牢獄のような日々から
初投稿です。拙いですがよろしくお願いします
目が覚めた。外が騒がしい。何かあったのだろうか?いつも静かなこの施設にしては珍しい。
分厚い鉄製の扉の向こうからは猛々しいサイレンが鳴り響いてる。いつも静かなこの施設にしては珍しい。明かり一つない中、シーツを払って簡素なベットから扉に近ずく。冷たい扉に耳をあてて研ぎ澄ませてみると、施設の兵士たちが慌ただしく走っているのがわかる。
「何としても侵入者を探し出せ!」
「侵入者が分かれたぞ、逃がすな!」
「おい、侵入者が被検体棟へ行ったぞ!」
どうやら侵入者らしい。目的はおそらく施設のイカれた研究データあたりだろう。
ここにあるもので価値があるものはそれぐらいだろうし。
でも、自分には関係のないことだ。明日にはまた実験が始まる。他のみんなは元気でしてるかな。
そう思いベッドでもう一眠りしようと扉から離れ背を向けた瞬間、突然背後から何かが倒れる大きな音がした。振り返って見てみると、倒れた扉と血のついた黒ずくめの20代の女性が立っていた。女性は青い光沢を放つ黒い大鎌を手にしていた。
「君、ここに捕まっている子?」
黒ずくめの女性は慈愛を感じさせる笑みを浮かべていた。その光景に唖然としていると、
「あれ、もしかして言葉わかんないのかなあ。だとしたら困っちゃうなあ〜」
「……言葉は、わかる」
女性は安堵したように胸を撫で下ろした。
「良かった〜、言葉が通じて。それでここに捕まってる子?」
「……いや、気づいたらここにいた。それ以前の記憶は持ってない」
記憶は実験のせいでもう失ってしまった。今では両親の顔さえ思い出せない。残っているのはもう同じ施設の仲間たちとの記憶しかない。
「そっか、わかった。なら私が救ってあげる!君名前は?」
「『CR-1』……そう呼ばれてた」
名前は必要ない、そう言われ与えられた名称が『CR-1』だった。
「『CR-1』って名前じゃあないじゃない。私が名前をつけてあげる!そうねぇ〜」
「……お姉さん、誰?」
「あれ、まだ名乗ってなかったっけ?私はリーベ・ヴィレムート。黒々しい正義の暗殺者よ」
リーベは少し考え込んだ後、『CR-1』と呼ばれていた少年と目を合わせる。
「アイン…アインなんてどう!」
リーベは自信げな表情で『RA-1』の少年にアインと名付ける。
「アイン・ヴィレムート、それがあなたの名前よ」
その日僕は、牢獄のような日々から抜け出した。