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変わる世界  作者: オピオイド
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雷神 霧島の剣士

予定より二日遅れての投稿です。

活動報告にも出したとおりテスト前なので更新が大幅に遅れます。

勉強の息抜きに書いているような状況なので、遅れるのが前提だとお思いください。

それでは本編をどうぞ!!

高見原ビルディング街の戦いを用意したのは桂二である。

元々桂二としては周りが見えなくなりつつある親友を諌める為に行った決闘で、同じ街に本拠地を置く敵に気付かれない様に行う心算だったのは当然の事。

しかし、彩と天子に頼まれた桂二はある一計を思い付く。

それが今回の一連の流れになった。

最初に決めた桂二の成功条件としては、『誠一に認めさせる』『一網打尽』『囮を使い、彩と天子の戦いに水を差させない』。

(作戦の途中結果は前話迄を参照してください。)

だが、桂二は一つ失敗をしてしまった。

いやそれは失敗と呼べない偶然。

それは誰が知っていただろうか、桂二や彼の同僚とも言える小隊長達にも予想が出来ない事。




間断なく続く、彼女達の激しい剣撃。




その上空で満面の笑顔で彼女達を見る人物がいた。




数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の打ち込みを、交じり合わせること約数百合。

一際強く得物を交じり合わせた後、二人とも大きく後に跳躍すると、焼き増ししたかの様に対峙する。

対峙する事数十秒、二人はワイヤーロープの上で立ち尽くした様に立っていた。

とは言え、二人は疲れや身体が回復するまで動かない訳ではない。

励起法による身体強化は、人類を逸脱した身体能力や回復能力の底上げを行う。

不眠不休で三日三晩戦いつづけたとしても、体力が尽きる事はない。

その証拠に二人の顔には疲労の色や汗すらもない。

では何故動かないかと言えば、千日手の様な戦いで擦り切れた精神的な疲労からの回復と、術理や戦術の再練り上げだった。


(剣先が見えない、とんでもない速さで剣先が来る………先読みして捌いているけど、手数の多さで反撃できない………唯一優るのがクロスレンジだけど、刺突で弾かれて間合いが広がる。どうする!?)


(あーもう。ここまで捌かれとは思わなかったな〜、封じ技の『棘雷光』まで使ってこれか………使う相手がいないからって使わなかったツケが回ってきた感じ………。練度の低さは簡単に戻らない。とは言え、どうしようかな〜)


二人とも完全な手詰まりだった。

彩はワイヤーロープの上での限定的な戦いにより戦術の幅が狭まり、天子は自分の攻撃を捌ける杖術を修めた相手だったのが、千日手の原因だった。

対峙してただ睨み合う、時間と風だけが動く中。




ハッと二人とも空の一点を見た。




「………ッ。何っ!!」

「避けなさい!!」


空から稲妻の如く降り注ぐ煌めき。

その閃光とまごう煌めきが、刹那にして天子に襲い掛かる。

いち早く煌めきの正体に気付いた彩が警告を発するが、天子は反射的に木刀で受けてしまった。


「ガッ!!」


煌めきを受けた瞬間、天子が腹を抑えながら吹き飛ぶ。

ロープに沿って吹き飛んでいるから大丈夫かもしれないが、落ちる可能性を感じ彩は助けに入ろうとした。

しかし次の獲物を見つけたかの様に、煌めきは彩襲い掛かる。


「クッ!!」


天子に煌めきが迫った瞬間に、彩はその正体を解っていた。

認識出来るか出来ないかの、重さと鋭さを伴った『斬撃』を杖を使って弾き出す。


「凄い凄い!! 今のを受けないで、弾き返すなんてっ!!」


弾き返した銀の得物、長さ三尺(約90cm)の太刀を片手で構えた漆黒のレインコートを着た人物。

細身で彩より頭二つ高い長身、その背の高さの割には妙な子供っぽさが抜けない言動をする乱入者。

しかし彩は動揺していた。

いつもならば突発的な事に、冷静な対処ができる彩も今回は対処出来てない。

原因は閃光の如き身のこなしや、重く鋭い剣閃ではない。

スピードや術理の細部は違うが、乱入者の向こうでロープに掴まりながら咳込む天子の剣閃に似通っているからだった。

漆黒のレインコート雷の化身の様な動き、それで天子と似通っている動き、それから判る相手それは………


「霧島神道流………」

「ウンウン、正解っ。対戦相手の事は、ちゃんと勉強してるね。感心感心」


漆黒のレインコートのフードの下から見える桜色の唇が、何が嬉しいのか楽しそうに笑っていた。


「グッ………」


その楽しそうな声と裏腹に、くぐもった苦しそうな声。

乱入者の向こうで、ロープをよじ登った天子が腹部を押さえながら励起法を使い回復を待っていた。

それを見取ると彩は常人では聞こえない程の小さな声で呟く。


「………聞こえている?」


彩は直接聞いている訳ではないが、天子の微妙な仕種や言動で『音』に関係する識者と当たりを付けていた。

予想は的中、苦しそうに胸を押さえながら天子は視線を彩に向けながら微細な口の動きだけで返事をする。


(聞こえているわ)


幸い彩の能力は読心能力、神域結界で阻害されたり口の動きは無くとも表情筋や虹彩の動きで相手の意思を読めるので、離れていても簡単に意思の疎通が出来る。


「簡潔に聞くわ、知ってる?」

(知らない。先生から聞いたのは一族の殆どは殺されて、霧島神道流を使う人間は数える程しかいないってしか聞いてない)

「それじゃあ、彼女は?」

(霧島神道流を使う霧島一族の生き残りだと思う)

「だとしたらマズイ」

(ウン)


二人は相手の正体を分析するうちに、戦慄を覚えながら気を引き締めた。

霧島の一族とは、数年前に事故で崩壊したと言われる戦闘集団。

能力者としての知識がある二人は、霧島の一族とはどんな一族かを知っていた。

それは励起法を使わずとも人外の身体能力を持つ一族、それが励起法を使うと言う意味と合わせて知って恐れていたのだ。


(霧島の一族。以前会った戦闘が専門じゃない黒雷衆の能力者でも、私は勝てる気がしなかった。この相手は多分、前会った霧島の人より技量が上だと思う)

『私達一人一人じゃ絶対敵わない、だったら………』


二人は最後に目配せをしてから、互いの得物を漆黒のレインコートに向ける。


「………あ〜あ、ん? 相談終わった?」


明らかに舐められている、そう感じ怒りを覚えながらも抑え、彩は天子の心を読みながらタイミングを計る。


「余裕ね」

「まあねー、30分前位から見てるけど…私の方が強いからねっ!! 二人がかりでも勝てるよ?」

「馬鹿にしてっ!!」

「事実じゃない?」


子供っぽい言動に乗って怒る振りをしながら、彩と天子はジリジリと間合いを詰める。


「だったら。言葉通り、二人がかりでも文句は無いわね!!」

「うふふっ、稽古をつけてあげる!!」


その言葉を皮切りに、二人は漆黒のレインコートの人物に向けて踏み込んだ。


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