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変わる世界  作者: オピオイド
19/90

鍛練

戦い駆け引きの基本と言えば、見る事だ。

正確に言えば相手の攻撃を瞬時に理解する事。

そうすれば相手の攻撃に対して、上手く対処する事が出来る。

それは…。


「くっ当たらない!?」

「当たり前よ。私の能力『モーション エモーション』の真骨頂は相手の感情や行動を読み取り、瞬時に相手の行動の先を読む未来予測系能力。君の動きは見切ったわ」

「ヒデェ、何という出来レース」

「無駄口叩いてると、危ないわよ!!」


瞬間、誠一の身体から力が抜ける。

誠一の感覚を借りれば、身体の力が吸い取られるような感じ。

組み手をしていた彩の手元を見れば、誠一の手首を極めている。


「…アダダダダ!?」

「学習しないわね。能力者の戦いの基本は高速戦闘。気を削いだら、そこで終わりよ。だからちゃんと相手を見据えなさい!!」


極めた手首をそのままに、彩は立ち位置を変え誠一を芝生に倒すと組み伏せる。


「守部神道流『地縛り』…解った? 気を抜くと直ぐに死んじゃうわよ………?」

「グッ………」

「……?」



後ろ手に肩を極められ芝生に組み敷けられ、誠一は身動きすらとれない。

しかし、誠一のうめき声は何処かしら喜色めいたモノだった。

奇妙に思った彩は、自分自身の能力で誠一の感情を見た。

途端、彩は顔を赤らめて極めている手と別の手で誠一の後頭部を殴り付ける。


「バカッ!! スケベ、あんたね!!」

「アダッ痛い痛い、だって腕にっ」

「訓練中に不埒な事考えるなー!!」


原因は極めていた誠一の腕に、彩の胸が当たっていたからである。


「『ささやかな膨らみながら柔らかい』って、どう言う事よー!!」

「ちょっ彩さん、イダダッ謝るから励起法で殴るのヤメー」


それとなく平和な一時である。




高見原市桜区東川端公園 午後2時




高見原の中央にはデンと大きな中洲がある。

その全長は小さな町であれば、一つ二つスッポリと入る位の巨大さだ。

大きな中洲の北東端にある川に面した場所に、誠一と彩は居た。

二人は背中合わせに座り、誠一は後頭部をさすりながら彩はソッポを向きながら佇んでいる。


「彩さん、ゴメンって。なんつーか、男の性でして自分としては許して欲しいなーと」

「………」


ヤレヤレ失敗したなと誠一は溜め息混じりの息を吐くと、ここ三週間位の事を思い返す。

この町には住んでいる人間には解らない異常がある。

一つは事件が起こっても中々表にでない、これの良い例が先日の襲撃だ。

この間あれだけ暴れたにもかかわらず、テレビどころか新聞にすら載らない。

念の為に噂好きの友達兼情報屋の七瀬桂二に確認をとったところ、そんな噂すら聞いた事がないそうだ。

二つ目に、この町の能力者の数と場所の特異性だ。

これが発覚したのは、彩の『この町では能力が使い難い』と言う事から始まった。

彩の話に因れば、能力の基本は世界を形成しそれを通して発現する事らしい。

識者であれば自分自身の内面世界と言うフィルターを通して解析する。

導士や法師であれば自分の外に展開した世界を使い発現するのだ。

しかし、これらの世界(神域結界と言う名称がある)には弱点がある。

神域結界同士で干渉しあって、神域結界の展開範囲や能力の出力に影響を与えてしまう。

それが『この町では能力が使い難い』の発言に繋がるのだ。

この町では能力者の密度が高く、神域結界が張りづらいらしい。

そして、三つ目がこの町の始まり。


「もう、良いわよ。そう言うのが男ってのは知ってるし」


思考に埋没する誠一が、彩からかけられた声で帰ってくる。

振り向けば少し頬を朱くした彩が、こちらを向いていた。


「でも、スマン」

「良いわよ……そんなふうに見られたのが初めてだから、恥ずかしかっただけ……だからほら、貴方が友達から預かったもの見せて」


そう言われるままに、誠一は傍らに置いていたナップサックから書類ケースを取り出し、中から紙束を渡した。


「『桃山財閥に関するレポート』か、本格的ね」


三つ目は人口千にも満たない小さな村を、十年そこらで人口百万人の政令指定都市に変えた桃山財閥と言う企業の事である。

誠一は七瀬に頼み、桃山財閥の事について調べて貰っていたのだ。


「やっぱり、このレポート凄いわ。知りたい事がしっかり書いてある。君は読んだ?」

「一応目は通したよ。だけど良く解らない」

「もうっ、良いわ少しだけ説明してあげる」


彩は呆れながら話を続ける。

レポートに書かれていたのは桃山財閥が、この町を開発するにあたって開発した順番だった。


「研究所?」

「そう、この町の始まりは海原区にある研究所から始まってるらしいわ。それから第1〜8研究所まで増やしてそれに伴い……やっぱりおかしい」

「おかしい?」

「研究所の設置目的よ。ほら、ここの記述見て」


肩を寄せて彩の持つレポートを覗くと『高見原における微生物による次世代バイオプラントの研究』と書いてある。

何故と首を傾げる誠一を尻目に、彩は話を続ける。


「最近の噂なんだけど聞いた事はない? 『超能力が使える薬』」


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