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吸血鬼にはゐと住みづらき世界  作者: へーべー
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洞窟脱出~力の片鱗~

~ここまでのあらすじ~


洞窟内で迷い、遭遇したミイラに血を吸われた天地一国てんちいちくには逆にミイラのような姿になってしまったが吸血鬼として復活。

ミイラは吸血鬼カルレオーノ・ホテチトップス・ウセシオジオとして復活し一国を中食奴隷人(チユドレン)と呼び下僕として動けと命じた。

一国はカルレオーノを主人だと認識し行動を共にする事にしたが、血が足りなさ過ぎて声が出ない。

カルレオーノに「血を分けて下さい」と頼んだところ逆鱗に触れ、ビンタにてバラバラにされたのであった。


~特殊名~


亜徒類(アトル)・・・純粋な吸血鬼一族

姉徒麗(ネトリ)・・・姉

弟徒君(オトク)・・・弟

下食奴隷(ゲドレ) ・・・人間全般、エサ、奴隷

中食奴隷人(チユドレン) ・・・吸血鬼となった人間、下僕

極万年ゴルムンヌン・・・凄い長い年月

牙毒感染(ガドカン)・・・牙によるウィルス感染

「しかし我に血を求むるなど前代未聞!!かつて誰一人として居なかったぞ!貴様!案外大物になるやもしれんな!」

「ワハハハハハハッ!!」

転がった首だけの一国は豪快に笑うカルレオーノを見てなぜか織田信長を思い浮かべた。織田信長が生きていたらこんな傍若無人振りだったのだろうか?



四方に飛び散った一国の体がモゾモゾとまた一か所に集まってゆく。

頭はゴロゴロと地面を転がる。心臓のある胴体に向かって自分の意志とは関係なく、磁石のプラスとマイナスのように引き合っているようだった。

しかし先ほどよりも引き合うスピードが遅いように感じられた。

元の人型に戻った時、違和感を感じた。背が縮んでいる?

目覚めたばかりの時は主様の股間が目の前にあったはずなのに少し目線が下がったように感じる。

まさか三度の再生にエネルギーを使い過ぎて体を削ったのか!?

これ以上、主様にはたかれたら2頭身キャラになってしまうぞ!これ以上叩かれるのはマズい!



再生する為に結構な時間を使ったにも関わらずカルレオーノは同じ体勢で文句も言わず仁王立ちして待っていた。

主様は結構忍耐強いんだな。吸血鬼は長生きというけれど時間に対しては寛容なのかもしれない。


あっ!髪の毛を通じて今の自分の考えが主様に筒抜けなのでは!とドキリとしたが、先ほど吹き飛ばされた拍子にカルレオーノと一国を繋いでいた髪の毛は切れたようだ。

だがその髪の毛は一国の頭に刺さったままだった。

髪の毛の無い頭から長い銀髪が1本だけ生えている状態だった。



「フハハハ!その銀髪は貴様にくれてやろう!我と会話したくば、その毛で我の髪に触れれば良い。まずはその銀髪を自由に動かしてみよ!」


一国は言われた通り、頭を振ったり、髪の毛を手で掴んで動かした。


「たわけが!体を微動だにさせずに毛だけ動かせと言っておるのだ!念じて動かせ!」


そんな、猫の尻尾じゃあるまいし、神経の通っていない髪の毛を動かせる訳が無いよ。とりあえず主様の命令なので頭に集中して念じてみる。うううう~!

しかし全く動く様子はない。時折風でなびく程度で、自分の意志で動いている感覚は無かった。


「フンッ!未熟者め!上食奴隷人(ジウドレット)の素質は無いようだな。」


また意味不明の単語が出てきたぞ。主様の国の独特の言葉だろうか?


「まあ良い!手で持ってその髪を我が髪に触れよ。」


あ、はい。一国は心の中で返事をし、急いで頭の銀毛をカルレオーノの銀髪にくっ付けた。これでテレパシーのように会話ができる。


「貴様の呼び名の事だがな・・・。」


「あ!はい!主様!申し遅れました。私は人間だったころ天地一国てんちいちくにという名前でした。イチと呼んで下さい!」


カルレオーノの目つきが変わった!「たわけがっ!!我に命じるなど!!」

しまった!またしてもビンタが飛んでくる!またバラバラに!!

一国は目を閉じビクッと身を固めた。

飛んでくるかと思いきやカルレオーノはビンタしようと振り上げた手をもう片方の手で止めていた。


「うぬっ!いかん!同族をはたくのは1日に2度と決めていた。それ以上は我が流儀に反する。」


殴られずにすんで一国はホッとした。主様は自分ルールを大切にするのだな、と意外に思った。


「貴様の名前はもう決めておる!キュウリじゃ!メンボウかキュウリか迷ったがキュウリにした!」


嫌だ~!イジメじゃないか~!心の中で叫んだ。一国は泣きたくなった。


その叫びも、もちろん髪の毛を通してカルレオーノに通じていた。


「そうか嫌か!覚えやすくて良いではないか!ワハハハハハ!愉快愉快!!ワハハハハハ!!」


織田信長は豊臣秀吉の事を「サル」「ハゲねずみ」と呼んだそうだけど、僕の場合は生き物でも無いじゃないか!

