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変わる世界  作者: オピオイド
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儀式

かなり遅れました。申し訳ないです。

詳しくは活動報告に書こうと思いますので、平にご容赦を。

粘るに粘って弟子入りを許された誠一が、一番最初に教えられたのは套路と呼ばれる空手などで言う所の『型』だった。


「ねぇ先生、何でこんな地味な練習なの?」

「どんな武術でも基本になる事は基礎と身体の使い方の最適化よ。貴方がしてる站椿(たんとう)や套路は地味だけど、それを培う大切な意味のある事なの。嫌なら止めても良いわよ? 私も教えなくてらくだから」

「うわわっ嘘です、嘘。うわー楽しいなぁー」


地味な見た目と反し内容が激しくキツイ鍛練に、武術に対して夢を持っていた当時の誠一はガックリと力尽きる。

だがそれは思惟の教える武術にとって仕方が無いと後々に解る事だ。

型と一概に言うとただの動き方だと普通は思うが、套路とは体捌きの一連の流れに攻防や技・調息や姿勢などが全て詰まっているのだ。


「でも、全て詰まってるって言っても弱点とかはあるんじゃないですか?」

「弱点? 確かにあるわよ。でもね、それは使い手の使い方なのよ」

「使い方…?」

「そうよ。今はまだ解らないかもしれないけど、良く聞きなさい。今貴方がやっているのは、ただの動きかもしれない。でも技一つ型一つ流れ一つ、どれをとったとしても色々な側面があるって事をと知りなさい」

「先生ー、よくわかりません」

「だから、今解らなくてもいいっての………そう言えば、もう一つ貴方に教えなければいけない事があったわね。よく聞いて? これは普通の技とは違い………」


それが、誠一の武術を始めた頃の会話。





「儀式打ち? 俺は套路の中でも技に組み込む動きとしか聞いてないけど」


彩が何時の間にか起きていた事に驚きも自分の心を読んでいた事も気にせずに、誠一は普通に言葉を返す。


「前に教えたでしょ?」

「だっけ?」

「もう…」


すっかり忘れている誠一に彩は不満気に口を尖らせながら、もう一度説明を始める。

そもそも儀式と呼ばれる技術は、世間一般で言う所の魔法と変わらない。

呪文を唱えれば炎が現れ周囲を焼く、何て『始まり』と『結果』しか解らない効果があれば後はどうでもいいと言う様なモノだった。

しかし、近代化や錬金術から事を発した科学技術の発展により、儀式の『経過』や発動条件が次第に解明されてきた。(同作者作品の神遊び唄の学園都市に聞きに行こう‼を参照)

近代において一番儀式を解明したと言えば、東アジアで最高学府と言われる『辰学院』の長を代々務める重金一族である。

かの一族は、近代の儀式のシステムを解明するにあたり多大な貢献をしている。

様々な儀式のシステムを解き明かしたり、既存の儀式を組み合わせ新しい儀式を作り出したりだ。

その中でも有名なのは、彼等が出版した『基礎儀式学』と言う本である。


「その中で書いるのが儀式の種類。大別して普通の人が使える形式儀式と能力者しか使えない特殊儀式の二つ」

「能力者しか使えない?」

「儀式は前準備や専用の道具が必要とする物が多いけど、それは形式儀式と言われれてる。でも君の使う儀式打ちは 使わない、それは大体が特殊儀式に当たるわね」


儀式の名の由来は、元々『道具』を使い奇跡を発現する『宗教の儀式』からきている。

それ故に一般に儀式と呼ばれる技術は『形式儀式』と呼ばれている。

それに対し特殊儀式はとある条件を必要とする、道具を用いない儀式だ。

その条件とは、………


「神域結界よ」

「?」


よく解らない事を言われた様な顔をする誠一に、彩は溜息を吐きながら説明を続ける。

神域結界とは能力者が固有の波長を持つ、存在という現象に直接影響を与える空間の波と彩が説明を始めると誠一が出鼻を挫く様に止めた。


「ちょっちょっと、神域結界ってそんな難しい話なのか!?」

「そうよ。一応、私が重金教授から直接聞いた時はもっと難しかったわよ‼」


何を思い出したのか、彩は顔色を変えながらガタガタ身体を震わせた。


「……存在係数って何、証明計算するのに公式と単位が合わせて50以上っておかしいわよ、確率とカオス理論と未来予測に不確定性の計算、計算計算………」

「彩さん、大丈夫⁉ てか気を確かに‼」


何かを思い出したのか、目の色を変えて錯乱する彩を誠一は慌てて起き上がる。

しかし、誠一を見ずに彩はブツブツと呟きながら部屋から出て行く。

誠一が呆気にとられながら、それを見送ってから五分程経った後、水の入ったコップを三つ持ち彩が帰ってきた。


「……彩さん?」


ドンと持ってきた物を畳の上に置くと、何故か有無を言わさない座った目で話を続けだす。


「重金教授はこう言っていたわ。世界は粒子か集まって出来ているが、原子単位より小さい世界で見ると紐の様なモノが空間の実数と虚数の間を波の様に振動する事によりモノがモノとして成り立っていると。能力者の能力はその最小単位の紐の振動に働きかける事によって、現象を創り出すの。解る?」


ジロリと彩の吊り目がちの瞳に睨まれ、誠一は怯む。

我々が見る世界は、鮮やかに色を持ち熱をはらみ光に溢れている。

それは人間が人の感性を持ち、目で見ているからだ。

しかし、原子レベルの目で見ると世界は違って見える。

彩が言った様に原子を形作る素粒子よりも小さな、構成するモノは紐から出来ておりソレが振動する事により、モノがモノとしての存在している。(細かい理論や意味は大雑把で適当であまり正確ではありませんが、超弦理論を元にして語ってます。)

重金一族の研究者は紐の振動に目をつけ、能力者の力の発現にこれが関わっていると目をつけたのだ。

そして神域結界とは前述した様に空間の波である。

ここまで読んでくれた方なら、もう解るだろう。


「儀式も能力者の力も働きかけるのは一緒なのよ。最小単位の紐に働きかけ、モノの性質を決定づける紐の振動数・周波数・波長に働き掛け、モノ自体を根源から変質させる」

「変質させる⁉」

「見た事が無いと思うけど、何もない所から炎を出す能力者の能力を考えると解りやすいわ。炎を出すプロセスは違うかもしれないけど、炎は極端に言えばプラズマ。神域結界の空間波を受け、空気中にある分子や原子に対して『エネルギー飽和』と言う様な変質をさせればどう?」

「エネルギー飽和、って事はエネルギーが一杯で化学反応や発熱して……発火する」

「そうそれが能力者の能力として現れるの。ここで儀式の事を思い出して?」

「儀式も能力者の力は働きかけるのは一緒? って事は成る程、違いは神域結界って事か」


長々と説明したが、結論は簡単だった。


「恐らく貴方が教えて貰った動きは儀式を使う為の動きね」


言われて昔の、一番最初の説明を誠一は思い出す。


「たしか『おまじないの一種で、くっ付き易くなる』って言ってた」


それを聞いて彩は、得心を得た表情で顔を青ざめさせた。


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