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摩訶不思議食堂のほっこり飯

市川幸裕の本気のほっこり飯

作者:修羅観音
最新エピソード掲載日:2026/02/25
建設工事会社の現場リーダーとして、また中学2年生の息子を持つ父親として、順風満帆な人生を送っていた40代後半の男、市川幸裕。
そんな彼がふと意識を取り戻すと、そこは見覚えのある、けれど不気味なほど静まり返った薄暗い四条河原だった。

なぜここにいるのか、直前の記憶が霧に包まれたように曖昧な中、幸裕は現在地を確認しようとポケットに手を入れる。
しかし、そこにあるはずのスマートフォンは見当たらず、代わりに指先に触れたのは、真ん中に四角い穴の開いた古銭のような奇妙な硬貨が6枚だった。

混乱する幸裕の前に、黒いベレー帽とズボンタイプのセーラー服に身を包んだ、不思議な雰囲気を持つ少女「えらいこっちゃ嬢」が姿を現す。
まん丸な目で幸裕を凝視し、口を台形に開けて「えらいこっちゃ」と呟く少女に、幸裕は戸惑いながらも助けを求める。
自分がスマートフォンも財布も持たぬまま、異質な場所に迷い込んだことを認めた瞬間、えらいこっちゃ嬢は夜の闇を裂くような凄まじい声で叫びを上げた。

その咆哮に応えるように、遠くの暗闇からぼんやりとした光が近づいてくる。
それは、轟々と燃え盛る巨大な車輪を片方だけ持った、炎に包まれる異様な牛車――「片輪車(かたわぐるま)」だった。
運転席に座る着物姿の美女に促されるまま、幸裕はえらいこっちゃ嬢に手を引かれ、火の粉が舞う車内へと乗り込む。反対側のポケットから更に見つかった10枚ほどの同じ硬貨を運賃として手渡すと、物理法則を無視した片輪の疾走が始まった。

えらいこっちゃ嬢が告げた行き先は「摩訶不思議食堂」。
炎の車輪が砂利を噛み、火花を散らしながら夜の街を駆け抜ける異次元の道中、幸裕はまだ、自分の身に起こっている事や境遇、そして自分の人生に潜んでいた「本気ではない」という慢心の毒に気づいていなかった。
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