのは少女化した納だった。


「少女化してるのに、俺だとよくわかったな」


「悟の場合は冬以外は大抵半袖コートを着てるからな。というか、子供サイズのも持ってたことが驚きだ!」


半袖コートは未来で流行りそうな気がするからな。


「別にいつもコートを着てるわけじゃないぞ。家に居る時は長袖や半袖の服を着てるからな」


「えー、それだと別人に見えるぞ」


そんなに俺はコートが似合うのか?


「納、今回の事件はどう思う?」


納はアキステ騒動の時に犯人を見事に図鑑内から当てたし、その勘を頼ってみよう。


「うーん、居なくなった少女達は雑魚ベーさんの見方じゃないか?少女達が敵だったら、すぐにでも事件解決するだろ」


確かに雑魚ベーは普通に戦えば小学生より弱いからな。


「ところで事件解決するなら、俺も混ぜてくれないか?特殊能力はなぜか使えないが、罠の見破りとかなら得意だぜ!」


確かに勘が鋭いから、特殊能力がなくても十分心強いな。


俺的には見方を全員連れてくのもありだと思うんだよなぁ。


「今はメンバーよりも雑魚ベーの目的の方が問題だ。何を企んでるのか全然わからないからな」


「雑魚ベーさんは魔王なんだろ?それなら世界征服とか特星統一とかじゃないか?平和は俺が作る的な意味で!」


「雑魚ベーは行動と思考が単純だからありえる。なら、勇者社の人たちを全員連れていくのは問題あるな。念のために秋方町を守る役が何人か必要だし」


連れて行くのは二人くらいがいいな。


「とりあえず他の人の話も聞くか」


「そうか。攻め込む役には俺を選んでくれよ!」


「あぁ、無理かもしれないけどな」






その後に魑魅と東武と校長と羽双とキールと何故か居た印納さんを、メンバーの候補に入れることになった。全員が少女化していたが。


「うーん、誰を入れるべきだろうか?」


〔ゲームで例えるなら、羽双と東武とキールと印納と几骨が戦闘系で、魑魅と納と校長とキールと几骨がサポート系、特別イベント系が魑魅だな〕


更にゲームで例えるなら、羽双と印納さんを選べば簡単すぎると思うんだ。俺的には戦闘と補助のできるキールと几骨さんだな。


〔魑魅はいいのか?〕


魑魅を選んだ時のイベントは大体予想が出来るし、物語の本筋に触れそうな几骨さんでいい。


〔二人とも極端には強くないから、ゲームバランスも保たれるしな〕


ゲームで考えていいのかと言う人も居るだろうが、特星ではそれが基本なのだ。






~アミュリー神社~


勇者社の瞬間移動の機能を使い、神社のある島の勇者社に移動。その後歩いて神社まで来た。


「そういえば寺の記紀弥や神酒もいないのか?」


〔えぇ、私が朝に帰ったら二人が居ないし、寺の幽霊が少女になってて驚いたわ!問題を起こす可能性も考えて、ほとんどを気絶させたのよ!〕


「キールさんにしてはいい判断ですね」


〔ふふん、私の判断は凄いからね!〕


キールも考えれば出来るんだなー。


キールは特殊能力とは別に幽霊化や自縛爆霊を使えるから戦闘では便利だ。几骨さんはワワという雑魚ベーのカムと同等の技を使える上、戦闘もサポートも上手なので心強い。


社長秘書って万能の能力を持ってるんじゃないか?


