十七話 いつまでも変わらないで
@悟視点@
「うーん、やっぱり気分的に気になるな」
昨日の魑魅の言っていた一定の時期による事件の発生。これが意味するものはいったいなんだ?
「と、まじめに考えているんだが、なかなかシリアスな気分になれないなぁ」
この世の常識は俺にギャグしか似合わないと言いたいのか!?
「ふんっ、俺だってやればできるのに」
うーん、やっぱり事件を解決して俺の評価を上げるのが無難だな。
うぅ、気が遠くて涙が出てきた!
「とりあえず、校長に相談しよう」
こういう時のための先生だよな。
~砂上の校長室~
「おや、悟君」
「あ、校長。ようやく見つけた」
現在俺は校長室にいるのだが、その校長室は公園の砂場にあった。
「さっき学校に行ったら校長室だけ売り地になってて驚いたぞ」
「あぁ、とある理由で私が売り出してるんですよ。現在なら九億セルですけど、悟君はいりませんか?」
九億で売れるわけがないと思うんだが。
「そうだ、今日は校長に聞いてもらいたいことがあるんだ!」
困った時の校長頼みだ!
「あ、その前に悟君の借金が千六百兆八千億なんですが、返済できそうですか?」
やっぱりこの校長に頼った俺が駄目だった。
「ってか、前回が八兆くらいだったのに増えすぎじゃないか?」
「いや、どうせ返せないんだから気にしないでくださいよ。気分で適当に言ってるだけですし」
なら、返すのはやめておこう。
「で、相談なんですけど、過去か未来に行く方法はあるか?」
「お、事件を終わらすために元を断つという考えですか」
あれ、校長も事件のことを知ってるのか。
「先に言っておきますが、私は校長です!とっても偉いんです!これでも特星の大抵のことは把握しているんですよ」
偉いけど貧乏なんだよなぁ。
「それで方法ですが、単純に言えばあります」
「何処に?」
「私は教師ですから教えません。それに海草布団を早く作らないと寒いですからね」
教師だからこそ教えるべきだろ。
ってか、海草の布団で寝るつもりか!?
「しかし、方法は存在するので、探すのも手段の一つですね。小さいですが、足元に注意すれば気がつくはずです」
「あー、それなら探してみるか」
「夢中になり過ぎないように注意することですよー」
~過去を通り過ぎし秋方の都~
「足元と言っても何もないよなぁ」
さっきからずっと目を凝らして足元を探しているが、全然見つからない。
「小さいらしいから気をつけないとな。……………ぶはっ!」
前を見ずに歩いていたら、何処かの建物にぶつかった。
「あれ、こんな建物いつの間に?」
どうやらマンションにぶつかったようだが、この辺りでは見かけない建物だ。
「って、あれ?」
この辺り自体が見かけない場所だな。
「まさか迷子か!?く、なんでこんなことに!」
「むにゅー、理由がわからないねぇ」
あぁ、希求の言うように原因がまったくわからない!
「迷子のプロの希求でもわからないのか。なら、これは大変な事件じゃないか」
「うん、とにかく聞き込みをしようか?」
「あぁ、そうしよう」
とりあえず、場所を確認しないと。
「でも、集合住宅では聞き込みがしにくいんだよなぁ。あ、ところで希求」
「何、お兄ちゃん?」
「お前はいつの間に俺の横に居たんだ!?」
俺の気づかない間に横を歩くとは、何の目的だ!
「むにゅー、お兄ちゃんが迷い始める直前だよー」
どう考えても希求が原因だろ!
「とりあえず、場所とかはわからないのか?」
「場所はわかるよ。此処は未来の特星で、この町は秋方だよ」
あ、過去や未来に行く方法って希求の迷子だったのか!
「確かに希求は小さいけどな」
「むにゅー」
とりあえず、現代で俺が住んでる寮に行くか。
「なぁ、現代での寮の場所は何処だ?…って、居ないし!」
く、希求が迷って何処かへ行ったから、現代人が俺だけになってしまった。
「ええい、こうなったら勘だけが頼りだ!」
町の人に頼るという手段はない!
