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宮廷魔術師のお仕事日誌  作者: らる鳥
16歳の章
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国外出張・ドワーフの国へ、前編2


 さて、ではドワーフである。

 ドワーフと言うのは付き合うのが難しい種族だと言うのが一般的な見解だ。

 実際に間違いじゃない。彼等は頑固で意地っ張りで、ついでにとても短気である。

 ドワーフの価値観は人とは少しずれているので、それを理解出来ねば意外な事でトラブルになってしまう。


 背は低くずんぐりむっくりで、腕は丸太の様に太くて拳が大きい。

 あの拳を思いっきり握りしめて怒鳴り散らされたら、まあ10人中9人はドワーフを怖い種族だと思い込むだろう。

 しかしそれが彼等の全てでは決してない。



 僕にはグロン・ボアースと言う名のドワーフの友人が一人いる。

 大きく年の離れた友人だけど、彼は僕が道理を外れず、成すべき事を成していれば、尊重して対等に扱ってくれる。

 グロンの鍛冶屋の客に彼の印象を聞いてみれば、恐らくやはり一般的なドワーフの物と変わらず頑固で短気で少し怖いと言う返事が帰って来るだろう。

 けれど僕は知っている。実は彼が非常に心優しく、そして付き合いも良い事を。


 確かに鍛冶に関しては頑固だったり短気だったりするけれど、それは職人としての高いプライド故にである。

 あと価値観も少し判り難い。例えば彼は自分の商品を値切られる事を酷く嫌うが、かといってお金の計算に細かいかと言えば全くそんな事は無い。

 寧ろ金銭に対する関心は非常に低く大雑把で、見ていて冷や冷やさせられる事すらあるのだ。

 彼は自身の納得いく仕事が出来れば金銭は二の次でしかない。


 けれど己の創った作品への評価は非常に気にするので、判りやすい評価基準である金銭を値切られると嫌がるだけの事。

 判り難いが、判ってしまえばその考え方は決して理不尽な物では無い。

 寧ろ心を隠さない分、理解してしまえば普通の人間相手よりも付き合いやすかったりもするのだ。

 なので今回のドワーフの国への使者の仕事は、僕にとって少し楽しみでもある。


 グロンは故郷のドワーフ達への紹介状を書いてくれた。何でも彼はあちらでは少し顔が利くらしい。

 代わりの土産はドワーフの火酒と無事に帰ってくる事だそうだ。

 火酒と言うのはドワーフ達が周辺国から仕入れた酒を、蒸留と言う独自の技術で酒精を高めて作った物だと言われた。

 何でも火が付く酒だから火酒だとか。僕にはそれを飲み物だとは到底思えないが、ドワーフであるグロンにとっては命の水らしい。



 ちなみに今回の仕事には護衛が付く。

 普段は一人で、或いは少人数の冒険者を雇う等で動く事が多い僕だが、流石に他国への使者をするともなればそうもいかない。

 乗り込む馬車も豪華な物だし、ドワーフの王への贈り物を運ぶ馬車も2台付くので、合計三台の馬車を馬に乗った騎士の護衛が守るのだ。

 王国騎士団第五隊に属する騎士が何と30人も付くらしい。


 この騎士隊と宮廷魔術師にはある慣習がある。それは隊の数字と同じ席次の宮廷魔術師は要請があれば互いに協力し合うという物だ。

 例えば大規模な魔獣の発生等があった時、騎士隊が同じ席次の宮廷魔術師に協力を求めて共同して対処にあたると言った風に。

 例えば他国との戦の際に宮廷魔術師が軍師として招聘された時、策を成す為の直接の手として席次と同じ数字の騎士隊を使うと言った風に。

 あくまで慣習ではあるのだが、騎士団の隊編成には宮廷魔術師の席次を意識してる節はあった。

 実際、エレクシアさんが六席から五席に昇格した際、騎士団六隊の人員も大多数が五隊に移動している。


 まあこれは元六隊、現五隊の人達がエレクシアさんの事を大好き過ぎたせいかも知れない。エレクシアさんもたまに訓練の見物に行ったりしてるし。

 時折気まぐれなエレクシアさんのゴーレムのテストに付き合わされて、模擬戦でぶっ飛ばされたりしてるので五隊の人は本当に大変だと思う。

 一応騎士団第七隊も存在しており、本来ならば僕の護衛になるのはそちらなのだろうが……、彼等に使者の護衛とかは無理だ。

 僕個人としては七隊の人達を好ましく思ってるが、でも彼等に出来る任務って魔獣の群れの討伐とか賊の退治位だろうと思ってる。


 だって新七席は冒険者上がりだから多分大丈夫だろうと、各隊で持て余されていた荒くれ者を中心に編隊されたのが七隊なのだ。

 さて置き、なので今回の護衛に関しては多分エレクシアさんが口利きしてくれたのだと思う。

 万一これで騎士団第三隊とかが護衛になってたら、僕はドワーフの国への到着前に緊張と警戒で寝不足になるだろう。



「どうぞご安心ください、セレンディル様。エレクシア様からもくれぐれも宜しくと伺っております。道中は我等にお任せを」

 出発前に自己紹介に来てくれたのは今回の護衛の責任者にして、五隊の副隊長の一人であるアーロットさんだ。

 背の高い金髪碧眼のハンサムで、これぞ騎士と言った風情の好青年である。

 何だか、自慢の姉に出来た彼氏でも見せられた気分で少しだけ面白くない。

 エレクシアさんは僕の姉じゃないし、アーロットさんがそうなのかどうかも判らないので、それは理不尽な感情なのだろうけれど。

 でも取り敢えず道中に味方に対しての警戒が必要無いのは心強い。



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