「お邪魔しまーす」


「お邪魔します」


〔突撃ー!〕


神社の近くの小屋に入るが、特に誰かが居るという様子はない。


「恐らく別の場所に移動したのでしょう。私は手がかりを探します」


几骨さんは先に部屋などを調べている。


〔よし、つまみ食いするわよ!〕


「あ、俺も」


問題を起こしてるんだから、つまみ食いされても文句はないだろ。


〔冷蔵庫開けてー〕


「実体化すればいいだろ」


冷蔵庫を開けるが、中は生ものとかがほとんどである。


「お、チーズ発見!」


「よし、食べるわよ!」


食うときは実体化するのか。


「あれ、でも幽霊状態でも何か食えるんじゃなかったか?」


「あぁ、あれは幽霊専用の箸とかじゃないと無理なの。食べ物を幽霊でも食べれるように変換できるとか記紀弥様が言ってた気がするわ」


へー、幽霊文化では変わったものがあるなぁ。


「雑魚ベーさんたちの場所が判りましたよ。って、何をしているんですか?」


〔悟がつまみ食いしてるのよ〕


「あ、逃げたなキール!」


つまみ食いを言い出したのはキールなのに!


「なるほど。相手の食料を少しでも減らす作戦ですか」


〔そうなのよ!発案者は私だけどねー!〕


いや、その通りなんだけどさ。だけど納得できないのは何故?


「で、場所が判りました。この島から遠く離れた場所の海底に基地があるようです」


「海底って、これまたファンタジックな」


水圧とかは大丈夫なのか?


〔海底ってことは、敵は潜水艦にでも乗ってるの?〕


「いえ、さっき言いましたが基地があるようです」


〔墓地?〕


「漢字的には惜しいですけど違います」


お、饅頭が戸棚にある。


「どのような方法で海底に行くかが問題になってきます」


「あっ」


問題点を指摘しつつ、素早く饅頭を食べる几骨さん。


「毒は無いようですね」


「あ、毒見でしたか」


「おぉ、饅頭!私もいただきー!」


実体化したキールもそれを食べた。


「う、うぅっ!」


すると急にキールが苦しみだした!


「な、なんだ!?」


「これは毒の可能性もあります。悟さんは救急箱と胃薬を探してきてください」


え、毒って救急箱や胃薬で治るっけ?


「うぐぐぅー!」


「と、とりあえず探してくる!」


救急箱はどこかで見かけたが、胃薬はどこにあるんだ?


「お、救急箱!」


中を確認するが胃薬らしきものは見当たらない。


「あ、居ましたよ」


おや、几骨さんがやってきた。その後ろにはキールも居た。


〔ごめん。喉に詰まっただけだったわ〕


「あ、そうなのか?いやー、無事ならよかった」


胃薬が見つからなくて焦ってたんだ。


「さて、それではいきましょうか」


〔そうそう!いつまでも居るのはよくないからねー!〕


まぁ、確かにそうだけどさ。


「そういえば饅頭は?」


〔几骨が全部食ぶぅっ!〕


キールが言いかけたが、几骨が殴ってキャンセルした。幽霊状態のキールを何故殴れたんだ?


「あの後に念の為に私が毒見をしたのですが、何の変哲もない饅頭でした。賞味期限が近かったので捨てましたが」


「もったいない。ところで何でキールを殴れたんだ?」


「さっきの攻撃ですか?あれはワワで手の部分を覆ってたからです」


忘れている人のために説明しておくが、ワワとは雑魚ベーの出すカムと同類の技である。カムを几骨さんが使う場合はワワという名前になるだけだが。原理などは一切不明。脇役だけが使えるのかもな。


「能力は使えないのですが、なぜだか悟さんも殴りたくなってきました」


「え、女の勘ってやつ!?そんな理不尽な理由で殴られてたまるか!」


思考を読まれたのかと驚いたが、今は能力が使えないんだったな。


「それで海底に行く方法ですが、秋方高校の広大波動砲で水を吹き飛ばすのがよいかと」


〔何それ?〕


「数千度の巨大な波動を撃つことが出来る波動砲です。願いが叶わないから、流れ星を消滅させるとか言って、校長さんが買ってましたよ。五千万セルで絶賛販売中です」


校長はそんなものを高校に取り付けてるのか。


〔ちょっと待った!流れ星を消滅させる威力なら、特星まで消し飛ばない!?〕


「大丈夫です。特星ですから」


「そうそう。消し飛んでも次の日には元通りだろ」


とにかく行き先は決まった!






