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変わる世界  作者: オピオイド
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炎の剣

励起法の恐ろしさは、誠一が思惟から『奥伝』を習い始めてから初めて聞いた。

実際の所は、奥伝にほんの少し触りしか聞いていない。

だから、誠一は励起法はよく見る漫画にある『身体を丈夫』にしたりと身体を強くする気功の一種だと思っていた。


その身に受けるまで。



「がっっ!!」

「馬鹿っ!!」


それは隙だった。

構えからの合理的な隙ではなく、励起法の真の威力を知らない心の隙。

その代償は相手の攻撃を許し、正面からの先制を打たれるという形となった。

正面からの正拳、空手より喧嘩に近い拳を誠一は胸をかするように避けたはずだった。

誠一としてはギリギリで避け、ややカウンター気味に顎をうち上げるつもりだった。

しかし、結果は大違いだった。

かすっただけ…そう、拳の甲が胸の上を滑る様に行くはずだったが、その拳には誠一の予想を大幅に超える力が込められていた。

相手は黒ずくめの戦闘服で容姿や性別は解らないが、自分と体格が変わらないその人物が放った異常とも言える攻撃に堪えながらの様に弾け飛んだ。

そして、彩の罵声が飛ぶ。

それはそうだろう、弾け飛んだ場所が彩の居る方向なのだから。

マズイと誠一が思うより先に一瞬の浮遊感の後、身体が一回転して着地していた。


「…え?」


急激な視点の移動とその結果、誠一は一瞬ほうけた。

そのお陰か彼は更に目を疑う光景を見た。

恐らくは彩の方へと飛ばされた誠一を、本人に衝撃が来ないように捌いて着地させたのは彼女自身の技だろうと推測出来る。

簡単に言うが、咄嗟にとったその動きは訓練を十分に積んだ熟練のアスリートでも無理な動きだ。

だが捌いた隙に二人の黒ずくめの戦闘員が体ごと彩に突っ込んで来る。

彩の動きを止める為の体当たりぎみのタックル、恐らくは彩の方が捕まえ易いとふんだのだろう。

誠一を捌いて出来た隙をついた避けきれないはずの攻撃、しかし黒ずくめの彼らの思惑は外れる。

彩はほんの一歩、そう早くも遅くもない極普通の速さで一歩前へ出たのだ。

たったそれだけで彩は囲んでいた二人の間を、簡単に擦り抜けたのだ。


「馬鹿な…」


誰が呟いたのか解らないが、その声は驚愕で凍り付く誠一と襲撃者の間に響いた。


「…ちょっと、私一人でやらせる気?」

「すっスマン」


襲撃者越しに睨みつけてくる彩に怯えながら、誠一は再び拳を握り未だに意識を飛ばしている襲撃者の一人に打ち込んだ。


「…」


しかし、相手も襲撃者として訓練しているので、拳が届く前に軽いバックステップを続け避けつづける。


「フッ!!」


だが誠一も逃がすつもりは毛頭もない、六年にも渡り続けた修練と最近スムーズに出来はじめた励起法で身体を強化し爆発のごとき踏み込み拳を打ち込んだ。


「グッ!」


マスクに阻まれたくぐもった苦しそうな呻き声と共に、先程の誠一の様に吹き飛んで近くの茂みに消えていく。


「…?」


見た感じは上手く決まったように見えたが、誠一の手には手応えがなかった。

恐らくは自分で飛び衝撃と打点をずらしたのだろうと予測した誠一が気付けば、相手はもう近くにはおらず周りで囲んでいた襲撃者達も少し間を空けて囲んでいる。


「…?」

「さっきのは様子見、今みたいなのは簡単な挨拶みたいなものよ」


いつの間にか再び誠一の横にいた彩が、呟きの様な小さな声で彼に囁いていた。

思惟さんと同じ事を言うと心の中で呟きながら、誠一は『励起法』の深度を深めて行く。


「っ!?励起法の深度を深めてる?乗ってきた?」

「何の為に俺が襲われているか解らないし、君が助けてくれているかも解らない。けどさ」


誠一は息を整え拳を強く握る。

それからは最近当たり前になってきた励起法の手順、身体にある流れを感じ取り、息と同時にそれを動かし流れを早める。


「俺、六年これをやって来た」


拳を視線の先に挙げる誠一は、身体の中を流れに沿って動かし、細胞の一つ一つまで感じ取る。


「最初は理不尽な事に対する恐れだった。だから俺は、それから克服出来る様に力を手に入れようと修練してきたんだ。」


流れより出た力を細胞一つ一つへ流し込み、細胞を形作る分子一つ一つを最大限にまで強力するイメージで誠一は、身体をもう一段階次のステージへと持って行く。


「だから、俺は負けたくないんだ。今目の前にある理不尽を打ち砕く!!」

「…男の子って事かな?」

「その意気やよし!!」


その時だった。

黒ずくめの囲いが開き、一人の男が現れる。

その男は周囲の黒ずくめ達とは違いマスクはしていない。

服装は対照的な覚める様な『紅い』スーツを着た赤みを帯びた金髪に碧眼の青年だった。


「武骨な剣の様なその精神はとても好ましい。武士道と言うやつかな?」


青年はユックリと歩き、誠一達の前約4メートルで立ち止まる。


「チッ間合いギリギリ外だ」


彩が舌打ちしながら呟く。

それは誠一にとっても同じ、一足飛びでギリギリ避けられるであろう間合いだった。


「さて、自己紹介と行こう。と言っても私の名前は明かせない。だから、通り名で我慢して頂こう」


男は左手を水平に腹にあて、左足を軽く引いてお辞儀をする。


「Hallo, Jungs und Mädchen(はじめまして、少年と少女)Mein Name ist feltenbeschau(私の通り名はフランベルジェ)」


申し訳ありません、大学のレポート課題でこちらの執筆は遅れております。

楽しみにされている方達には申し訳ありませんが落とす訳には行かないので察していただけると嬉しいです。

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