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最弱勇者の物語  作者: 藤咲 美月
3/4

3章

前回まで。

王都へと到着したアクア、クラインと一匹クゥは到着早々に馬車に引かれそうになっていた女の子と出会う。

見た目が特徴のある彼女とはすぐに分かれるも、アクアたちが城へと向かうと、城の様子がおかしく、中へと入っていくと、道中で馬車に引かれかけていた女のヒカリとまた出会い、一緒に場内を探索することとなり。

進んでいくと、魔王リステアがおり国王が襲われており戦闘になる。

相変わらずの変人ぶりにあきれながらも、その力は絶大で、全く歯が立たない中、ヒカリがリステアに姉を返してほしいと言い出す。

よくよくヒカリ話を聞くと、どうやら姉を返してもらうためにリステアを追っていたらしい。

戦闘の末、リステアの気まぐれで全員なんとか危機を脱した。

そして、ヒカリもついてくることとなり、さらに新たな仲間、大魔法使いクリスへ会い仲間にするように国王に言われ、アクアたちは王都より南にあるらしい白へと向かうのだった。

 第三章

 周囲には強い緑と、木漏れ日がなんともやさしく煌き、目の前には大きな古びた城門があり、それは硬く閉ざされていた。

 まるでお化け屋敷のようなその光景に、私とクゥはたじろいでいるが、クラインとヒカリはといえば。

「バンパイアとかでそうだなぁ」

「アレですね、古来より伝わる物の怪の類ですね。私としては最近そのようなお仕事が減ってしまって・・・・・・こう血を吸われると、結婚しなくちゃいけないんですよね」

「結婚じゃねぇ。下部だ」

「・・・・・あれ?」

 なんのだろう、この二人・・・・この明らかに怪しい場所で、どうしてそうも楽しそうにできるのか、私とクゥは理解できないまま、再度その怪しいお城を見上げると。

「何?」

 何かが聞こえたような気がしてそう言うと、城門がゆっくりと開き、はじめた。

「何したヘッポコ」

 訝しげにクラインが私を見ながらそう言い、ヒカリゃんも。

「扉さんとお話されたのですか?」

 などと、天然な問いかけをしてくる。

 何したヘッポコ、は余計だし、扉となんてお話できません。

 思っていることを口まで出かけて飲み込み、私は開きったその先を見ると、ごく平凡な・・・・・平凡な・・・・・平凡じゃないバラ園が広がっていた。

 しかも、かなり手が行き届いており、平凡どころか、どこかの庭園だった。

「え、えーと・・・・・」

 外見の怪しさからはまったく想像のできないその場所に、そこに居た全員が見とれたまま、しばし動けないで居た。

「これはアレか・・・・・ここの主の趣味なのか・・・・・」

「わぁ、バラです。しかもこんなに沢山!」

「クゥ~」

 クラインはあまりのことに呆然とし、この光景を見たヒカリちゃんとクゥはといえば、駆け出して中に入り、スキップしながら喜んでいた。

 かく言うあたしも、ここの人は今度こそまともな人であると、このバラ園を見ただけで信じきってしまい、その普通であることを心から願いながら、うれしくて仕方がない感じで歩き出した。

 ただ一人、クラインだけが・・・・・また面倒なのが出てきそう・・・・などと小声でつぶやいているのを私達は聞こえるわけもなく、そのまま中へと進んでいった。

 バラ園を抜け、城内に入ると、左右に階段があり、それが中央へとつながっている間で続いていた。

 私達はひょいひょいと進んで行き、やがて城内の中心だろうか、大きいエントランスホールのような場所に出た。

「何なのこの豪華さ・・・・・」

 入った瞬間に感じた印象がそのまま口に出る。

 床には赤いじゅうたんがあり、下の大理石らしい物はかなり高価なものなのか、鏡のように上にあるシャンデリアの光を反射しており、煌びやかというよりは、ただただ本当に別の空間のような場所だった。