~秋方高校~


〔………来ましたね〕


秋方高校に来ると、記紀弥が校門の前で待っていた。しかも幽霊状態で。


〔あ、記紀弥様だー〕


「待ってください。小学生の方は居ない筈では?」


確かに几骨さんのいうように小学生は行方不明のはず。


〔……今日の私は敵です。もし、私に勝てたなら事件の真相の一部を教えましょう。しかし、貴方達は能力がありません。私に勝つのは難しいと思いますがどうします?〕


「それなら勝負は諦めて先に進むか」


〔………え?あの、私に勝たないと犯人が判りませんよ〕


いや、雑魚ベーだろ。


〔犯人はあの変態でしょ〕


〔……ど、どうしてそのことを知ってるのですか?まさかスパイの幽霊でもいたのでしょうか?〕


「普通に考えればすぐに判ることです」


え、俺はすぐに判らなかったぞ!


〔……えっと、勝ったら真相全てでどうですか?〕


「話が進めば普通に判ることです」


いや、何の説明もないまま終わることもあるぞ。


「とにかく俺達に戦う気はないから」


〔……ま、待ってください。なら、私に勝てば東武さんの故郷の世界を差し上げます!〕


記紀弥にそれを譲る権利はないだろ。


「私は正直興味ありません」


〔私も面倒なことは嫌だ〕


〔……そんな〕


二人とも興味がないのか。


「俺は興味あるんだけど、本当にそんなことが可能なのか?」


〔…えぇ、可能です!小巻さんがその世界のお姫様だったので、そのまま譲ってもらえば問題ありません!〕


「でも、親とかが居るんじゃないか?」


〔………確か親達は行方不明だと聞きました。あと、自分勝手な大臣が居るらしいのですが、悪人らしいので魅異さんに頼んで更に別の世界へ送ってもらいましょう〕


何気に全て人任せだなー。


「よし、二人とも力を合わせるぞ!って、あれ?」


几骨さんとキールが居ないぞ!


「あ、高校の三階で几骨さんとキールが手を振ってる。…先に行きやがった!」


〔……私としたことが、話に夢中で気づきませんでした〕


おー、同士が目の前に一人。


〔………残ったのは悟さんだけですので、一対一で正々堂々の勝負ですね〕


「あぁー、うん」


俺は能力が封じられてるけどな。


〔……あと、ここには私の作った結界の範囲内です〕


「結界?」


〔………ゲームでいうフィールドの効果みたいなものです。今回の結界はギャグの力を使えば不利になるという効果です〕


ふふふ、実は俺ってシリアスな男なんだぞ。


「喰らえ!霊にも通じる悟ンジャーブラック蹴りー!」


気分的に霊に通じそうなキックをしてみるが、記紀弥をすり抜ける。


[ガツッ!]


そして校門に小指から思いっきり当たる。ちなみにサンダルです。


「うおぉっ!ちょっと痛い!いや、やっぱり凄く痛い!」


〔…それ!〕


「うあっ!」


[ガンッ!]


ぶつけた足を心配している間に、もう片方の足を記紀弥が引っ張る。そのせいでバランスを崩して校門に顔から倒れこむ。


〔……決まりました〕


あれー、何で記紀弥は幽霊状態で俺に触れれたんだ?


「幽霊は物に触れるのか!?」


〔………いえ、私は物に触れられません。さっきの引っ張りは秘密の霊力的な力です〕


言ってる時点で秘密になってないと思うんだが。


というか、幽霊に触れられない俺は攻撃手段が無いんだが。


〔……悟さんにはシリアスは無理だと思うのですが〕


「いやいや、俺のシリアス度は凄いぞー。本気を出せばシリアス効果で世界を支配できる!」


〔…………その発言がギャグだと思うのですが〕


うぅ、ツッコミ役なのに!


本当にこの状況を打破する方法はないのか?


