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第5話 プレイヤーを1名キル達成しました

『あああっ!』

『うっ!』

『あああっ!』

『あああっ!』

『うっ!』

『あああっ!』

『うっ!』


オレとそっくりな顔をしたハングドマン達が、ダメージ判定ボイス、そして、死亡ボイスを出しながら倒れていく。

それぞれ用意されたボイスは一つずつ。

それがオレ達の価値を示しているように感じられた。


どうでもいい。


そういうことなんだろう。

オレは、そんな路傍の石が、人間達を恐怖に陥れる呪いの石だったと震える未来を想像する。

それだけで口元が緩み、恐怖でも怒りでも悲しみでもない感情が新たに生まれてくる。


興奮。


絶対的な死への恐怖に似たゾクゾクとするものなのに、悲しみのような何かが冷めていくものではなく、怒りのように対象へと膨らんでいくものだけど、そこには期待がある。


興奮だ。興奮がオレを突き動かす。

復讐。その第一歩がオレを興奮させる。


ただ、考えはまとまっている。

驚くほど冷静に状況を確認し、作戦は決まった。

一気に流れ込んできた情報で選べる選択肢は多くない。

薄氷の上を歩くような戦いだ。


それでも、復讐への可能性があるのならオレは踏み出す!


「行け! ハングドマン!」


オレは、ハングドマンとして従うフリをしながら、状況を確認。

一つ目巨人を円で囲むようにユーゴ達は戦っている。

ハングドマンを肉壁にしながらそれぞれのやり方で戦っていて、そこまで連携している雰囲気ではない。


魔術士ミラは、ハングドマンを1体、もしくは2体自分の前に立て、魔法詠唱時間を稼ぎ、攻撃。タイミング次第ではハングドマンごと攻撃。


札士カルディアンレンは、ハングドマンに速度全振りの付与を掛け、爆弾を持たせての特攻。


治癒術士ユカリはひたすら、パーティーの回復。時折、攻撃魔法を使っているが、ハングドマンを男共に譲っているので積極的には攻めていない。


斧士ガイ、ハングドマンを餌にして、手斧での中距離攻撃と大斧での近距離を繰り返している。


剣士ユーゴ、ハングドマンを便利な盾代わりに使いながら、ヒットアンドアウェイで一つ目巨人のライフポイントを削っている。


この5人を全員、殺す。

オレの考える『真の死』までは無理だとしても、この場で殺してリスポーンさせる。

そこから始まるんだ。


オレは全員の視界に注意しながら、戦っているフリをしつつ、意思無きハングドマン達の中に紛れ込む。プレイヤーは、ハングドマン等のNPCキャラには大雑把な指示しか出せない上に自分の操作に集中している。目立ちすぎなければ気付かれることはないだろう。

指示に従うふりをして、ゆっくりと移動していく。その間にもハングドマン達は殺されていく。


最初の標的は、魔術士ミラだ。


バレたら死の恐怖、あの女への怒り、そして、やはり、興奮がオレの身体を動かす。


ミラの恰好は、魔術士としては少し派手なものだった。

露出度が高く、胸元が大胆に開いた赤いドレスのような服を着ている。下も太ももの辺りが見える短めのスカートで、全体的には赤系を基調とした服だ。

ただし、袖口だけは白く、ひらひらとしたレースがついており可愛らしさもある。

そして、そんな彼女の手には、白と黒の二色の杖があり、その先端には黒い宝石のようなものが嵌っている。

あの杖から放たれた強力な魔法なら一瞬でオレを灰に変えることが出来るだろう。

オレはその魔力を警戒しつつゆっくりとミラの背後まで移動し、ミラの背後で控えている4体のハングドマンに紛れ込む。


ミラは一つ目巨人に意識が持っていかれていてこちらの様子に全く気付かない。


彼女の後姿を見つめる。

髪の色は赤く、背中の中程までありそうだ。後ろから見ると、首筋が見え隠れしている。

身長は人間の中では低めらしい。150センチあるかないかといったところだろうか。

その割に、胸はかなり大きい方だと思う。

お尻も大きく、腰回りも細いが決して貧相というわけではない。

バランスがいい身体をしている。


性的な興奮はない。だが、その身体を見れば見る程、衝動が俺を襲う。


無防備な背中にナイフを突き立てれば簡単に倒せてしまいそうだ。

だが、それではダメだ。

飽くまで、気付かれずに彼女を殺さなければならない。

そのタイミングは必ず来る。


「よーし! 次の二体、アタシの前に並んで突撃! って、きゃあ!」


ミラが、近距離でしか使えない大魔法を放つために一つ目巨人に近づき、肉壁のハングドマンを前に出そうとしたその時、オレはそれに紛れてミラの背中に突撃した。


「え……?」


ミラが呆けたような声を出す。

突然の出来事に思考が追い付いていないようだ。

ふわりと浮かんだ小さな身体の少女がこちらを振り返る。

その顔に浮かぶのは驚愕の表情だった。

何が起きたか理解できていないようだ。

それでいい。

オレは他のハングドマンに紛れる為に全く同じ無表情で彼女を見つめる。

ただ、他のハングドマンと違い、自我持つオレの心の中で興奮が渦巻く。


ざまぁみろ!


そう叫びたい衝動を抑えるのに必死だ。

この女は、死ぬのだ。リスポーンという復活はあれど、今、オレによって殺されるのだ。

そう思うと、自然と笑みがこぼれそうになる。

だが、今は駄目だ。

まだ早い。

まだだ。


「だ、だれよぉおお! 今、アタシを押したバカ肉壁は!」


まだだ。


どんなにあの女が醜く叫ぼうと、顔を歪ませようとまだだ。

まだ復讐は始まったばかりなんだから。


「あ、ああああああ!」


スローモーションのように倒れ込んでいくミラの後ろには、一つ目巨人が大きなこん棒を振り上げて待っていた。

この一撃で確実に殺すつもりだ。

それを察してか、ミラの顔が恐怖に染まっていく。

それでも彼女は逃げなかった。

否、逃げることができなかった。

オレのせいで。


「いやぁああああああああああ!」


そして、見た目と攻撃力だけに特化した紙装甲な上に自身の防御力がほぼ皆無の魔術士の頭に無慈悲な一撃が落とされる。

轟音と共に地面が揺れ、砂埃が舞う。

そして、その砂埃の中で光が生まれ、どこかへと飛んでいく。


これがリスポーン。

人間達が何度でも蘇ることのできる理不尽な力。

だけど、何度でも蘇ればいい。


死んだ方がマシと思えるくらいの復讐をくれてやる。

オレは興奮する気持ちを抑えながら、次に殺すプレイヤーへの計画にうつりはじめる。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。

今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!


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