というか、外に誰も歩いてない。
~一般の枠を超えた雷之の館~
「寮の場所はわからなかったが、俺に関する場所を見つけた!」
雷之の苗字を持つのは俺の家の関係者のはず!だって俺の家の血筋は全滅寸前だったからな。
「お邪魔しまーす」
ご自由にお入りくださいと書いてあったので、勝手に入る。
お、館なのに玄関とかもあるな。
「あれ、お客さんですか」
奥から出てきたのは半袖のコートを着た少年だった。俺より若いくらいで、中も半袖だな。
「何故に半袖コート?」
「あぁ、コートを着るのは僕の家の昔からの習慣なんですよ」
そういえば、俺もコートだった。
「俺の名前は雷之 悟。少し聞きたいことがあるんだが、今で大丈夫か?」
「はぁ、またですか」
少年はため息をつき、呆れたようにこっちをみている。
「貴方が家の者を装ったとしても、この家のお金は渡しません!」
お、結構な金持ちということだな。
「僕は忙しいので帰ってもらえませんか?」
「ちょっとまった。お前の名前は?」
「はい?」
予想外のことを聞かれたような反応だな。
「俺が名乗ったんだから、お前も名乗るべきだろ。あ、ついでに日付も教えてくれ」
「あー、もしかして、普通にお店に用があるんですか?」
「店も開いてるのか?」
俺も現代で店屋でも開けば儲かるかな?
「あ、はい。最近地球から来た人にこの星について無料で教えてるんです」
「よし、今から俺は客だ。別に現在のこの星のことは知らないからな」
「そうですか。では、こちらへどうぞ」
それにしても広い場所だなー。部屋がたくさんあるぞ!
「あ、申し送れました。僕は雷之 凍流という名で、一部では凍流川の主人公とか言われています」
「こーりゅー川?そんな川、この辺りに存在したか?」
「昔はなかったんですが、とある島にある神社の子が海の一部を凍らせて、この町と神社のある島を結ぶ、凍った橋を無理やり作ったんです」
その神社の子供と知り合いかもしれません。
というか、凍流は名前繋がりでそんな名前をつけられただけじゃ?
「でも、そんなことしていいのか?」
「同じ神社に住む神様が許可を取ったという話ですし、問題はないと思いますよ」
それも知っている子です。
「で、主人公の部分の話を詳しく聞かせてもらいたいんだが」
「さぁ?それは僕の家系に関することだと思いますけど」
あぁ、それなら何の問題もないんだ。
「到着しました。って、あ」
おや、椅子の上で女の子が寝ているぞ。
「もう、何でこんな時に寝てるんですか!すみません、すぐに何処かへ移動させますので!」
「んー、朝ですか?」
あ、起きた。
「もう昼です!…それより、この人はお客さんですから、説明とかをしておいてください」
「え、私がですか?」
「僕は昼食の準備とか、掃除とかで忙しいんです。では、お願いしますよ」
「はーい」
凍流は女の子に指令を出して部屋を出ていった。
というか、この女の子が少し可愛いんだが。
「えーっと、自己紹介しますね。私は此処でお手伝いをしている町明 咏です」
「俺は雷之 悟。何かいろいろ聞きたいんだが、まずは日付とかを教えてくれないか?」
「日付ですか?今は特星暦七百年の春です」
…意味のわからない単語が入ってたぞ。
「特星暦って?」
「特星の歴史を表すもので、二百年前に作られました。今日は七百年目を記念して、ほとんどの人が瞑宰京という特星の中心の町に行ってるんですよー。特星暦の誕生と同時に月日と週が無くなり、季節で呼ばれているんです」
要するに何年のどの季節かしかわからなくなったのか。
「あのー、貴方は何者なんですか?特星暦を知らないなんて、極度の引きこもりの人か七百年寝てる人くらいですよ」
「そっちの方が珍しいと思う。俺は過去人的な主人公だ」
「あー、主人公なら仕方ないですね」
さて、そろそろ本題に入るか。
「俺と同じ苗字と名前の人はいるか?」
「確か凍流さんの家計に居たと思いますが」
よし、これで全てを解決できる!
「その人は誰と結婚してるんだ?」
そう、子孫的な人が居るんだから、俺は結婚済みということ!相手を此処で調べても何の問題もない!