「うーん、少女状態だから悟ンジャーブラックにもなれないし」


〔………時間切れです。脱走霊、悪の自縛爆霊体当たり〕


俺が考えてる間に大量の霊が俺のほうへ向かって飛んでくる!


「あ、そうだ。主人公の特権、いつでも便利なお店!」


技名を叫ぶと同時にお店が出現した。


「ちょっと待っててくれ!少ししたら戻る!」


〔………あ、ちょっと!〕


記紀弥に待ってるように言ってから店に入る。


「いらっしゃいませー」


店に入るとフードで身を隠した男らしき店員が一人居た。


中は非常に狭く、カウンターと椅子くらいしかない。後は店員の後ろにある扉だけだな。


「小学生じゃないのか?…なるほどな」


ここで主人公の俺は新事実に気づいた!そう、この男は小学生少女になっていないのだ!


「今回の事件の黒幕はお前だな!」


「えぇ!?何でそうなるんですか!」


「主人公の勘と予想」


「くだらない理由で決めないでください!…私は通称ナレーターのナレ君。このお店の店員をやっています」


くだらないは言い過ぎだ。ちょっと落ち込みかけたぞ。


「俺は雷之 悟。知ってると思うけど主人公だ」


「それでどんな物が希望ですか?」


「自分では選べないのか?」


「はい。万引き防止のためです」


それって俺が信用されてないのか?


「あー、とりあえずシリアスな俺に似合う武器はあるか?」


「そもそも貴方がシリアスなこと自体がギャグですからねー。ちょっと待っててください」


凄く酷いことを言われた気がするんだが!


「これなんてどうです?使えば自爆して涙ありのストーリーになる自爆装置ですけど」


「自爆とか無理だし、ギャグだろそれ!」


「悟さんのできるシリアスの展開はこの程度が限度だと思いますが」


ものすごく腹が立つのだが、自爆以上の感動ストーリーが思いつかないから言い返せない!


「でも自爆はなぁ。…ん?」


自分のセンスに呆れていると奥の部屋に腕輪のようなものが見えた。


「それも武器か?」


「ん?あぁ、これですか。これは変身とかができる人専用の武器で、なんか凄いかもしれません」


「よし、買う。金は百億年後くらいに俺が覚えてたら払うから」


忘れてたら払わないがな。


「ありがとうございましたー」


はー、高い買い物だった。値段なんて知らないけど。


〔……ようやく来ましたか〕


「あぁ。って、何これ?」


記紀弥の周りには何十重にも結界が張られていた。


「か、買い物中に結界を作るなんて卑怯だぞ!」


〔………勝負中に買い物に行くのもどうかと思いますけど〕


「それはあれだ。大人は卑怯だから仕方ないんだ!子供には話せないような深い事情があるんだ!」


例えば勝負に負けそうだったからとか。


〔………前に話したかどうかは覚えていませんが、私は小学生の年齢ですけど大学生です〕


あ、そうだったのか。


「なら、俺より大人な記紀弥は卑怯で子供に話せない事情を持ってるのか」


〔………どうしてそうなるんですか?〕


そんなこと聞かれても知らないよ!


「とにかく、悟ンジャーブラックの力を見せてやる!必殺、木の枝投げ!」


腕輪をつけた後にその辺の木の枝を記紀弥の結界に投げていく。


〔……あれ、ギャグ封じの結界が効いてない?〕


木の枝は記紀弥の結界に当たっていく。


「ふっふっふ、よく判らないけど俺の力を思い知ったか!奥義、悟ンジャー召還!」


俺の隣に真っ黒な空間が現れ、そこから悟ンジャーの一人が召還される。


「あれ、急に何が起こったんですかねぇ?」


そこに召還されたのは雑魚ベーだった。雑魚ベーは小学生姿ではないようだ。


〔……………〕


「……………」


流石の俺と記紀弥も言葉が出なかった。


「って、貴方は小学生で少女ですけど悟さんですか?記紀弥さんと対戦をしているようですが」


っと、動揺している場合じゃない!


