第2話 『自分』を取得しました
『タルテカルディア・オンライン』
通称、樽オン。
大人気VRMMORPGで、ユーザーは世界中にいるが日本人がメイン。
現在12011名のプレイヤーが登録されている。
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全ての情報が流れ込んできた時、オレは目覚めた。
物理的にじゃない。
オレはオレに目覚めた。
オレはハングドマンという種類のNPC。
NPC、ノンプレイヤーキャラクター、つまり、人間が操作しないゲームの中だけに存在するキャラクターだ。
そして、このハングドマンは、
「肉壁マン共! とっとと死ねよ!」
プレイヤーを守る為に自身を犠牲にするだけのネタキャラと呼ばれる存在。
ハングドマン(吊られた男)。弱いが繁殖力が強いらしく、数は無限に生まれるので、ソロプレイヤーのお手軽お供な存在で、肉壁としてよく連れていかれる。
らしい。
これもオレの頭に流れ込んできた情報。
そして、今まさにオレ達は肉壁にされていた。
目の前では、オレとそっくりな奴らが一つ目の巨人に蹂躙されていた。
巨人の腕が振り下ろされるたびに地面は揺れる。その度に全く同じ声、トーン、大きさの悲鳴が色んな所であがる。気持ち悪い悲鳴の合唱。
一人の悲鳴であれば、気にならない。
違う悲鳴であれば、気にならない。
だけど、全員が同じ悲鳴を方々であげているのはオレにとって恐怖でしかなかった。
恐怖?
そう、オレは恐怖を感じていた。
大量のハングドマンの中で俺だけが震えていた。
理由は多分、オレの中に流れ込んできた情報のせいだろう。
何故か、オレだけが、『感情』を獲得していた。
「はっはっは! さあさあ、肉壁ハングドマン君たち、役に立ってくれよ!」
『愉悦』という感情のこもった言葉と共に駆け出していくオレ達とは全く違う立派な鎧姿の金髪騎士が一つ目の巨人に向かって駆けていく。
巨人の腕が俺そっくりの奴をつぶしている隙に、剣を振り下ろす。
すると、巨人は顔を歪め、雄叫びを上げる。
「ぐおおぉお!!」
その声を聞いているだけで、体が震えた。
だけど、あの男たちは平然と戦っている。
死が怖くないのか。
その時、気付く。
アイツらの頭上にある文字を。
俺達にはないモノを。
【ユーゴ】
プレイヤー。
こことは別の現実世界の人間達はそう呼ばれており、見分ける方法は頭上に名前があるかないか。
彼らは不死の存在だった。使い捨てのオレ達とは違って。
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