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十話 主人公は大事にしよう

@悟視点@


あー、皆さんお久しぶりですね。


何が久しぶりかは知らないけど、何かが久しぶりだと思う。


ちなみに主人公は大事にするべきだと俺は考えている。だって、物語は主人公が居て成り立つんだし、登場回数と人気度とイベントが一番多くないと駄目だ!長髪のロリコン変態アハハハ雑魚ベーなんてのは論外だと考えるべきだ!


「そう、主人公はアイドルだ!」


「あの、ランクが下がってますよ。というか、アイドルだと女性限定になっちゃいますよ」


ってか、何で魑魅がツッコミをやっているんだ。


今日は元旦の次の日である。更に言うと、この回はの話一つ前の回の話と途中まで同時進行である。


ちなみに希求は雑魚ベーの家に朝風呂に入りに行っている。雑魚ベーと一緒に入るらしいが、安全対策と問題対策は教えたから大丈夫だ。


「悟さん、新聞を見てください。特星が凄い事件に巻き込まれてるようですよ」


「どれどれ?」


魑魅に渡された新聞を読んでみると、怪我をした人が載っていた。しかし、傷口から出ているのは血ではなく、なんか謎の物体的な黒い液体だった。


「おいおい、この謎の物体的な黒い液体は何だ?ってか、どうして特星で怪我をしているんだ?」


「その液体は見た目通り、謎の物体と特星内で騒がれてますね。人を別世界に送り、送った人の偽者が特星に住むんですよ」


「その偽者の正体が謎の物体ってわけか」


魑魅は自分は既に知っていたかのように話すが、全て新聞に書いてあることだ。


それにしても、これは感染みたいな広がり方だな。


「妹達は大丈夫か?」


「希求さん以外は小学校ですからね。偽者が一人でも学校に居たら駄目ですね」


いや、偽者を倒せる奴が居たら大丈夫だろ。


それにしても、記憶とかも本物と同じ偽者なんか居るのか?


「ま、悟さんは大丈夫ですよね。悟さんの知り合いは強い人ばかりですから」


魅異や羽双とかは確かに反則的だよな。


「って、それはどういう意味だ!俺は強くないとでも言いたいのか!」


「言いたいですけど、嫌われる可能性がありますから言いません。だから、安心してください」


「既に言ってるだろ!」


確かに自覚はしてたんだが、ハッキリ言われるとショックだ。


これでも普通の殺し屋とかより強いんだけどなぁ。


「まぁ、主人公よりヒロインが強いなんて良くありますよ」


魑魅、笑顔でそういう事を言っても、場合によっては相手を惨めな気持ちにするんだぞ。


「そんな事は気にせずに、お菓子でも食べて元気を出しましょう」


「そのお菓子は俺のなんだけど」


まぁ、魑魅に買ってきてもらったお菓子だけどさ。


「そうだ!悟さんがこの事件を解決するのはどうですか?この事件で特星の人が全滅する可能性があるらしく、国から莫大な賞金も出されていますよ」


まぁ、全滅よりは大赤字の方がマシだよな。


「で、いくらだ?数億は軽くあるとは思うが」


「十兆ですね」


「って、十兆も出すのかよ!」


魑魅が平然と言う事にも驚いたが、金額にはもっと驚いた。


校長への借金が前回聞いた時は二兆二千億だったから、それに多少の利子が追加されていても払える!


