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私と竜人  作者: 他向井途
出会い
3/8

◇2

青年と少年が来た頃はもう日が暮れてきているころだったので

国を出るのは次の日にしようと少年は提案した


少女は頷いた

少女の住む家に入ると

そこは粗末なものでテーブルやイスなどといった家具はない

ベットなど勿論ある筈もなく、家にあるものと言ったら藁の塊位である

藁をベットとして使っていたのだということがわかる


少年は、何も話さず只々絶句していた

少女にではない、少女が過ごす事を強いられてきたこの有様にだ

国の言い伝えか宗教か何だか知らないが少女をここまで追いやったこの国の、この町の人たちの酷さに





少女が藁の上で寝た後少年は密かに決意した、少女を守り通そうと傷つけないと…



早朝ー


少女と少年は町の人たちが起きるよりも遥かに早く起き旅立つ準備をした

「この袋、」


少年が指差したのは昨日青年が渡してきた不思議な袋である

「…?」

少年の意図がわからないようで、小首をかしげる


「ここに守護の魔法陣が描かれている

後この袋に入ってるこの2本の杖、これには守護と反射の魔法陣が刻まれているんだ

守護と反射の魔法陣は俺らを守ってくれるんだ」

「へー…」

分かったような分からないような微妙な表情をしている

「まぁ、とりあえず分からなくても持っといてくれればいい

俺らの目標は一先ず国を出ることだ

といっても俺にかかれば直ぐなんだけど


というわけで袋から防寒具一式出してくれるか?

防寒具という言葉を思い浮かべながら出せば出てくると思う」


先ほどからよく分からない事ばかり言っている少年に混乱しながらも

指示され通りに袋から"ぼーかんぐ"という言葉を思い浮かべながら指先にあたった何かを引っ張り出してみた



「そう、このもこもこしたのが防寒具っていうんだよ」

「ぼーかんぐ。もこもこ…もこもこ♪」

少女はもこもことした手触りが気に入ったのか指先でもこもこ感を楽しんでいる

「さ、腕を通して、帽子もかぶって」

ともこもこを楽しんでる少女の邪魔をしないようにぱっぱと着替えさせた


「ぁ…なたは…きないの?」

「俺は必要ないよ

なんてったって竜人は人よりも皮膚が何倍も硬いし丈夫だからね!」

少年は少しだけ得意げな顔をして少女に言った


「そ…なんだ、すご…ぃ…ね、りゅうじゅん」

「うーん、まあ人よりは丈夫に出来てるね

大人になったらもっと力も強くなるんだろうけど、俺はまだ子供だから


さ、準備もできたしそろそろ隣の国に行こうか!」


少年は子供だから、と言った時に少しだけ哀しそうに目を伏せた

少女はあえて気づかないふりをし、返事をした

「うん、ぃ…いく!」



最後に家…と呼べるかわからない場所を一瞥し、少女は竜の姿をした少年の背に恐る恐る乗った

「落ちてしまうから、しっかり掴まっていて」

「うん…」


少女に気を遣いゆっくりと上昇する少年…もとい幼竜

「わ、すご…い……!」

段々と地から離れていくことに驚き、思わず生まれて初めて、感嘆の声を上げる少女


ある程度の高さで中空に留まり少女に声をかける

「じゃ、行くよ」

「うん!」


それからは、ぼうっとした様子で空の上から眺める景色に魅入っている


「落ちないようにしっかり掴まっててね」

「だいじょー…ぶ、だと…おもぅ」


自分でも自信がないらしく最後の方は消え入るような声になっていた



「あ、そうだ隣の国に言ったらまず名前を付けようか、俺たち」

「…なまえ?」

「そ、名前!

君とかねぇ、じゃ他人行儀っぽいでしょ?

これから一緒に生活していくんだし

君が俺の名前を決めて、俺が君の名前を決める。どう?」

竜の姿のため表情は分からないが声は楽しそうである

「……なまえ、

うん……なまえ、…がんばる!」

少年の楽しそうな声につられて少女も楽しそうに声を上げる


ポツポツと会話をしていると日の光が目に射し込んだ

「日が昇ってきた

今は晴の国の隣…、土の国だよ

土の国のはずれの林、見える?」

少年が首だけ林の方に動かす

林の中心に少しだけ空間がある事を視認してから少女は返事をする

「み…ぇるよ」

「そこで朝ごはんにしようか

もう、忌々しい晴の国は抜けたし、急ぐ理由もなくなった

休憩もしたいし……というか俺がお腹減った」


コクコクと少女もうなずく

どうやら少女も最近では感じなくなってきていた空腹感が少年に会ってから戻ってきたようだ

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