甘噛み
躾は難しい。
今いる猫は、子猫の時に、嚙んできたら、デコピンの要領で、鼻先をピンっと弾く。
そんなことを続けると強く噛まなくなる。
間違いではない。間違えてはいない。
だがある成猫が甘えて噛んできた。強くて痛かった。
おかしい。と思い直して、どうだったか子猫のときを思い出してみた。
そのコは大人しかった。大人しすぎて噛んでこなかった。
それが間違いの元だった。
噛まないなら噛むまで構い倒すぐらいでないといけなかった。
大人しいからと躾ていないのに躾けたつもりになっていた。
別に躾けないからと言って噛むとは限らない。
ある時、兄弟が猫を構って遊んでいた。
「痛い、痛い噛まないで」
それを聞いて愕然とした。
その猫、ハナはキジトラのメスで大人しく、俺を噛んだことは一切なかったからだ。
兄弟に話をして、片手を入れ替えるように頼んだ。
そのときハナはひっくり返ってじゃれていた。
兄弟は左手を引いた。代わりに俺が左手を出す。
ハナは両手(前足)で俺の手を掴み、噛みつく!
しかし、すぐに舌を使って口から押し出して、そのまま俺の指を舐め始めた。
よく分からんが俺の指を認識しているらしい。
味でも違うのか?
手ずから、エサのドライフードや水をやっていたからか? 文字通り直接手で。
反射的に噛まないようにした場合は誰にでも通用するが、自己判断だと噛む相手を選ぶ、ということ。
俺個人への普段の対応と、躾の結果は違う、という興味深い結論が出せた。
それで俺には甘噛みはしてくれないんですね……