「よし、多くの人を助ける為にこの事件を解決してやろう!」


「その前に悟さん、思ってもいない事を口にすると、嘘付けとか、この主人公最悪だとか、出番減らすぞとか、いろいろ思われますよ?」


最後のは特に困るんだが。


「じゃあ、借金返済の為に頑張るぞ!」


「私も全力でお手伝いします!」


さて、とりあえずは敵に関する情報集めだな。


「まずは謎の物体の性質が分かる奴が必要だ」


「ふふふ、それなら心当たりがあります!」


魑魅が自信満々に言う。


まぁ、俺には心当たりがないから任せるか。


「すぐに呼んでこれるか?」


「もちろんです!では、数秒待っててください!」


そう言うと、凄い速さで家を出て行く魑魅。


「おまたせしましたぁっ!」


「うおっ!」


何も無いところから急に魑魅が出てくる。


「邪魔するぞ」


魑魅の後に出てきたのは衣宵だった。


「衣宵じゃないか。十月の事件以来だな」


「真っ先に言っておくが、今回の事件は私が起こしたわけじゃないぞ。もちろん、偽者でもない」


別に疑ってるわけじゃないんだが。


「では、衣宵博士の研究材料を集めてまいります!」


「あぁ、できる限り無傷で頼む」


魑魅は偽者を捕獲しに出ていく。


「何で私が博士なんだ?」


「まぁ、そういうなよ衣宵博士。ところで、今回の事件の謎の物体の性質とか分かるのか?」


衣宵は未知を操る能力だから、逆に性質が分からなくなる気がするんだが。


「分からない。だが、謎の物体があればなんとかなるぞ」


「どういう理論だ?」


「私が謎の物体の未知の部分を見破る」


要するに、能力を使えば分からない事が分かるのか。


テストの時にどうにかして使えると便利だけどな。


「そういえば、偽者退治の会議を記紀弥の所で今日するらしい。私も参加するつもりだが、悟はどうする?」


「あ、そうなのか。それなら俺も参加するか」


だが、賞金が山分けになる可能性があるな。


「というか、記紀弥達の事を知ってるのか?」


「当然だ。お前の知り合いは私の知り合いだと思え」


ま、数ヶ月も経てば知り合いも増えるのは当然か。


というか、待ってる間が暇だなー。


こういう時には怪しげなボタンとかがあればなぁ。


「悟、そこの怪しげなボタンは何だ?」


「あるのかよ!」


うわっ、本当に壁に黒々しさを放ってるボタンがあるし!


ってか、勝手に俺の家にこんなものをつけたのは誰だ!


「で、このボタンは?」


「俺は知らないぞ」


これは俺に対する試練か何かか?


「衣宵、ボタンを押したい衝動が体中を駆け回らないか?」


「全然駆け回らないな。むしろ、押すなという感覚のほうが大きい」


俺も同意見だが、俺が押さなくても誰かが押す展開になると思う。


「だからボタンを押す!」


[ピッ]


あれ、足元の感覚がなくなった?


下を見ると真っ暗な大穴がある。


「あー、やっぱりこうなるのか。まぁ、どこに落ちても大丈夫だろう」


いろいろと慣れているんだよ。






〜謎の世界的な場所〜


「お、明るくなってきたぁ!」


[ドガッ!]


「のはぁっ!」






「ったぁ〜、この展開の速さは何なんだ?」


というか、此処はいったい何処なんだ?


「あ、起きた?」


誰かの声が聞こえたから再び眠りの体制に入る。


「って、起きろー!」


「ぶはぁっ!」


額を何かで突かれた。


寝かせてくれそうにないので起きることにする。


「って、子供?」


目の前にいたのは少女らしき子供だった。


「うわ、近寄るなぁ!」


いや、起き上がっただけなんですけど。


なぜだか知らないが警戒心的なものを感じる。


「あのさ、どうしてそんなに構えてるんだ?」


「うぅ、あなたは銃を持ってたけど強盗なの?」


え、銃なんか持ってきてたっけ?


「少なくとも強盗じゃないから安心してくれ。それで君は?」


「え、あっ、私は天川あまかわ 美矢みやです」


「あ、普段から敬語じゃないなら、わざわざ敬語を使わなくてもいいぞ」


「あ、うん」


年上にちゃんと敬語を使う子供を久しぶりに見た気がする。


「あの、あなたの名前は?」


………あー、何だったっけ?


これは展開的にはよくある記憶喪失!?


「あー、覚えてない」


「ええぇっ!」


当然だが驚かれる。


ってか、俺は本気で記憶喪失みたいだ!


「ど、どうするべきだ?」


「え!いや、私に聞かれても困るんだけどなぁ」


まぁ、知らない人が記憶喪失じゃあ困るのは当然か。


うーん、身分証明的な免許証とかはないのか?


「なら、警察に相談したら?」


「いや、俺って銃を持ってたんだよな?確実に捕まるだろ」


というか、銃を持ってる人を助ける子も珍しいなー。


ってか、銃を持ってた俺は殺し屋的な職業じゃないだろうな?


「でも、本物みたいな銃の他に水鉄砲とかもあったよ」


「な、なぜに水鉄砲?」


「いや、私に聞かれても困るけど」


という事は、劇の役者みたいな仕事をしてたのか!


