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とある男性の生涯

「だーだ、あぶぅー(キラキラしたひとがいるよ)」



最初は二歳の頃だ。俺は記憶力がとても良いらしく、そんな幼い頃の記憶も鮮明に覚えている。


いつも部屋の天井近くに浮かんでいて、俺を楽しませてくれる人。


『そういうの』が見えるのは普通じゃないと知ったのは五歳のころだ。

守護霊とか背後霊とか言うらしいが、その女の人はいつも天井近くにいるので天女と呼ぶことにしていた。


周りから気味悪がられるのも嫌なので、俺は天女を見ないように努めるようになった。


───

小学校に上がると、俺の周りにはやたら女子たちが集まるようになった。

悪い気はしないが、チラっと天女を見ると、決まって頬っぺたを膨らませていた。


多分、この頃から意識しだしていたと思うが、天女は俺にとって初恋の相手だ。


幼少の頃からずっと一緒にいて、母さんよりもそばにいてくれる。

天女が俺の後ろに付いて来てくれてると思うと、すごく安心できた。


───

中学に上がり2年の頃、後輩から告白された。

知らない子だった。チラっと天女の顔を見ると、とても悲しそうな顔をしていた。

後輩にはごめんなさい、と謝った。


───

高校に上がり、同級生と理想の女子について語り合った。

すると天女がコスプレみたいのを始めて、目の前をウロチョロしだした。

思わず魅入っちゃった。やっぱ可愛い。


天女が付いててくれるなら、彼女なんかいらない。


───

大学に進学して、女の友達も増えたけど、天女以上の娘には出会えなかった。


そのころの友人に『イマジナリーフレンド』の話を聞いたことがある。

天女は俺の心が生み出した幻影なのかも?

もし話しかけてしまったりすると、消えてしまうのかも‥‥。

失いたくはない。ずっと一緒にいて欲しい。心からそう思った。


───

就職して、それなりの付き合いの中で、何度か恋人になりかけた人もいた。

でもダメだった。俺の心はもう‥。


───

「孫が欲しい」という両親に説得されて、嫌々ながらお見合いをすることになった。

お見合いの席で、天女が部屋の外へ出て行こうとしているのが見えた。

でも、俺から遠くへは離れられないのか、足だけ見えている‥。


「僕には心に決めた相手がいるので、誰とも結婚するつもりはありません。」


ハッキリとお断りした。


両親は嘆いたが、俺の人生だ。申し訳ない気持ちもあるが、これは譲れない。


───

やがて両親は他界し、親戚も兄弟も居ない俺は完全に独りになった。

でも天女がいつも一緒にいてくれる。触れることも話すこともできないが、それでもいい。


残りの人生は、天女を連れて、色々な景色を見て周ることにした。

世界中飛び回って、天女と一緒に奇麗な景色を眺めて、とても幸せな時間を過ごした。


───

そしてとうとう最後の時が訪れた。


身寄りのない俺は独り、安いアパートの一室で、もう死ぬんだと悟る。



もう声も出ないけど、天女に伝えたかった想い‥



『ありがとう、キミが一緒にいてくれたから、


 最高に幸せな人生だったよ‥ありがとう‥‥ありが‥‥‥』





肉体から抜け出して魂だけになった俺は───


年老いた自分の抜け殻と、それにすがり付くように泣いている天女が見えた。


天女の泣く声が聞こえる。

俺に『ごめんなさい』って何度も何度も謝っている声が聞こえる。


「あのー‥‥俺の声、聞こえますか?」


「ふぇ?(ぐすんぐすん‥)」


俺は振り向いた天女に手を差し伸べた。

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