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非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~  作者: 瘴気領域@漫画化してます


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第59話 マサヨシ君、奮戦する

 マサヨシ――多田野(ただの)正義(まさよし)は、義務教育を終えてすぐにジャークダーに入社した。

 何かの目的や目標があったわけではない。孤児院育ちの彼には進学できるだけの金もなかったし、学歴もない彼を雇ってくれる企業など、悪の組織くらいしかなかったのだ。


 それでも、マサヨシには希望があった。

 ジャークダーは実力主義だ。怪人化手術が成功し、変身さえ可能になれば、幹部になるのも夢ではない。そうなれば、孤児院で苦労をしている血のつながらない弟妹たちにも援助ができる。

 訓練に汗を流し、日々の業務に邁進し、ついにマサヨシは怪人化手術を受ける権利を勝ち取った。


 そしてその結果は――残酷なものだった。

 術後に行われた検査によると、マサヨシの怪人因子適合率は1%未満。成人男性の平均が10%ほどであるとされているから、完全に水準を下回っていた。

 マサヨシの出世の道は断たれたが、それでも彼は腐らなかった。下級怪人として幼稚園バスジャックや小学校の占拠、駄菓子屋での立てこもりなどの業務に真面目に取り組んだ。


 採石場では先頭に立って正義のヒーローたちと戦った。

 怪人がピンチになれば、身体を張って窮地を救った。

 仲間たちは、そんな自分を認めてくれている。


 マサヨシが悪の組織の戦闘員になったのは、ただ単純に食うためだった。

 しかし、いまではもう違う。

 マサヨシにとってジャークダーはもはや家族なのだ。

 孤児院の弟妹たちと同じく、かけがえのない存在がたくさんいる、そんな居場所になったのだ。


 ちなみに、マサヨシが育った孤児院はジャークダーの育成組織として組み入れられ、マサヨシのように金が理由で進学を諦めなければならない事態はなくなっている。

 懇意の上級怪人による助力もあったが、マサヨシが何日も徹夜して書き上げた企画書が、ジャークダー上層部に認められたのだ。


 そのジャークダーが、異世界に来ておかしなことになっている。

 マサヨシには、それが許せなかった。

 ジャークダーを何よりも愛している彼には、ジャークダーをめちゃくちゃにしている「何か」の存在が感じ取れた。

 六鬼将の面々も、アキバ支部長である斬殺怪人キルレインも様子がおかしい。


 なんとかしなければ――そう思っているところに、宿敵たるジャスティスイレブンが現れたのだった。


 * * *


「はぁっ、はぁっ……さすがはレッドさんっすね。どういうスタミナしてるんすか?」

「毎日牛乳を飲んでるからなッ!」

「ちょっと意味がわかんないっす」


 唸る豪腕。迫りくる拳。

 比喩ではなく、一打一打が岩をも砕く破壊力を持つ致命の連打。

 これならマシンガンの前に立たされる方がよほどマシだ……と思いながらも、マサヨシはヒロトの連撃をさばき続ける。


 拳の土砂降りをかいくぐって時折ローキックやジャブで牽制するが、まるで堪えた様子がない。

 むしろ一撃加えるたびに「すげえなッ! やるじゃないかッ!」などと嬉しそうな顔で攻撃の回転を上げてくる。変身もしていないのにこれとは……才能の違いを思い知らされる気分だ。


「ジャークダーは他の組織と違ってズルいことをしてこないからなッ! 俺は好きだぜッ!」

「あー、うーん、正義のヒーローが悪の組織を好きとか言っちゃっていいんですかね?」

「なんで言っちゃいけないんだ? 正義の前に、好きも嫌いも悪の組織もないんだぜッ!」


 ヒロトの空中三段蹴りをぎりぎりでかわしつつ、マサヨシは考える。

 このどこまでも真っ直ぐな正義漢なら……助けを求めたら、たとえ悪の組織が相手でも力を貸してくれるのではないだろうか?


「……レッドさんから見て、今日のジャークダーはどうだったっすか?」

「ん? どうだったってどういうことだ?」

「いや、普段と比べてなんか雰囲気が違うなーとか、いつもはこんな感じじゃないよなーとか」

「むむむ、ちょっとタイムだ。オレは考えながらじゃ戦えないんだぜッ!」


 ヒロトが致命的な弱点をさらっと暴露しつつ、腕を組んで考えはじめた。

 額に指を当てて、しばらく考え込んだあと、叫ぶ。


「ぜんっぜん、わかんないぜッ!」

「溜めておいてそれっすかっ!?」

「何かヒントがほしいぜッ!」

「あー、ヒント、ヒントっすかぁ……」


 マサヨシはジャスティスイレブンとの過去の戦いを振り返った。

 常に現場に出続けている万年下級戦闘員のマサヨシの脳内には、過去数年にわたるジャスティスイレブンとの戦いがすべて記録されている。


「えっと、テンタさんとは面識あるっすよね? イカの怪人の」

「イカ怪人……ああッ! 幼稚園バスジャックをよくやってたなッ!」

「はい、あのロリコンっす。でも、いつもと今日とじゃ様子が違わなかったっすか?」

「むむむ、何か違ってたのかッ!?」

「ええと、ほら、幼女との距離感とか」

「距離感……距離感……ああッ! 思い出したッ! イカはいつも幼稚園バスの天井に張り付いてたなッ!」

「そうっす! テンタさんの座右の銘は『イエスロリータ・ノータッチ』。『美幼女は、遠くにありて愛でるもの』っす! 触手で幼女に触れようなんて、本当なら考えもしない人なんす!」

「そういえばそうだなッ! 今日のジャークダーはなんか変だぜッ!」

「そうっす! やっとわかってくれたっすね! こっちの世界に来てから……いや、そのちょっと前からみんなの様子がおかしくなっちゃったんす!」

「なんだって!? それは悪の気配を感じる事件だぜッ! 詳しい話を聞かせてほしいぜッ!」


 ヒロトは、土俵の真ん中にどっかりとあぐらをかいた。

 マサヨシは、その前に正座をしてかしこまる。


「実は、様子が変になったのはこっちに来る少し前からなんす。キルレインさんが神棚に真っ黒な石を置いて拝みだして――」


 マサヨシは、自分が知る限りのことを話しはじめた。

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