まぁ、妹達の子孫の可能性もあるが。
「そこまでは私もわかりません。三世代前までならわかるんですが」
「えー」
く、俺の作戦は失敗だったか!
「ただ、現在も生存確認はされてます」
「おー、流石特星」
俺も自分の将来が楽しみだ。
「あ、そういえば、誰がどの特殊能力を使うかわかるか?」
「わかりますけど、今は特殊能力を使う人はほとんどいませんよ」
「えぇ!?」
確かに現代でも減少傾向にあると聞いたが、まったく居なくなったのか!
「皆最初は特殊能力を喜ぶんですが、日が経つにつれて使わないようになっていく場合が多いです。一部の人たちが、その状況を何とかしようとしてるみたいですけど」
おー、未来もそれなりに大変なんだな。
「それでどんな能力の人を調べたいんですか?」
「過去に対して影響を与える能力とかはあるか?」
「あぁ、クーフウシャさんのことですね」
クーフウシャさんって誰だ?
「知り合いか?」
「あ、はい。さっき言った特殊能力復興者の一人です」
特殊能力復興者とは言ってないけどな。
「場所は?」
「瞑宰京に行ってるか、神社で遊んでるか、寺で休んでるかだと思いますよ」
行動パターン読まれるくらいだから、たいした奴じゃないだろうな。
「あ、ところで蜂蜜味の歯磨き粉はいりませんか?」
「歯磨き粉?」
「副業で歯磨き粉専門店をしてるんですよー。今は季節限定の激甘バニラ味と超黒砂糖味がお勧めですが、お一つどうですか?他にもこの館の本も凍流に秘密で販売中です」
どう考えても歯に悪影響を及ぼしそうだな。
ってか、本とか売ったら専門店にならないだろ。
「いや、もう少し使い道の多いものが良いんだが」
「そうですねー、同姓との縁を切ると言われるお菓子とかは?」
女子となら縁を切りたい奴が居るんだけどなぁ。特に魅異とか。
「逆に同姓同士の縁を深めるものもありますが」
「少なくとも俺が使うことはないしなぁ。…いや、待てよ」
女子同士に食わせたら凄く良くないか?
「いくらだ?」
「えぁ!?買うんですか!」
「お、お、俺が使うんじゃない!ただ、たまには俺が悪戯側の気分を味わいたいだけなんだ!」
そう、これはちょっとした主人公の悪戯なのだ。普段の苦労に対する軽いお返しだ。まぁ、大惨事になるということもないだろう。
…とか思うのは大惨事になるフラグだ。だが、それを自覚した時点でそのフラグは無いも同然!これで大惨事は回避できるっ!
「で、いくらだ?」
「えーと、千五百セルです」
「はいよ」
おまじない位の効果はあるかな?
さて、俺はあの後にあの館を出たが、少ししてから重大な事に気づいた。
「道を聞き忘れたぁっ!」
そう、場所の名前はわかるが、そこに行くまでの道がわからないのだ。
というか、場所の名前と帰り道も忘れた。
「く、絶体絶命の大ピンチ!このままでは時間の無駄遣いじゃないか!」
よし、目を塞いで回転して、適当に止まった方向に行こう!
「それそれぇっ!主人公回り~!」
まだだ、神経を集中させるんだ!
「…ここだぁっ!」
適当な場所で止まり、そのまま前方へ全力ダッシュ。
「ぐへっ!」
だが、壁らしき場所に思いっきりぶつかった。
「あたたた、走る前に前方確認するべきだった」
とりあえず、何処に向かうかを決めないとな。
「確か瞑宰京か寺か神社だったな」
何処へ行くにしても海を渡る必要があるのがなぁ。
「もし、仮に俺がクーフウシャと勝負することになったとしよう。その時の勝負場所が、人の大勢居る場所になる確率は皆無だ!」
だから瞑宰京に向かう必要はないということだ!
