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4 最速の成り上がりリベンジ③




 どこか見覚えのある女神だった。


 良く見ればオレが地球でトラックに跳ねられて時空の狭間におちて、空から落下してドラゴンにぶち当たって、さらに落ちて死にそうなときに「私のせいでこうなったごめん、転生するかー?」みたいなことを言っていた女神だった。


「あっ。落ちちゃった」


 メルカが5ムンキロ先を見て言った。

 オレも確認すると5ムンキロ先の女の子は、木から落下してしまっていた。ああ……。


「ちょっと、どちらを見ているんですか?」


 女神が表情をゆがませて言った。


「いや……その、5ムンキロ先の星で、女の子が木から落ちそうで助けに行くところだったんです……」

「あ、そうでしたか……。ではどうぞ助けに行ってください。私の用はそれからでも構いませんので」

「いや、死んだよ」

「えっ……!」

「間に合わずに落ちて首の骨が折れて死んだ」

「……っ!!」

「女神さまが目の前に出てこなければぎりぎり助けられたんだけど……。あ、ごめん。女神さまは悪くないよ。知らなかったんだし」

「うん、仕方ないよー」


 メルカも同意する。


「それで女神さまは何かご用ですか?」

「なんのご用ー?」


 オレとメルカが二人して尋ねる。

 オレ達に来客なんて、これまで一度だってなかったから興味があった。


「わ、私はその……」


 言いにくそうにする女神。

 まぁ気持ちは分かる。だが間が悪かっただけだ。仕方ない。


「はい、なんでしょう?」

「なにー?」


 続きを促すオレとメルカ。


「わ、私はあなたを……助けにきたのです」

「オレを?」

「はい。私は十万年前にトラックに跳ねられて時空の歪みに落ち、異世界の上空から落下して死んだキミを、救うために来たのです!」


 宣言するように言う女神。

 でも……。


「そうだったんですか。でもオレはもう大丈夫です。メルカが助けてくれましたから」

「うん。メルカが助けたよー」

「いえ、まだ窮地は去っていません」

「えっ」

「そいつは……あなたがメルカと呼んでいるそいつは、人を堕落させるアクマなのですっ!」


 …………は?


「そうやって男の人に気にいられて堕落させる、アクマなのですよっ!」


 いやいやいや……。


「アクマを滅しますっ! 離れてください。えーっと、そこの人っ!」


 ぷちん。


「だまれ豚野郎!」


 オレは女神に怒鳴った。


「えっ、ぶ、豚!?」


 うろたえる女神。


「あのさ。お前、いまさら来てなんなの?」

「えっと、その……」

「堕落っつーけどオレら別に堕落してねーし」

「で、でも、その二人っきりでいやらしいことしてるんでしょう!?」

「は? してねーし。なぁメルカ」

「うん。堕落してないよねー。楽しく過ごしてるだけだよー」


 メルカもそう答える。


「う、うそおっしゃい! 正直に話すのです!」

「なんだよ。部外者のくせに……。はいはい、オレはメルと毎日仲良くゲームしたりテニスしたり耳掻きして貰ったり一緒にお昼寝したりとしてますけど、それがアンタに何か迷惑ですか?」

「……!! お、思いのほか健全!?」


 はぁ……。


「だいたいメルカとは、もう10万年も一緒にいるんだぞ? そりゃメルカは悪魔だけどいい奴だぞ? 10万年も一緒にいたら解るぞ?」


「い、いや……でも堕落を」


「毎日仲良く、ゲームしたりテニスしたり、耳掻きして貰ったり一緒にお昼寝したりするのが堕落か?」

「堕落じゃないよねー」


 メルも答える。


「仮に百歩譲ってこれが堕落でもべつによくね? 誰にも迷惑かけてねーし。なぁ?」

「うん。迷惑かけてないよねー」

「で、ですがっ……」

「むしろたまに人助けだってするんだぜ、メルカは」

「うん。するよー。困っている人いたらかわいそうだしねー」


 オレはメルカが悪魔だからと不当に悪く言われるのもいやなので、彼女の善行をいくつか教えてやる。


「……ほんとですか? 悪魔が人助けなんて聞いたことが……」


 なおも疑う女神。


「ホントだけど。さっきも木から落ちそうな女の子助けようとしてたし」

「うんー。落ちちゃったけどー」


 オレはジロリと女神を見る。

 うろたえる女神。


「だいたい女神さんさ。さっきからオレのこと『そこの人』とか、『あなた』とかって呼んでるけど……、助けにきた人に対して言う呼び方か? 名前くらい呼べよ」

「えっ」

「『そこの人』とか『キミ』とかってばかりで、なんか失礼だろ」

「で、ですがあなたの名前は死んでなくなり……」

「女神さまの手違いでオレ死んだんだよね……? なのにその相手の名前も覚えてないの?」

「う……」

「はぁ…………。じゃあいいや。『アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド』」

「えっ?」

「『アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド』。それがオレの今の名前です」


 オレは丁寧に自己紹介をしてやった。


「アーク……えっ?」

「『アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド』」

「アークマシュベルト・リンリン…………」

「『アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド』」

「アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイ…………」


 はぁ……。


「覚える気、あります?」

「い、いや、すみません。あまりに長くて、ですね……」

「まぁちょっと長いけど、覚える気があるなら覚えますよね?」

「む、無理ですよ、そんなに長いのはっ!」

「いや、オレは2度で覚えたぜ。なぁメルカ」

「うん。覚えたよねー」


 懐かしそうに微笑むメルカ。可愛い。


「そりゃちょっと長いけど、覚える気があるなら覚えるよ。アンタも相手に少しでも敬意があれば覚えられるはずだよ」

「ううぅ…………確かにおっしゃる通りかも知れません。ですが、もう一度お願いします、もう一度! しっかり覚えますのでっ!」

「わかったよ。『アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド』だ」

「アークマシュベルト・リンリン・シュバイバイティーンマッハポインティッド……ですね?」

 

 言い切ってから不敵に微笑む女神。

 女神に二言はないのか。ちょっと見直した。


「ああ……。良く覚えてくれたな女神さん」

「はい。あなたに敬意を持っていると証明したくがんばりましたっ」

「ありがと。でもまぁ長いし、アークでいいよ」



   ◇


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