 よく考えると、王都にある王宮の中よりも華やかな印象がある。

「ようこそ、スバル王宮へ」

 中央の階段から華麗に白いマントをなびかせながら、ロングヘヤーの男性が堂々と登場してきた。

「「「「・・・・・」」」」

 そのあまりの派手な登場に私達3人と1匹は、呆然としたまま彼が降りてくるまで待っていた。

「あー、だから嫌だったんだ。また変なのが増えるだろ!」

「外見あんなで、中身はいい人かもしれないでしょ!」

「綺麗なマントですねぇ」

 私とクラインは口論を始める中、ヒカリちゃんだけが、なぜかマントについて触れていた。

「どうだい、どうだい、シルク素材で作ったマントなんだよ」

「わぁ、ツルツルです」

 私達を置いてけぼりにして、なぜかこの城の主らしい人と楽しそうにヒカリちゃんは話し始めてしまった。

「でも、変な格好ですよね」

「・・・・・」

「あ!」

「おい」

 ものすごく言いづら事をヒカリちゃんは口にし、ヒラヒラマントの人は、その場で固まってしまった。

 私とクラインはそろってヒカリちゃんの口をふさぎ、その人と距離をとるが、時すでに遅く、私とクラインはお互いに苦笑いを浮かべながら、あははは、とお互いの顔を見合わせながら、どうするの、とアイコンタクトをとった。