「あ、この紙にお兄さんのことが載ってるよ」


「え?」


持ち物を適当に出しまくっていると、美矢がその中から何かの紙を見つけ出す。


「おー、本当だ」


紙には悟ンジャーブラックという文字と一人の男の絵が載っていた。ただし、服装は真っ黒なようだが。


「鏡ならあるよ」


「ん、ありがとう」


確かに紙に載ってる絵の男と同じ顔のようだ。


「なるほど、俺の名前は悟ンジャーブラックらしい」


「いや、違うでしょ。どうみても戦隊の内の一人の名前だよ」


意外にに呆れたようにつっこまれると悲しいな。


悟ンジャーブラックか。…略して黒悟ってのでどうだろうか?


「よし、名前がわからない間は戦隊せんたい くろさとると名乗ろう」


「凄く適当だし!」


でも、苗字が戦隊というのは判りやすくないか?


「ところで此処は何処だ?」


「赤野県の赤野町だよ」


赤野県なんて聞いたことはないが、日本であることは確かなようだ。


「あ、私、公園で友達と会う予定があるんだけど、黒悟さんも来る?」


「そうだな、ついて行っても良いなら是非行きたいな」


とりあえず、町の事を知る必要があるからなぁ。






「着いたよ」


「早っ!」


公園は美矢の家の隣にあったようだ。


家が数件分くらいの大きさで、駐車場的な場所は見当たらない。


「というか、人がまったく居ないな」


「まぁ、大抵の子供は勉強でもしてるんでしょ。寒いし」


確かに外は結構寒い。


「今は冬か?」


「うん。今日は元旦の次の日だよ」


昨日が元旦だったのか。


「おーい!美矢ちゃーん!」


あれ、俺と美矢以外の誰かの声が聞こえたぞ。


「あぁ、やっときた。黒悟さん、周りじゃなくてあの家のベランダだよ」


「ベランダ?」


美矢の言う家のベランダを見ると、一人の少女が手を振っていた。


「あー、あれか」


そしてその少女はベランダから飛び降りた。


「って、飛び降りた!?」


「あー、アイツなら大丈夫だよ」


少女は塀の上に見事に着地して、さらに回転して地面に着地した。


………よし、後でできれば挑戦してみよう。


「あれ、美矢ちゃん、この人は誰?新しい漫才の相方?」


「あのさ、私がいつ漫才師になったの?」


「ついに私とのコンビも解散かぁ」


「コンビなんか組んでないよ!それ以前に漫才師でもないから!」


おぉ、この二人はもしかして漫才師なのか?コンビネーションとかはかなり良さそうだ。


美矢のツッコミを俺も見習わないとな。


あー、でも、俺って相方とかはいたのかな?


「この人は記憶喪失なんだって。今のところは戦隊 黒悟さんって名前で名乗ってるよ」


「おー、かっこいい名前!」


美矢の友人らしき子が羨ましそうな目で見てくるが、この名前は本名の可能性があるからやらないぞ。


「えっと、こっちは私の知り合いのしん 美異みいちゃんだよ」


「むっ、美矢ちゃん、知り合いじゃなくて相方!」


「いや、相方じゃないって」


美矢がツッコミで美異がボケのようだ。


とりあえず、これまでに気になった事は特にないな。


あ、でも、美異ちゃんの名前と苗字が、特星の社長の名前と苗字の読み方と同じだ。ま、そんなのは偶然だろうが。


………こういう事を偶然と考えると、偶然じゃないという事が多いんだよなぁ。


「それじゃあ遊ぼう!」


「えー、宿題はしなくて良いの?」


「宿題の問題用紙と同じ問題用紙を買ったから大丈夫!買った問題用紙には解答用紙もついてるから!」


うわー、ある意味賢い考えだが反則だろ。


「判ったよ、もう」


美矢は呆れているようだ。






「遊ぶ前に二人に面白い話をしてあげよう!」


「えぇー」


美矢は美異の話を聞くのが嫌なようだ。


というか、俺も正直気が乗らないんだが。


「あ、嫌なら断ってもいいよ」


「私は嫌だ」


「あ、俺も」


「じゃ、話すね!」


さっきの質問の意味は!?


