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十八話 未来の事情と現代の未来

@悟視点@


「恐らくここだな」


「そうでしょうねぇ」


寺内を探し回ってた俺達は、一つだけ立ち入り禁止と書かれた部屋を見つけた。どうやら集会などで使われる大広間のようだ。そして障子越しに人影が見える。


「何で寺に大広間があるんだ?」


「ほら、お客とかをもてなすための部屋とかあるでしょう?それじゃないでしょうかねぇ?」


前から思ってたんだが、この寺はあまり寺らしくはないと思う。普通にお風呂とか台所があるし、逆に寺らしいところといえば外見くらいだ。


「そこの二人、私に用があるなら早く入ってきなよ」


「あ、気づかれましたねぇ」


く、小声で話してたんだが気づかれたか。


気づかれちゃったので障子を開けて中に入ると、一人の少女が居た。


「ようこそ。貴方達は過去の悟さんに過去の雑魚ベーさんだね?」


「そうだが、どうして俺達が居る事に気づいた?聞こえるような声は出してなかったんだが」


もし、能力で聞かれたのなら、こいつはクーフウシャじゃないから逃げるか。


「逆に貴方達はどうしてこの部屋に私が居ると予想したのか?それを考えれば、答えなんかすぐに見つかるよ」


「それは障子に貴方の人影が映ってたからですよぉっ!」


「あー、俺達の影も障子に映ってたのか」


それはさすがに気づかなかった!


「こんなところまで来たんだ、私に何か用でも?先に言っておくけど、私がクーフウシャだよ」


自分から名乗るとは、逃げさせる気がまったくないな。


「一定の時間ごとに発生する事件!これは全てお前の仕業だろ!」


「ふふふ、別に答えてあげてもいいけどさ、確証もないのに決め付けるのは酷くない?」


確かに酷いと思うだろうが、それはクーフウシャが犯人じゃない場合だ。


「普通に考えたら酷いよね」


「確かに凄く正論ですねぇ」


「雑魚ベー、敵の言葉に乗せられるんじゃない!」


本題から会話が逸れてるし。


「で、事件を起こしてるのはお前なのか?」


「うん、そうだよ」


ほら、犯人じゃないか!


「それで、俺に迷惑が掛かるからやめて欲しいんだが」


「嫌だよ。それは特星に重大な問題が起こる可能性があるからね」


おぉ、久々に良い展開になってきてるじゃないか!


「どうしてもって言うのなら、この私を倒すことだね!」


「待ってましたぁ!主人公としてこの凄く良いシーンでは負けられないな!雑魚ベー、相手は小学生か?」


「初めて見る方ですが、小学生ではありませんねぇ」


なら、中学生ってところか。


「会話が長すぎだよっ!過去、フォーブトラウマ!」


「わ、なんですかぁ!?」


相手の出した白い光が雑魚ベーを包み込む。


「…はっ!悟さん、よくも私の幸せを奪いましたねぇ!」


「は?何言ってるんだ?」


「問答無用ですよぉっ!とりゃあっ!」


雑魚ベーが凄い勢いで体当たりをしてくるので、それを何とか回避する。


「クーフウシャ!一体、このアホに何をした!?」


「ふふん、ちょっとしたトラウマを作り出しただけさ。彼の中ではトラウマが実際にあったことになってる」


「全然わからん!」


「つまり彼に与えたトラウマを、彼は実際に体験したのさ。もちろん、現実ではそのトラウマは起こってないけどね」


えー、要するに偽の記憶を植えつけたってとこか?


「雑魚ベー、俺は何をやったか説明してみろ」


「ふん!忘れたとは言わせませんよ!主人公の立場を利用して、世界中の小学生少女全員と、昨日結婚してたじゃないですか!」


「うわっ、予想以上に無茶な設定のトラウマだ」


ゲームとかの混乱状態も、所詮はこんなものなのかもしれないな。


「さぁ、覚悟してくださいよぉっ!必殺、ジャンピングキックですよぉっ!」


「うおぉっ!」


雑魚ベーの代表技、回転飛びつま先蹴りを走って避ける。


「さぁ、これで最後だよ!古の大魔法、エルレイサー!」


クーフウシャがどこからか、カビが生えてそうな本を取り出す。すると、その本から俺達の方に巨大光線みたいなのが飛んでくる!