「へ、変な・・・・・・」

 明らかに相手はその格好に誇りとプライドがありそうに見えた。

 どうやらその予想はあたりらしく、変な、という単語を口でなんとも連呼し、プルプルとその身を震わせていた。

「っぷはぁ、なに、私、何か気に触る事言いましたか?」

「地雷踏んだわよ・・・・・」

「たぶんな・・・・・」

 俺でもそれは言わないぞ、とクラインがそんな顔をしながらヒカリちゃんにそう言うが、本人はまったく理解できておらず。

「だって、ヒラヒラしてて、女の子みたい」

「おい!」

「ヒラヒラ・・・・・女の子・・・・・・みたい」

 ヒカリちゃんが最後のとどめと言っても差支えないことを口走り、私は頭を抱えた。

 流石のクラインもこれには顔を引きつり、どうするんだと私に視線を向けていた。

「もう無理かしら・・・・・」

「クピオ?!」

 ヒカリの言葉をリピートしながら彼の周囲には魔力が少しづつ集まりだし、明らかに敵意がにじみ出ていた。

「め、面倒なことに」

「私、思ったことを言っただけなのに・・・・・それにその格好すてきゃぁ!」

 一瞬の出来事だった。

 少ししかなかった魔力の粒子が一箇所に集まったかと思えば、一言も発することなく光の線が私たちめがけて放たれ、私達の背後にあった扉が吹っ飛び粉々になった。

「う、うそでしょ・・・・・」

「魔法だけならリステアより早いぞ・・・・・っく!」

 私は背後を見ながら今の光景を確認し、今の信じられない出来事を再度確認した。

 クラインはといえば、頬に汗を浮かべながら姿勢を低くし、剣にその手を添えて相手の出方を見ている。

 ヒカリちゃんはといえば、両手を前に掲げたまま完全に防御体制に入っていた。

 私とクゥだけが、どうしたらいいかわからなず、ヒラヒラマントの変体を見据えながら、どうしたものかと思っていた。

「あ、あの私達・・・・・」

「何しにきたのかなぁ?」

「え、えーと、クリスさんに会いに・・・・・」

 恐る恐るたずねると、彼は伏せていた顔を上げると、そこには先ほどのにこやかな顔はなかった。まるで別人の顔をした人がそこに居た。

「やめだ・・・・・私は、この格好に誇りを持っているが・・・・・まさか私を訪ねてきた人物に侮辱を受けるとは・・・・・」

「いえいえ、私はきゃぁ!」

「ヒカリ!」

 どうやら私達が対じしているこの人物がクリスらしく、ヒカリが何か口を開くと同時に、その手から魔法の光をヒカリに向けて放ち、その言葉をさえぎる。

 幸い、彼女は防御体制に入っていたため、すぐにその魔法はヒカリの魔法でどうにか防がれたらしい、見た目には何かに阻まれたように見え、粉々に砕けたようにも見えた。

 けど、完全に粉砕しきれなかったらしく、魔法は四方八方へと飛び散り、壁などを破壊していった。

 たぶんだけど初級魔法の一種なのだろうが、威力が普通ではない。

「それで、私に何の用事かな?」

「魔王退治に協力してもらえきゃぁ!」

 それが返事なのか、彼は私の横をものすごいスピードで魔法を飛ばし、威嚇してくる。

 どうにも、まともに話ができているとはとうてい思えない。

「魔王ねぇ・・・・・そんなやつ、どうだっていい」

「あ、なたねぇ、今多くの人が魔王に苦しめられて」

「私には関係ない、今日のことは許してやる。帰れ」

 私はその言葉を聞いた瞬間、何か言い知れぬ怒りがこみ上げてきて、それは何でなんだろう、と思うと、すぐにその答えは出た。

 そう、この人は自分がよければ周りがどうなろうと良い、そういったような気がしたのだ。

 実際の言葉はまるで違うし、私の拡大解釈かもしれない・・・・・それでも、私には関係ない、そうやって傍観者を決め込んでいる彼が、どうしようもなく私は許せなかった。

「ちょっとアンタ!」

「え?」

「お、おい!」

「クピ!」

 突然、私が前に一歩踏み込み、クリスに向かって怒鳴りつけた。

 そんな私の行動にクライン、ヒカリ、クゥは驚いた表情になり、何をするするつもりなんだとクラインが私に駆け寄ろうとしたところで私は宣言した。

「自分さえよければ、周りが、世界がどうなろうと関係ないなんて・・・・・間違ってる!」

「貴様には関係ない・・・・」

「関係あるわよ、私はそういう人が嫌いなのよ!」

 そんな暴走し始めた私をみて、クラインはヒカリを見ながら。

「え、あいつ何を言っているか分かるかヒカリ・・・・?」

「さ、さぁ、でも相手が怒っちゃうんじゃ・・・・」

 私はさらに一歩踏み出すと、彼は容赦なく私の横に魔法の光を放ち威嚇してきたが、私はそれを無視してさらに一歩踏み出すと、クリスはそれに無意識に反応し、一歩足を後ろへと下げた。

「なら、力ずくでどうにかしてみるか?」

「嫌よ、力で何でも解決ができると?・・・・・それとも、力ずくじゃないと納得しないのかしら?」

「そこまで言うんだ。その言葉、力ずくで通してみたらどうだ!」

「ば、馬鹿、避けろ!」

 クリスは両手を私に掲げると、その両手を中心として魔方陣が展開され、そこから赤い光が魔方陣へと集まるのが見て取れ、私はそれを見た瞬間、何にも考えることなく、クリスに向かって走り出し、その魔方陣に思いっきりパンチを繰り出した。

「な、素手で・・・・・だと・・・」

「くっ・・・・・こっのっ!」

 あまりの私の突発的な行動に、ヒカリちゃんがあわてて駆け出す。

「ちょっと、アクアさんそれは無茶です!」

「あの馬鹿」

 私は剣を抜くことをしなかったのは、簡単な話だ。

 そんなことしていれば私に勝ち目など一ミリもないからだ。

 何せ私は剣を振り回すことになれていないどころか、まともに戦うことなど出来ないだろう、なら、簡単でそれで確実な方法といえば、自分の手でぶん殴れば済む話だ。

 まぁ、とはいえ、魔力の塊である魔方陣に向かって放った手は、焼けるように熱く、それでいて電気が全身を駆け抜けていくような激痛が手から伝わり、正直、今になってこの行動を多少悔いた。

