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1.魔王軍のお姫様(3)






―そして今に至る―


「そうだよ!!私は冒険とか友達作りとかして青春を謳歌するためにわざわざ腹痛装って出てきたのに!!食べるのに夢中になってどうすんだっっ!!」


そして持っていたウサギの骨を地面に叩きつけた。


「こんなことしてられない!!青春しなきゃ!!・・・ってあれ。」


・・。・青春ってどうやればいいんだ・・・?



そう言えば前世でもずっと寝たきりだったから青春の仕方なんて習ってないよ!!


「まずは――なんだ・・・友達?友達か??」


友だち・・・。


私は辺りを見回した。


巨大樹の森。


パッと見えるのは木と共に巨大化してしまった虫たち。


そして蛇。カエル。・・・カタツムリ。


「だぁあああああああ!!無理だっっ!!」


こんなのと友達なんてなれない!!ていうかなれたところでそれは果たして青春か!!??


「・・・いや、私は諦めないぞ・・・。」


なんてったって走り回れる健康な体がここにあるのだから!!



――その後私は森を駆け回り、友達になれそうな生き物を探しては声をかけまくった。


・・・巨大カブトムシには巨大蜂のハチミツをプレゼントしたりもした。




――そして私は悟った。――

「やっぱりこいつらとじゃ青春は生まれねぇええええ!!」


私が突っ伏した地面の周りには大量の巨大カブトムシ、ブンブン羽音を鳴らす巨大蜂の大群、そしてこちらを凝視する巨大ガエル達・・・。



「だめだ。やっぱり友達はせめて人の姿をしてるやつじゃないと・・・!」


そうだ・・・。確かさっき森の外に何か建物みたいなのが見えたような・・・。


「もしかして・・・村!?」



この際人っぽい形してればゴブリンとかでもいい!!


「・・・よし、皆!友達求めてさっきの村に突撃じゃーー!!」


私がこぶしを高く上げると、皆もこぶし・・・っぽいものを上げてくれた。






——村——


「今日は楽しかったわねぇ、キャサリン。」


「―うん!ねぇママ!今日はごはん何——・・・」


ドサッ


「い・・・いや・・・。」


「ママ?かご落ちたよ?」


「いやぁあああああああ!!!!」


「ママ?・・・キャ―――――――!!!!」



―村の入り口を見ると、巨大樹の森からやってきたと思われる巨大な魔物の大群。


そしてその先頭には、鋭い牙の生えた口と、凶器のような爪の生えた手を真っ赤な血に

染め、不気味な笑顔を浮かべるあきらかに人ではない何か――!!


「イヤ――――――!!!」


「はぁ・・・はぁ・・・と、と“も”た“ち”に“な”ろ“う”よ“・・・。」


「キャ――――――――!!!!!!」



「どうした!?・・・魔物の群れ!?なぜこんなところに!!」


「皆―!!魔物が出たぞーー!!早く非難を!!」


「ママ――!!パパ――!!」



村は一瞬で大混乱に陥った。


怒鳴り出す人、泣きわめく人、神に願い出す人・・・。


「わ、私は敵じゃないよぉ?」


先頭の魔物は血のこびり付いた口でにこぉっと奇妙に笑った。


「くそぉ、魔物め!出ていけ!!」


「いたっ!ちょっと棒とか投げてこないでよ!!」



「ママ、私達もはやく逃げよ?」


「そ、そうね!早く村の奥へ!!」



――その時だった。



「あらぁ!??先客がいたとはなぁ。ケッケッケ。」


あれは――ゴブリンの群れ!?


「お前たちも俺らと同じ、久々に狩りでもしたくなった口かぁ!?ギヒヒヒヒッ!」


「はぁ?狩り?」


「獲物は早いもの勝ちだぁ!!お先にいただくぜっ!!」



ひと際大きなゴブリンはそう言うと、村を荒らし始めた。


「キャ―――――!!!!」


「キャサリン!!」


「ママ―――――――!!!!」



「旨そうな嬢ちゃんだぁ。ヒッヒッヒ。」


――嫌!!食べられる!!


