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変わる世界  作者: オピオイド
8/90

外話 準備

今回の話は前話「試験…それから」の裏話です。

読まれなくても話は続きますが読まれた方が『変わる世界』『いつもの日々に戻る前』共々、面白いとは思います。

それでは本編をどうぞ!!

「私に、そんな仕事を回すと?」

「いかにも、『崩壊のマエストロ』フランベルジェに対しての依頼だ。」



某日 午後12時 高見原市 楼閣町 レストランテ『シャンゼリゼ』2階テラス席




雲一つない、透き通る様な碧一色の晴天。

字面はとても気持ち良さそうに感じるが実際そんな天気は、高見原にとってはあまり関係ない。

殆どが森で囲まれた、この町においては日の光は、どんなに鋭い日差しだとしても柔らかな木漏れ日にしかならないからだ。

しかしながら、晴天であれば森の緑が光を受け深呼吸するため、町の中は清々しい空気に包まれる。


ある一画を除きだが。


高見原の中でも特に緑が深い中洲の中心部、最も発展した繁華街『楼閣町』の一画にあるレストランテ『シャンゼリゼ』。

その二階にあるテラス席では、男二人が険悪な雰囲気で顔を付き合わせていた。

片方は黒髪に黒色のスーツを着た壮年にかかった位の男、長い髪を頭の後ろでくくり髭をたくわえている。

それと対称的なのはテーブルを挟んだ男だ。

赤みを帯びた金髪に、ライトグレイのスーツを着た青年。

彼はいつもであれば爽やかさを湛えているであろう碧い目を、憎々しげな色に変えていた。

彼は今、とてつもなく怒っていた。


「もう一度聞くぞ。雲進(うんしん)こんな仕事を私に受けろと?」


そう言いながら青年は、手に持っていた書類をたたき付ける様に雲進と呼んだ男に返した。

テーブルに拡がる書類。

そこに書かれていたのは、様々な人間の顔写真付きのリストだった。

壮年の男『各務(かがみ) 雲進(うんしん)』は、溜息混じりに書類をかき集めると困った様に口を開く。


「やれやれ、ヨーロッパの貴族様は気位が高い。」

「そう言う問題ではないだろう?明らかな犯罪、あからさまな汚れ仕事。そんな仕事に私を使うとはどう言う事だと聞いているんだ。」


そう言う問題だよ、お坊ちゃん一体お前は何を聞いてるんだ?と心に留め雲進は再び溜息を吐く。


「それで?フランベルジェ様は何が気に食わないので?」

「うむ、よく聞いてくれた。私としては貴様らモモヤマの手先になるのは一向に構わん。しかしだ、何故今回の標的に限って『コレ』なのだ?」


フランベルジェが指差すのは書類に羅列されたリストの一番最初の人物だった。

写真の人物は学生服を着た、明らかに何処にでもいる様な平凡そうな顔付き少年少女達だった。

フランベルジェは明らかに気に食わないと言う顔で話を続ける。


「貴様らとの契約。お前も知らん筈ではなかろう?」

「知っていますよ。あなたとの契約は二つ『この日本の何処かにいるであろう、あなたの兄弟探す』と『強い敵と戦わせる』でしたよね?それが?」


フランベルジェその名は裏社会において、名の通った通称。

見た目の若さや育ちの良さに反し特に荒事に関しては、ヨーロッパにおいての二つ名『崩壊のマエストロ』と共に畏怖の対象である。

そのフランベルジェが今回、雲進の所属する組織に雇われる時に出した条件はその二つだった。


「ならば、何故私にこんな雑魚を相手させる?こんな自覚する前で『励起法』も知らん奴らは量産品に相手させれば良かろう?」

「そうはいかんのですよ。いくら相手が雑魚に見えても、『能力者』相手に普通の『人間あがり』は負担が大きい。しかも、この少年は何かしらの武術をやっているらしいのです。ま、その師匠の方は私が行くんですが…。」


そう言いながら雲進は、別に分けてあった書類の一枚を取り出しフランベルジェに渡す。


「…時枝思惟?誰だこの小娘は?」

「解らなくて当たり前です。私も初め遠目から見て目を疑いましたから。護天八卦の時枝…ヨーロッパの方ではインビンジブルと呼ばれた人間です。」

「何だと!?」


インビンジブル。

その名はフランベルジェのみならず、世界中で恐れられ『透明』『無敵』を意味する言葉を持つ殺し屋の名前である。


「…ムゥ。」


流石のフランベルジェとて相手が悪いと黙らざるを得ない。

西欧においては最強を自負するフランベルジェだが、『世界最強』の意味する『45Pyramid』にいるインビンジブルに勝てるとは思わなかったのだ。

しかし、それでスゴスゴと引き下がれる程フランベルジェのプライドは小さくない。


「…では、私はこの小僧に当たる。」

「ふむ、インビンジブルの弟子ですか。…人員をいくらか回しますか?」

「いい、今回は私一人で行く。インビンジブルの弟子だ、どんな力を持っているか解らん。それに、見ろこの記述を。」


そうフランベルジェが言いながら、リストの記述の一文を指差す。


「…能力者捕縛用の『儀式決界』に掛かった外来の能力者を助けに入り、時速70キロで走る車と衝突…無傷ですか。」

「そうだ、こいつは恐らくは使えるぞ『励起法』を。」


コツコツと顔写真を指で叩きながら、フランベルジェ不敵な笑みを浮かべながら言う。


「参りましたね。励起法が使えると難易度が格段に跳ね上がる。量産品では蹴散らされる。」

「そう言う事だ。そんな状態であれば、私以外は足手まといだ。」


ヤレヤレとまた溜息を吐きながら雲進はリストを分配していく。


「では、フランベルジェ貴方はこの少年『水上誠一』を捕獲、私が『時枝思惟』との交渉。他の人員には『船津 東哉』の監視と『篠崎 莉奈』の探索に回す事にしましょう。」



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