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変わる世界  作者: オピオイド
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外話 高見原中央駅

この話は毎度の事ながら『いつもの日々に戻るまで』の次話に繋がる話です。

世界観を深めて読みたい方はお進みください。


森林都市や犯罪都市などと、ネットワークの海の中ではまこと密やかに噂されている地。

そんな場所高見原の一つに、オカルト都市と言う名前が出ている。

そう言われるだけあって、この町には怪現象や心霊現象の目撃証言の類が多く、噂話が溢れている。

中でも有名な物は高見原七不思議と呼ばれている。

『桜坂の剣士』『地獄列車』『我が子を探す女』『岩長神社の神隠し』『人が消える坂』『人食いお化け』『行くと必ず恋人が別れるオブジェ』『地獄へ続く洞穴』の七つが今の所の七不思議だ。

七不思議は時代によって変わるので、全てが同じではないが今現在の主流はこれだ。







高見原の殆どは森で覆われている森林都市だ。

そうなったのは高見原村から高見原市になるとき、なるだけ森の緑はそのままにと言う開発方針が決まったお蔭だ。

その時、都市開発の時に問題になったのが、使える土地の狭さだ。

例えば高見原の都市機能が大きくなり人口が増えた場合、普通ならばビルを建て上へ上へと広げ開発するのだが、森林都市と名を売っていた為に日照の事を考えて、あまり高いビルが建てれないと言う弊害が生まれるのだ。

だから当時の高見原開発の特徴は地下を中心に行ったらしい。

その結果が高見原の地下には網目状になった地下トンネル道路と地下鉄が存在している。



高見原市営地下鉄中央線 高見原

深夜1:00



深夜の地下鉄はとても静かだ。

町の人間の九割近くが使っている地下鉄とはいえ、今の時間が時間なので地下鉄のホームは閑散としていた。

終電も近く、人はまばらだ。

そんな中、一人の男が酒気交じりの息を吐きながらホームのベンチでくだを巻いていた。


「クソッ、クソッ、クソッ…なんでだよ、部長の奴…俺の企画を何で通さないんだよ…」


男はブツブツと呟きながら両手を握ったり開いたりと動かしていた。

ホームの一番端のためか、それとも男の異様な雰囲気のためか彼の周りには人は居ない。


「クソッ、クソッ、クソッ…俺の方が面白いのに、あんな奴の企画を通すなんて…」


俯き爪を噛み男はギリギリと歯軋りを立てる。

酒の力を借りているせいか男の言動は怒りを吐き出すように何度も何度も呟いていた。

そんな男の目の前に電車が止まる。


「高見原~高見原です。お降りの方はゆっくりとお願いします。これは最終電車になります…お気をつけください~!! 次の停車駅は…」


俯きがちの男は最終電車のアナウンスが聞こえない。

ブツブツと呟いているばかりで、全然気付いていなかった。

そうこうしている内に、電車のドアが閉まりゆっくりとスピードを上げて暗いトンネルへと消えていく。

男が最終電車を乗り過ごしたのを気付いたのは、それからきっかり五分後の事だった。


「チッ、ついてねえ…」


舌打ちを一つして男はベンチに寝そべる。

どうやら男は、このまま寝て始発で帰るつもりらしい。

横たわる男、それに気を利かせた様に構内の電気が落ち暗くなる。

所々に灯る非常等の明かりが浮かび上がるような緑色を主張しているため、完全な闇ではないのを男は満足して目を閉じた。



「…ん?」



唐突に男は目覚める。

軋る様な金属音が男の耳に届いたからだ。


「んあ?」


酒でむくむ目蓋をこすりながら男は身体を起こす。

照明はまだ暗いままで灯ってはいない、しかしこの音は何だと頭にまで響く音に頭をしかめながら男が頭を横に向けると音が唐突に止まる。

何だ?と男が目を凝らせば、黒塗りの列車がホームに入ってきていた。

どうやら先程の音は列車の止まった音らしい。

それよりも男の注意は目の前の物、不気味な漆黒の列車…男の酔った頭でも解る。

非常灯の淡い光ごしでもとても不気味な雰囲気を醸し出していた。




「……………………………………」




「…ん? 何だ?」


男は気付く。

どこかで何かが聞こえてくる。

周りを見渡すが音を発する物はない、それどころか先程の列車のとまる音が治まったために逆に静寂を感じる。



「…………………………………」



また音が聞こえる。

いや違うと男が耳を澄ませば声が聞こえた。




「……………………………………」



目を閉じ耳を澄ませば…どうやら声が聞こえたのは目の前の列車らしい。

ゆっくりと男は好奇心のみで止まった列車に近づく。




「……………………………………」




近づけばとてもよく解る、どうやら目の前の列車はコンテナのようだ。

男はコンテナに耳をつけ澄ました。






















「たすけて」























それからの男はどうやったかは覚えていない。

おぼろげに覚えている事は酔った足をもつれさせながら逃げた事だけだった。

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