「いやいや、そんな人は知らない!俺はあれだ。ファンタジックじゃない普通の世界の高校生だったんだけど、何故だかこんなとこに迷っちゃってさ」


〔………はい?〕


うん、我ながら良い言い訳だ。


〔………あの、その人は確かに高校生ではあるんですけど〕


「ゲーム返却」


俺は記紀弥に、喋ったらゲームを返してもらうぞ、という意味を込めてボソッと呟く。


〔……別世界にある普通の高校生です〕


よし、上手く成功した!


「そうなんだよー。ここに来た途端に女子小学生になってて凄く驚いたぞ。犯人を見つけたら女子小学生と一生関われなくしてやろうと思ってるんだ」


「そ、そうでしたか。誰がこんな悪戯をしたんですかねぇ?いやぁ、私には全然判りませんねぇ!」


うわー、平然と嘘をついてる。雑魚ベーって酷いやつだなー。


〔嘘をついた挙句にゲーム返却で敵を買収するお前のほうが酷いだろ〕


ボケ役が現れた。


いや、悪いことを二回すれば良いことになるから大丈夫だ。数学の掛け算で習っただろ?


〔悪いこと二回は足し算だ〕


………あ、そういえばそうだな。


〔じゃ、帰るぜー〕


さて、そろそろ中に入らせてもらうか。


「いやー、何だかとても疲れてきたなー。俺は確かに別世界に住む普通の高校生なんだが、実は俺の町で流行の、疲れてるときに会ったことのある貴族に天罰が下る病にかかってるんだ」


〔………悟さん、流石の雑魚ベーさんもその嘘には騙されないと思いますが〕


うおっ、記紀弥が普通に名前を言っちゃってるよ!


「何を言ってるんだ記紀弥!お、私の名前はそんなに主人公っぽくないじゃないか!ほら、私はあれだ、むねやま ありだ。ほら、紙に漢字で書いたから」


この名前に特に深い意味はない。その場で何故だか思いついたものだ。


「おぉ、ネタにされそうな名前ですねぇ」


けっこうシリアスの名前をつけたつもりだったんだが。


〔……名前の由来は山無し谷ありの胸ですか?流石の私もマイナスではありませんが〕


山無し谷有りの胸か。名づけるとするなら逆乳ってとこか。


「よし、この事件が終われば逆乳の人でも探すか」


「なるほど、山無し谷有りの子の名称ですか。なら、私も逆乳の小学生探しでもしますかねぇ。ってか、その名づけ方はやっぱり悟さんじゃないんですかねぇ?」


〔…はい、そのとおりです〕


ぎゃあぁっ!最後の最後で記紀弥に裏切られた!


「記紀弥!もうゲームは貸さんぞー!」


〔………今後、ゲームを貸さなければ夜中に大量の幽霊達が貴方の部屋へ行くでしょう。そして、忘れられない光景を見ますよ〕


うおっ、今度は脅しに掛かってきた!


「ふ、ふんっ!俺がそんなことで従うか!第一、何をするって言うんだ?」


〔……幽霊達によって貴方のゲームのデータが一つずつ消されていくでしょう。しかも、動けば自縛爆霊によって私の借りたいゲーム以外は爆発します〕


「申し訳ございませんでした!」


半分以上のゲームはクリアーしたものなのだが、ゲームへの思い入れと資金不足のときの売却品がなくなることの不安に負け、俺は頭を下げるのだった。


〔…ふふっ、冗談ですので安心してください。それでは早速借りに行ってきますね〕


冗談と言っておきながらも、ゲームを借りに記紀弥は高校を去るのであった。


「えー、それじゃあ俺は今から高校の兵器でお前の基地を消滅させるから、それまでに基地に戻っておいてくれ」


「わかりましたよぉっ!」


普通に基地に戻っていく雑魚ベー。ツッコミ役が一人もいないと、状況がおかしいのに気にせずに話が進むんだな。


そんな状況はボケ役は言った。


〔いや、お前はツッコミ役だろ!〕


あ、そうだった!

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