「きゃおおおうっ!悟さん、また私を盾にしてますねぇ!」


「くっ、あんまり防げてないんだからいいだろ!」


光線は眩しいが、雑魚ベーが多少の光を遮ってるので目は開けられる。だからといって何をするわけでもないのだが。


「さぁ、早く諦めることだね」


「おいおい、技を俺に直撃させてないのによく言えるな」


「げほっ、悟さんも私を盾にしてるのによく言えますよねぇ」


まぁ、これは攻撃と防御の役割分担なんだから仕方ないってことで。


「だが、勢いで外に吹き飛ばされそうですねぇ」


「いや、流石に吹き飛ばされはしないだろ。って、うおぁっ!」


盾にしていた雑魚ベーが足を滑らしたらしく、俺達二人はバランスを崩して外に飛ばされた。


「おおおっ!流れ星を見つけましたよぉっ!」


あたりはいつの間にか夜になっていた。寺の中を探すだけで夕方くらいまで掛かったからな。


「よし、まだ勝負は続いてるから、ここは作戦勝ちをしにいくか。いたぁっ!」


「きゃおうっ!」


寺の部屋の中のような場所に突っ込み、ようやく止まった。


この寺は入り組んでるから、クーフウシャはあの部屋で待ってるだろう。


「雑魚ベー、正面からあの魔法に突っ込むのは危険だ」


「広範囲で威力も結構ありますからねぇ」


別にエクサバーストで雑魚ベーごと消滅させるのも可能だが、相手が消滅して話が進まなくなるんだよなぁ。雑魚ベーは復活するけど。


「で、今回は奇襲をかけようと思う」


「クーフウシャさんの後ろの壁を壊して、背後から仕掛けるとかですか?」


「いや、もう少し効果的な作戦だ。着いてきてくれ」






俺が雑魚ベーと来たのはクーフウシャの部屋の屋根の上だった。


「ここから奇襲を掛けるんですねぇ?」


「いや、奇襲なんて主人公らしくないだろ!」


「…奇襲を掛けると言ったのは悟さんですけどねぇ」


最初は奇襲を考えてたが、もっと良い作戦を考えたぜ!


「で、どんな作戦ですか?穴を開けて瓦礫を投げつけるとかですか?」


「うわー、酷い事考えるなぁ。女子小学生以外にも優しさを持てよ」


「いえいえ、小学生の少女以外からは酷い扱いですからねぇ」


女子小学生からも酷い扱いを受けてるけどな。


「俺の作戦はシンプルだが慎重性が要求される高度な作戦だ。その名も上から気絶させる作戦!」


「おぉ、確かにシンプルな作戦名ですねぇ!」


俺って気分が名前に出ることがあるんだよなぁ。


「内容までシンプルだ。屋根をクーフウシャの上に落として気絶させるだけ!」


「シンプルなのは納得できるんですが、私のほうが十分優しい作戦だと思いますよ」


「いや、人に物を投げるのはよくないぞ」


屋根を崩すなといってる人は滅多に居ないから、今は問題無しということにしておこう。


「どうやって崩すかは考えてないけどな!」


「え、それは作戦として駄目じゃないですか?」


「駄目じゃないです!たまには頭を使わないとボケるぞ!」


そういえば、俺も最近頭を使ってないなぁ。まぁ、ゲーム攻略という名の勉強をしてるし、ツッコミ役だから大丈夫だよな。


「はっ、頭を使うと同時に屋根を破壊する方法を考えました!」


げ、雑魚ベーに先を越された!しかも、頭を使うと同時に屋根を破壊するだと?


「頭で屋根を壊せばいいんですよぉっ!」


「いや、駄目だろ」


ん、待てよ?


この寺には記紀弥の結界が張ってあるはず。その結界の効果が特殊能力での寺へのダメージをなくすものなら、魔法弾で壊すのは不可能!


