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変わる世界  作者: オピオイド
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能力と神器

かなりの説明回になってしまいました。

しかしながら、これを省くと訳が解らないことに。

そろそろ励起法の計算式も作ろうかなと考えてますが、公開とかした方が良いのかな?

刹那。

前々回にも話したが、それは七十五分の一秒と定義された時間の単位。

次元が秒で七十五分の一と言うのは、とんでもない速さだ。

余り聞かないが身近な所で言言う所の、弾指(指をはじく、一般的には指が指を叩いて音がする指パッチンの事)の六十五分の一と言うものだ。

そんな極小の単位の世界を生きる人間はどんな風に世界を見るのか、彩は考えつかない。

話によると蝿が映画を見ると、静止画を見ている状態になるという。

映画とはフィルムに焼き付かせた静止画を高速で動かし、人間の脳の錯覚を利用して動いているだけである。

それは蝿と人間の時間の感覚が明らかに違う為に起こる現象だ。

だが、その逆高速で動くモノを人が見るとどうなるのか。

彩は目の前で繰り広げられる戦いで思い知らされた。


「……なにコレ。人の、いいえ能力者ってここまで出来るの?」

「…話し掛けないで。気を抜くと見えなくなる……から」

「見えるのっ!?」

「コツがあるんだけど………ああっ見失った!!」


彼女達の目の前で繰り広げられているのは人外、いや人智すらも超えたスピードの超越者達の戦い。

以前、路地裏で彩にからんだ筧宣夫が『励起法を使って漸く見える』と言わしめた、彩と天子の戦いがあった(同作品『識る者』を参照)。

その彼の立場を彼女達に当て嵌めればお解りになるだろうか?

しかし現状はそれ以上、宣夫は彼女達を漸く見えると言ったが、彼女達は気を抜けば見失うと言ったのだ。

それは彼女達に純粋な力ではなく、技の練度や経験の圧倒的な差を感じさせた。


「またっ、何で見失うの!? 太刀筋は辛うじて見えるのに、次の瞬間には姿を見失う」

「……? えっ!? 天子、貴女太刀筋の方が見えているの?」

「え?」

「私は逆。太刀筋が見えない」

「それって、どういうこと?」


本来ならば天子の言っている事がおかしいのだ。

通常、普通の人間が剣を振る場合、剣先は見えない。

達人レベルになれば音速を越えるからだ。

それが励起法による乗数強化を受けた能力者であれば、どうなるかは火を見るより明らかだ。

普通は見えない。

しかし、この会話には一つ彼女達がお互いに見落としている点がある。

感覚時間加速と言う点もあるが、それ以前に彼女達は『識者』と言う事だ。

例えば天子の能力『水絵』は、認識内のあらゆる波を光量や色で感じる事が出来る。

どんな人間だろうが物だろうが、動けばそれに対して何かが動く。

物を掴んで上げれば物が動く様に、人が歩けば空気を押し退け歩くから目には見えないが空気が波立つ様に動くのだ。

天子はそんな微細な波すらも感知する。

たとえそれが姿を見失う程の人知を超えたスピードだろうと、動いた事により発生する波は確実に存在するのだ。

その事実は天子に死角が無いことを現わしている。

そして彩の場合は彼女の読心能力の方式によるのだが、あいにく相手は能力を削減・無効化する霧島一族の『霧衣』を着込んでいる。

では何故と考えると以前話した通り、彼女の読心の肝は『脳が発生させた精神波を読み取る』のだが能力名を考えて欲しい。

『モーション・エモーション』直訳で動きと感情と名付けられたその能力は、心を読み取るだけではなく動きすらも読み取る。

それは以前、鍛練の時に彩が誠一に零した『私の能力『モーション エモーション』の真骨頂は相手の感情や行動を読み取り、瞬時に相手の行動の先を読む未来予測系能力。』と言う言葉に集束するだろう。

この言葉で解る通り彼女の能力には、二つの読み取り方がある。

一つは脳から漏れる脳波や精神波を読み取る方法、ともう一つが相手の行動・表情・言動・癖等の仕種から相手心理を読み取る方法だ。

彩はこの二つを合わせて読心能力としていた。

そして今回の様に能力が制限されてしまっている場合は後者の能力により相手の動きを読み取り蓄積し、行動予測を行動予知へと確定して先読みする事で相手の姿を掴んでいた。

それが二人の齟齬に繋がる。

彩は二人の動きは辛うじて掴めているが、それより遥かに速い太刀筋は見えず。

天子は同じ流派と言う意味と能力で神速の太刀筋は見えるが、フェイントや歩法により二人の動きに頭がついて行かないのだ。


「………要するに、まだ私達は経験不足って事ね」

「だねー」


二人は、戦いに巻き込まれない様にジリジリと下がりながら言葉をかわす。

明らかに実力差が解る事実に凹みながら、二人は軽口を叩く。

しかし、ある程度まで下がると、彩の足がピタリと止まる。


「どうしたの?」

「……天子、手を貸して」

「あの竜巻みたいな中に介入するの? 正気?」

「正気よ」

「だったら何故? 死にに行くだけならともかく、先生の足を引っ張ったらどうするの」

「それについては私に策がある。と言うか、貴女と私の持っている物が鍵になるわ」

「持っている物?」


天子はそう言われて自分が持っている物を思い出す。

励起法? 能力? それとも同じ神道流?

話す内容から考えると、共通した物だろうが………一体なんだろう? と天子はそこまで考え思い出し掲げる。

二人が持っている共通点を。


「神器!?」

「そうよ、この間誠一と鍛練していたら気付いたことがあったの」


先日の事だった、誠一の毎朝の鍛練中に姉の形見の神器を扱っていたら、誠一の持って来ていた『氷龍・雷龍』と共震していたのだ。


「共震?」

「そうよそこで気付いたのよ。座学で貴女も習わなかった? 儀式法具の類は神器を鋳型に模倣してるって」

「うん。聞いた、でも共震してどうなったの?」

「励起法の精度や出力が引き上がったのよ。誠一の『水系の理』見たいに」

「それじゃ………」

「………試してみる価値があると思わない?」


笑いかけてくる彩に天子は肯定する様に頷くと、二人は持っていた得物の木刀と杖に喚びかける。


「………起きなさい、事代主ことしろぬし

「………目覚めて、荒覇吐あらはばき


次の瞬間、二人を中心に莫大なエネルギーが放出された。


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