第8話 ゴミの山を発見しました
ロストアイテムと同じような扱いのオレは自分の故郷と言える場所に戻された。
トトカ島。
人族が生きる栄光の地、ホルディアの外れに存在するこの島では、不思議な種族が生きていた。彼らの力は弱いが、繁殖力が強く集団となってモンスターの脅威から身を守って生きていた。冒険者達は、そんなトトカ島のモンスターを討伐し、弱きものを助ける依頼を引き受けることになる。
これがゲーム内での設定だ。
そして、この弱き者こそが俺達ハングドマンだった。
島自体は大きくなく、歩いて一周するのに半日かからないくらいの大きさしかない。
トトカ島は、このゲームにおいて重要な場所ではない。
おまけ程度の島で、ストーリーを進めるうえで必ず通らなければならないというわけでもない。
ただ、様々な下らないジョークのような島なので、来るプレイヤーは絶えないし、楽してクリアしたいプレイヤーはわざわざハングドマンを迎えに来る。
「やあ、私はハングドマン。世界を救う親愛なる友人よ、良ければ、君の為に戦わせてくれないか」
そう言って木で出来た槍を抱えてついていくのがハングドマンだ。
ハングドマンは島の中心部にある大樹の中に暮らしていて、何かアイテムを捧げるとやってきてくれるという設定になっている。
プレイヤーは通称、ゴミ島と呼んでいる。いらないアイテムを此処に捨て、ハングドマンを得るからだ。
フィールドをうろうろしているハングドマンは老いたハングドマンという設定で、タルテカルディアの世界の下らない噂を喋るというこれまたネタキャラ。
オレはそんな老いたハングドマン達に紛れて、プレイヤーや状況を確認する。
自分に何が出来るのか、何が出来ないのか。
バグって得られた情報は、当然『ゲームをする側の情報』であってゲームの中の生物から見た情報ではない。出来るだけすり合わせて行動しなければ、プレイヤーと違い、言って間違えれば、死、データの消滅となる。
「まず、嘆くべきはオレのステータスの低さだな」
【名前】
【レベル】1
【性別】男性
【種族】ハングドマン
【職業】槍士
【HP】55
【MP】5
【STR】5
【VIT】5
【DEX】5
【AGI】5
【MND】5
【LUC】5
【スキル】
・突撃
・かばう
・防御
・空目
・致命的な過ち
【装備】
・樹の槍
・布の服
考えるのが面倒だったのかと聞きたくなるような数字だ。
そして、脳内にある情報だと、レベルが上がっても1ずつ増えていくだけ。
絶望的な数字だ。
致命的な過ちは、不能もしくは、不良にする能力であって、強くする能力ではないので、オレ自身の強化は望めない。
他のスキルも、突撃、かばう、防御等大したことのないスキル。
ハングドマン唯一のスキル、空目に至ってはなんにもないところでハングドマンが驚くというただのネタスキルでしかないらしい。実際、驚いた場所を徹底的に探し続けたプレイヤーが何をどうしても見つからず、怒りの余りにハングドマンを殺したという動画もあるらしい。
ステータスもスキルも絶望的で、レベルアップも期待できない。
となると、あとは、アイテムでの強化しかない。
どんなに低ステータスであっても、強力なアイテムがあれば対抗できる。
だが、問題はどうやって手に入れるかだ。
強力なアイテムは当然金がかかるか、凶悪なモンスターがいるダンジョンなどに存在する。
それをこの状態でのオレが手に入れるには困難を極める。
そんなオレが始めたことはゴミ拾いだった。
正確には、プレイヤーがいらなくなったアイテムを探し、拾い金にすることだ。
幸いにもトトカ島にも店はあるし、NPCであっても、売買は出来るようだ。
なので、とにかく、アイテムが落ちていないか探す。
それしかない。
だが、元々ネタ島であるここには肉壁入手くらいしか訪れない。
アイテムが落ちていることなんてほとんどない。
「……島を出て、アイテムを探すしかないか」
そう思ったその時だった。
オレの身体が反応する。
空目のアクションだ。
自分の意志とは関係なく起きてしまうこのスキルに惨めさを感じていたその時だった。
目の前の、ハングドマンを生む大樹に違和感を感じた。
小さく何かが光っているように見えた。
近づくと、大樹の一部分が淡い緑に光っていた。
そして、その光に見覚えがあり、オレはスキルを発動させる。
「〈致命的な過ち〉」
オレは手から零れるその光を大樹の光に合わせようとした。
その瞬間、大樹に触れることなくオレは転ぶ。
転ぶ?
そう、転んだ。
そこに大樹が存在しなかったかのように。
そして、起き上がって周りを見渡すとそこには、大量のアイテムの山があった。
それは恐らく、プレイヤー達が捨てていったゴミアイテムの山。
肉壁ハングドマン達を手に入れる為に捨てられたアイテム達だった。
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