というか、クーフウシャの魔法は柱とかにも当たってたはず!だが、柱は壊れてなかった!それはつまり特殊能力での寺の破壊が不可能ということ!エクサバーストは特殊能力ではないが、屋根の一部が消滅するだけで、クーフウシャの上に落とすのが無理になる。


「なるほど、頭で壊すのが一番効果的というわけだな」


「え、そうなんですか?」


「雑魚ベー、寝転んだ状態で頭を壁に叩きつけるぞ!額の部分以外の部位に変えたりしながら、常に全力でいくんだ!」


「えぇ、わかりましたよぉっ!」


俺も雑魚ベーも全力で頭で屋根の破壊を始める。


「とりゃああああぁっ!」


「きゃおううっ!」


俺はやる気全開だが、雑魚ベーは謎の叫びを上げている。






凄く首が疲れてきたが、勢いだけは下げないようにする。


「あはははははははぁっ!」


雑魚ベーが叫んでいる気がするが、今の俺は辺りのものが全然気にならないぜ!」


「おや、上が騒がしいと思ったら貴方達だったんだね。…って、何やってるの?」


しかし、どのくらい瓦がひび割れ始めたんだか。確認したいが、確認したらまた頭を使う気になれなくなりそうだし、崩れるのを待つしかないな。


というか、痛さに慣れた!


「そうりゃあああっ!」


「う、痛々しいなぁ。というか、私との勝負はどうなった?…おーい、聞いてくれてる?クーフウシャだよー」


「ははははははははっ!」


「聞こえないのかな。しょうがない、記紀弥さんを呼んでくるよ」


やっぱり主人公らしい作戦は重要だよなー!


「主人公!主人公!主人公!主人公!主人公凄いぞー!」


「私は小学生の女子寮出身になりますよぉっ!エエナさぁーん!」


「………なるほど、意味がわかりません。クーフウシャが来たら既に?」


「あぁ、うん。こんな状態だったよ」


よし、主人公らしさが上がってる気がする!


「…………回転しながら頭を叩きつけるなんて、この二人はやはり只者ではありません!」


「あの、記紀弥さん?中断した勝負はどうするの?」


「……勝負内容を変更します。クーフウシャもあたまの叩きつけに参加し、一番最初に目を覚ましたら価値にしましょう」


「え、参加?しかも、目を覚ましたらってことは気絶することは決定なの!?」


「………えぇ、そうです。この二人を元に戻せるのなら話は別ですが」


なんだか、凄く楽しくなってきた!これを新しい運動として追加しよう!


「ふふん、そんなの屋根から落とせばいいんだよ!古の大魔法、エルレイサー!」


ん、一瞬何かが光った気がしたが、その程度でペースを落とさせないぜ!


「あれ、何で吹き飛ばせないんだろ?」


「………頑張ってください」


「いやいや、絶対に気が狂っちゃうよ!」


「……大丈夫。彼らより後に頭を叩きつけるんだから、クーフウシャのほうが有利なはずです」


頭叩きつけの大会ができたら、優勝してやるぞー!


「………楽しもうと思えば自然と楽しくなりますし、頭叩きつけの大会というのがあるのですが、その大会で頭が狂ったという人はいませんでしたから」


「大会あるんだ!?そして、その大会に出ること自体が狂ってると思う。でも、そこまでいうなならやってみるよ。それぇいっ!」


「……私は頭叩きつけ大会の続きをテレビで見ないといけないので、先に部屋に戻りますね」


「あぁっ!何か意外にも楽しい!よし、私の実力を見せてあげるよー!」






「んー、よく寝た」


光が差し込む部屋の中は、明らかに俺の部屋とは違っていた。


「って、どこだよ!?」


「……あ、起きましたか」


横を見るとそこには記紀弥が座っていた。


よく見ると、俺の寝ている布団以外にも二つの布団で誰かが寝ている。


「………では、悟さんの勝ちです」


「え、何が?」


「……最後に寝る前に何をやってたか覚えてますか?」


うーん、頭が痛いんだが。


「あ、そうだ!雑魚ベーのくだらない作戦をやったんだった!」


「……くだらなくはありません。頭叩きつけ大会も実際に存在しますし、それの良さは平凡な人には判らないだけです」


「え、存在するの?ってか、その大会を見てるのか?」


「…………あの、見てるといえば見てるんですが、テレビで見る程度なんです。いつも見てるわけではありませんよ。一回見逃した事がありますから」


なるほど、凄くその番組が大好きなんだな。


「……それで、気絶して早く起きた人が勝ちということにして、クーフウシャを参加させたんです。ちなみに本物の大会では、時間内に好きなように頭を叩きつけて、その演技力と叩きつけた回数と激しさと試合後の表情や状態で得点が決まり、合計得点が多かった人が勝ちです。気絶したら失格となります」