「今日見た夢の話なんだけどね」


夢の話なら夢オチにすれば良いんじゃないか?


「記憶を操る人が、自分の事に関する記憶を消す技を使ったんだけど、それで自分の名前まで忘れちゃってさー!朝起きたら私、少し漏らしてたんだよ」


「………美異ちゃん、その後に下着は替えたの?」


「あ!………夢に出た技が原因で覚えてないよー」


「じゃ、何で夢のことや朝のことを覚えてるのさ?」


美矢の的確な指摘で美異は声が出ないようだ。


というか、結局何がしたかったんだ?


「じゃ、遊ぼうか!」


「変えてないんだよね!?なら、今から変えてくれば良いじゃん!」


「もー、美矢ちゃんは細かいなぁ。小学生の少女に汚いところはないから大丈夫だよ!」


誰の理論だよ!


「そんな訳ないし、自分で言う言葉じゃないよそれ!」


「いやぁ、昨日の夕方に森に居た人が言ってたから真似しちゃった」


実際の小学生にそれを言うか?


というか、この二人は小学生なのか?


「え、森に人が居たの?」


「うん。長髪のコスプレした大人の人なんだけど、私と同い年くらいの子も一緒だったから誘拐犯だと思うよ」


「いやいや、普通に考えて親子でしょ!」


………俺の予想では変態だと思う。


「ところで、この辺に森なんかあるのか?」


「あ、うん。美異ちゃんの知り合いの土地なんだけど、神聖な場所がたくさんある場所だよ」


神聖な場所って事は宝物とかもあるのか?


あー、あっても持ってったら駄目か。


「どんなやつだ?」


「神出鬼没のお姉さんで、確か名前と苗字の読み方が美異ちゃんと同じだったよね」


「私、難しい漢字は苦手だわ。だから、どんな字だったかは覚えてないねー」


「どれだけ記憶力悪いのよ」


それって例の勇者社の社長じゃないか?


「自由に使っていいって言ってたから、少し前に秘密基地を作ったんだよ!」


「また、美異ちゃんは勉強せずにそんな事してたの?」


「もちろん!」


「威張れることじゃないでしょうが」


それにしてもこの二人は息がピッタリだなー。


でも、美矢はツッコミで疲れてるようだ。


「あ、そうだ」


いろいろと大変そうな美矢にはツッコミ役の秘宝を上げよう。


「美矢、ツッコミは大変だろうからこれを受け取れ」


「これって、ハエ叩きじゃん!ツッコミ苦労と何も関係ないよ!」


おぉ、ナイスツッコミ。


だが、俺は意味のないものを渡すわけないだろう。


「それはツッコミ用のハエ叩きだ。だから、虫を叩かずにボケた人を叩け!」


「でも、危ない気がするなぁ。というか、普通ハエ叩きを持ち歩くかな?」


「必要以上に安全なハエ叩きだから大丈夫だ。全力で叩いても衝撃はあるが、痛さはないし跡もつかないぞ」


でも、何処で入手したのかは覚えてないんだよなぁ。


「あ!美矢ちゃんだけズルイ!ねぇ、私には何をくれるの?」


いや、ツッコミ用の物しかないんだが。


というか、俺はツッコミ役だったのか?


「今はそれしか持ってないから後でな」


「絶対だよ!」


絶対かどうかはわからん。






〜全速迷走の森〜


ということで、俺達は森に遊びに来た。


この森の名前は全速迷走の森だと、この森の持ち主が言っていたらしい。


「記憶がない者がこの森に入った時、野性の本能に目覚める!そして、欲望に素直になり近くの少女を襲うのであった!」


「…俺が?」


まず、その話が本当なら、実況してる暇はないと思うんだが。


「美異ちゃん、黒悟さんにかなり失礼だよ」


「おおっと!美矢ちゃんも黒悟の手に落ちてしまったぁっ!そう、美矢ちゃんは単純思考だからすぐに敵に利用されるのだった。いやー、その単純さを分けてほしいねぇ」


「それは私の台詞だっ!」


まぁ、子供なんて皆こんなものだろ。


それにしても平和そうな雰囲気の漂う森だな。


「この森に入って出られた者はいない!」


「じゃあ、美異ちゃんは森で人を発見した後、どうやって家に戻ったのよ?」


「え?あ、えーと、夢オチ!」


それは実際に発見したことにならないだろ!


