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変わる世界  作者: オピオイド
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副話 ニューチャレンジャー‼

サイファ学園都市。

正式な名前は塞破学園都市なのだが、いつの間にかにカタカナの方が一般的になってそれが正式名になっていたりする。

普通はそういう事はないのだが、この学園都市が出来てからまだ日が浅いからと言う理由がある。

そんな若い学園都市は、若いだけあって色々な面がある。(サイファ学園都市の説明は外話 サイファ学園都市と本編のサイファ学園都市を参照して下さい。)

都市全体の外観は、都市計画をせずに元からあった工業都市をほとんど手を加えずに使っているので

、見た感じは普通の地方都市にしか見えない。

しかし表には裏がある様に、全ての物事には多角的な面がある。

この学園都市においてはその面はとても色濃く出ている。

その中心とも言えるのが、研究室が集まる研究棟だ。

中でも一際濃い場所の一つがここ、



サイファ学園都市 研究棟鍛造化学教室棟


カツッカツッカツッと規則正しい靴音が、研究室棟の廊下に響いていた。

その靴音はサイファ学園都市の名物教授の一人、鬼教授と名高い重金(おもがね) (じょう)だ。

いつもであれば一人靴音をさせているのだが、今回は違う。

彼の靴音に重なる様にハイヒールの音も混じっていた。

黒髪を後ろで束ね下縁眼鏡の下に柔らかな瞳を持った、ビジネススーツの女性。

彼女の名は恩田(おんだ) 良子(りょうこ)、淨の助手を務める学園都市内で才女と噂される女性である。


「………では、今日の予定は三日後に繰り下げで良いですか?」

「そうだ。学生課の方へは別の教授と交代して欲しいと言っておいてくれ」

「解りました」


タブレット型のデバイスを操作しながら歩く良子は、慣れているのか歩調を変えずに操作を素早く行っていた。


「しかし、多々良教授の緊急の用件って何なんでしょう?」

「解らん、至急来てくれとしか聞いてないからな。忙しいからと色々断っている私を呼び出す位だ余程のことなんだろう」

「余程の事ですか……しかし、妙ですね。多々良教授が用件も言わないなんて」


デバイスから少し目を離し、良子は意外そうに呟いた。


「私のイメージとしては、やる事をキッチリやって遊ぶ豪放な人ですが?」

「あながち間違ってないな。多々良老は見た感じは厳ついご老人だが、中身は遊び心満載の少年の様な人だからな」

「そうなんですか?」

「だからこそ、今回は容易に何かあったかは予想がつく」

「と言いますと?」

「声が浮かれてた。何か新しい研究材料(オモチャ)でも見つけたのかもな」


靴音が扉の前で止まる。

扉には『鍛造化学教室』のプレートが貼ってある。

扉の横にある在室を知らせるボードを確認すると、淨は扉のノブに手をかけた。


「まあ、自分で確かめた方が早いがな」


そう言うと淨は扉を開く。

一番最初に目に入ったのはパーテーション、そこを避けながら中を見れば目を瞑り考え事をしている老人と向き合う様にソファーに座る女性が二人。

軽く淨は顔を強張らせる。

一人はアフガニスタンの民族衣装を纏った、若い女性。

顔を隠すようにイスラム圏の女性が纏うブルカに、アフガニスタンの民族がよく使う色と刺繍でわかる。

もう一人は白を基調とした戦闘服と言うより、騎士をイメージさせる様な服装とした二十歳を越えたくらいの女性。

その組み合わせに淨は、些か思い当たる節があった為だ。

淨が顔を強張りそうになるのを我慢していると、騎士風の服を着た女性と目が合う。

途端、女性が立ち上がり淨へと向き合うと一礼した。


「はじめまして、私は『騎士団』から来ましたフローリアと言います。プロフェッサー重金ですね? 著書はいつも読ませていただいています。『智神』と名高い貴方に会えて光栄です」


女性、フローリアと名乗る彼女は真面目に引き締めていた顔を綻ばせる様にニッコリと笑うと、握手を求める為に右手を差し出して来た。

淨は相手が『能力者で構成された騎士団』だと言うのを知っていたが、警戒する事なくその手を握る。


「どうもお嬢さん。私も騎士団の階位持ちの中でも『(ケン)』の階位を持つ貴女に会えて嬉しいよ」

「私の事を知っているんですか⁉」

「騎士団の『(アンサズ)』とは公私ともに十数年来の知人でね。しかし、騎士団かうちにくると言う事は? 儀式具の新調かな?」

「いえっいや、それもあるんですがリュシオール、挨拶して」


フローリアに促されもう一人の女性も、彼女を真似る様に立ち上がるがやや硬い動きで淨に挨拶をする。

アフガニスタンの女性の立場を考えるに、初めて国を出たのだろうと淨は予想をつける。

彼女と騎士団との関係も気にはなるが、淨はそれを心の隅に追いやり、ここに来た本来の目的を尋ねた。


「実はこれの修理をお願いしたくて」


そう言ってフローリアは、傍らに無造作に置いていたアタッシュケースを机に出すと、ケースの横にあるスリットに複雑な紋様が描かれた板を差し込む。

儀式を使う者ならばよく知る『儀式錠』と、鍵が開いた途端感じる神域結界に似た波動に、淨は何が出てくるか簡単に予想がついた。

中から出て来たのは、金色の杯。


「ゴブレットシリーズか」

「はい。聖杯をはじめとした、力を集める儀式具。その一つ風のゴブレットです」

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