大会の説明は正直どうでもいいんだけどなぁ。


「……………それで全員が一週間経ってもまだ続けてたので、今日の朝に瓦礫を投げつけて気絶させました」


人に物を投げるのはよくないぞー。


「………では、クーフウシャが過去を操ったわけを話しますね」


「あ、共犯?」


「……そうです。この世界の特殊能力の使用者が少ないのは知ってますよね?」


うーん、そんな話をどこかで聞いた気がするなぁ。


「あー、確か町明の咏に聞いたぞ」


「………知ってます。咏も特殊能力の使用者増加係の一人です。そしてクーフウシャもその一人なんです」


「町明の咏は特殊能力復興者とかいってたぞ」


「…………名前は決めてませんからね」


とにかくクーフウシャもその一員だったって訳か。


「……クーフウシャが過去に事件を起こしたのは、特殊能力の便利さを伝えるため。そして様々な人に事件解決の面白さを知ってもらうためです」


へー、良い話だと思うんだが、どうしても気になる部分があるぞ。


「あの、結局その事件には、特殊能力を普段から使う奴しか関わってないんだけど」


「……へ?」


「解決は大抵が俺達だし、事件を起こすのは主に非質系の能力者だろ?一般人が関わる部分がまったくないんだが」


これだと事件解決の楽しさを一般人が知ることはないだろ。


「………うぅん、この作戦にそんな欠点があったなんて!」


「途中で誰か気づかなかったのか?」


「……基本的にメンバーで私以外はドジっぽいですから。私は用事があって気にする暇がありませんでした」


「用事って?」


「…もちろん頭叩きつけ大会の番組です。クーフウシャのせいで先週のは見れなかったんですよ!」


記紀弥が一番ドジだなぁ。


そして少し涙目気味の記紀弥がちょっと可愛い。雑魚ベーと同じ意味ではなく、純粋な意味で可愛いと思う。


「ふー、よく眠れましたねぇ。何故だか頭が痛いですが」


お、雑魚ベーが起きた。


「あ、悟さんに記紀弥さんじゃないですか。寝てるのはクーフウシャさんですか?それにしても、涙目の記紀弥さんは可愛いですねぇ。もちろん純粋で健全で安全な意味でですよぉっ!」


え、純粋で健全で安全な意味で?


確かに雑魚ベーとは違う意味だが、俺のは健全じゃない危険な意味ってことか!?


「………涙目なのを褒められるのは少し複雑な気分です。あれ、悟さんはどうかなさったんですか?」


「あ、いや別に」


正直、心の傷が大きいけどな。


「……とりあえず、勝負に負けたので、しばらくは過去には手出しをしません。あと、過去にお詫びの品を送らせていただいてもいいでしょうか?」


「あぁ、無料でもらえるんだから大歓迎だ!」


出来れば食べ物とかがいいな。


「ところで私達はどうして屋根を頭で崩そうと考えたんですかねぇ?」


「そういえばそうだな。普通に考えたら無理だと気づくはずだが、何か気分でそうなったんだな」


「………悟さんにはボケ役の黒悟さんが居ますよね。ツッコミは悟さんでボケは黒悟さんが本来の担当なのですが、常に本体を操作するのが悟さんのため、本体にボケ役としての成分が溜まっていきます。普段の悟さんがボケたりして少しは成分を発散してるようですが、それでも溜まる割合が多いのです。そして成分が程よく溜まった為に混乱したのです」


えーと、つまり俺のボケる回数を増やすか、ボケ役に体を動かせてやるかであの事態を回避できるってことか?


〔よくあの程度で済んだよな〕


お、ボケ役との会話空間に突入したぞ。


〔俺は常に頭を叩きつけたい以上の衝動があるんだぞ。特に魅異とか〕


〔それを行動に移す時点で、どっちの悟も不甲斐ないけどね~〕


げ、魅異まで会話に入ってきた!


