表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首無し騎士とゾンビが籠球に興じる話。  作者: 魔王@ばすけっとこーと
4/8

由紀子をもふもふしたくば。中編

「ゾンビマスター様ッ」

「水奈子っ」

「あなたっ」

「我が妻よ!」

「愛していますッ」

「俺もだっ!」


ーーふたりは、本気だった。

「あなたってチョーキモい! 最高!」

「うむ。君は綺麗だ! 水奈子っっ!」

「あなたッ」

「水奈子っ」


ーーふたりは、真剣である。


やがて、何ていうか、ええと、つまりさておき、水棲生物であるところのミセス・セイレーン、水奈子さんは、透明な球体を産んだ。ふにょふにょしていて、今にも崩れそうだが、意外と弾力がある。


ーータマゴである。ふたりの愛の結晶である。そしてそれを、水奈子さんは細い指で掬い取りーー。


「……美味しい。」


口に含んだ。そして、微笑む。

こんなにたくさんあるんだもの。ガイアさんのところにも分けてあげないと。


ーー人間たちの間では幻の珍味と呼ばれるーーセイレーンの卵は、このようにして生産される。


ここ、テストに出すので覚えておくように。


   ◆◆◆



どすん。ごろごろごろ。


いやだ、弾まない、このボール。


人間の少女ユキコは、絶望感ただようまなざしで、大切な友人であるウンディーネを振り返った。


透き通った水が、人の姿をした女性ーーウンディーネは、優しく微笑む。


「キアイよ、ユキコ。大抵のコトは根性で解決できるわ。どうか弾んでほしいという願いを込めて、渾身のチカラで、敵将のクビを地面に叩きつけるの。それが、『ぼおる』を『どりぶる』するコツよ?」


コツよ? ーーとか言われても。


ユキコさんは、背筋に冷や汗が伝い落ちるのを感じた。魔将ーーウンディーネは、由紀子には優しい。すごく優しい。とてもすてきなお姉さんだ。


美人だし。料理も上手いし。歌も上手だ。麻雀もやらせてみたが、なかなかイケた。ーーだが、コレだけはいただけないーー。


ある日、ウンディーネはゾンビのクビを手渡してこう告げたのだ。


「さあ、ユキコ。これを『どりぶる』してみなさい」ーーと。


ムリである。

人類が月面に立つ日が来ようとも、これだけは不可能である。

前々から思っていたが、何故に生首が弾むのだ。


ウンディーネは、美しい顔を、困惑にゆがめた。

「困ったわねえ……、ユキコ。これでは立派な魔将になれないわ」


(べつにわたしは魔将になんてなりたくはないのです。)


思う由紀子だが、口には出さない。

何故、戦場で生首をドリブルする必要があるのか。それもギモンだが、それも言わない。ただただ黙って、ウンディーネの顔を見つめた。


「いい、ユキコ。人間の脳みそには、知識と経験が詰まっているの。それを摂取することで、ニンフは賢くなれるーー」


「それを確実に入手し、迅速に持ち帰り、兵たちに分け与えるーーそのためには、『どりぶる』を駆使して敵の手をかいくぐり、輸送兵の掲げ持つ『カゴ』に『しゅーと』する。」


今のわたしは妊婦じゃありません。思う由紀子だが、ウンディーネの期待に応えたいと思うのも、また事実ーー。

「それがかかせないの。」


だから、頷いた。


「わかりました。キアイですね、うんでーねさん。わたし、やってみます」

「そう、その意気よ、ユキコ。」


ふたりのおとめは手を取り合い、いつか栄冠を掴むことを誓い合う。ーー美しい瞬間であった。まこと、感動である。


   ◆


「そいやぁ!」

「きてはぁああああッ!!」

「せいやッ!!」

黒騎士配下の魔物たちが剣技の訓練を行うヨコで、どりぶるの練習に励むユキコ。服は、ゾンビマスター配下の制服である、水兵服を借りてきた。真白い綿の服に、紺色の襟。そして白い半ズボン。

彼女はーー『ぼおる』を、地面に投げつける。


どすん。ごろごろごろ。


「……うう、難しいのです。他の皆さんは、どうやって『どりぶる』なさっているのでしょう……」


がくりと肩を落とす由紀子。

そこへ、顔を出したのがーー


「なんだよオマエ。こんなもんも『どりぶる』できないのか?」


ダークエルフの少年、ギンカと。


「そんなこと言っても、けっこう魔力が要るしーー難しいよね。ね、ユキコさん」


コボルドのシロだ。


ギンカに至っては、指先にぼおるを載せ、器用にくるくると回している。


「うわあ……! すごい! すごいです、ギンカさん!」

「な、なんだよこの位。誰でもできらぁッ」

顔を赤くする少年。その隣で苦笑する、白い毛並みのコボルド。


「……ね、あっちで、みんなで練習しない? 僕もいつか、第一軍団に入るのがユメなんだ。黒騎士様、カッコイイよね。僕もあんな騎士になりたいなあ……」

コボルドの言葉に、ギンカが意地悪そうにわらう。

「無理、無理! コボルドなんて、非力で、剣なんか持てねーじゃん」

「う、うるさいなぁ……! いいじゃないか、別に。憧れるくらい……!」

そのやりとりを見て、ユキコは、小さく、くすりと笑う。


(なんだか、懐かしい感じ。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※ 魔将募集 ※

異世界でチートハーレムな魔将生活しませんか。
高額基本給保障 各種保険制度完備
経験者歓迎 魔将未経験者の方も魔王直属四魔将が 親切丁寧に最前線にて指導
500歳以上の高年の方も最前線にて活躍中 子育て支援完備。最前線で死亡された方のお子さん に対する保証は特に厚くしております。
安心の魔王軍。全人類を敵に回して戦い抜ける組織 だからこそのバックアップ体制。
語学力を生かし、異世界の神族、精霊、悪魔妖怪の 助力を得ることも。
車、バイク、移動生物にての通勤歓迎。ガソリン、 電気、餌代に交通費全額支給。
社宅 専用私室 個人的部下の為の寮完備 昇給 賞与 特別手当あり(※別紙参照)

※福利厚生施設一覧……(別紙参照)

応募は こちら から
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