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変わる世界  作者: オピオイド
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理解


「………?」


誠一はベッドの上で目を醒ました。

よく見知った机に本棚、天井の近くの壁掛けの時計や枕元の携帯電話用充電器におかれた誠一の携帯電話。


「…?」


多分ここはよく見知った自分の部屋だと寝ぼけた頭で理解はしていたが、此処に帰って来るまでの過程の記憶が誠一の頭からスッポリ抜けていた。


「…えっと、思惟さんの鍛練の後に……」

「やっと起きた?」


思い出そうとした時、扉から一人の少女が現れる。

デニムのパンツにホワイト系のカットソーを着た少女、特徴的な釣り目がちの目元を見れば昨日誠一と一緒に戦った彼女だった。


「…君は」

「改めてはじめましてね、私の名前は彩。折紙 彩よ」


誠一が何かを尋ねる前に自分は『折紙 彩』と名乗る少女は、誠一が起き上がったベットの横に椅子を引き寄せ座りながら自己紹介を始めた。

その行動に慌てた誠一は慌てて座りなおそうと身体を捻った瞬間、背中に激痛が走りベットに逆戻りする。


「無理しない事。何をやったか知らないけど身体がボロボロよ? 昨日あなたが恐らくだけど相打ちで倒れた後の事は教えるから、身体の治癒能力を上げる励起法をしながら寝ながら聞いていなさい」


ユックリと身体を横たわれさせられながら、誠一は思い出した。


「そうだ俺、昨日襲われて。フランベルジェって言う奴と争いになってから…あれ? あいつに組まれてからの記憶がない?」

「そこよ。あなたは昨日あいつと組んだ後に凄い音をたててから、あなた達二人とも崩れ落ちたのよ」


言われて誠一はようやく思い出す。

あの時、組まれて嫌な予感を感じた誠一は、組んできたフランベルジェを振りほどくべく思惟から『禁じ手』として教えられていた『崩震』を無意識で打っていた。


「何か心当たりあるの?」

「うん。多分、まだ打てるだけの身体が出来てないから『禁じ手』にされてた『崩震』を打った反動だと思う」


『崩震』とは、『励起法』によって強化された身体全体の筋肉を使い密着状態で体当たりをかける技である。

そして、この技には欠点が一つあった。

身体全体の筋肉を使う為、身体にかかる反動を相殺しきれないのだ。


「まあ、身体が出来ていてなおかつ身体運用が上手く出来ていれば反動が少なくすむらしいんだけどさ。…まだ未熟だった」

「しかたがないわよ。あの時は持ち得るモノでしか戦うしかなかったんだしね。それに相手が『崩壊のマエストロ』と言われている能力者だから」


少し反省しながら話す誠一に彩は、気遣う様に話し掛ける。

誠一はそこで気になる単語を聞く。


「…能力者?」

「そうよ。あれ? 言ってなかったっけ?」

「言うも言わないも、俺と君は会って話したのは昨日が初めてだし」


そうだっけ?と笑いごまかす彩は、慌てて説明しだした。

曰く、世界には能力者と呼ばれる、奇跡の如き技を使う人種がいると言う。

能力者には大別して三種類のタイプに分かれる。

一つは特殊感覚器系『識者』タイプ、このタイプは感覚器と名がついている通り人を超えた知覚を持つ。

二つ目は特定認識物及び特定操作系『導士』タイプ、このタイプは特定物(水や珪素など)や特定操作(分解や結合など)の操作に長ける。

最後は空間内絶対支配系『法師』タイプ、このタイプは認識できる領域を絶対支配し他の能力者を凌駕する『神域結界』を形成、能力者の意のままに世界を操作する。

誠一はそこまで聞いて、疑問の言葉をあげる。


「…それじゃあ、あのフランベルジェって奴も能力者って奴か…俺よく無事だったな。いや、あんまり無事じゃないか」

「…? なんか認識に齟齬があるみたいだけど、あんたも能力者よ」










「…え? ……ええええええぇぇぇ!!!!」









思っても見なかった返答に誠一は、身体が動かないので驚き目を見開く。


「…なんっ、なにゆえ?」

「驚くところはそこ? と言うか、知らなかったの?」

「知らなかったどころか初耳だよ、と言うか確かなのか?」

「確かも何も、あなた励起法を使ってるのが証左。励起法は能力者にしか使えないの」

「マジで?」

「マジよ、大真面目」


なんだそりゃと溜め息をつきながら誠一は考える。

あのフランベルジェと対立し捕まった時。

フランベルジェの身体から発せられる殺気の様な『振動』を感じた時、誠一の感覚は加速した様に感じ身体を流れる水の分子を事細かに感じ取れていた。


「まさか…」


誠一の感覚が彼自身の意志によって加速する、身体に含まれる水−−いや酸素原子一つ水素原子二つならば分子−−をすべて感じ取れる。

励起法とは別の視界や感覚。

誠一は自分の感覚が教えてくれる能力の運用通りに使う。


「ヤッパリ」


誠一は痛みなく身体を持ち上げれていた。

その様子を黙って見ていた彩は、不思議そうな顔で誠一に尋ねる。


「何が?」

「俺の能力がわかったんだ。あと、あいつのフランベルジェの能力」


立ち上がり身体を滑らかに動かしながら、自分の動きを確認する様に見ながら誠一は答える。


「俺の能力はどういう原理かは解んないけど『水の分子操作』だと思う。その証拠に身体の中の水分子を操作して、自分の身体を動かしてる。自分の身体を筋肉で動かしてないのに動く…何か気持ち悪い」

「それは良かったわね」

「それとフランベルジェの能力は多分『振動を介した物質分解だ』。…俺の水分子操作で振動を散らしたせいで、あいつの能力を減殺したんだ…なんか解っ…」

「ねえっ!!」


熱中して話していた誠一は、彩の声で気付く。

頬を少し紅く染めた彼女の視線がよそを見ていた。


「…?」

「身体が動くなら服着なさいよ」


そこで誠一は初めて気付く、自分の身体は所々湿布や包帯を巻かれて裸同然だった。


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