〔おおぉっ、魅異!俺との話し合いに来てくれたのか!?〕


〔気分だよ~。今回の事件解決の賞品をあげようと思ってね~〕


ほぉ、賞品ねぇ。どのくらいの価値のものなんだ?


〔物じゃないけど、利用価値は高いだろうね~。で、その賞品こそが店の呼び出し権利だよ~〕


店の呼び出し?


〔そう。戦闘中でも移動中でもお店を呼び出し、お買い物が出来るという便利な技だよ~。家でも使えるけど、引きこもらないように注意することだね~〕


主人公の俺がそんな生活をするわけないだろ~。


〔呼び出す時には、適当にそれらしきことを言えばいいよ~。意味なく呼んだ場合は行かないけどね。じゃ、私は帰るよ~〕


よし、店を呼ぶときは主人公らしい工夫してみよう!


「うーん、雨双さんとアミュリーさんが心配してるでしょうし、そろそろ帰りましょうか」


「そうだな。じゃ、もう事件を起こさないでくれよー」


「……大丈夫、私達が手を加えなくても、事件は起こるようですから」


えー、俺は呪われてるじゃないか?


とにかく事件の現況は断った。だが、未来の記紀弥の言うように、数ヵ月後にちょっとした事件が起こるのだった。






@雑魚ベー視点@


「うーん、最近の私って印象薄いんですかねぇ?」


未来旅行から数ヵ月後、雨双さんとアミュリーさんは友達の家に行ってるようです。こういう時は独り言が楽しいですよぉっ!


しかし、本当に印象が薄くなった気がしますねぇ。


「仮にも私は悟さんの宿敵!そのはずなのに盾扱いされてますからねぇ」


ちなみに私も二人の友達の家に行きたかったのですが、雨双さんに却下されてしまいました。私を他の少女にとられたくなかったんでしょうねぇ。


「く、この状況をどうにかせねば!」


よし!仮にも私は魔王ですし、世界征服でも始めましょうかねぇ!


「ふふふ、こんな時のために浮遊要塞を作っておいて正解でしたねぇ。しかも、一つではなくいくつも!」


これさえあれば、主人公の座も私のものですよぉっ!


「まず、秋方周辺の町を消し去り、少女の目に優しい草原と山と桜に変えてしまいましょう!」


この際ですし、春景色を作る形の世界征服にしましょう!


「そして事件解決後には皆でお花見!あぁ、そこまで想像しただけで、楽しそうで涙が出てきましたよぉっ!」


「おーい、何泣いてるんだ?」


「うおっ、悟さん!」


くっ、私の世界征服を先読みするとは、流石は私の宿敵!


「あれ、いつもの二人は?」


「二人は友達の家にお出かけ中ですよぉっ!私は邪魔をしないように留守番を引き受けたんです」


別に私が断られたわけじゃありません。


「ふーん。で、雑魚ベーは何をしてるんだ?」


「ふっふっふ、聞いて驚かないでくださいよ?なんと、世界征服の準備中なんですよぉっ!」


まさかの私が世界征服、こんな事を信じられるわけがありません!


「あー、エイプリルフールだから騙そうとしてるんだろ?もう少しくらいは良い嘘にしろよー。というか何度も騙されてたまるか」


「え?あ、いや、真実ですよ」


信じられるわけがありません!と思ったら、本当に信じてもらえませんでした!


ってか、悟さんは何度か騙されたようですねぇ。


「エイプリルフールだからってあんまり嘘つくと大変なことになるぞ」


「経験とかあるんですか?」


「あぁ、地球に居た時に死にかけて、それ以来トラウマ気味なんだ」


エイプリルフールで死にかけるって、どういう生活をしてたんですか?


