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変わる世界  作者: オピオイド
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顔を突き合わせて

「………なあ誠一?」

「何です筧さん?」

「何で俺ら正座させられてんの?」

「すみません」


公園の芝生の上、仁王立ちの彩を前に三人は正座で説教を喰らっていた。



桜区 北川端公園 芝生



「―――と言う理由で、能力者と言うのは極力目立たないし正体を知られないのが原則!! あなた達解った!?」

「ハーイ」


彩の説教の内容は桂二が使ったスタングレネードについての事で、概ね『能力者の大原則、目立たない・正体を隠す・人間社会を乱さない』と言う事だった。

今までの能力者達の歴史から考えると、さもありなんと思う話だ。

使ったのは桂二だが、誠一としては明らかに照れ隠しの逆ギレなので、宣夫にとってはいい迷惑だったので誠一は棒読みながらも素直に謝った。

と言う所で説教は終わり、彩が溜め息まじりに話を変える。


「まあ、事の次第は誠一君の心を読んだからあらかた分かってるわ」

「最近、俺のプライバシーとかないよね」

「………誠一、苦労してんな」

「いつだって男は女に泣かされるもんだ………誠一強く生きろ」


余りの事実に両脇にいる男二人慰められる誠一は、軽く涙ぐんだ。


「もうっそんな事より、誠一君。手は大丈夫なの?」

「なぬっ? 誠一お前、怪我してたのか?」


彩の言葉に、やっぱりバレたかと誠一は内心溜め息を吐きながら両手を彼女に見せた。


「ウオッ何だこれ!? 手が手袋みたいに腫れてる」


それを見た桂二が目を見開き驚く。


「あの変態を攻撃したらこうなった」

「………何かしらの能力だろうな」


誠一の手を見た宣夫は、腫れた手を見ながら呟いた。

そう、これは明らかに何らかの能力によるモノだった。

最初に加えた『龍打』に始まり、相手の攻撃を捌きカウンターをきめた攻撃すべてに誠一は違和感を感じていたのだ。


「あいつに攻撃を仕掛ける度、拳に痛みが走ってた」

「拳に痛み………か」


どこからか取り出した包帯と湿布を彩に巻いて貰いながら誠一は語る。

それを聞き、桂二はしばらく考え込み疑問を口にした。


「なあ、誠一。お前、攻撃したら痛みがはしったって言ったな?」

「ああ」

「あの変態、もしかしたらスゲェ打たれ強くなかったか?」

「ああ、でも何でわかる?」

「やっぱりか………」


また少し考え込んだ後、桂二は結論がでたのだろう、むぅと唸ると口を開いた。


「今は死んでいるんだけど、昔似たような能力者を聞いた事がある。名前は知らないが能力名は『アーマー』」

「えらく簡素ね?」

「ああ、俺もそう思う。しかし、能力は折り紙付きだぞ? そいつは体外に出ると固まる体液を毛穴から放出して、身体に細かい糸で編んだスポンジ状の高分子ポリマーにも似た装甲を纏っていたらしい。しかし、そいつの能力の恐ろしさはそこじゃない。Explosive Reactive Armourって、お前ら知っているか?」


突然振られた言葉に誠一と彩は答えられない。

聞いた事のないその言葉に対して答えられない二人に対して、意外な人物から答えが返ってきた。


「Explosive Reactive Armourって、もしかして戦車の装甲のERAか? たしか被弾した時に、砲弾や成形爆薬の圧力に反応し装甲が爆発して砲弾や爆薬の威力を削ぐってヤツだな。一昔前は良く実戦装備されていたらしいが、爆発に味方が巻き込まれる欠点で今はない」

「筧さん、詳しいですね………まさか、桂二?」


簡潔にサラっと言った宣夫の説明に関心しながらも、誠一はその内容に感じいる事があった。

その感覚に対する言葉は彩が引き継ぐ。


「話の内容上、今言ったスポンジ状の高分子ポリマーってヤツが、ERAってのになるんでしょ?」

「正解。恐らくはあの変態も同じ能力だと思う」


誠一は桂二に言われた事は、何となく理解した。

幾度となく打ち込んだ拳。

しかしそれは総て能力による防御によって、文字通り見えない爆炎に『弾かれて』いたのだろう。


「だが、相手の能力は解ったがどうやってアイツを倒すんだ?」

「そうよねぇ。このまま『桜坂の剣士』を探すつもりなら、その変態の横槍が少々邪魔ね。やり合う事も視野に入れていた方が良いかも」


それが一番の問題だった。

あの変態ことパッションレッドの目的は今一解らないが、言ってる事をそのまま信じるのらば彼の目的は『正義の行使』だ。


「出会ったら戦う事になるでしょうからね?」

「激突は必至か………」


誠一にとっては頭が痛い事だった。


「………だとすれば、どうする? 奴の能力は少々厄介だ」

「…だな。筧さん、ERAって何か弱点ってないですが?」


詳しいであろう宣夫に聞くが、サッパリだと頭を振る。


「戦車と言う意味であればあるけど、奴の能力では浮かばないな」

「そうですか………」


言われて見ればパッションレッドのERAは戦車の装備ではなく、奴自身の能力だ。

自分の能力で自爆する能力者なんて有り得ないし、実際戦った所から考えると自分自身に対しては影響はないのだろう。

しかしそう考えると、


「弱点ないですね………こうなったら、玉砕覚悟で潰すしかない」


最近名前を決めた誠一の能力『水系の理』は、体内の水分を操作して身体強化を行う能力。

ハッキリ言って能力者にとって、ある意味反則技に近い能力である。

励起法と言う身体強化に、重ね掛けが出来ると言ったら解るだろうか?

人の枠を超える励起法で人を超えた身体に、更に強化をかける。

異常にも程がある。

しかし、そんな誠一でも、『能力者としての相性』で今回はやられてしまった。

それを上回るのならばと考えるならば、『玉砕覚悟』と結論はそうなってしまうだろう。

そんな覚悟を決めた誠一を彩が止める。


「私は誠一君の身体を傷付けてまで戦って欲しくないよ。………それより、一つ提案があるの」

「提案?」

「そう。ねえ、武器使える?」


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