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survival life  作者: 桜雨
6/6

ep:6 仲間


『わっ…わりぃ、それよりも助かったよ…見る限り正気そうだけど念のために聞いていいか?』

『ええ、私もあんたと同じよ、正気も保っている。それより移動しましょ、さっきから数匹こっちに向かってきてるわ』


突然現れた銀狐の女性は手短に答えると手招きしながら2人を連れて移動を始めた。しばらく歩くと教材を貯めておいた教室にたどり着いた。たしかここは専用の鍵がないと開けれないはずだが女性は何事もなく開けて中へと入って行った。


大輝はふと視線を扉の下に向けると、そこには無残にひしゃげた南京錠が転がっていた。

兎にも角にもその場にいるのも忍びなく中へと入って行った。


中は思ったとおり、教材や色んなもので溢れかえっていた。特に埃がひどく、入った瞬間にむせてしまい、浩太も同じように涙目になってむせている。


なかのさらに奥へと進むとそこには1人の女子中学生がちょこんと座っていた。女子は3人に気がつくとヘラりと笑って出迎えてきた。


『未来、戻ったわ』

『おかえり、綾さん』


これまた短く会話を交えると銀狐の女性は2人に振り向いた。


『さて、自己紹介と行こうか。私は時雨綾香、大学一回生よ。こっちの子は安井未来、見ての通り中学生よ…あんた達は?』


『……和泉大輝、ここの2年…』

『小原浩太です。ここの3年生です。』


2人も連なって自己紹介を済ます。異形の姿になってしまったがまだ生存者がいることは喜ばしいところであるが、両手を離して喜ぶわけにはいかなかった。


『ところで、和泉だったっけ?あんたずっとその姿だけど…どうして元に戻らないのよ?』


『は?』


綾香の口からでた言葉に耳を疑った。何かの聞き違いだ。そんな顔をして確かめるために聞き直した。


『だからどうして元の人の姿に戻らないの?私はこのすがたの方が周りの音を拾って察知できるからこうしてるけど…』

『戻れるのか⁉︎人の姿に⁉︎』


今度こそ聞き違いではないと理解すると喜びに満ちた顔になった。それほど今の姿に負い目を感じていたのだろう。今も大輝の尻尾ははち切れんばかりにブンブンと振り回っている。


『知らないなら教えてあげる。…とりあえず自分の今の姿をイメージしてからそこから徐々に戻っていくイメージしてみなよ』


大輝は綾香の言うとおりに目を閉じてイメージを始めた。すると数秒後には変化が起きた。


大輝を覆っていた紫の獣毛はざわついて徐々に短くなっていく、そしてそのしたからは人肌が現れ始めた。尻尾も腰へと吸い込まれるように縮まり、顔もみるみるうちに元の大輝へと戻って行った。そうして大輝の変化はものの10数秒で終わった。


『……』


目を開くとそこには元の人肌に戻った両腕があった。恐る恐る触ると確かに人のものと感じる。腰にあった違和感も目先に見えていた長いマズルも今はない、大輝は喜び以上に安堵の気持ちでいっぱいになった。しかし五感は未だ健在らしく様々な情報が流れ込んでくる。


『人に戻る時も〈獣化〉する時もその姿をイメージして力を込めると変化が起きるわ、覚えといた方がいいわよ』

『〈獣化〉?』



聞きなれない単語に浩太が首を傾げる。すると綾香もこればっかりはと言いたげにお手上げのポーズをする。


『一応獣みたいに変化するから〈獣化〉って言い方にしてるけど…正直どうしてこうなったか全く検討つかないわ……ただ一つ心当たりがあるとしたら…』


綾香がここまで言うと大輝も浩太も何かに気づいたように表情をして固まった。


『この街の異変とあの時広がってきた霧…』


2人の答えに綾香もうなづく、どうやら同じ答えのようだ。だとすればなぜこのような規模で行うのか?これではもうバイオテロといっても過言ではない、いやそれ以上だ。そして1番の謎はこの事態の首謀者とその目的だ。


『わからないことだらけだな……でも一つだけハッキリしたことがある。』


大輝の言葉に3人は一斉に大輝へと視線を集めた。そして大輝もその先は言いづらいのか、難しい顔をしている。


『なに黙ってるのよ?ハッキリ言いなさいよ』

『……ここはほぼ野生に戻ったということだよ。『弱肉強食』、気を抜けば俺たちも殺される。こんなところで生きるのは厳しすぎる…』


催促された大輝はその難しい表情のままそう呟いた。しかしここで別の声が上がった。声の主はもう1人の女子中学生、安井未来だ。顔を見ると欠伸をかいた後のように目をしぱしぱさせ、こすっている。そしてゆったりとした口調で口を開いた。こんな状況でも寝ていたのか、なんて緊張感のない人だと内心ツッコミながらもあえてスルーしておいた。


『あの〜全く根拠がないんですけど、これってこの街自体が被験体で大規模な実験をしているとも思えませんか?』


未来の突拍子もない発言に3人は顔を見合わせた。たしかにない話ではない。むしろ逆だ。そう考えると全て辻褄が不思議なほどに合う。しかしそれでも目的だけはわからなかった。