 しかし、私のあまりのとんでもない行動に、クリスは怯み、その魔方陣が揺らぐと、私は思いっきり全体重を前へと倒すと、魔方陣はガラスのように砕け散った。

「ば、馬鹿な!」

「もらった!」

 私は砕いた反動を利用して、その場で一回転して回し蹴りを相手の左わき腹に叩き込むと、それは見事にクリンヒットし、クリスはそのまま転がるようにして吹っ飛ぶ。

「はぁはぁ、っ・・・・・・・」

「な、なんてやつだ・・・・・魔方陣を素手で破壊するなんて、どうかしてる」

 クラインは呆れながらそんな事を言いながら。

「本当に、な!」

 私の頭にクラインは一発げんこつを入れた。

「い、いたぁ~」

「アクアさん、何してるんですか!」

 私が、クラインに殴られたところを抑えていると、ヒカリちゃんがあわてて駆け寄ってきたが。

「あ、足、ヒカリちゃん足ふんでる」

「クッピ!」

「クゥまで・・・・もうみんな何なのよ~」

 私の横に来たクラインとヒカリちゃんは、そろって私に一撃入れる、クラインは剣を抜き、クリスへとその刃を向け、クゥも前に出る。

 ヒカリちゃんは座り込むと、私の右手を手に取り癒し始める、そこでようやく自分の右手が酷い状態だと知り、激痛が走るが、適当に治療をしてもらってすぐに私はクリス向き直る。

「ちょっと、その状態じゃ」

「いいから・・・・・・」

 私は慌てて再度右手を癒そうとするヒカリちゃんにそう言うと、クリスを無言で見ながら彼の目をじっと見る。

 その目は輝きがなく、まるで泣いているような、そんな、なんともいえない表情をしており、私はその瞳を見据えながら。

「あなたが言っている力って何?」

「言っている意味がわからない。力は力だろう!」

 私の問いかけに対して、クリスは顔をゆがませながら、怒鳴るようにしてそう答えると、私は静かに口を開いた。

「私は、勇者だけど、でも剣もまともに振れないし。モンスターでも殺したくないし、魔王のリステアちゃんとだって戦いたくない」

「じゃぁ貴様のそれは飾りか! 貴様は何のために力と仲間を求めているんだ!」

 いらだったように叫ぶクリスに、私は微笑みながら迷うことなくこの言葉を紡いだ。

「友達を止めるために、苦しんでいる人のために。でも、私一人の力では何も出来ないし、そんなに私はえらくもない。でも、それでも、私はみんなが笑って暮らせる世界が来ればそれだけでいいの。偽善者だって言われてもいい、夢物語だと笑われてもいい、現実をもっと見ろと馬鹿にされたっていい。私は、私のやるべき事と、私がやりたいことをするだけよ、そのための仲間で、この剣はそのための力。そして・・・・私のこの手は友達を作るための大切な手であり、友達の間違えには本気で体当たりする手なのよ!」

「・・・・・」

「・・・・・」

 私がそういい終わると、そこにいた全員が私のことを見て固まっていた。

 クラインは唖然とし、ヒカリちゃんは目を輝かせ、クリスにいたっては完全にフリーズしていた。

 わ、私、何かまずいことを言ったのかしら、などと思いながらクリスの元に行ってその手を握ると、彼はわれに返ったかのように私の手を払いのけ、距離をとり、威嚇してくる。

「近寄るな、私に触れるな、そんな偽善が通ると思っているのか。この世界はお前が考えているより残酷で、それでいて・・・・・くそっ」

「まったく、おりゃっ!」

 またクリスは両手で魔方陣を形成すると、今度は赤い魔法の塊が私に向かって飛んできて、私はそれに反応することが出来ずただ呆然としていると、クラインが私の目の前に突然現れ、その魔法の塊を剣で受け止める。

「『神の導きと、神の息吹を!』」

 私の後ろには、いつの間にか来ていたヒカリちゃんがそう唱えると、ヒカリちゃんを中心として緑の光が飛び出し、それが魔法の塊を捕らえると、見る見るうちに緑の光がそれを包み込み、その動きが止まると。

