2.災い転じて地獄となす
新婚さんに10+1の質問
1.であった場所は何処ですか
「まあ。それはですね―」
「ああん?出会った場所!?おい!てめえ!気安くきいてんじゃあねえ!いっておくがな、俺はあの凶暴ぉ…」
―あの~どうされました?
「イヤナンデモ、ナイデス。ワタシノツマハ、トテモウツクシイデス。デアッタノハ、キョウカイノマエデ、ひとめあった瞬間から運命の恋に落ちました」
「ええ、そうですの。もう彼以外考えられなくて、地上の何処を探しても、彼以上に素敵な方はいませんわ」
2.出会った瞬間、相手のことをどう思いましたか
「ソレハモチロン、獲物デハナク、ウンメイノヒトダト、天が私に、与えた殿方だと理解しました」
3. 心に残る愛の言葉はなんですか
「…誓いなさい。ひいぃっ。アイシテイマス、デスヨ」
「私の愛、我が心のオアシス、君の瞳の素晴らしさといったら、言いようがないよ。でしょうか。もう、心に残る言葉が多すぎてっ!ああ、どの愛の囁きも、私の心を捕らえて離しませんわ」
4.何時までも残しておきたい贈り物はなんですか
「………………………………………ワガイトシノメリッサノアイ、デス」
「それは、もう彼自身しかありませんわ。替えがたい宝物ですもの」
5.どのくらい幸せですか
「ト、トテモデス」
「言葉に言い表しにくいですわ」
6.思い出の場所は何処ですか
「出会いました教会の前です。そこを通るたびに、初めてであったときのように心が、ときめきますわ」
「……………………峡谷」
「おほほほほほほほほほほ。峡谷って、何処の峡谷のことかしらぁ」
「キョウカイノマエデス」
7.なぜ、思い出の場所なのか理由を聞かせてください
「夢に出てくるから」
「そうですわね。ひと目あったときに、かつてない胸のときめきを覚えましたの。胸が苦しくて、それでいて愛おしい想いが…いや!恥ずかしくて、これ以上いえませんわ!」
8.求婚の言葉はなんですか
「一生、放さない」
「おほほほほほほほほほほほほほほほほほ。いやねえ。ダーリン。それ、私の台詞よ。」
「アイシテルゼ、メリッサ。ケッコンシヨウ」
「あら、思い出し涙?貴方ったら、感激屋さんっv」
9.キスは一日に何回ですか
「ええと、ですねえ」
(してねえ!してねえよ!キスなんて!恐くて、出来ねえ!生気を吸われるって!)
「あら、今してみせますわ」
「じゅ、12回!12回だ!」
10.どのくらい幸せですか。
「あなたに分けたいぐらいですわv」
「トテモ、シアワセデス」
11.お互いに一番言いたい事はなんですか
「愛しておりますわv」
「……………………」
「貴方、何時まで無言でいますの」
「…………………………」
「もうっ、あーなーた」
「……か……………」
「あら、何?」
「か、いほうしてくれえええぇぇ」
なぜ、こうなったのか。
泣きたい。ああ、なきたい。ぐはっ。
「うっとおしいですわ。黙ってくださらない?」
今、力づくで黙らしたやんけ。
金髪女ならぬ儚げな美少女(外見がコレなのに、あの怪力…詐欺だ)が、険悪な顔つきで睨んでくる。
状況を、説明しよう。
住んでいた場所が嫌になった俺は、町に出たわけだが職にアブレ、いっそのこと、盗賊になっちまえと決めたのが3日前。
決行したのが、昨日。
たった、3日で………。
一目惚れしたわけでもないのに…。
なんだよ。このスピード結婚…。
盗賊から、名家のメリッサの夫に。
悪夢としか言いようがない………俺が、何をしたんだというんだっ!!!
俺は、悠々とお茶を楽しむメリッサに、事実を突きつけた。
「オジョーサマ。俺が、無知無学無教養と思って知らないと思っているだろうがな。俺は平民ー」
に分類されるのか?
農作業はしていないが、馬の世話はしたことはある。
やっぱ。平民か。
「と貴族様は結婚できないことぐらい、知っているんだぞ?」
ちょっぴり、同情交じりに行ってやると………あ?
なに、笑ってやがる。
「あら、そんなもの…でっちあげれば、いいだけですわ」
おいおい。そんなことを、いっていいのかよ!?
「どうも、ここらへんの殿方は、皆つまらない方ばかり。結婚したら退屈で、死んでしまいますわ」
ほうっ。
片手を頬にあててため息をつくメリッサは、美しい。
そう、切ない恋心に胸が締め付けられる乙女。
今、ため息をこぼしたメリッサを、芸術的に表現するならそういうべきだろう。
直前の台詞は、大問題だけどなっ。
「オジョーサマ。まさか、面白そうという理由で、俺を捕まえたのか!?」
「ええ。そのとおりですわ☆」
ニッコーリ。
メリッサは美しい。
その笑顔を見た俺が、不覚にも彼女の周囲にピンクの花が辺りに咲き乱れる幻覚を見たほどだ。
が、しかし。
結婚理由がいただけない。
いくらなんでも。
いくらなんでも。
それはないだろー!!!
「帰るっ」
「何処にですのー?」
のんび〜りした問いかけに応えることなく、俺はすばやく部屋の扉を開けた。
「あ、言い忘れていたことがありますの」
タイミングの良いメリッサの一言。
「ナンデショウカ」
下から見上げるような、ナガシメがナマメカシクテ良い…
背筋がすうっと冷えたのは、どうしてだろうな。
「デウリー様のお友達の方々のことです」
「へ、へえ…誰だっけ?………………あいつらか。何かあったのか!?」
「はい…。実は…」
捕縛された盗賊の末路は、一つだけ。
縛り首だ。
……………可愛い顔して、えげつないのねv
「どうも路頭に迷っている方々のようですし、護衛や下働きに雇い入れましたの」
………………
………………
………………
……えええ!
オジョーサマの指す方向は、外。手入れされた庭。不審者を遮断する鉄柵。
そこには、人相のよろしくない人間が、数人あるいている。
確かに、盗賊になろーぜと声を掛けた連中だ。
目を疑う俺に飛び込んできたのは、もっと信じられないものだった。
呑気に手を振っている、元・手下達の眩しいばかりの笑顔。
……何を、手を振ってやがる…。
ビシリと、俺の手の中のカップにヒビが入った。
「あらまあ。そのカップ、高いですのよ?」
「ああ。そうかい。それがどうしたっ」
「物は大切にしないと…旦那様」
げーげーげー。旦那様だってよ。
「止めてくれよ。オジョーサマ。それより、あんたの婚約者はどうしたんだよ?勝手に結婚していいのか?」
「まあ、旦那様ったら。そのことについては、言わぬが…」
空に輝く太陽よりも、強く瞳が光るっ。
ブルルルウル。
あんた、本当に令嬢か?
「ちゃんと、断りと謝罪の手紙を出しておきました。」
ひたっと、見据えて。
「むやみに外に出ないでくださいね。いろいろと危険ですから。」
逃げるなって事か。
ふんっ。逃げ出してやる。誰が、お嬢様のわがままに付き合っていられるか。
しかし、俺は、何故、あの超凶暴な令嬢が、婚約者をあそこまで嫌がるのか。
後日、嫌というほど理解することになる。
次回で終わりです。
しりぎれトンボで、サヨナラ~です。