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1.魔王軍のお姫様(2)





「よっ!ほっ!」


ツインテールに結んだ赤毛が巨大樹の森の中を器用に駆け抜ける。


もうちょっと・・・!もうちょっとで届く・・・!!


「やぁあああああ!!」


ガシッ


「キュ―――――!!」


「やったぁ!!」


これで5匹目!!


このウサギみたいな生き物は城の近くのこの森にいっぱい生息している。


動きは早いけど、小さい頃から走り回ってた私の敵じゃない!


私は自分の手の中でじたばたと暴れまわるウサギに、勢いよくガブっと嚙みついた。


そしてその肉を豪快に引きちぎる。


ん~!やっぱ美味しい!!


この柔らかくて生暖かいお肉が噛むと口の中でほろほろと崩れて飲み物みたい・・・!


「よぉーし。、次だっ!!」




―この世界に生まれてからはや5年、気付いたことがいくつかあった。


まず私は人間ではないということ。


この世界には大きく分けて二つの種族が存在する。


一つは人族。


いわゆる人間。けど前世の私の世界と違うのは、この世界の人間はみんな何かしら魔法が使えるということ。



そして二つ目が魔族。


魔族は主に人族以外を全部ひっくるめて言う言葉。


中には、亜人、魔人、鬼人、妖精、ドワーフなどなど・・・。



そしてこの私、アリーゼ姫は両親の血を引いた純血魔人族である!


最初は「魔人?なんだそりゃ」状態だったけど、最近だんだんわかってきた気がする・・・。


爪は人よりも鋭いし、身体能力も凄まじい。


そして牙も強靭なのでほとんどの獲物はそのまま食べることができる。


そんでもってこの森の魔物っておいしいものばっか!!


・・・という具合に、私は5年間で人として大事なモラルは完全にどこかへ消え失せていた。



そして気付いたこと二つ目。


父が魔王っていうから一体どんな極悪非道なことをしているのかと思ったら、それは意外と平和的で。


人族と血で血を洗う戦争をするというより、土地と食料、技術を提供してやるから傘下に下れ、というもの。


パパは普通にいい王様してました―。



そして最後。


これが少し謎なんだけど、どうやら私には母親がいないらしい。


正確には以前はいたが、今はいない・・・。


そんな感じの雰囲気を城の皆から感じ取った。


母親のことを聞いても皆してはぐらかすからだ。



「キュ――――――!!」



「6匹目ゲット!!」



・・・まぁ母親のことに関してはあんまり興味もないし、多分大人になったら教えてくれるとかそういうものだと思う。




「ふぅー・・・。」


お腹もいっぱいになったし、次は何しようか・・・って、はっっ!!


「私は何のために城を抜け出してきたんだぁあああ!!」



——遡ること数時間前——


「・・・お嬢様。聞いてますか!?」


「へ?ああ・・・うん。聞いてるー・・・。」


私はベターっと机に突っ伏す。


「まったく・・・。いいですか。お嬢様は魔王様のお子様。その身に恥じないような教養が必要不可欠なのですよ!」


「あー・・・、うんー・・・。」


私はこの金髪糸目のお兄さん、ジルに説教され・・・じゃなかった、魔術の勉強を教わっている。


私はこんな机にかじりついて勉強するために転生してきたんじゃないってのに・・・くそー。


「机噛まないでください!もっとお嬢様らしく・・・!はぁ、わかりました。では今日はこれだけでも覚えてください。」


ジルは諦めたようにため息をつくと、黒板に何かを書き始めた。


「なにそれぇ?」


「これは魔術の基礎、恩恵についてです。」


「おんけぇ??」


「はい。この世界には『精霊石』という石があります。人も魔族も皆、魔術を使う際はこの石に呼びかける必要があります。」


言いながらジルはポケットから小さなペンダントを取り出した。


「これがその精霊石です。これは赤い石なので、火の精霊、サラマンダーが宿っています。」


ジルは真っ赤なその石を私に見せてきた。


「わぁ・・・きれい。」


石は角度を変えると、光に反射してキラキラと輝いた。


「精霊石には現在確認されているだけで10種類存在します。火、水、土、風、雷、氷、樹、音、光、・・・そして闇。」


ジルはカカカ・・・と黒板に書き出していく。


「魔術は基本的には精霊石さえ持っていれば誰でも使えます。ただ、10種の精霊石を持っているから10種の精霊の魔術が使えるかと言えば、話は別です。」


「なんで?」


「人族も魔族も、得意不得意があるからですよ。例えば僕なんかは氷の魔術が苦手なので、氷の精霊石を持っていても、魔術は使えません。」


「んへぇ・・・。」


「お嬢様はまだどの魔術が得意なのかわからないので、これから一緒に探していきましょう!」


するとジルは先ほどの赤い精霊石のペンダントを私の首にかけた。


「ジル?」


「これはプレゼントです。明日はこれで火の魔術の練習をしてみましょう!」


「れんしゅう~?」


私はあからさまに嫌な顔をして見せた。


私は早く友達作って冒険とかして青春を謳歌したいのに・・・。



「何事も練習あるのみですよ、お嬢様!さてそれでは次はその精霊石について・・・。」


げっ、まだやるの!!


この子供時代の時間には限りがあるというのに!?


30歳なんてすぐなんだよジルさん!?(体験談)


「いてててて。お腹いたいよぉ~。」


「え!?大丈夫ですか!?お嬢様!?今すぐ治癒魔術を・・・!」


「大丈夫大丈夫!トイレ行けばすぐ治るやつだから!!行ってきまーす!」


「治らなかったら無理せずに言ってくださいよー!」


・・・・ジルめ、ちょろいな。








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