『だとしてもこの獣化は多分あの霧が原因だろうな…綾香も吸ったのか?』

『ええ、突然下から溢れ出してもろに吸ってしまったわ』


2人は確認するとますますあの霧が原因だと裏付けられる。あれだけの質量で覆われては逃げ場もないだろう。目配せだけで浩太と未来に視線を移すと2人もうなづいた。ここにいる4人全てが霧を吸ってしまっている。そこで大輝はある懸念が生まれたが流石にそれはないだろうと頭の隅に追いやった。


『……なぁ、この街を出ないか?』


大輝は唐突にそう呟いた。3人は言葉の意味を理解してないような表情で大輝を見つめる。そして大輝はそのまま説明を続けた。


『ここは危険過ぎる。それにこの事態の実態と元に戻る方法も探さないとならない…どちらにせよ、この街を出なければ始まらないと思うんだ…』


『たしかにそうだけど、公共交通機関は全停止、電気も何もない、唯一水しかないここでどうやって脱出するの?』


交通機関が止まっているのは大輝も把握済みだ。だからこそ提案できる案があった。


『考えてみろよ。交通機関が止まっているということはトンネルが潰れたわけじゃないんだろ?今までは電車が動いていたから通れないけどそこを通れば外に出れるんじゃないかな?』


『それは無理だな』


大輝の案を遮るようにどこからともなく声が聞こえてきた。あたりを見渡してもこの4人以外だれもいない。すると浩太が気づいたみたいに窓を指差した。3人も連なって指差すところをみると窓には1人の狼人が立っていた。毛並みは茶色、そして碧色の瞳は大輝とはまた違った鋭さを宿している。


『……どうして?』

『通路を見てきた。案の定、爆破されていた。通るのはまず無理だな…』


狼人は窓から降りた。そして当たり前のように獣化を解いて人の姿を晒した。その顔は大輝にとって見覚えのある顔だった。


『あっ!谷隆治!』


大輝は指差してそう言うと、隆治はうざったいのか、舌打ちしてスタスタと歩いてきた。もちろんそれは大輝も同じらしくギャーギャーと騒いでいる。


『それはいいとして!谷には何かいい案があるの?』


騒ぐ大輝を黙らせ、綾香が谷に尋ねる。


『脱出するには俺も賛成だ。ただその経路だが…山越えしかないだろう…ここは柵のように山に囲まれていて普通なら越えるのはかなり厳しいがな』


『それどういう意味だ?』


『つまりだ、俺たちは全員獣化して山を越える。野生の力があれば行けるはずだ。』


隆治の案には説得力はある。それは大輝と綾香が体験しているから1番よくわかる。しかしだからこそ、その案には欠点があることを見逃さなかった。


『ちょっとまてよ!それは確かに有効だ。だけどもしそうするなら浩太と未来はどうするつもりだ!置いてけっていうのかよ!』


そう、その『欠点』とは獣化してない浩太と未来のことだ。人のままでは確実に登るのは不可能だ。担いで行くにも危険が伴う…となれば1人で登るしかないのだ。

それを理解している大輝は声を荒げて隆治につめよる。


『落ち着け、俺は『全員』って言ったはずだぞ?話はまだ続く、いいから黙って聞け!

とにかくだ、浩太さん、安井さん、あんた達はまだ獣化してないんだな?』


隆治の質問に黙ったまま頷く2人、しかし今度口を開いて割って入ったのは綾香だった。


『割り込んでごめん、今のあんたの話を聞く限りまるでこの後にも2人が獣化するみたいな口ぶりだけど…まさかね…?』


綾香の些細な疑問から察した大輝もまさかと隆治を見つめる。しかし現実はやはり残酷出会った。


『その通り、この2人も…内にはすでに獣がいる。…いや、もはやこの街に正常な人間がいると思わない方がいいだろう…』


隆治の突きつけた事実は予想通りだった。正直に言えばその可能性は1番大きく懸念していたがせめてそうならないで欲しいと勝手に決めつけていた。だからこそ本人には言いづらかったのだ。しかし、本人達にとって辛いはずなのに反応は意外なものだった。


『うん…なんとなくだけど僕もそう思っていたんだ。全員霧を吸ってしまったって聞いた時にだけどね…』


浩太がその事実をあっさりと受け入れている。未来も同じことを思っているようにうなづいている。しかしそれでもその声は微かに震えている。やはり怖いのだろう。大輝も綾香も気まずさから声をかけることができなかった。



『心配しなくても、僕は大丈夫だよ。みんながいるからね…』

『ですね…でもこうなればやるだけやるしかないですよ。こんなところで行き倒れるのはゴメンですし、みんなと一緒ならなんとかできますよ』


2人の反応にみんなは微笑む。そして大輝は心の中で浩太に謝った。浩太は決して弱くない…芯の強い男だ。隣にいる未来もにこやかな表情を変えずに頷いてる。そして何より2人の目には力強い意思が感じ取れる。


『わかった…ならみんなで山を越えよう。』


『じゃぁその準備をしなくちゃいけませんね!』


大輝の決定に未来も嬉しそうに両手を合わせてそういう。そのはしゃぎように場の空気がまた和らいだ気がする。







俺たちはここから脱出する。そして…この惨劇の真実を明らかにして見せる。


けど俺たちはこの脱出があまりにも過酷で陰謀が渦巻いていることにまだ気づかなかった。


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