何というドSな人だ。でもこの人には逆らえない。もちろんそう考えた時にはカルレオーノの髪から自分の毛は離していた。



主様の髪の毛と一国の毛を合わせる行為、つまり会話をする行為は主様の考えで髪々通信ガガツーと名付けられた。

「髪々通信ガガツー!」

とカルレオーノが言えば一国は素早く髪の毛合わせをしなければならないのだ。

この髪合わせの行為を何と名付けようか楽しそうに迷っていたのを見て、主様はよほど造語を作る行為が好きなのだと知った。周りはそれを覚えなくては行けないので大変だ。と一国は思った。



血を分けてくれれば会話も出来るはずなので髪々通信ガガツーはしなくて済むのだが、主様は僕に血を分ける気は更々無いようだった。



一国としては髪々通信ガガツーを使って聞きたい事が色々あった。というか現段階で何から聞いたら良いのかさえ迷う程、疑問が山積していた。

しかしどの質問がカルレオーノにとっての地雷になるか分からない以上、バラバラ確実のビンタを覚悟してまで聞く気にはならなかった。



カルレオーノへの対応の正解は恐らく「聞かれた事にだけ答える」だ。

一国は場の空気を読むことには自信があった。下手に発言をしなければ逆鱗に触れる事もない。主様にとってはこれがベスト!そう結論づけた。



「着いてまいれ」

主様はそれ以上余計な会話を控え歩き出した。

カルレオーノが大股で歩いて行く、一国はカルレオーノに離されぬよう懸命に着いて行こうとするのだが、一国は吸血鬼化したとはいえ死にかけの最弱、その体力は人間の子供以下まで落ちている。片やカルレオーノは2m近い長身の持ち主、それが大股で進んだ日には一国に着いつけるはずがない。



カルレオーノはそんな事はお構いなしに振り向くことも一切せず、自分のペースでズンズン先へ進んで行く。



カルレオーノからしてみれば自分に着いてくるのが当たり前、着いて来れなければそれまでの下僕。見捨てるまで。そういう考えの持ち主だった。



一国は声を発する事もできず(発する事ができたとしてもカルレオーノを呼び止める行為などビンタ確実なのでしなかったであろうが)カルレオーノの存在はどんどん見えなくなっていった。完全にカルレオーノが一国の視界から消えた時、一国は歩くのを止めた。



カルレオーノは洞窟が分かれ道に遭遇した時、手刀で壁に目印を付けてから進んだ。これは後から着いてくるであろう一国に向けたメッセージではない。

迷う選択肢を極力減らす為の行為でしかなかった。

数十分ほど歩いたが全く出口にたどり着けない。それどころか手刀で傷付けた壁にも一向に出会わない。おかしい。

カルレオーノは次の別れ道に遭遇した時、壁に素早く手刀で十字傷を付けしばらく思案に耽った。すると一定の時間をおいて壁の傷がスッっと消えたのだった。



「フンッ!迷わす為の仕掛けか。そういえばそんな物があると姉徒麗(ネトリ)が言っていたな。」



姉徒麗(ネトリ)「風だよカル。風を読みな・・・。」



そんな声が聞こえた気がして辺りを見回したが何もない。「姉徒麗(ネトリ)・・・。」

そういえば近くに一国の存在はない。

「フンッ」どうという事は無いとばかりに鼻を鳴らし、目を閉じ再び脱出の糸口を掴む手段を模索した。


カルレオーノは他人を信用しない。他人に何も期待しない。ゆえに他人の行動に対して動揺もしない。他人の行動に振り回される事もない。己中心。それでも力を持てば他人は着いてくるのだ。それこそが絶対的な強者なのだからと信じて疑わなかった。

だが身内に対してだけは違った。唯一無二の血の繋がり。

これに対しては合理的ではない行動を取ってしまう。そこに理屈は無いのだ。

危険であろうと姉徒麗(ネトリ)弟徒君(オトク)は助けねばならない。



目をつむり思案中だったカルレオーノの脳裏に声が聞こえた。


「主様!遅くなって申し訳ありません。」

目を開けると髪々通信ガガツーをしている一国が目に入った。


「キュウリか」


初めてキュウリと呼ばれて苦笑する。諦めて慣れよう・・・。


「貴様、ここまでどうやって来た?ここまでの目印などは残っていなかったはずだ。」


「風が教えてくれました。」


「風だと!?」


「感じるんです。主様の通り道が・・・。うまく言えませんけど、主様が通った後に風の道筋が残っているといいましょうか・・・。主様までの最短の道を辿ってきました。」


こいつは嘘を言っていない。嘘でここまで来れる訳が無い。こいつ姉徒麗(ネトリ)と同じ・・・。


「この体になってから体力は全くなんですけど・・・逆に凄い感じるんです。風の動きが、肌で耳で鼻で。」


「案内せよ。ならば出口もわかるハズだ。もし貴様が姉徒麗(ネトリ)と同じ能力を持つのならばだ!」


姉徒麗(ネトリ)・・・?・・・はい。分かると思います。風の流れを辿れば。」



こいつ!言い切りおった!

その言葉に迷いも感じられない。



2人は歩き出す。一国を先頭にカルレオーノがそれについて行く形で。

我が・・・この我が、中食奴隷人(チユドレン)に連れられてこの洞窟を抜けようとは・・・。フンッ!に期待しない我がな。



カルレオーノは一国の頭に生える一本の銀髪が風にそよぐのを見ながら、たまには他人に期待しても良いかもしれぬな。と思った。

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