「クラインさん!」

「ほら、行くぞ馬鹿勇者!」

「え、ちょっと、きゃぁ、どこ触ってるのよ」

 ヒカリちゃんの合図で、クラインは私を抱きかかえると、その場からすぐに退避すると、それと同時に青い光が収縮すると、次の瞬間に大爆発をおこし破裂した。

「くっ。お前たちはいったいなんでそいつと居るんだ!」

「俺か・・・・・・なんでかな、最初は面白いからだったが。さっきの聞いて変わったよ。リステアを友達だっていったこいつになら、リステアを止められるかもってな」

「な、そんなわけないだろう、相手は魔・・・・・」

「まぁ、確かにな、でもな、こいつとリステアはまだ2回しかあってないんだぞ。ましてや、自分の敵をこいつは、あろう事か友達だぞ」

「な、何よ、悪い? 本当にそう思ってるんだからいいじゃない」

 私がそう言うと、クラインは私を抱えたまま、にかっと笑い、いや助かるぜ、と言った。

 今まで見せなことない表情と、珍しく私のことを褒めるクラインに、私は一瞬胸が高鳴るのを感じて、何考えてるのよと自分に問いかけていた。

「私は姉を取り戻すために行動をともにしてますが・・・・・・私もさきほどのを聞いて、本気でアクアさんに協力したくなりました。自分のためじゃない、他人のために本気になれるアクアさんに」

「り、理解できない、よく考えろ。相手は他人で、魔王で、皆から忌み嫌われる存在で・・」

「関係ないよ、私の友達だもん」

 クラインから下ろしてもらうと、私はあっさりそう言う。

 確かに、皆を苦しめているし、悪いこともいっぱいしているし言っている、正直人にほめられる事なんて一つもしていない。

 でも、だからと言って、私が魔王である彼女を傷つけて、それで苦しんでいた人たちの心は癒されるわけじゃない。

 それに、どうしてか、リステアがこんなことをするには何か理由があるのではないかと、どうしても思ってしまうのだ。

 人は理由なく何かをしようなどと思わない。現に私の旅は、村の人をはじめ、皆が苦しんでいるから、勇者として魔王を倒しに行ってくれ、と言うのが始まりだったのだ。

 最初は人から頼まれてだったけど、今はその事を嫌だとは思わない。

 そう、何事にも必ずその行動には理由がある、だから彼女のあの行動にも、ただ美少女を集めたい、と言う理由だけではないような気がしてならないのだ。

「くっそおおおおおおおお」

「来るぞ!」

「『神の領域を!』」

「もぉっ、めんどくさいわね」

「消えぐえっ!?」

「「「へ?」」」

 突然の出来事だった。

 私たちがクリスの攻撃に備え防御態勢へと入り、クリスが魔法を使おうとしたそのときだ、クリスが私たちのほうへと向かって突然倒れ、私たちは一瞬何が起きたのかまったく理解できず、ポカーン、としていると、この状況を作った人物「モンスター」クゥが、誇らしげにクリスの上に乗りながら飛び跳ねており、全員放心状態だった。

「クッピピー!」

「す、姿が見えないと思ったら・・・・・」

 戦闘が始まったころからだろうか、クゥの姿が消えていたことには気がついていたけど、私はそれどころじゃなかったし、ほかの二人も私のとんでもない行動にそれどころではなかったのだろう。

