表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変わる世界  作者: オピオイド
33/90

護天八龍


「はあっ変態がいる?」


高速で木々の間を縫う様に走り抜ける桜坂の剣士を追って、同じ様に走り抜けようとした誠一だったが思うように行かなかったのかグングンと離されて見失っていた。

そんな中、誠一のポケットの中の携帯電話が着信を知らせる。

木々を跳び移る足を止めずに携帯電話を確認すれば、そこには見知った名前が載っていた。

挨拶も疎かに出た桂二の第一声に対しての台詞が冒頭にあたる。


『確かに変態だが、ただの変態じゃあない能力者の変態だ』

「なんだそれ?」

『この間の高見原タワーでの話を覚えているか?』

「ああ、船津の奴が地下研究所に入り込んだ時か」


そう言うと誠一の頭には、毎朝の修業に付き合っている男の顔が思い浮かぶ。


『そうだ、実はあの時もう一つ騒動があっていてな。ハウンドと言う部隊をお前知ってるだろう?』


知ってるも何も先々月に襲われたと思いながら誠一は、ああと返す。


『そのハウンドの分隊の一つが壊滅したらしい』

「お前どこから、そんな情報を………」

『深く考えるな秘密だ。それよりだハウンドは能力者を狩る部隊と言うのは知っているだろう、簡単に言えば返り討ちにあったらしい』

「って事はその変態」

『ああ十中八九、能力者だろう』


また面倒な事が増えたと誠一は舌打ちをするが、電話越しの桂二はまあ待てと抑える。


『なあ誠一、能力者の世界人口ってどれくらいか知ってるか?』

「そりゃあ、お前………ん?」


言われて誠一は気付く、能力者のなんたるかは大体解ってはいるが、どれくらいかは解らない。

むしろ姿形、素性を隠す気質を持つ能力者の正確な人数は解るのだろうかと疑問も付き纏う。


「解らない」

『だろうな。ふふっ聞いて驚くなよ世界人口の約0,1%だ』

「そんな多いのか!?」


世界人口の約0,1%。

字面で見れば少なく見えるだろうが、69億の0,1%数字で言えば約69百万。


『ふふ、やっぱり驚いたな。俺も最初聞いた時は驚いたからな。だけど、この数字は潜在能力者を入れた数字になる』

「潜在能力者?」

『能力者でありながら能力者と自覚がなくて能力を使えない、もしくは使わない奴らと能力が開花していない奴らだ。能力者が自覚しないパターンが一番多いと聞く』

「なんだそりゃ」

『んじゃ逆に聞くぞ、誠一。お前はいつ能力者と自覚した?』

「………それは………ああ、そう言う事か」


誠一は逆に聞かれて納得した。

思えば誠一自身が能力者と自覚したのは彩に言われてからだったが、その前から妙な事は色々あった。

車に轢かれて無傷だったり、相手の能力を受けて何となく理解したりと。

それは自分の能力があったからだ。

しかも、『自身の水分を操る』能力があったから。

これが別の能力や識者の能力者だったらどうだろう?

能力者は産まれてからずっと能力者だ。

識者であれば他人と違うモノが見える聞こえるは『当たり前』で、気付く事なく不意打ちで死んでいた。


「当たり前過ぎて気付かないのか」

『その通り。能力者の約八割は識者で視覚系だから余計だ。まあ、ここまでは予断だ。問題は能力者の数が思った以上に多いと言う現実だ。昔から示唆はされてきたんだ、そーいう変態が出てくることは』

「絶対数から考えると、そんな奴らが出てくる可能性はあるって事か」

『正解、特にこの国はそうだ。平和が故に争いを求め、その正当な使い方を示したい願いを持つ者が出てきやすい』

「なんだそりゃ」

『この国の子供が見るモノはなんだ? 解りやすくいや勧善懲悪のヒーロー物の特撮やアニメだ』


どんな理由だ。

そのとんでもな理由に誠一は跳び移る枝を踏み外しそうになる。


『その確率が高いって事さ。その証拠にお前が追ってる桜坂の剣士もそんな類だぞ?』

「マジか?」

『マジもマジマジ。今まで桜坂の剣士に狩られた人間の約七割は能力者だ。まあ、そう言う事で気を付けろよ? 片やヒーロー気取りの変態能力者、片や世を乱す奴らや能力者を狩る能力者………同時に現れたら目も当てられん事態だ』

「………………桂二、どうやら目も当てられない事態みたいだ」

『は?』


足を止めて枝葉の隙間から眼下を見れば、話に聞いていた白銀のレインコートを着て木刀を振るう剣士と赤だか銀だか解らない全身タイツの人物が戦っているのが誠一の目に映る。

耳をすませばなにやら爆発音まで聞こえて来る。

状況は桜坂の剣士が不利。


『おっおい誠一、お前今何処にいる!?』

「すまんな桂二、急がなければいかない状況らしい」

『ちょっとまて、場所くらい言って………』


おもむろに携帯電話を切ると誠一は、背負ったバックから彩から渡された物を取り出す。

戦闘になるならこれを使え、と言われて渡された物。

最初は何の冗談だと言って突っ返した物だが、『能力者戦闘においての伝統らしい』と言いながら持たされた。

まさか使う羽目になるとはと言いながら、誠一は『ソレ』を被った。




ソレは龍を模した仮面だった。

顔の上半分を覆う黒い龍の仮面。

見る人が見れば解る東洋の水龍。

誠一は仮面を被り、ペルソナを心に纏う。



「護天八龍 水龍参る」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