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変わる世界  作者: オピオイド
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技の本質と

誠一が思惟から教えて貰った儀式、その名は『咬龍』。

『咬龍』の儀式効果は読んで字の如く、龍が咬みついた様に対象を引きつける引力を発生させるモノだ。

通常は前準備や時間・複雑さと比例して空間にある力を溜め込み強力になる儀式だが、この儀式は能力者の神域結界内に満ちる力を使う為に発動までの時間は一瞬である。

彩がその様な事を誠一に話すと、彼は目を見張る。

それもそうだろう、他の流派の人間が、一度だけしか見ていないのに技の本質の一部とは言え詳しいからだ。

実はこれには訳がある。


「私の流派、守部神道流にも同じ儀式があるのよ。『蔓』って言うのがね」


守部神道流は投げ技や関節技等を軸として戦う流派である。

その流派の儀式打ちに蔓と呼ばれる、相手を掴む技があるのだ。


「私の流派にも同じ動きをする儀式があるの、すぐに予想が出来たの。だからこそ私は確信した上で、あの技の恐ろしさが解るのよ」


顔色を悪くしながら彩は言う。

蔓も咬龍同じ効果をだす儀式打ちだが、技の派生としては大きく違う。

蔓は相手の身体を掴み、相手の身体を掴んだ箇所を支点に相手の身体をコントロールすると言う絶技に派生する。

それに対し咬龍は打撃技に派生する儀式だ。

ここで話は変わるが筋肉と言うモノを皆様はどこまで知っているだろうか?

筋肉と言う物は繊維状のモノが束になっていて、一本一本が縮む事により力が出て頑健さ丈夫さに繋がる。

筋肉の力はその繊維の数や太さ、縮む距離によって決定されるのだ。

縮んだ時の弾性や強靭さも、同じ様な条件で跳ね上がる。

ここで龍声の技の恐ろしさを語ろうと思う。

龍声、一連の動作は吠龍と呼ばれる発勁を打ったと同時に、咬龍と呼ばれる儀式打ちで吠龍を打った腕を引き戻す技だ。

言葉にすると簡単だが、技の本質は生体を知り尽くした人間が作った技だとよく解る。

技の本質はこうだ、励起法によって乗数強化された身体で衝撃波にも似たような技を打つ、それと同時に引く拳で咬龍を使う。

咬龍の効果は使い手の力に比例した引力、打った箇所の組織一帯を引く。

普通はそれだけだが、打った箇所は違う。

打たれた人間は無意識に筋肉を締め耐え様とするだろう、ここで先程の筋肉の話を思い出して貰おう。

筋肉は収縮する事により硬くなり衝撃などの負荷に耐える事が出来るが、一つ弱点がある。

筋肉繊維に対して垂直にかかる負荷に弱いのだ。

打った瞬間に身体の中に入る衝撃と打った後に引かれる力が同時に、打ち込んだ箇所を中心にしてほぼ垂直に力のベクトルがかかる。

結果どうなるのかと言えば、筋肉の緊張と垂直二方向に掛かる力は打点から弾ける様に散り……


「ボンッ」


彩の手を開いた弾けるジェスチャーが空々しく部屋に響く。


「えっちょっ、俺の大丈夫っ⁉」


今度は誠一が顔色を変える番だった。

服をたくし上げ、打たれた箇所を見れば紫色に腫れている。


「あっ彩さんっ、俺大丈夫かなっ⁉」

「大丈夫……だと思うけど」

「ちょっ煽るだけ煽って、酷いよ⁉」

「ええい、余所の流派の奥伝の効果なんて知るわけないでしょう‼」

「何と言う無責任っ⁉」


防御する為の力も攻撃力に変える絶技、まさに防御不可能の絶招と言う技に二人は混乱の極みだった。

一人は混乱もう一人は恐慌というそんな二人を鎮めたのは、あくび混じりにノンビリとした声。


「フアァ、大丈夫だと思うよ? 死なない様にする為に思惟さんは、誠一君に『力を抜きなさい』って言ったんだとおもうから」


声の主は、目をこすりながら背伸びする天子だった。

ノンビリとした声に抜かれたのか、内容に安心したのか誠一と彩はハーッと息を吐いた。


「天子、そう言う事は早く教えてくれよ~」

「いや~聞いていたから覚えてると思っていてね~」


はあ~と言う安堵の溜め息のみが部屋の中に浸透する。

少し緩んだ部屋、そこに襖を叩くボフボフと気の抜けたノック音が響く。

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