「となると、残るは寺か神社なわけだが、この二つの施設同士は近いから、どっちから行っても特に問題はないと思うぞ」
でも、その二つがある島にどうやって行こうかなぁ。船に乗るにも場所がわからないし、送ってくれそうな人は居ないからなぁ。
「あー、立ち止まってたら寒くなってきた!…あれ?」
今は晴れてるのに、妙に冷たさの混じった風のような気がする。
「潮風みたいだが、もうすぐ春なのにこの冷たさ。どう考えても解決策があるってパターンじゃないか。もしくは戦闘」
ま、行くしかないんだろうな。
~甘い氷の凍流川~
「おー、綺麗な氷の橋があるな。凍流も確かこの橋のことを言ってたなぁ」
それにしても、何で凍流川って名前なんだろう?名前のせいで忘れかけてたが、此処は海だぞ。
「俺の中の特星七不思議に追加できそうだ」
まぁ、気にせずに渡るか。
「あー、到着地が見えない」
急にやる気がなくなってきた。
「げ、濡れた」
橋は溶けてないが、海の水が高くて靴が濡れた。
「鮫とか出たら怖いなぁ」
勝てるけどさ。
「暇だ」
退屈。
「………」
言葉が出ません。
「………よく考えたら、船でも時間掛かるのに歩いて着くのか?」
普通は無理だが、悟ンジャーブラック走りを使えば着けそうだ!
「よし、悟ンジャーブラック走りぃっ!」
氷の上だから走りにくいが、速さはなかなかだ!
「って、着くかっ!」
このノリツッコミのために、一時間も全力疾走してしまった。
「うぅ、倒れそうだ」
というか、倒れた。
「あー、誰か看病してくれー」
あ、こんな時に眠くなってきた。
ってか、この氷が甘そうな気がしたんだが、全然甘くないし。
く、目が覚めた時には良い扱いを受けてやる!
「………はぁ」
いや、確かに欲張った自分が悪いさ。だから叩き起こされるくらいなら文句はない。
「でも、牢屋の中ってのは酷くないか?」
そう、今の俺は何処だか分からない牢屋の中に入れられている。まぁ、綺麗な部屋の牢屋だからまだマシだ。
だが、気絶して起きたら牢屋の中なんてのは初めてだ。ってか、意外にも俺が牢屋に入った回数はこれが初めてだと思う。
「あ、目が覚めた?」
牢屋の外から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「お前は力を操る何とか!」
「春夏だよ!むふふふ、私のことを知ってるって事は私を倒した後みたいだね!」
あれ、まるで倒されたかどうかを知らないような言い方だな。
「わかった!お前は高確率で未来の春夏だな!」
「私は現代の私に決まってるよ!貴方が過去の…えっと、悟ンジャーブラックなの!」
「人の本名を忘れるなんて最低だな」
「でも力を操れるから最有力だよっ!」
実はというと俺も春夏の本名は忘れてたんだが、そのことに気づいてないようだ。
とりあえず、今の状況について聞いてみるか。
「で、俺はどうして牢屋に居るんだ?」
「ふふふ、貴方にやられた仕返しに、私がお仕置きをするために連れてきたんだよっ!」
「せめて復習とか拷問とかじゃないと怖くないんだが」
「そんな物騒なことはしないから安心して大丈夫!」
仕返しは物騒のうちには入らないらしい。
「で、どんな仕返しをするんだ?」
「私が牢屋の外から集中攻撃!」
「嫌だなー」
そんな一方的な苛めを受けてられるか!
「春夏、隣同士の牢屋の棒を持ってみてくれ」
「え?うん」
「その後に握力と腕力を強くして、それを持ったまま大きく両手を横に広げてみろ」
「それっ!」
俺の言うとおりに行動する春夏。
牢屋の棒の部分が曲がり、出られるようになった。
「そして目を閉じて百万秒くらい数えたら目を開けるんだ」
「えー、多いよぉ」
「大丈夫!力を操れる春夏なら最強だからできるはずだ!」
「…うん、それもそうだね!」
「あ、疲れるから寝転んでやったほうがいいぞ」
そういってやると座布団にうつ伏せになり、数字を一から数え始めた。
数十秒くらいで声が小さくなり、百くらいで声が聞こえなくなった。恐らく寝てしまったのだろう。
「さて、何処に行こうかな」
どうやら俺の居る場所は地下のようだ。どうして牢屋は地下にあることが多いんだろう?
とにかく脱出だ!
