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変わる世界  作者: オピオイド
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外話 サイファ学園都市 前編

サイファ学園都市、と言う街が日本の南西部の沿岸にある。

大平洋に面した人口五万に満たない地方の工場都市を、『サイファグループ』と言う新進気鋭の若き社長がのし上げた企業が手を加えて出来上がった都市。

この都市は他の学園都市と違い、少々異彩を放っている。

普通の学園都市であれば、地域の商業や工業と連携し都市を発展させる研究をする。

それが学術都市だ。

しかし、この学園都市はそれだけではない斬新な特色がある。

それは『技術・専門職育成コース』だ。

『大工』などのマイナーな伝統的な技術が介在するモノから、『医師』や『弁護士』など国家資格が必要な専門職。

技術や専門的な知識を持つ人間を育てる、いわゆる人材育成から始まる学術都市である。

その学園都市の西部、『要人警護・警備専門コース』の実技区画へと続く廊下を二人の女性が歩いていた。




「まったく、アイツは相変わらず人を振り回す」

「いつも隊長がスミマセン」


白で統一された廊下。

そこを二人の女性が歩いていた。

濃厚の作務衣を着た背の低い女性が、プリプリと怒りながら歩いている。

それを宥めるように隣を歩くスラッとした背の高い金髪の女性が、苦笑混じりに謝罪を口にする。


「アンタのせいじゃないでしょ? フレイア」

「いえ、そう言う訳にはいきませんよ思惟さん」


謝罪に対して思惟しいと呼ばれた女性は責任を負う人間が違うと言うが、フレイアと呼ばれた金髪の女性はヤンワリと言いきった。


「主に対して大した忠誠心ね。頭が下がるわ」


しかし、思惟の一言でフレイアの歩みが止まる。


「…知ってらっしゃたのですか?」

「ん? ああ、貴女が人形だって事ね。最初からよ。貴女ね、私を何だと思ってるの? 流れを司る『八大龍王』の一柱よ。貴女の身体を『能力』で見れば、人とは明らかに違う『流れ』がいくつもあったから、すぐに解ったわ」

「そうですか…」


思惟は能力者の中でも、最も多い『識者』に分類される能力者である。

彼女の能力はいたって解りやすく、『流れを見る』能力だ。

先程の言葉通りならば思惟はフレイアの身体の流れを読み、フレイアの正体行き着いたらしい。


「でもよく解りましたね。私の身体は神代の時代に製作されてはいますが、『あの』重金教授が驚く程に人体に似せられた身体なんですよ?」

「…以前、人形と戦った事があるのよ。同系統じゃないけど、能力で見た『流れ』が似ていたから解ったわ。それより、ここ?」


その時、二人の足が止まる。

彼女達の前には、スライド式の分厚い金属の扉が立ちはだかっていた。


「この先が室内演習場ね? 素材は解らないけど、複合型の『儀式』で数倍にまで強度を上げてる。やけに物々しいわね」

「用途は演習だけじゃないんですよ」


言いながらフレイアは、扉のテンキーに10桁のパスコードを打ち込み操作を始める。

最後にエンターキーを打つと表示画面に剣と金鎚を交差させたサイファグループのロゴマークが表れ、ブシュと圧縮空気の抜ける音と共に扉が動き出す。


「へえ、街一つが入ってるんだ」

「ハイ。敷地面積30000平方メートル、深さ約10メートル。地下に街が丸々一つ入ってます」


扉が開いた先はエレベーター。

そのエレベーターはガラス張りで出来ていて、そこからは見晴らしよく総てを見渡せれた。

四方を厚いコンクリートで囲まれた、地下に埋めた巨大な箱。

天井に備え付けられた強力なライトが箱の中に作られた街を照らし出している。

ユックリと降るエレベーター、その町並みを見ながら思惟はしきりに感心して見ていた。

その横ではフレイアが淡々と演習場の説明をしている。


「この街はシェルターにもなっているんです。まあ、平時はこの様にっ」


その時、ズゥン響く身体を貫くような振動が二人を震わした。


「………フレイア?」

「………ハイ」

「………ここは今どこが使用してるの?」

「たしか、今の時間は警視庁からSATとブリテンのSASと、第三隊の表側の顔『サイファセキュリティサービス』の合同演習となっていますが………」


思惟はフレイアの言葉を聞きながら、爆発音があったであろう場所に目を移す。

そこでは火事があったのであろうか、煙がモウモウと立ち込めていた。

それだけでは情報が入らないと感じた思惟は瞬時に『能力』を使い煙の立ち込めている場所を見直す。


「馬鹿でかい神域結界が二つ展開されてる………規模から考えると『法師』が二人………フレイア?」

「今調べてます!!」


思惟が振り向けばフレイアは、慌ただしくエレベーターに備え付けられたコンソールに携帯端末を繋げ何かを調べていた。


「……!! 出ました、第四隊の七凪紫門………あー」

「あー」


結果が出るやいなや、二人は何かに納得するかの様に肩を落とす。

最近の一連の流れと演習場と言う場所、そして何より三剣風文と言う人物の性格を考えれば火を見るより明らかな結果が出る。


「…隊長」

「あの馬鹿また悪い病気が再発したわね」


三剣風文。

裏の世界において最強の一と言われる『第三隊』の総括にして、サイファグループの警備部門『サイファセキュリティサービス』の警備室長。

一見、好青年に見える彼には一つ困った嗜好を持つ。



『戦闘狂』


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