「俺がエイプリルフールの日に射的番組に出たときの話なんだが、番組の関係者に弾無しだと言われて、狩用の銃を貸してもらったんだ。でも、その銃には弾が本当は入ってたんだ。で、それで遊んでたら転んで、その衝撃で銃弾が発射され、俺の肩と番組の誰かの足を貫通したんだ」


「うわぁ、管理してる関係者の人、駄目すぎるでしょ」


「生放送じゃなかったものの、その事故が原因で視聴率が落ちたとか。ニュースでもその事故の特集をやってたからなぁ。当然だが、その関係者への非難が凄かったぞ」


そりゃそうでしょうねぇ。


「それで肩はどうなったんですか?」


「…ふふふ、残念だが雑魚ベー、今の話は嘘だぜ!」


「なっ、嘘ですか!?」


はっ、今日はエイプリルフール!さっきの話は私を騙すための嘘だったんですねぇ!


「いやぁ、我ながら良い出来の作り話だ!雑魚ベーの嘘よりも三倍は上をいく!」


「いえ、私の話は嘘じゃありませんし。というか、さっきの嘘の話の仕返しを含め、私の計画を知ったからには覚悟してくださいよぉっ!」


「おー、勝負をするか。でも、お前が相手なら一撃でいけるぞ」


ふっふっふ、悟さんの攻撃程度で気絶する私ではありません!


「いきますよぉっ!必殺、ジャンピングキックですよぉっ!」


「エクサバースト!」


は?


「ええええぇっ!?」


驚きの喚声を上げながら、私は特星にもかかわらず消滅させられるのした。


いや、それって人に使って良い代物じゃないですよねぇ?それを戸惑いもなく撃つなんて酷い、酷すぎますよぉっ!


「ほら、一撃だ。お前にエクサバーストを使ったのは悪いが、お前なら大丈夫だと信頼した上での行動だ。お礼に同姓同士の縁を深める菓子をやるからさ」


同姓同士の縁なんて私はどーでもいいですよぅ。


ん、待ってくださいよぉ。


「そのお菓子、ぜひ譲ってください!」


「お、復活した。ってか、欲しいのか?言っとくけど、値段の割に同姓同士の交流が多くなるだけだと言ってたぞ」


ということは、既に誰かで実験済みなんですねぇ。もしかしたら、自分で飲んだんですかねぇ?


「それでも構いませんよぉっ!」


「ほれ、味は歯磨き粉の苺味だから注意しろよー」


クッキーのようですが、歯磨き粉の苺味のクッキーってどんなのでしょうか?


で、肝心の使い方ですが、私はエエナさんになれるので、それで女の子との縁を深めようというわけですよぉっ!


「さて、次は誰を騙すかなー」


悟さんは機嫌良さそうに帰っていきましたねぇ。


「さて、私はこのお貸しをエエナさんになって食べますよぉっ!」


ふふふ、必要以上に多く回っておりますよー。


[ずるっ]


「ふぇ?ごはっ!」


回りすぎたせいで足を滑らせ、お菓子を全て玄関の手前に落としてしまいました。


「あ、危なかったぁ。玄関に落ちてたら食べれませんでしたからねぇ」


一つのクッキーがとても重要なのですよぉっ!


まぁ、袋に入ってるから落ちても問題ありませんがねぇ。


「あれ?」


さっきまで玄関前にあったお菓子が、いつの間にか玄関に落ちてますねぇ。


ってか、悟さんがドアを開けっ放しにしていったようで、玄関のドアが全開になってます。


「ん?おぉ!」


な、なんと、クッキーが勝手に動いてます!


よく見ると、蟻さんが包み袋ごとクッキーを運んでいます。


「春らしい光景ですが、私のクッキーを持ってかせませんよぉっ!」


しかし、蟻さん達は私が叫んだせいで、蟻とは思えない速さでクッキーを運んでいった。


「ちょっと待ってくださいよぉっ!」


あ、よく考えたら蟻の穴にクッキーは入らない!蟻程度が私からクッキーを横取りなんて不可能ですよぉっ!


「って、穴が大きすぎでしょ!」


蟻達は蟻の穴とは言えぬくらいの大きな穴に逃げていった。拳より少し小さいくらいの穴なので、手を入れて取り返すのは無理がありますねぇ。


「く、私のクッキーをとるとは!」


高熱の熱湯でも流し込もうかと思いましたが、流石に可哀想なのでやめました。


「はぁ、この怒りも世界征服にぶつけましょうかねぇ」


こうして、士気が下がりつつも特星の世界征服に取り掛かるのでした。

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