~記紀弥寺~
「いやぁ、さっきの場所がアミュリー神社の地下だったとは」
人に見つからないように地上に出たら、神社の裏の家につながっていた。ちなみに地下は集合住宅じゃないかと思えるくらい広く、更に人に見つからないようにしていたので脱出に時間が掛かった。
ちなみに春夏以外の人はなぜか居なかった。もちろん、目的であるクーフウシャとかいう人も居なかった。
「ということは、寺に居るに違いない!」
「そこ止まれぃっ!」
「うぉっ!」
急に誰かが現れたので驚いて一歩後ろに飛び退く。
「お前はキール!」
この寺で一番の駄目幽霊、キールだった。
「ふふふ、記紀弥様との勝負で貴方は疲れてるはず!私の勝利は目の前よ!」
「あ、記紀弥とは戦ってないんだが」
「そして主人公クラスの敵を倒した私は褒美に有休がもらえる!更にはこの寺の主に任命され、神酒に自慢できる!」
駄目だ、まったく聞いてない。
「ってか、何で幽霊状態で現れないんだ?」
「ほら、幽霊状態だとアンタに物理攻撃が当たらないからよ」
幽霊の攻撃に物理攻撃があるのは微妙だな。
「今日の調子は好調よ!だから今日は休みだけど相手してあげるわ!」
「キールが休日に仕事?お前、偽者か?」
「本物よ!霊創、自縛爆霊サーパスト!」
悪霊のような霊が飛んでくるので回避する。
「あ、自縛爆霊は追尾するわよ。それ、霊追加」
キールがもう数匹霊をだす。
数匹の霊の追尾攻撃はやばいっ!
「げ、足が動かない!?」
「自縛爆霊に触れたら動きが封じられ、その数秒後に霊は自縛するわ!」
[ドカカカァッ!]
「うぉっと!」
霊の爆発後は体が動いたので何とか着地。
「悪霊、ホラー的怪奇現象!」
空中に斧やら剣やらの刃物が現れ、全てこっちに飛んでくる!
「なんの!主人公特権、一種九十九個の道具入手!」
それを俺は凄まじい動きで回避して、全てありがたくいただく。
「主人公の特権を利用するなんて卑怯よ!」
「待った。それ以上の文句を言えば、世界中のゲームの主人公とメーカーを敵にまわすことになるぞ」
「う、それは回避したいわ。私もそれなりにゲームするから」
お、現代のキールが相手でよければ勝負したいな。
「隙あり!霊装備、霊魔力砲」
キールの両腕に霊が集まっていくだと?
「この技は辺りの霊から力を吸収し、私の使える技に変換する必殺技。そして力を集める時間は三秒以内よ!」
それは良いんだが、隙ありとか叫ぶんならすぐに出せる技にするべきだろ。叫んだ意味がなくなるじゃないか。
「ってか、いい加減に反撃しないと。水圧圧縮砲!」
「よし、発射よ!」
俺の水圧圧縮砲とキールの霊魔力砲が同時くらいに撃たれる。
そして予想はしてたが水圧圧縮砲はかき消される。
「やっぱりか!いたっ!」
うん、あっちは力を集めてるから強いんだよ。
「そろそろ降参したら?絶好調の私に勝てるわけないわ!」
今日は何故だか調子悪いなぁ。記紀弥と勝負してたら危なかったかもしれない。
「ふふふふふ、苦戦しているようですねぇ」
おや、この変態的な喋り方はもしかして!
