第3話 『人間』を更新しました
プレイヤーとNPCの違いの一つ。
彼らは、死なない。
いや、正確には死ぬが、リスポーンというシステムで、登録した街で蘇ることが出来るらしい。
死ぬことで、デスペナという制限を受けるらしいが、二度と生きられないわけではない。
だから、【ユーゴ】と頭上に名前が浮かんでいる彼はあんな風に戦えるのだ。
オレ達は、死ぬ。
だけど、NPCに自我など普通ない。死を恐れず、プレイヤーの命令に従い、敵に向かって突っ込んでいくのだ。死への恐怖は存在しない。
オレ以外。何故か自我を得てしまった俺以外。
死など怖くないんだ。
「さあ、全部吹っ飛ばしてやるわ! 轟炎!」
クルクルした紫髪の女が魔法を放つと、炎はハングドマンを巻き込みながら一つ目の巨人にぶつけられる。
「キャハハハハ! 前衛ばっかに集中するから楽だわー。ああ、ごめんね肉壁ちゃん巻き込んじゃって☆」
【ミラ】
あの女の名前。
「よお~し、逝ってこい。肉壁共、せいぜいいい爆弾になってね」
小柄な銀髪の少年が『カルド』を操作し、ハングドマン達に何かを装備させ、突撃させる。
一つ目の巨人に向かったハングドマン達は、次々に爆発しながら肉片を撒き散らす。
「へへへへ~、肉壁爆弾。これって大発明じゃね?」
【レン】
あの子供の名前。
「近寄らないで、気持ち悪い。貴方達を治す魔力なんて1ポイントもないの。治癒。治癒……」
目の前で死んでいくハングドマンには目もくれず、プレイヤーだけを治癒する女。
NPCの仕様で限界ギリギリのハングドマンは神官風の彼女の元に集まっていくが、誰もその恩恵に預かれず、死体の海が広がっていく。
「治癒。みんな、頑張ってね。みんなを私が癒して見せるから」
【ユカリ】
あの神官の名前。
「おい、お前」
背後で男の声がする。
オレを含めたハングドマン達が数人振り返る。
ニヤついた顔の大柄な男。
「さっさと、俺達の為に肉壁になれ、よ……!」
そう言って、オレの隣にいたハングドマンを蹴って、一つ目の巨人の元に飛ばし、攻撃を誘発させる。
そして、
「うおっりゃああああ! トマホーク!」
片手斧を一つ目の巨人に投げつける。
「よっしゃああ! ヒット! いやあ、やっぱ広範囲フィールドボス戦はハングドマン使えるから余裕だわ」
【ガイ】
この外道の名前。
覚えたぞ。
お前達の名前。
「あーあ、ついでに巻き込まれた肉壁の経験値も入ったら便利なのに」
「どーせ大したモンもらえないでしょ? 50体用意してこんな簡単にほとんど死ぬんだから、きゃはは! マジで雑魚すぎる、ハングドマン」
「弱すぎ」
「まあまあ、尊い犠牲だぞ。肉壁に感謝しようじゃないか。俺達の為に犬死にありがとうって」
「まあ、いなくても勝てるけどな。デスペナ対策なだけの存在だよな。あとは、ネタ動画用」
本当に尊い犠牲となったのなら、浮かばれるかもしれない。
だけど、コイツ等は、何も感じちゃいない。
オレ達の死に。
コイツ等がオレの初めて知ったプレイヤー、そして、人間と言う存在だった。
お読みくださりありがとうございます。
また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。
少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。
よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。
今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!
また、作者お気に入り登録も是非!