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変わる世界  作者: オピオイド
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横槍

今回、話の都合上で短いです。


「らぁ!!」


三人の内の一人に水龍の拳が迫る。

腕を小さく回しただけのなのに有り得ない弾かれ方をして、その流れで突き手と踏み込む足が同じ右と言う特殊な中段突き。

それは何度も見ているから読めているが、込められている力が尋常じゃない。

式神が壁を背にし喰らいそうな突きを、躱した時の光景を桂二は忘れない。

コンクリートの壁に水龍の腕が肘まで刺さっていた。

しかも突き刺さった周りの壁にはヒビ一つないのを考えると、どれだけ集束された突きかがよく解る。

ボーリングの機械やパイルバンカーでもそうはいかない事実に、桂二は水龍の本気を見た。

だから、


「『それ則ち歩む足を禁ず、急々如律令』!!」

「ヌウッ!!」


桂二は人差し指と中指だけを立てた剣指を水龍に向けると、左の式神が桂二と同じ声で何かを唱える。

すると水龍の動き、特に足の動きが目に見える程数瞬遅くなった。

呪禁道と言うものを皆様は知っているだろうか?

古くは平安時代からあった典薬寮(今で言う所の厚生労働省)の官位の一つで、病気の原因となる邪気を呪術により祓う医療的な職業だった。

しかしそれは最初だけで、後にとある呪術事件により陰陽寮に吸収される。

元々、陰陽師も呪禁師も同じ道教の思想から生まれた呪術儀式、同じ系統の術だったが為に合併は簡単だと言われている。

しかしその性質は全く違い、陰陽師は占術・呪術・祭祀を得意とし呪禁師は掛かった術や邪気を払う事に特化している。

それを踏まえ桂二のやったことを説明すると、彼は水龍の足の歩みと言う『動き』を禁じ動きを封じたたのである。

それは呪禁道においての基本にして秘技たる『呪禁』。

本来ならば刀を禁じれば切れなく矢を禁じれば貫けなくなったり、生物で言えば鳥を禁じれば飛べなくなったりする儀式。

しかしそれは過去の技術で、近代儀式によりそれは『事象』を起こさせないと言うカウンター的なモノになっていた。

その簡易版と言うものを桂二が水龍の足にかけて、踏み込みを止める筈だったのだが………。


「嘘だろぉっ!! 普通の能力者であれば暫く足が動かない筈なのに、どれだけ神域結界強いんだよお前は!!」

「そんなん知るかぁあああ!!」


足が動きにくくなった所の式神三体による同時攻撃を、水龍は捌き総て弾き飛ばす。

領域内にあるエネルギーを減弱させる神域結界は、儀式による呪縛も例に漏れず効果を減弱させる。

しかし他の能力者に同じ儀式をかけて足止めをしてきた桂二としては、あまりの効かなさに激しく納得いかない。


「状態異常無効って何処のボスキャラだぁあああ!!」


昔のRPGゲームのボスキャラにしかない様なチート性能に、桂二は叫ぶ。

勝つつもりで戦いを挑んだ相手がチート性能で、無理ゲーに近いと知ったらさもありなんだ。

だからこそ桂二は、内心では『撤退戦』に対する事前策を用意して、致命的な損害が出る前に切り替えた自分の判断に喝采をあげていた。

直接戦闘で勝てる相手じゃないならば、搦め手を取るしかない。

そう考えた、その時だった。

桂二の胸元から甲高い機械音が鳴り響く。


「待て水龍!!」

「何っ!?」


戦いを続行しようとする水龍を押し止めると、桂二が胸元から携帯を取り出し着信を知らせるライトの色を見て顔色を変える。


「ライトの色が赤、緊急連絡?」

「何があった?」


桂二がメールの着信を見ると舌打ちを打ち、いつもならば見せない怒りの形相となる。


「一時中断だ。うちの動向を掴んだ敵の部隊が近付いているらしい、コードδの指令が着た」

「コードδ? なんだそれは」

「うちの部隊内の暗号だよ」


何処の軍隊でも良くある符丁で、隊の中で決められた通りの大まかな行動を行う為聞かれた場合、相手に知られない様にする為のの暗号でもある。

暗号の内容も作戦毎に変えており、毎回覚えるのを苦労する桂二だが、このコードδは違う。

どんな作戦でも、唯一変わる事のない符丁だからだ。


「桂二?」


水龍の声に訝しげな音が混ざる。

桂二が笑っていたからだ。

それは、とてもとても楽しそうに。


「水龍、手伝え。罠に嵌める」


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