第6話 プレイヤー2名キル達成しました
光となって街へ飛んでいくミラを見て、パーティーメンバーが驚く。
「な、なんだ!? 何故ミラが!?」
「あの人、ハングドマンと自分の位置を確認不足のまま動かしたんですよ。マジ低能ですよ」
札士であるレンは心から呆れたように溜息を吐く。
「おい、レン」
「大丈夫ですよ。リスポーンして距離あるからボイチャ範囲外になってますし。それより、ユーゴさん。ミラさんが残したハングドマン、僕の肉壁爆弾に使って良いですか? あの馬鹿女より有用に使えますから」
「構わない! 足りなくなったら言え! ボクは近距離戦闘でハングドマンに指示があまり出せないから」
「りょーかいでーす。じゃあ、ちょっと移動しますね~」
レンはそう言って、オレを含む元ミラのハングドマンに近づく。
札士。
タルテカルディアオンライン独特の職業で、札という特殊なアイテムがキーとなるこのゲームではパーティーに一人は欲しい重要な職業。
自分の重要さを理解しているかと問うような傲慢な態度の少年は、新しく与えられた玩具のようにオレ達を見ていた。ただし、壊してもいい安い玩具を見る目。
そんな視線を感じながらも、何もできないNPCを演じるオレはただ黙って彼の指示を待つ。
少年らしいあどけない笑顔を浮かべるレンだが、その目の奥には真っ黒な無邪気が潜んでいる。
細い足に似合わない大きな革靴が、歩く度にカンッ、カンッと音を鳴らしていた。
「さあさあ、くそ雑魚ハングドマン君たち、役に立てよ~」
レンはそう言って、オレを含む元ミラのハングドマンに近づく。
そして、アイテムストレージから爆弾を取り出すと、俺達5体に渡していく。
そして、自分はミラと違うとばかりにしっかり自分とハングドマンたちの位置を確認しながら移動する。
「は~い、じゃあ、精々きたねえ花火になってね☆ 行ってらっしゃ~い」
そうレンが言って命令を出すと、肩をくっつけて並んでいたハングドマン達が爆弾を持って駆け出していく。
……プレイヤーたちに向かって。
「お、おい! レン、てめえなんで爆弾ハングドマン達が俺達に向かってきてんだよ!」
「え? あ、あれ? おっかしいなあ、ははは……って、ちょ、ちょっとバカ! 来るな!」
最初に辿り着いたのは、当然近くに居たレン。
駆けてくるハングドマンに対し命令をするが、もうレンの命令には従わない。
予想外の動きに思考停止しているのだろう。喚くだけで何もできていない。
涙の機能はないが表情は驚きから怯えへと変わり、今にも泣きだしそうだ。
「来るなぁああああ! 馬鹿! 馬鹿! 馬鹿が! クソ! クソごみ!」
知能指数の低そうなガキの戯言なんて聞こえておらず、ハングドマンは爆弾を持って突撃する。そして、爆破。
二個分の爆弾をモロに喰らった防御力ほぼ皆無にされたレンも光となり消えていく。
そして、それぞれに飛び込んでくる爆弾ハングドマンに、ユーゴとガイは対応を迫られる。
「くそ! この距離じゃ間に合わない! なんでだ! バグか!?」
ユーゴに向かって爆弾ハングドマンが迫る。距離も近かったせいで、防御態勢しかとることが出来ず、爆発をモロに喰らう。
「ちい! どうなってやがる! くっそが! トマホーク!」
ガイは、手斧を投げつけ、爆弾ハングドマンが近寄る前に殺す。
その様子を見て安堵の表情を浮かべたかと思うと口をゆがませ嗤い始める。
「はっはっは! バカNPCが人間様に勝てると思うなよ」
バカプレイヤーが、そう簡単に生きられると思うなよ。
「こうなりゃ俺が全部ぶっ殺して……あ、あがあああああ!」
背後から迫ってくるもう一人のハングドマンに気付けず、ガイは背中からモロに爆弾を喰らう。
だが、タフさが特徴のジョブ戦士であるガイは流石に一撃では倒せなかったようだ。
まだ生き残っている。
「ちい! くそ! こんなの想定してねえからポーション買ってねえよ! おい! ユカリ回復だ!」
レンとの距離もあったため爆弾ハングドマンに襲い掛かられなかったユカリは、死体の海を踏み越えながら、呆れたような目をガイに向ける。
「分かりましたよ。白炎……え?」
「はあ!? テメエ、何やっ……ばかがああああ!」
回復と攻撃を間違えたユカリの一撃は強力で、一つ目巨人対策用に物理防御重視にしていたガイはそのまま白い炎に包まれ光となって飛んでいく。
「なんで……わたし、確かに回復魔法を……なんでぇえ!?」
「ユカリ、落ち着け! 落ち着け……落ち着くんだ……」
残り二人。
俺は地面を見つめながら仕上げに取り掛かり始める。
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