表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷魔術師のお仕事日誌  作者: らる鳥
16歳の章
53/73

フレッド・セレンディル先生の神様講座



 はい、皆さんこんにちは。臨時講師のフレッド・セレンディルです。

 先日学園の方にそろそろ臨時じゃなくなっても良いよって言われました。

 どうやらもし宮廷魔術師をクビになってもご飯は食べて行けそうです。皆さんのおかげですね。

 まあその時は冒険者に戻るかも知れませんが、選択肢があるって良い事です。選べる自由って素敵ですよね。


 では皆さんの将来の選択肢を増やす為にも、知識の幅を増やしましょう。

 今日は神話のお話をしたいと思います。大地の女神様しか知らないって人は地味に多いのですよね。

 神話は魔術師にとっても冒険者にとっても、意外と役立つ事があったりするので興味を持って貰えたら嬉しいです。

 では本日もよろしくお願いします。



『分類』


 神様を分類っていうのも失礼な話かも知れませんが、他に言い方も思いつかないのでご容赦ください。

 えっと、神様は五種類に大別出来ます。創造主、秩序の神、中立の神、魔の神、邪神の五つですね。

 この中の邪神に関しては今回特に触れる事は無いので、そう言うのも居るんだ位に思ってください。


 創造主はさて置き、秩序の神、中立の神、魔の神ですが、此れは古代の終わりの神の争いで属した陣営によって分けられています。

 秩序の神側の神話と、中立の神側の神話は少し差異があるのですが、僕は中立の神である大地の女神様を信仰してるのでそちら側の神話になりますね。

 一応は秩序の神側ではどう言われているかの補足も入れる心算ですが、偏りがある事をご了承ください。



『創造主』


 この世界の始まりに出現した存在です。

 どこからかやって来たのか、それとも突然湧き出たのか、それは神々さえも知りません。

 ただ創造主はそこにいて、そしてその方はとても寂しがりでした。

 寂しい創造主は自分の身体をちぎって色々なものを創り出します。


 最初に大地や海や空や月や太陽や星、そして世界を管理する神々を。それでも足りずに竜や森や泉を。まだ満たされないと、人や亜人達も。

 人や亜人が生み出された頃になると、創造主は自分の身体を千切りすぎてすっかり小さくなっていました。

 神々は親である創造主を心配し、もう何も生み出さぬ様にと諭しますが、創造主の寂しさは埋まらずに最後に何かを生み出し消えます。

 最後に何を生み出したのかは今の世には伝わっていません。


 神々は深く悲しみますが、創造主の遺した世界の管理を始めます。

 人や亜人は管理者たる神を崇め、彼等の導きによって栄えました。

 創造主が消えるまでを創世期と言い、それ以降の神が人や亜人を導いていた時期を神代とか古代と言います。たまに見つかる古代遺跡はこの時期の物ですね。



『神の争い』


 古代は長く続き、世界は非常に繁栄しましたがそれにも終わりが来ます。

 切っ掛けはある神が、とある亜人の種族から生贄を取ろうとした事。

 その神は神々の中でも弱い力しか持たない事を常々不満に思っていました。


 そこで亜人の種族に生まれた力の強い英雄を生贄として喰らう事で、自らの力を増そうと考えたのです。

 古代が始まったばかりの頃なら、亜人の種族も神の言葉を疑わずに生贄を差し出したでしょう。

 しかし彼等は導かれるばかりでなく自分で考える事も出来る様になって居た為、その神に対して反逆しました。

 英雄を先頭に戦う亜人達は、他の神の手を借りながらも神を撃退させます。

 そして此れが神の争いの原因になりました。



 法と秩序の神は言います。彼の神の行いは許しがたい。彼の神は邪神であると。

 しかし次にこうも言います。されど神に背いた彼等の行いも許しがたい。よって彼の種族を根絶やしにすると。

 これに反対したのが夜の女神です。これは神の傲慢が生んだ、神全体の罪であり、それを彼の種族に被せるのは間違いだと。

 夜の女神に幾人もの神が同調します。親である創造主が遺した種族を根絶やしにするとは何事かと。


 けれどその時に法と秩序の神の隣へと立った戦の神が言いました。文句があるならお前ら全員ぶっ飛ばすと。

 此れには法と秩序の神も目を丸くしたそうですが、その時にはすでに戦の神は己の力を振い始めて居ました。

 そして神の争いが起こります。

 この時、争いの原因になった、根絶やしにされそうになった種族を魔族と言います。

 魔族を庇った神が魔の神に属するとされる訳ですね。



 ちなみになぜ大地の女神様がこの時、魔族を庇う側に入らなかったかと言うと、秩序の神と魔の神の争いの余波から大地を守る為だったと言います。

 中立に属する神は殆どが力の弱い神か、大地や海等の領域を争いから守る為に力を割いた神です。

 ちなみに大地の女神様と戦の神は非常に不仲なので、他国で戦の神の信者の方に出会ったら気を付けて接してください。

 個人の人柄が良い悪いとは別にして、政治と神の話は喧嘩の種になり易いので。

 一応こちら側では、戦の神を大地の女神様が振ったから仲が悪いと言われています。後は旦那となった食の神を侮辱したからとも。



 さて神の争いになった経緯も、秩序の神側の教えでは魔の神達が魔族と手を結んで世界を独占しようとしたのだとされています。

 どちらが正しいのかは今となっては判りませんが、僕は中立の神の教えを信じています。

 だって中立側が嘘つく理由ってないですしね。でもそれはあくまで僕個人が信じてるだけですよ。

 鵜呑みにしないで自分にとっての正しいは、自分で考えてくださいね。 



『人の世』


 幾柱かの滅びた神も居たそうですが、結局のところ神の争いには決着がつきません。

 秩序の神と魔の神は争いで、中立の神は世界を守る為に力をすり減らし消耗しました。

 そして守られてはいても世界も大きなダメージを負います。かつての繁栄は見る影もない状態でした。

 そこで結ばれた停戦協定により神々は世界への関与を大きく縮小し、傷付いた身体を休める為に各々の領域へ閉じこもります。


 これ以降が僕達の知る世界です。

 神々の戦いが齎した余波により、魔物や魔獣が繁殖以外でも、湧き出る現象によって増えるようになったと言われてますね。

 正直古代の情報は遺跡などから少しずつ得るしかないので、神話以外でわかってる事は殆どないです。



 魔族がどうなったかも、良く知られてません。

 世界を恨んでるとか、魔物を操ってるのは魔族だとか言う人も居ますし、平和に暮らしてるんじゃないかなって言う人も居ます。

 一応北西の未開拓地の向こうには魔族の住む魔領があるって言われてますが、事実かどうかは不明です。

 海の向こうの大陸にも存在するらしいと聞いた事があります。


 もし会えたりする事があったら、どんな人だったか是非教えて下さい。

 逆に共和国や小国家群を越えて東にずっと進むと、秩序の神々を信仰する教国がありますね。

 では今日はこの辺にしましょう。お疲れ様でした。




 本日のお仕事自己評価70点。ぼくはだいちのめがみさまをしんこうしています。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