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変わる世界  作者: オピオイド
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覚醒

キィィと金属を思わせる甲高い音が、高見原タワーの広場に鳴り響く。

それと同時に、自分が居る空間に違和感を誠一は感じた。


(これは彩さんが言ってた!?)


この世界には、表に出回っていない技術がある。

軍事的な技術や、一般人の生活に余り関係ないモノは自然と隠れるものだ。

しかし、それとは一線を画する技術形態がある。

『儀式』と言う技術。

有り体に言えば『発端と帰結する現象は解るのに機序が解らない技術』の総称らしい。

(詳しくは同作者名の『神遊び唄』の『学園都市〜』を参照してください)

彩に説明された時は今一解らなかった誠一は、彼女の真剣な説明から『能力者に関係する多分凄い技術』ぐらいにしか考えて居ない。

その考え方はあながち的外れではなかった、彩自体も概論は知っているだけで細かい理論は余りの難解さでサッパリだからだ。

だがしかし、今必要なのはその技術が起こす結果であり、先程の金属音を皮切りに周囲に少しながらもあった人の気配が消えていっていた事。

誠一は知らないが、これは『忌避の鐘』と言う儀式道具を使い人払いを行っていた。

前回の帰り道で誠一が襲われた時にも使われたのだが、今回は事前に教えられた知識のお陰で気付けた。


(前回と似たパターンならば…)


完全に囲い込まれる前にと、誠一は近くにあるビルを背に立つ。

タイミングを図った様に、パラパラと人が誠一の周りに集まりだす。

集まり出した人間を観察すれば雰囲気は前回と同じだが、服装が違うと誠一は気付く。

前回は黒い戦闘に適した服を着ていた一団だったが、今回は青を基調とした制服………いわゆる警備員の服装。


「貴様、ここで何をしている?」


観察し考え込む誠一に、一団の中から一人の男が前に出て来る。


「別に、散歩していただけさ」

「こんな夜遅くにか?」

「今時の高校生ぐらいなら普通だぜ、オッサン」


軽口を叩きながら誠一は様子を見る。

挑発紛いの言葉を聞いても相手は何も動じない、周りの取り巻きも露とも揺れない。

むしろプレッシャーが緩やかに高まり、誠一は押し潰されそうな感覚に陥り焦る。

その焦りを感じたのか、目の前の男はニヤリと嗤う。


「どうかしたかね? 『水上 誠一』君?」

「………っ。名前をっ」

「知っているよ。君はフランベルジェを相打ちながらも倒したので有名だからね。しかし運が良い、侵入者を追っていたら望みの相手に出会えるとは。」


言いながら男は腰を落とし拳を胸の高さまで挙げ、身体を半身にして構える。

男の発言に戸惑いながら、男の構えに誠一は既視感を覚える。


「『ハウンド』の隊員から聞いていた…偶然だがお前と俺は同じ『護天八龍』の流れをくむらしい」


壁を背にする誠一を中心に、半円を描くように警備員姿の集団が彼を囲んでいた。

目の前の男の用件は大体解った、周りはいつの間にかに囲まれて誠一は逃げられない事を悟る。


「オッサン、侵入者とか言ってたけど仕事はどうした?」

「なに気にするな。私達は基本的に『武』の為に他を犠牲にして、こんな仕事に就いた輩が多い。私もそうだがお前さんの様な『猛者』と戦う為ならば、羨ましがる事はあっても咎める者はいない。さあ、軽口はここまでにして………始めようか」


会話はここまでにと断ち切る様に、相手の男から裂帛の気配と共に励起法の深さを物語る力を誠一は感じた。


「…フンッ!!」


初手は相手、試金石とばかりに打った拳。

誠一は腕をあげて、あえて受け止める。


「っ!?」

「むっ!!」


ボスンと人の身体から発したとは思えない音が広場に響く。

相手は拳から感じる手応えに目を剥き、誠一は受けた衝撃の少なさと自分の感じた感覚に戸惑う。


(何だ今の感覚は!?)


相手の励起法から威力を予想しながら受けた拳は、思いの外弱かった。

受けた時の音と足にかかった重みから考えれば、人一人吹っ飛ぶ位の威力だったはずだった。

あれ位の威力ならば思惟から喰らった掌底はダンプカーの衝突だと、誠一は目の前の男を見ながら考える。

男は跳び退り訝しげな表情を浮かべていた。


「何だ、お前…聞いた時は『パーツ』共と似た能力かと思っていたが…手応えが…」


それは誠一も思っていた。

彼自身、未だに能力の性質は解るのだがどのような使い方をするモノか解っていない。

前回フランベルジェと戦った時の話を、彩に話した際に『水が関係する事かもしれない』と示唆していたが未だに判明しきれてないのが現状。

しかし、頭の片隅にあった『水』のイメージがある感覚を誠一の脳に伝えていた。

それは水を自分の思い通りに動かす感覚。

しかも、自分の身体の筋肉や力の流れに沿ってある感覚。


(これは、まさか。俺の能力は…)


今までの感覚、今の直感。

誠一は一つの仮説を導き出した。


「よしっ!! 今度はこっちからだ!!」


誠一にとって、仮説はほぼ確信に近かった。

今思えば自分の師の思惟は、総て知っていたのかも知れない。

思惟とは違う流派の套路や戦いの技法を、教えて貰っていたのはこのためだったかもしれない。


「カアアアッ!!」

「うおっ!!」


踏み込みと同時に掌底を撃ち込む『打龍』、受け止められたのを確認するより早く踏み込みの足とは逆の膝をで脇腹を打つ『龍尾』。


「ハアアアア!!」


しかし、それらは総て牽制。

次の全力の一撃を撃ち込む為の布石。

後ろ足を打ち鳴らす様な踏み込み、励起法で最大限まで強化したソレはアスファルトの地面をえぐりながら爆弾の様な推進力を与え身体を前に出す。

同時に身体を相手の身体深くまで潜り込ませ、推進力を総て変換するように肩で撃ちあげる。


「……………」


再び広場に響く音。

今度は誠一が跳び退いた。


「護天八極『崩龍』…」


誠一の呟きと同時に男は声もなく崩れ落ちた。


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