「いっただっきまー・・・」


「・・・ちょっとねぇ。何してんの?」


「あ?」


「・・・?」


ゴブリンの後ろを見ると、そこにはさっきの不気味な小型魔物が――。



「・・・っと会えたのに。」


「なんだってぇ?」


「やっと人型の生物に会えたのに、襲ってんじゃねーーーよ!!!!」


あれ?あの魔物・・・泣いてる?


「なんだお前。俺たちのやり方に文句でもあんのか?こんなちっこいナリしてよぉ。」


バシッ


「あでっ!」


小型魔物をつつこうとしたゴブリンの手は払いのけられた。


「・・・るな。」


「は?」


「触るな!!外道がっっ!!!」


小型魔物がそう叫んだ瞬間、目の前のゴブリンは途端に炎に包まれた。


「ぎゃぁああああ!!熱いっあついいいいっっ!!」


「っけほ、げほっ!!」


「!キャサリン!!」


「ママ・・・。」


さっきのゴブリンに目をやると、炎に包まれながら既に動かなくなっていた。


小型魔物はと言うと、私と大差のない小さな体から炎の渦を出し、村のゴブリンを一匹残らず灰にしてしまった――。


「ひぃ・・・!」



村は炎に包まれる。


ゴブリンの群れをたった一瞬で倒してしまった小型魔物。


そしてその後ろには小型魔物の引き連れる大量の兵(虫とカエル)——!



小型魔物はゆっくりとこちらを見るとその血まみれの口を動かした。


「・・・ねぇ、おとぉもぉだぁちぃに、ならぁなぁぁい?」


ニタァっと笑った口からは血が流れ落ちた。




――ああ、これが怪物なのね。


そりゃあ、人間が立ち向かったって勝てないはずだわ・・・。


「キャサリン!!」



――そうして私は意識を手放した――




——城——


「・・・お嬢様。」


「・・・はい。」


ジルは腕を組んで私を見下ろす。


「ご自分のなさったこと、わかっていますね?」


「・・・はい。ごめんなさい。」


「・・・はぁ。村の人達、相当怖がってましたよ。小型の魔物に食われる!って・・・。」


「・・・別に食べないのに・・・。」


「口に血を付けたまま大量の魔物を率いて言ったら怖がられるに決まってます!僕でもゾッとします!!」


「・・・ウサギ、美味しかったからつい・・・。」



「・・・はぁ。まぁ怒ってしまったことを言っても仕方ないですね。今後は気を付けるようにしてください。村の人たちの新しい生活場所は魔王様になんとかしていただきましたから。」


「・・・ふぁい。」


「それはそうと、なんでこんなことしたんですか?」


「・・・と、友達が・・・。」


「友達?」


「友達が欲しくて・・・!でも森では虫とかカエルしか友達になれなくて・・・!」


気付くと目からは大量の涙が溢れ出ていた。


「せめて会話がちゃんとできる友達がほしくてぇ~!!!」


「わ、わかりましたから泣き止んでください!」


「ううう・・・。」


私の青春はこんなはずじゃなかったのに・・・。


「まったく・・・。友達なら、学校に通うようになれば嫌でもできますよ。」


「学校・・・?」


「はい。お嬢様は2年後の7歳から魔族の学校に通っていただきますから。」


「え・・・?それなんで言ってくれなかったの・・・?」


「言いましたよ!お嬢様が聞いてらっしゃらなかっただけです!」


そんな・・・学校なんて・・・学校なんて・・・!


「ジル~!!大好き~!!!」


「うわっ!」


私はジルに思いっきり抱き着いた。


学校!!学校だ!!


前世では一度も通えなかったあの!!


青春、恋愛、いじめ・・・数々の試練が待ち受けているという噂の!!!



「よぉーし!!私学校頑張るぞおお!!」


「・・・その前に、お勉強ですよ。入学試験もありますからね。」


ジルは私に乗られたまま、優しく私の頭を撫でた。


「勉強・・・か・・・。」


勉強は嫌・・・。


でもこれも青春のため・・・!


私の第2の人生のため・・・!


この人生、謳歌してみせる!!







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