「とりあえず、秘密基地に案内するね」


というか、美異の行動が男の子勝りだと思う。


今時の子供は秘密基地とかは作らないだろ。……ある意味、美矢や美異みたいな子供のほうが良い生活だと思うけどな。


………過去を思い出す的なシリアスな気分になってきた。いや、記憶はないけどさ。






〜神秘と重なる秘密基地〜


「とうちゃーく!」


到着した場所にあったのは基地というより小屋だった。


…これを一人で作ったのはある意味すごいと思うけどな。


多くが薄い木の板で出来ているようだ。


「お、来たね〜」


ん、秘密基地の中に誰かが居るようだ。


「あ、神離さん!」


「私?」


「美異ちゃんのことじゃないよ!」


どうやら、この森の持ち主の人らしい。


年は俺と同じくらいの女の子で、結構可愛い子だ。


「悪いけど、そこの男に用があるから二人は外に居てくれる〜?」


「えー、私の秘密基地だよー!」


「ケーキをあげるよ〜」


「じゃ、外で待ってるね!」


うわぁ、恐ろしく物でつられてるなぁ。


あ、この人に聞きたいことがあったんだ。


「この場所は平和だけど、私達には合わないと思わない〜?」


「へ?」


まぁ、平和そのものは確かだが、合わないことはないだろう。


というか、この子は何を言ってるんだ?


「旅行で来るには良いと思うけど、この世界には非科学的な能力は存在しないんだよね〜。まぁ、出来る限り人に知られないようにした方が良いと思うよ〜」


「いや、何を?というか、誰?」


「ふふふん、記憶喪失者にそんなことを教えたら面白くなくなるよ〜」


こっちは面白いとか関係なく真剣なんだけどなぁ。


「今回の特星の問題も遊び程度のことだけど、遊びの範囲が常識外だと後が大変になるんだよ〜。捕まった人の待機場所が別世界だと帰れなかったりとかね〜」


「んん?」


「まぁ、そんな遊びがないと面白くないね〜。それに負けた場合でも別のストーリーがあるなんて珍しい事だよ〜」


何を言ってるか全然判らんが、俺のことを言ってるのか?


「ちなみに負けの条件は?」


「特星から追い出された時点で負けだね〜。ただし、特星に帰還した場合は負けではないよ〜」


どうやら俺は特星から来たらしい。


「俺が特星に戻る方法は?」


「無理だね〜。別世界を移動できる人なんかほとんど居ないよ〜。まぁ、移動したメンバーも居たから、黒幕はそっちが倒すだろうね〜」


とりあえず、どうすればいいんだろうか?


「俺にどうしろと?」


「別にどうしろとも言わないけど、負けを認めて黒幕じゃない犯人を倒すのが普通だね〜。………記憶を操れる人物なら場所を知ってるよ〜」


明らかにそいつが真犯人じゃないか!


「場所は此処の真上の雲辺りだね〜。でも、敵には味方も居るようだし、場所的に空中戦になるだろうね〜」


おおっ、かっこいいシーンが頭に浮かぶぞ!


「まぁ、相手の居る場所の性質は特星と似てるから、全力で安全な勝負が出来るね〜」


全力勝負が安全なんておかしくないか?


「そうそう、この世界の人にハッキリ気づかれない時なら、いつでも空を飛べるようにしておいたよ〜。夜中にでも試しておいてね〜」


えっ、本当に飛べるのか?


「あと、これはおまけ的な事だけど、美異は私の家族なんだよ〜」


「いや、どうでもいい」


「ふふふ、なら、記憶が戻った後も同じ事を言ってね〜」


それは約束できないかもしれないな。


とりあえず、この場所の持ち主は外へ出て行く。


「ふぅ、やっと入れたー」


「美異ちゃんは短気すぎだよ。ところで何の話をしてたの?」


「あー、なんかいろいろと話してた」


ありえない話が混じってたけど、今日の夜に空を飛べたら真実ってことにしておこう。


「よーし、それじゃあ遊ぼう!」


あー、これからが一番大変そうだ。






〜美矢の家〜


あの後は暗くなるまでずっと三人で遊んでいた。


運動不足なのか、腰と背中が妙に痛い気がする。


「明日は筋肉痛だろうなぁ」


一晩寝たら筋肉痛になるのなら、ずっと寝なければ大丈夫か?