 あまりの衝撃だったのか、それとも、うまいぐあいにクリンヒットしたのか、クリスは完全に気絶しており、ピクリとも動かなくなっていた。

 それから10分後。

「くっ、いったぁ。何が?」

「クピ!」

「な、なんだ?!」

「あ、気がついたみたいね。クリス、貴方クゥに後方から一撃入れられて気絶したのよ」

 私がクリスにそう言うと、クリスはクゥを手のひらに載せて苦笑いをしながら、はぁ、と一つため息を吐くと。

「まったく、私も落ちたものだ。まさかクリなんて際弱モンスターに、しかも一撃で気絶させられるなんて」

「クゥは最弱じゃないぞ。そこの際弱勇者よりは強いよ」

「最弱は余計なのよね~、クライ~ン」

 私がそう言うと、さらっとクラインは私から視線をはずし、何事もなかったように振舞っている。

 私はクラインを放置してクリスに視線を戻すと、彼の顔には敵意はなく、なんとも罰の悪そうな顔がそこにあった。

「力か・・・・・君はその力を何のために使う?」

「もちろん、何度でも言うわよ。世界のためじゃなくて、私と、私の友達、私の愛しているこの世界のためよ、偽善者といわれようと変わらないわ」

 私が笑顔で答えると、泣きそうな顔をしながらクラインは微笑み。

「わかった。力になる。私も、もしかしたら君達と旅をすれば見失っている何かが見えてくるかもしれない」

 クリスが私を見ながら、迷いのない瞳でそう言うと、クラインがしゃがみ込み、クリスト目線を合わせると。

「いいか、よく聞け。最弱勇者だぞ。こんなお荷物背負って魔王と戦うことになるんだぞ、いいのぐぁ!」

「だから、最弱は余計なのよ!」

 失礼きわまりない一言を言うクラインの背後にまわり、私はその首を絞めるが、するりと抜け出し、私は近くにいたクゥをわしずかみした。

「く、クプイ~」

「アクアさん、クラインさんに投げるの、クゥから石にしてください」

「それじゃ怪我するだろ、せめて二次元をデザインしたこれで!」

 ヒカリの突っ込みにクリスが唐突に出したものに、私とクライン、ヒカリはしばし呆然と見入ってしまった。

 そこに描かれていたのは、猫耳美少女キャラが、妙にセクシーかつ色っぽい姿で描かれた、俗に言う抱き枕カバーだった。

「あ、あの、クリスさん、それは~・・・・・・」

「あ、これ? これはね、2011年春に放送されたらしい、猫耳と犬耳がなにやらアスレチック見たいので争うアニメ、そこに登場するキャラの抱き膜だよ」

「「「「・・・・・・・」」」」

 別に人の趣味どうこうは言いませんけどね、今の年数から考えても2000年近く昔の物であり、どうしてそれがここにあるのかということが大きすぎて、そこの色っぽいキャラについてはまったくふれられず、私たちは一同に呆然としていたけど、私は今後のことを考えて、これだけは確認しておく必要があると思い聞いた。

「も、もしかしなくても、その、オタ・・・・・」

「私はオタクじゃなくて、ネスタ『神』」

 マントをバサッと振り払い、カッコよく? 宣言すると、全く恥じることなく堂々としていた。

 あまりの湖東堂に唖然とする私をよそに、クラインは頭を抱えながらも一言。

「つまり変態だと」

「変態さんですか・・・・・」

 あの天然ヒカリまでも、少しばかりどうしていいのか分からず、おどおどしている。

「クピ~」

 いまさらだけど、本当にこの人を仲間にしてよかったかと疑問に思わずにいられなかった。

 ま、まぁ、どうやら魔法については世界最強みたいだし、少しぐらい変態でも・・・・変態で変人でも・・・・・い、良いのか私。

「良いかお前たちよく聞け、この猫耳、犬耳物語はだなぁ、本当にすばらしく、感動できる物語なんだぞ・・・・・・・」

「おい、アクア・・・・・」

「ごめん、言いたい事はなんとなくわかってるから・・・・・」

「本当に仲間にしてよかったのかしら」

「ひ、ヒカリ、それは言っちゃ駄目よ」

 私はうなだれながら、その作品がいかにすばらしいか語り続けるクリスを見ながら、まぁ実害はなさそうだからいいかと思うことにした。

 それに、腹黒く、何を考えているんだかわからない人よりは、こういう純粋な人のほうが何かと安全だと思うし。

 それになにより、魔王であるリステアとの愛称がばっちりに思えるのだ。

 こうして、私たちは新たな仲間を加えると、その足で魔王城へと向かうのでした。

 本当にこんなことで大丈夫なのか、という不安を抱えながらも。




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