ムジナ
ようやくです!!
書いた迄はよかったのですが、携帯で書いていて間違えて消して凹んでました!!
サ行と電源ボタンが近すぎる!!
と言う訳で遅れましたスミマセンでした。
高見原の公務員保養所には歴史があるのか? と言われればあるにはある。
古くは明治時代のとある華族の持ち家で、その頃この場所は華族の別荘として使われ、森の中に隠された紳士達の隠れ家として機能していた。
その後、日本が軍国国家へと傾くにつれ軍の特殊部隊の拠点の一つへと移り変わり、戦争が始まり敗戦すると共に国の保養所へと変わる。
とまあそんな来歴のせいか、この保養所には地下室がある。
入口を巧妙に隠した地下三階まである作りで、そこで何をやっていたか解りたくない程のどす黒い染みがある部屋が、保養所の地下に隠されていた。
その地下構造の真ん中を貫く通路、シェパード隊の隊員が警戒しながら一つ一つ見て回る姿がある。
「何か気持ちが悪い雰囲気だ………空気が悪いと言う方が正しいか?」
「仕方がないですよ、話に寄れば此処は大日本帝国の731部隊の日本拠点の一つですからね」
ウィリアムが雰囲気の悪さに、眉間に皺を寄せながら呟くと隣の細身の中年男性がフレームレス眼鏡をなおしながら返答した。
「731部隊? それは何の部隊だ、永井」
「隊長は知りませんか? 旧日本軍の関東防疫給水部、秘匿番号731。悪名高き石井部隊ですよ」
聞いた瞬間、その名は良く知っているとばかりにウィリアムの眉間の皺が深くなる。
関東防疫給水部とは、戦地においての兵士の感染症予防や衛生的な給水体制を確立するべく編成された部隊だ。
表向きは。
どんなものでも表には裏があるように、731部隊にも裏の目的があった。
それは感染症の原因たる『細菌』を研究し、それを戦争に使用する生物兵器の開発する事だった。
「たしか当時の戦争相手の捕虜を使い、人体実験を繰り返したと聞いているが………」
「あながち間違っていません、その部隊です。しかし戦時中は、どこの国もやっていた事ですから今更蒸し返す事じゃありませんよ。今の任務は別なんですから」
アッサリと話を切る永井。
それを横目にウィリアムは、隣の副官を努めてくれる男の人間味の無さに深く溜め息を吐きながら周りを見る。
照明はあるものの、古い電球なので少々薄暗い。
ウィリアムはこのどこかのホラー映画の様な雰囲気の理由が、何となく解った気がした。
「ルミノールをふったら通路全体が光りそうだ」
「止めて下さい、ただでさえ充満している古い薬品の臭いで気持ち悪いんですから」
冗談が通じないなと肩を竦めながら顔を戻すと、ウィリアムの目の前には両開きの凹んだ鉄製の扉が現れる。
一階の破壊されたエントランスを辿り、最後の破壊の場所はこの扉だった。
戦いの音がない、戦闘はもう終わったのかとウィリアムは慎重に扉を開く。
中は壮絶な破壊の跡で散乱していた。
薄暗い照明の中、立ち尽くす龍を模したマスクを被った男と、床に両膝を立てうずくまる戦闘服姿に顔を隠すヘルメットを被った人物がいた。
先日の新聞に載った決闘――パッションレッドVS水龍の事――の監視映像から、一人は恐らく水龍を名乗る水上誠一。
そして顔を隠してる人物こそが、ウィリアム達が標的とする人物。
そう考えると、ウィリアムは無言で部下を集め一気に突入させる。
「そこまでだ!! ようやくだ、尻尾を掴んだぞ『サードフォース』」
突入と同時にヘルメットの男が壁際に跳び、ウィリアム達全員が自分の武器を構え包囲する。
「鬼人病の感染者達や関係者達の下に現れては、証拠を消し去る貴様ら………そこの奴もそうだが、洗いざらい吐いてもらう!!」