「私ですよぉっ!」
「雑魚ベー!」
「貴方は神社の変態男!最近寺によく来てたみたいだけど、また何か用なの?」
「あ、そうなんですか?私は過去から来たので、現代の私のことはよくわかりませんねぇ」
ってことは、俺の知ってる雑魚ベーか。
「あれ、何でお前が未来に?」
「希求さんとお話をしてたら迷い込んだんですよぉっ!」
恐らく、俺がこの未来に迷った後の事だろう。
「相手が一人増えたところでわたしの絶好調には敵わないわ!」
「残念ですが、私を倒せる存在は小学生の少女のみですよぉっ!」
あと主人公な。
「私も少女といえば少女よ。心はね」
「残念ですがそうでもありません。純粋さと健全さを失う危険信号は人間年齢の十歳から。その倍の年齢の貴方に、少女の資格などありませんよぉっ!貴方のような人が少女という言葉の、平均年齢を上げる原因になるんですからね!あと、最近は十代の年齢なら少女と思い込む人が居ますが、私的には実にくだらない意見だと思いますねぇ。小学生ですら少女らしくない子が存在するというのに、それ以上の人が少女?ふん、片腹痛いですよぉっ!」
「お、スケベープログラムが発動したか」
説明しよう。スケベープログラムとは、雑魚ベーみたいなやつ専用の状態異常のようなものである。雑魚ベーの場合、少女などについて自分の意見を力説する。この状態異常の間は、何故だか発動者の能力が上がるが、場合によっては手がつけられなくなるので注意が必要だ。
ちなみに名づけたのはこの俺である。名前の割にスケベな内容はあんまりないけどな。
「隙が多いわよ!偽霊宝、世界一の霊手裏剣!」
キールの周りに霊が現れ、光る手裏剣を投げてくる。
「霊手裏剣は気分を悪化させるという金属で作られた、まさに世界に一つだけの伝説の手裏剣よ!これだけ投げれば、あなた達のやる気はほとんどなしになるわ!」
「でも、どう考えても銀の折り紙だぞ、この手裏剣」
第一、世界に一つの手裏剣を大量に持ってる時点でありえないしな。
確かにやる気は減ったけどな。
「こうなったら、超強力な私専用の技で決めてやるわ」
「なら、私も凄まじい技でいきましょうかねぇ」
「なら、俺は見てるか」
どっちが勝つか見届けてやろう。
「秦刀と逝刀を装備しますねぇ」
雑魚ベーは何処からか二本の刀を取り出す。あの二つの刀は曲刀で、雑魚ベーがカムを考え出すきっかけになった刀かもしれない。ちなみに結構良い質なので、高値で売れそうだ。
「さぁ、覚悟!究極霊魔術、キール!」
「いきますよぉっ!隠し必殺技、オーバーカム!」
二人が技名を言い終わると同時に大爆発が起こる。
「おー、凄いなぁ」
二人の技の威力に適当に感心する。
そういえば、洗濯物を干し忘れてた。
「あれ、二人とも居ない?」
〔こっちよこっち〕
お、キールが何故か幽霊状態で登場。
「何で幽霊状態なんだ?」
〔あの技使うと反動があってね、幽霊状態にならないと次の日に筋肉痛になるの〕
確かにそれは仕方ないな。
「復活ですよぉっ!」
「あ、雑魚ベーが復活した」
「いやー、興奮しすぎて自ら蒸発しちゃいましてねぇ。おかげで相手の技は避けましたけど」
〔私だって避けたわよ。じゃ、私は疲れたから休んでくるわね〕
キールはふらふら揺れながら何処かへ飛んでいく。
「キールさんはまだサボり足りないんですかねぇ?」
「いや、今日はサボってなかっただろ」
俺をかなり苦戦させてたけどな。
「悟さん、キールさんの能力を覚えてますよねぇ?」
「ん?サボっても気づかれない能力だっけ?」
「そうですよぉっ!そして、悟さんは能力の影響を激しく受けてますねぇ!」
何が言いたいんだ?
「キールさんの技がどんな技か覚えてませんか?」
「んー、確か自縛爆霊が追いかけてきたり、悪霊が刃物を空中から飛ばしてきたり、幽霊に何か集めてもらって発射したり、霊が伝説の手裏剣を投げたりだな。…あ!」
よーく考えてみろ、これらの技にはあることが共通してるぞ!
「そう、最後の究極霊魔術以外の技は、他の幽霊に任せてたんですよぉっ!」
「攻撃をサボってたのか!」
く、全然気づかなかった!
「恐らく私は途中から来たので、能力の影響を受けなかったんでしょうねぇ」
くそー、上手いこと騙されてた!
「まぁ、落ち込まずに行きましょう!ところで、どうして悟さんはこんなところに居るんですか?」
「そういえば、説明してなかったな」
俺は雑魚ベーに未来に来た理由を話しながら、最上階へと足を運ぶのだった。