「精神が持たないな」


「さっきから何を考え込んでるの?」


俺の独り言が聞こえたらしく、美矢が何を考えてるか聞いてくる。


「筋肉痛の回避方法なんだが、どうすれば良いと思う?」


「我慢すれば?」


まぁ、徹夜するよりは良い考えだな。


ちなみに俺と美矢は美異が来るのを待っている。美異は親に美矢の家で朝食を食べると伝えに行っている。


「ところで、美矢の親は?」


「あー、泊まりこみで遠くの県に出かけてるんだよ。だから、普段は美異ちゃんの家でご飯を食べるんだけど、今日は人数が無駄に一人多いから私が作ったの」


本人は言って気づいてないみたいだけど、無駄って言われた。


「やぁ!つまみ食いしていて遅れたよー」


「普通食事前につまみ食いしてくるかなぁ?あ、鍵は閉めた?」


「ドアを開けた状態で鍵を閉めたよ」


「……閉めてくるね」


美矢はドアの鍵を閉めに行く。


…美異がその間に美矢の分の唐揚げを食べている。


「んー、普通の唐揚げだね」


普通の以外にどんな唐揚げがあるんだ?


ちなみに唐揚げは一人数個なので、ドアを閉めに行く前に数を数えていれば気づくだろう。


「まったく、変な人が来たらどうするのさ」


「美矢ちゃんが脱いでる間に私が助けを呼びに行く!」


「誰が脱いでたまるか!」


というか、よっぽどの少女好きにしか通じないだろう。


ちなみに俺が犯人なら驚いて逃げ出すな。


「あれ?」


お、美矢が唐揚げを見て固まったぞ。


「…美異ちゃん、唐揚げの味はどうだった?」


「え、まだ食べてないよ」


いや、食べてただろ。


「私の唐揚げが減ってる気がするんだけど」


「やばいっ!」


「あ、待てー!」


美異が逃げたので美矢がそれを追いかける。


二人の唐揚げを一つずつ頂いておくか。






「いやー、結構満腹だ」


だが、二人の分の唐揚げを食べたことは気づかれてしまった。


ちなみに二人は一緒にお風呂に入っている。


まぁ、子供らしいと言えば子供らしくていいけどな。


「さて、どうするかなー」


そういえば俺の持ってきた物って何処にあるんだろう?


確か二階の部屋で目が覚めたんだったな。


「ちょっと見てくるか」


それにしても、銃なんて危険物を持ち歩くなんて、本気で役者であることを祈る。


「偽者でありますように」


と言うわけで二階の部屋に入る。


「あれ、看病してもらった部屋と違うな」


やけに木くずや瓦などが落ちていて、天井には穴が開いている。


「…落ちてきたのか?」


落ちたとしても、よく瓦とかを突き破って無事だったな。


俺の体って結構丈夫なんじゃないか?


「まぁ、役者なら怪我に備えて体を鍛えてもおかしくないな」


少々、鍛えすぎだとも思うが。


「お、銃とかが落ちてる」


うーん、偽者の可能性もあるが、分解して外に捨てておこう。


「何か、水鉄砲やら玩具の銃みたいなのも混じってるぞ」


玩具の方にはエクサスターガンと彫られている。


銃の名前だろうか?


「何してるのー?」


「うおっ!」


後ろを見ると美異がいつの間にか居た。


「おぉっ、やけに良い形の銃だね!ちょっとかして!」


「えっ?あー、駄目だ」


「えー、なんでさ?」


非常に危険な気がするからだ。


「外でも見てろ。星が綺麗だぞ」


実際は星が見えるかは知らないが。


「あ、何か変なのが浮いてるよ」


「変なの?」


外を見ると確かに変わった生物が空を飛びまわっていた。


結構遠いが、どうやら竜のような生き物のようだ。


「映画の撮影の様子だな。視力が落ちるから気にしたら駄目だ」


「お、詳しいね」


いや、嘘だけどさ。


「そうそう、美矢に出かけてくると伝えといてくれ」


「わかった!」


さて、あの竜が見方だといいんだけどな。


というか、敵だったら勝てないだろ!


というわけで、俺は竜の飛んでた場所へ向かうのであった。なんとなくこの台詞は言ってみたかった。

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