ウィリアム達が所属するのは厚生労働省の中にある、疾病予防課感染症鬼人病感染対策課と言う部署だ。
鬼人病とは感染すると、三日間の潜伏期を経て脳の炎症を引き起こし、人を死に至らしめる感染症。
致死率は4%と微妙に高いが、問題は脳炎が軽く死ななかった場合。
約9割の高確率で不完全ながら普通の人間が『能力者』へと変わるのだ。
そしてこれは初期症状で、これ以上進行すると鬼如く人の形を徐々に崩し、最終的には獣化する。
これはとある薬と被るが今はその話ではないので割愛させてもらう。(同作品の『過去への扉』から数話、もしくは『カモメは遥か水平線を見る』を参照してください)
この病は日本に古くからある感染症で、一度暴走体になれば大量の死者がでるので危険度の高い病とされている。
100年程前は東北地方の山奥の山村。
地震の影響で地下に眠っていた感染原に汚染された水源と、生活用水として使っていた水源と繋がってしまい、瞬く間に病が広がり村が全滅する惨事となった。
それから流行はなく、撲滅したかの様に見られたが、時を経て高見原の地で鬼人病の流行が始まった。
しかも今回は感染原不明の上、拡がった場所が人口100万人を超える政令都市。
暴走体の発現する割合は少ないが、100万をかけると未曾有の大惨事を引き起こす可能性が見える。
彼らはそんな事を起こさない為に動いているのだが、課の発足当時から感染者を消し去り感染している可能性がある人物を連れ去る謎の集団があった。
それが、
「今まで、お前らが連れ去った人達の行方と目的を洗いざらい吐いてもらうぞ!!」
イギリスにいた時にスカウトされ発足当時から居るウィリアムとしては、十数年近い見えない宿敵の証拠をようやく掴める為かテンションが上がっていた。
そのせいか彼は見落としていた、ヘルメットを被っていた男の肩が震えていた事に。
「っっっっくくくくっ」
壁際まで跳んだ男のアクションのなさにウィリアムは怪訝な表情を浮かべたその時、くぐもった笑い声が響きウィリアムの前で銃を構える永井が珍しく激昂した。
「何がおかしい!!」
「いや何、意外と早い到着だなと」
「当たり前だ、あんな入札があるか!!」
本来ならば公共機関等の建築を、工務店等に発注する場合『入札』と言うシステムをとっている。
これは公共機関が『発注』し、幾つかの会社が『入札』し『最低金額』を出した会社が受注出来る。
「担当者に最低金額を割った値段を事前に見せ、その差額を賄賂として此処の解体を請け負う………能力者戦闘の跡を消す常套手段………解らいでか!」
どうやら理路整然を好む永井にとって枠を壊す様な手口は思う所があるらしく、いやにテンションが高い。
その姿に溜め息を吐くウィリアム、次の瞬間に嫌な予感が彼の脳裏に走る。
「………『意外と』? ………まさかっ!?」
何かに気付いた彼は、西部のガンマンの様にホルスターの銃を抜き撃った。
励起法で加速された身体の動きで抜かれた銃、それから飛び出る一発の銃弾がヘルメットの男の眉間へと吸い込まれる。
「隊長っ何を!?」
「違う、見てみろ」
何が違うかとざわめく周囲の中、永井が見てみれば。
そこには、マグナム弾で眉間を撃ち抜かれたはずの男がいた。
「っっ!!」
冷静さを売りとする永井の顔が大きく引き攣る。
撃ち抜かれたはずの男は、銃弾を最初から撃たれていないとばかりに立っていた。
いやそれどころか眉間には弾痕はなく、ヘルメットが銃弾によって剥ぎ取られ、あらわになったその顔には何一つ無かった。
目や耳、鼻や口、毛穴すらも無いツルツルとした仮面の様な顔。
のっぺらぼうが居たら、まさしくこれだと言える風貌だった。