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悪役令嬢はもっと強くなりたい  作者: ダイフク
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6.学園入学


兄様の卒業パーティーが終わって、私の入学式があった。


兄様は、学園で知り合った伯爵令嬢と、婚約した。

私のようなお転婆じゃなくて、大人しいレディ。兄様と並ぶと、似合の二人で、素敵。二人は何だか大人っぽくって、視線を合わせるのを見ると、ドキリとする。


私とダニエルでは、あんな色っぽい感じがしない。いつかは……ね。




そう言えば、マリーとは友達付き合いをするので、不要だったかなと、あのお守りのことを思い出した。

あれはゆきえが魅了に対抗するならこれ!と思っていたからなんだけど、元々、魅了って何だろ。聞き慣れない単語。


まあいいや。そう思う私は、いつの間にかお守りの事など忘れてしまった。




マリーと私は、思った通り、友達になった。マリーは入学当初は高位貴族の令嬢令息に避けられていたけど、私やダニエルと一緒にいるのを見て、徐々に受け入れられていった。


根性があって、明るいマリーは友達も増えた。私の教育のかいもあって、マナーも恥ずかしくない程度にはできるようになった。


そして、学園生徒の関心はマリーから離れ、チルチェリア・ガーモンド子爵令嬢に向かっていった。



チルチェリアは、ホッソリとした華奢な体でありながら、とても女性的な体型の人で、少し下がり気味の眦にある、ホクロがなんとも言えない色気を感じさせる。


以前のケイシーの周りには彼女はいなかった。

だったら、もう、断罪はされないかと、安心しかけたが、チルチェリアは、記憶のマリーのように、男子生徒を次々に籠絡していった。

今のターゲットはダニエルらしい。


かつてのケイシーは、ダニエルと婚約していたが、親しくしていたのは子供の頃だけで、いつの間にか疎遠になっていた。

それは、何が原因なのか分からない。だって、ケイシーは、ずっとダニエルが好きだったから。

ダニエルのケイシーを見る目は冷たくて、学園ではほとんど口を利くこともなかった。


ケイシーは黙ってすれ違うダニエルを、いつも振り返って見つめていた。


でも、今のダニエルは違う。昼休みと言えば、ケイシー達と賑やかに楽しみ、時折、二人だけの時は、そっと抱きしめて優しいキスをしてくれる。


「ケイシー。」

「んんっ……ダニエル、大好き。」

「俺も。」


二人だけの時、ダニエルは自分の事を俺と言う。それが、特別な事だと言われているようで、胸がドキドキする。




マリーと仲良くなった私は、長期休暇を我が家で過ごすように、マリーを誘った。


「良いの?私なんかがお招きを受けて。」

「私が誘ってるの。マリーは頑張り屋さんで、素敵よ。それに我が家でのんびりすれば、剣もいっぱい教えてあげられるわ。」

「ありがとう。正直に言って、長期休暇をどう過ごそうかと悩んでいたの。」

「男爵?」

「そう。あの人と顔を合わせたくなくて……。」

「マリーが男爵から自分で身を守れるようになるまで、私が守ってあげる。」

「ありがとう。やっぱりケイシーは、かっこいい。」

「男前でしょ?」

「うん。ダニエルから奪ってしまいたくなる。大好き。」


二人でくすくすと笑った。私も、マリーが大好き。

男爵なんかにいいようにはさせない。



長期休暇を我が家で過ごすうちに、マリーは、厨房に出入りする事が増えた。

最初は、大きな厨房に興味を持って。

本当は貴族令嬢が厨房に出入りしたら駄目だけど、私ですっかり慣れている我が家の使用人達は、誰も咎めることはしない。


ダニエルの家である、ヨルムンガンド家でも、それは同じ。

過去のヨルムンガンド家は、厳しい家だった。

お義母様も厳しくて、ケイシーは、好かれていないと思っていた。

でも、お義母様は、明るくて、私と、買い物やお芝居にも一緒に行ってくださるような良い方で、家の中の雰囲気もダニエル同様に、優しくて、居心地が良い。考えてみれば、あの人が居なくなったからかも。お義母様の従姉妹のネイリア様。


何があったかは聞かなかったけど、毎日のように入り浸っていた彼女が、ある日行ったら居なかった。

ダニエルに聞けば、あの女はもう来ないから心配するなと言われた。

嬉しかった。私はあのひとが苦手で、何故か私にばかり苦いお茶を出したり、地味な嫌がらせをしてきて、いつ、仕返しをしようかと悩んでいた。

やられっぱなしでは、いられないから、どうしようかなって。


「ケイシー、なんで黙ってた。言ってくれたら、俺がすぐに何とかしてやったのに。」

「私だって、やり返すつもりだったから。」

「ぷふっ。やり返すつもりだったんだ。ごめんごめん。余分な手出しをしたな。」

「ううん。ありがとう。」

「うん。これからは何かあったら相談しろよ。俺が一緒にやり返してやるから。」

「そうする。」


それ以来、かもしれない。あの家の雰囲気が変わったのは。



厨房に出入りするマリーは、料理人に混じって、料理を教えてもらうようになった。時々お昼に彼女のひと皿が出てくるようになったけど、これが凄く美味しくて、びっくりした。


「マリーって、料理の才能があるね!」

「そう思う?」

「思う!!」


隣でマティアスも美味しそうに頬張りながら、頷いた。


「嬉しい。料理していると、凄く楽しいの。私、料理で身を立てたいなぁ。」

「お店を持つの?」

「持ちたいけど、男爵がどう出るかと思うと……。」


「調べてみたら?」

「ダニエル!」


木の影から、ダニエルが現れた。彼は全く神出鬼没。いつの間にか、庭に現れるんだから。


「男爵はマリーを買ったって言ったよね?」

「隠し子だって言ってた。実際、私とおやじは血が繋がってなくて、私の本当の親は分からないの。」

「そこも含めて、調べてみるよ。私に任せてくれるかな?」

「ありがとうございます。お願いします。」

「うん。ケイシーも良いね?君は口出ししない事。」

「わかった。ちょっと不満だけど、言う通りにする。」

「良い子だ。」


頭をぐりぐりと撫でられる。


「こら、子ども扱いしないで!同い年のくせに!!」

「たまにはいいだろう?」

「ダニエル、お姉様に対して、生意気!」

「マティアスの方がもっと生意気。」


ダニエルの調査が上手く行きますように。




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